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しおりを挟む「あーうっざ。あのオッサン達うざいし臭いんだよなあ。加齢臭酷くなってないか?」
今私の目の前に居る人。
自室でソファにふんぞり返り、座った目をギラつかせながら、目の前のクッキーをボリボリ頬張ってるお方。
口悪く、家臣をうざいと言ってる奴。
──王太子です。
紛れもなく、私の婚約者であるカルシス様です。
金髪碧眼見目麗しさはそのままに。
だが先ほどまでの愛らしさは完全に消えて無くなっていた。
居るのは目が座った金髪ヤンキーが一人。
「たくよお、毎日毎日やれ勉強だやれ剣術だ弓術だ、護身術に馬術もどうぞって……やってられるかっつーの!!!!」
そう言って、ガチャンと乱暴にカップをテーブルに置く。割れないかなという心配は必要ない。強度バッチリなやつを用意させてるから。何でと聞かれたので、『王太子様はウッカリさんですから。落としても大丈夫なように』と言ったらあっさり納得されたのも今は昔。
「まあでも必要ですからね。カルシス様、心身ともに鍛えておかないと将来困りますよ」
「俺がヤバイ時は、必死になって守ってくれる奴がごまんといるさ」
その自信はどこから!?
「何様ですか」
「俺様だ」
「そうですね」
そうですね。もう一度言っとくわ、そうですね、俺様ですものね、そうですね!!
さて、今私の横に座る王太子と前回のウザイ王太子。
同一人物です。
ええ。
二重人格です。
まあね、王太子ですから。普段は皆に愛されるように人柄を偽って良い人演じる必要性はあると思うんです。上に立つ者として。
でもね。
結果として、見事に歪んだ性格になってしまったと。
初対面の時──いきなり婚約の話が出て顔合わせしたのが10歳だったかな。その時は私にもブリッコ王太子だったんだけどねえ。
なんか背後に黒い靄が見えるような、そんな気のせいにしたい物が見えたのが運の尽き。
子供だった私は、王太子にストレートに『王太子様って腹黒ですか?』とか聞いたもんだ。聞いちゃったもんだってね。子供って恐いもの知らずすぎて恐い。
それから王太子は私の前だけでは本性出すようになりました。
いやもうこれが恐いの恐くないのって。どっち?恐いよ。
別に私に暴力振るわれるとかないんだけど。
いやむしろ……
「おいディアナ、ちょっとこっち来い」
「こっち来いも何も、横に座ってるんですけど」
「近くに寄れって言ってるんだよ」
「ふおお!?」
有無を言わさず腕を引かれ、あれよあれよと王太子の腕の中に……。
「ななな、何を!?」
「あ~やっぱディアナはいい香りすんなあ。あいつらのくっさい加齢臭で穢れた俺の鼻を癒してくれ」
「……鼻をって……嫌ですよ、離してください」
「誰に言ってんだ?」
「嘘です、存分に嗅いで下さい、鼻がもげるまで嗅いでください」
「もげるか」
クックックと笑いながら、王太子は私を抱きしめ続けるのだった。
そう、恐いのだけど。
だけど溺愛されている。
このツンデレめ!──いや、ヤンデレか?
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