婚約者の本性を知るのは私だけ。みんな騙されないで〜!

リオール

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「隣国からお客様?」
「はい。まだ一ヶ月ほど先の話ですが。お客様と言いますか、隣国の姫様が我が国に留学に来られます」

 そう言って王家の家臣。お偉いさんな貴族のオジサンが、頭を下げながら報告してきた。私は今日も今日とて王太子の部屋に来てますよっと。

「二年生の途中から編入ですか?随分と中途半端ですね」
「なんでも自国の学園では物足りないとの事で。色々設備が充実してる我が国の学園の噂をお聞きになったようです」
「なるほど」

 確かに、私と王太子も通う貴族向けの王立学園は、なかなかに充実している。教師陣は世界中から選りすぐった人たちで構成されてるし、設備も生徒と教師の希望を存分に聞き入れたものとなっている。専門分野も多岐に渡っている。三年で学びきれないくらいに、色々ある環境だ。

 ──まあ私だけが学ぶ必要のある、王妃教育授業は無いんだけどね。無いから仕方無しに、休みの日や放課後は毎日王城に来てるのだ。なのに半分以上王太子と一緒に居るってどういうこった。王妃様、ちゃんと教育してくださいよ。

「ふうん……それで?」

 お茶を大人しく飲んでる白い王太子がカチャリと丁寧にカップを置いて、家臣に問うた。それにゆっくり頷く家臣の中でも高齢のオジサマ。

「かりにも隣国の姫君ですから、粗相があってはなりませんので。この王城にお住みいただく事になりました」
「え、そうなの?」

 ビックリする王太子。同じく私もビックリ。
 そりゃまあ各国の来賓とかは王城に寝泊まりしてもらうのが当然だけど。それはあくまで短期間だ。
 留学って事は卒業までの一年半、ず~っと、ってことだよね?

「お二人は同学年ですし、姫君が不自由ないよう、不安になられないよう仲良くしていただけたらと思います」
「そういうことか。うん分かった大丈夫だよ、任せて!ね、ディアナ!」
「あ、は、はい……」

 例によっていつもの如く、可愛い笑みで答える王太子にホワ~ンとなるオジサマ家臣。
 それを複雑に見る私。

 この城にお姫様が一年半寝泊まりする。
 その事が、思った以上に私の心に重くのしかかるのだった。



* * *



「な~に不安そうにしてんだよ?」

 例の如く。
 例の如し。

 家臣が出て行った直後のその変貌ぶりは、むしろ見事ですね。王家って影の見守りが居るんじゃないの?って前に聞いた事あるんだけど、そんな奴らにはとっくに本性バレてるし、隠す必要はないってことだそうで。

 ──まあそういうのは置いといて。

「べ、別に不安になんて……」
「不安じゃないなら心配か?」
「え──」

 その言葉にギクリとした。

 そうか、私……心配なんだ。

「心配なのか?」
「ちょ、ちょっぴり……?」
「なんで疑問形なんだよ」
「いやあ、何と言いますか……うーん……」
「複雑な心境ってか?ふっ、ディアナも成長したなあ」
「なんですかそれ」
「い~や別に?」

 ニヤニヤしないでくださいよ。

 誤魔化しなんてきかないんだろう。
 私は王太子の言葉を否定も肯定もせずに、ただ黙っておくことにする。

 妬いてしまいそうなこと。
 どうせカルシスにはバレてるのだろうから。


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