3 / 17
3、
しおりを挟む「隣国からお客様?」
「はい。まだ一ヶ月ほど先の話ですが。お客様と言いますか、隣国の姫様が我が国に留学に来られます」
そう言って王家の家臣。お偉いさんな貴族のオジサンが、頭を下げながら報告してきた。私は今日も今日とて王太子の部屋に来てますよっと。
「二年生の途中から編入ですか?随分と中途半端ですね」
「なんでも自国の学園では物足りないとの事で。色々設備が充実してる我が国の学園の噂をお聞きになったようです」
「なるほど」
確かに、私と王太子も通う貴族向けの王立学園は、なかなかに充実している。教師陣は世界中から選りすぐった人たちで構成されてるし、設備も生徒と教師の希望を存分に聞き入れたものとなっている。専門分野も多岐に渡っている。三年で学びきれないくらいに、色々ある環境だ。
──まあ私だけが学ぶ必要のある、王妃教育授業は無いんだけどね。無いから仕方無しに、休みの日や放課後は毎日王城に来てるのだ。なのに半分以上王太子と一緒に居るってどういうこった。王妃様、ちゃんと教育してくださいよ。
「ふうん……それで?」
お茶を大人しく飲んでる白い王太子がカチャリと丁寧にカップを置いて、家臣に問うた。それにゆっくり頷く家臣の中でも高齢のオジサマ。
「かりにも隣国の姫君ですから、粗相があってはなりませんので。この王城にお住みいただく事になりました」
「え、そうなの?」
ビックリする王太子。同じく私もビックリ。
そりゃまあ各国の来賓とかは王城に寝泊まりしてもらうのが当然だけど。それはあくまで短期間だ。
留学って事は卒業までの一年半、ず~っと、ってことだよね?
「お二人は同学年ですし、姫君が不自由ないよう、不安になられないよう仲良くしていただけたらと思います」
「そういうことか。うん分かった大丈夫だよ、任せて!ね、ディアナ!」
「あ、は、はい……」
例によっていつもの如く、可愛い笑みで答える王太子にホワ~ンとなるオジサマ家臣。
それを複雑に見る私。
この城にお姫様が一年半寝泊まりする。
その事が、思った以上に私の心に重くのしかかるのだった。
* * *
「な~に不安そうにしてんだよ?」
例の如く。
例の如し。
家臣が出て行った直後のその変貌ぶりは、むしろ見事ですね。王家って影の見守りが居るんじゃないの?って前に聞いた事あるんだけど、そんな奴らにはとっくに本性バレてるし、隠す必要はないってことだそうで。
──まあそういうのは置いといて。
「べ、別に不安になんて……」
「不安じゃないなら心配か?」
「え──」
その言葉にギクリとした。
そうか、私……心配なんだ。
「心配なのか?」
「ちょ、ちょっぴり……?」
「なんで疑問形なんだよ」
「いやあ、何と言いますか……うーん……」
「複雑な心境ってか?ふっ、ディアナも成長したなあ」
「なんですかそれ」
「い~や別に?」
ニヤニヤしないでくださいよ。
誤魔化しなんてきかないんだろう。
私は王太子の言葉を否定も肯定もせずに、ただ黙っておくことにする。
妬いてしまいそうなこと。
どうせカルシスにはバレてるのだろうから。
2
あなたにおすすめの小説
イケメン恋人が超絶シスコンだった件
ツキノトモリ
恋愛
学内でも有名なイケメン・ケイジに一目惚れされたアイカ。だが、イケメンはアイカ似の妹を溺愛するシスコンだった。妹の代わりにされてるのではないかと悩んだアイカは別れを告げるが、ケイジは別れるつもりはないらしくーー?!
3回目巻き戻り令嬢ですが、今回はなんだか様子がおかしい
エヌ
恋愛
婚約破棄されて、断罪されて、処刑される。を繰り返して人生3回目。
だけどこの3回目、なんだか様子がおかしい
一部残酷な表現がございますので苦手な方はご注意下さい。
旦那様の愛が重い
おきょう
恋愛
マリーナの旦那様は愛情表現がはげしい。
毎朝毎晩「愛してる」と耳元でささやき、隣にいれば腰を抱き寄せてくる。
他人は大切にされていて羨ましいと言うけれど、マリーナには怖いばかり。
甘いばかりの言葉も、優しい視線も、どうにも嘘くさいと思ってしまう。
本心の分からない人の心を、一体どうやって信じればいいのだろう。
身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)
柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!)
辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。
結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。
正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。
さくっと読んでいただけるかと思います。
下賜されまして ~戦場の餓鬼と呼ばれた軍人との甘い日々~
イシュタル
恋愛
王宮から突然嫁がされた18歳の少女・ソフィアは、冷たい風の吹く屋敷へと降り立つ。迎えたのは、無愛想で人嫌いな騎士爵グラッド・エルグレイム。金貨の袋を渡され「好きにしろ」と言われた彼女は、侍女も使用人もいない屋敷で孤独な生活を始める。
王宮での優雅な日々とは一転、自分の髪を切り、服を整え、料理を学びながら、ソフィアは少しずつ「夫人」としての自立を模索していく。だが、辻馬車での盗難事件や料理の失敗、そして過労による倒れ込みなど、試練は次々と彼女を襲う。
そんな中、無口なグラッドの態度にも少しずつ変化が現れ始める。謝罪とも言えない金貨の袋、静かな気遣い、そして彼女の倒れた姿に見せた焦り。距離のあった二人の間に、わずかな波紋が広がっていく。
これは、王宮の寵姫から孤独な夫人へと変わる少女が、自らの手で居場所を築いていく物語。冷たい屋敷に灯る、静かな希望の光。
⚠️本作はAIとの共同製作です。
【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました
雨宮羽那
恋愛
結婚して5年。リディアは悩んでいた。
夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。
ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。
どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。
そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。
すると、あら不思議。
いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。
「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」
(誰ですかあなた)
◇◇◇◇
※全3話。
※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜
【完結】大好きな彼が妹と結婚する……と思ったら?
江崎美彩
恋愛
誰にでも愛される可愛い妹としっかり者の姉である私。
大好きな従兄弟と人気のカフェに並んでいたら、いつも通り気ままに振る舞う妹の後ろ姿を見ながら彼が「結婚したいと思ってる」って呟いて……
さっくり読める短編です。
異世界もののつもりで書いてますが、あまり異世界感はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる