婚約者の本性を知るのは私だけ。みんな騙されないで〜!

リオール

文字の大きさ
1 / 17

1、

しおりを挟む
 
 
「カルシス様、剣のお稽古に行かなくてよろしいんですか?」
「え~やだな~、折角ディアナが居るんだから、今日は休む」」
「毎日会ってるでしょうが……そう言って昨日も休んでませんでしたっけ?」

 人をダシにしないで欲しいのですが。
 暗にそう言ってジトリと睨めば、それにビクビクする男性が一人。

 金髪碧眼の見目麗しい人。それはこの国の次期国王となる人、つまりは王太子であり、私の婚約者だ。

 毎日私を言い訳にして勉強や稽古をさぼろうとする王太子に、ちょっと厳しく言ってみました。言わないとやらないんだよこの人。

 すると途端に涙目になる。なんでじゃ。

「酷い!僕はディアナと一緒に居たいから仕方なくお稽古休むって言ったのに!そんなに僕のこと嫌い?一緒に居たくない!?」

 この人、これでも17歳だぜ?信じられる?信じたくないよね。

 出来れば一緒に居たくないです。
 出来れば毎日登城とか面倒なことしたくないです。
 出来れば婚約も無かった事に出来ませんか。

 ──と言えたらいいんですけどね!特に最後のん!

 いくら公爵令嬢という立場があっても、言えない事はある。だが思ってしまった時点で『間』が出来てしまった。即否定しなかった私の態度が肯定を意味してると捉えたのだろう。

 ああああ、ウルウルお目々から涙こぼれたよ!
 これはヤバイ!!

 そう思った直後だった。

ドーーーーーーンッ!!

 と後頭部に衝撃を受けたのは!!

「カルシス様大丈夫ですか!ああ、可愛いお顔を涙で汚して……大丈夫ですよ、今日はお稽古お休みしましょう!ね!?」

 誰じゃあ、公爵令嬢を突き飛ばす不届き物わあ!!!!

 床と仲良しオデコごっつんこした私は、額を押さえながらガバリと起き上がるのだった。
 そしてギロリと睨んだその先に……

「え、休んでもいいの?」
「いいですともいいですとも!むしろお休みしてください、可愛いお顔に傷でも付いたら大変です!!」
「う~ん、でも将来のためにやった方がいいんじゃないの?」
「いいんです!王太子の事はディアナ様が守ります!ディアナ様の剣技があれば十分です、王太子様はそのお可愛らしい手を大切にしてください!!」
「じゃあ今日の勉強も無しでいいかなあ?」
「いいですいいです!勉強もディアナ様がやります!」
「全部ディアナがやってくれるの?」
「そうです!お勉強も武芸も、なんならお食事にお風呂、おトイレも!全て!ディアナ様がやります!!」

 できるかあ!!!!!!

 一万歩譲って勉強と武芸はいいとしても、王太子の分まで食べたら太るわ、王太子飢え死にするわ!お風呂入りすぎて肌荒れるわ、王太子臭くなるわ!トイレも……って出来るかあ!!!!

 そんな私の全力の──心の叫びは届かない。

 可愛い可愛い王太子を溺愛しまくりな家臣たちは。

「そう?じゃあお言葉に甘えて休んじゃお!」

 そう言ってニッコリ微笑む王太子を見て。

「か~わいぃ~~~~!!!!」

 と叫んでキャイキャイ花を飛ばすのだった。──ちなみに家臣ってオッサンの集まりなんだけどね。



 
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

イケメン恋人が超絶シスコンだった件

ツキノトモリ
恋愛
学内でも有名なイケメン・ケイジに一目惚れされたアイカ。だが、イケメンはアイカ似の妹を溺愛するシスコンだった。妹の代わりにされてるのではないかと悩んだアイカは別れを告げるが、ケイジは別れるつもりはないらしくーー?!

3回目巻き戻り令嬢ですが、今回はなんだか様子がおかしい

エヌ
恋愛
婚約破棄されて、断罪されて、処刑される。を繰り返して人生3回目。 だけどこの3回目、なんだか様子がおかしい 一部残酷な表現がございますので苦手な方はご注意下さい。

旦那様の愛が重い

おきょう
恋愛
マリーナの旦那様は愛情表現がはげしい。 毎朝毎晩「愛してる」と耳元でささやき、隣にいれば腰を抱き寄せてくる。 他人は大切にされていて羨ましいと言うけれど、マリーナには怖いばかり。 甘いばかりの言葉も、優しい視線も、どうにも嘘くさいと思ってしまう。 本心の分からない人の心を、一体どうやって信じればいいのだろう。

身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)

柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!) 辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。 結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。 正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。 さくっと読んでいただけるかと思います。

【完結】大好きな彼が妹と結婚する……と思ったら?

江崎美彩
恋愛
誰にでも愛される可愛い妹としっかり者の姉である私。 大好きな従兄弟と人気のカフェに並んでいたら、いつも通り気ままに振る舞う妹の後ろ姿を見ながら彼が「結婚したいと思ってる」って呟いて…… さっくり読める短編です。 異世界もののつもりで書いてますが、あまり異世界感はありません。

下賜されまして ~戦場の餓鬼と呼ばれた軍人との甘い日々~

イシュタル
恋愛
王宮から突然嫁がされた18歳の少女・ソフィアは、冷たい風の吹く屋敷へと降り立つ。迎えたのは、無愛想で人嫌いな騎士爵グラッド・エルグレイム。金貨の袋を渡され「好きにしろ」と言われた彼女は、侍女も使用人もいない屋敷で孤独な生活を始める。 王宮での優雅な日々とは一転、自分の髪を切り、服を整え、料理を学びながら、ソフィアは少しずつ「夫人」としての自立を模索していく。だが、辻馬車での盗難事件や料理の失敗、そして過労による倒れ込みなど、試練は次々と彼女を襲う。 そんな中、無口なグラッドの態度にも少しずつ変化が現れ始める。謝罪とも言えない金貨の袋、静かな気遣い、そして彼女の倒れた姿に見せた焦り。距離のあった二人の間に、わずかな波紋が広がっていく。 これは、王宮の寵姫から孤独な夫人へと変わる少女が、自らの手で居場所を築いていく物語。冷たい屋敷に灯る、静かな希望の光。 ⚠️本作はAIとの共同製作です。

婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました

春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。 名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。 姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。 ――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。 相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。 40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。 (……なぜ私が?) けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。

【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました

雨宮羽那
恋愛
 結婚して5年。リディアは悩んでいた。  夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。  ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。  どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。  そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。  すると、あら不思議。  いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。 「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」 (誰ですかあなた) ◇◇◇◇ ※全3話。 ※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜

処理中です...