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しおりを挟む「初めまして、フォリアス王家第二王女のミルザと申します」
あっという間に一ヶ月が過ぎ、やって来た隣国の王女様。
いかにも王女様という風に、栗色の髪をクルクルロールにして、赤を基調とした豪華なドレスをまとっている。
「ミモザ王女、遠路はるばる我が国までよく来られた。これから一年半、ここを我が家と思って気楽に過ごしなさい」
初対面の場でそう王様は言って、歓迎会と称した夜会が開かれた。その夜会の後半、それが今。
人混みに疲れたのでテラスで休憩していたら、下から何やら話し声が。ちなみにここはお城の二階だ。
なんとはなしに下を覗いて……絶句する。
そこにはなぜか、ミルザ王女と……カルシス王太子が居たのだ。
──どういう取り合わせ?いや、お互いに王家なのだから交流あるだろうけど。なぜ主役であるミルザ王女と共にカルシス様が出てくるのだ?
頭が働かなくて疑問符だらけだ。何とはなしに、下から見えないように柱に体を隠しつつ、聞こえてくる会話に意識を集中させる。まあつまるところは盗み聞きですね、はい。
「ふふふ、久しぶりですねえカルシス」
「そうだね、前に会ったのは7歳か8歳くらいだっけ?」
「うふふ、そうですわね。実に10年ぶりですわね、立派になられましたこと」
「ミルザも綺麗になったね」
「うっふふ、ありがとうございます」
うっふふ。
うふふのふ。
なんですかこの会話。
いえね、まあお二人は同じ王家ですから知り合いなのは当然でしょうけど。
なんか体がむず痒くなるのはどうしてでしょうね。
暫く聞いてたけれど当たり障りのない会話。カルシス様は白いキャラのままだから、これ以上盗み聞きするのも良くないな……そう思って去ろうとしたのだけど。
「ねえん、カルシス様ぁん……」
ねっとり。
ね~っとり。
そんな表現が適してるような甘ったるい声に、思わず足を止めてしまった。
「ん?なんだいミモザ」
「先ほどの黒髪の女性、あれがカルシス様の婚約者ですのん?」
「ディアナのことかい?ああそうだよ。夜の闇のように美しい黒髪だろう?」
「ちょっと毒々しいまでの黒さでしたわねえ」
……うん。
その言葉、褒めてませんね。毒入った言葉ですね。
「そうかな?僕は彼女の髪、好きだよ」
その言葉にちょっと嬉しくなる私はチョロい女なのですよ。好きな人に好きだと言ってもらえる。それがたとえ髪だとしても、そりゃ嬉しいに決まってる。
なのにそこに水を差す存在が一人。
「でも~……なんだか私は嫌われてるような気がするんですぅ~」
鬱陶しいくらいに間延びした話し口調の王女がとんでもない事を言ったのだ。
──は?
嫌われてる?
好きでは無いですが嫌いでもないんですけど。そもそも初対面の相手に好き嫌いが出る程、親しくもなってないんですけど?
そう思って聞き耳立ててる私のお耳は、今間違いなくダンボ。ダンボってなんだとか聞かないように。
「嫌われてる?どうして?」
「先ほど会場内でカルシスと話してた時、すっごい睨んでたんですもの~」
「そうなの?ヤキモチかな」
「う~ん……ただお話ししてただけですのに。ちょっと心の狭い方で恐いと思いました~」
そう言って、見えにくかったけど、確かに…ミルザ王女はカルシスの腕に自身のそれを絡ませるのだった。
ぶおっほい!!
え、私睨んだ?いつ?カルシスと話してるのチラッと見はしたけど。え、あれ睨んでると思われたの?やだ、そんな目つき悪かった?
え、ていうか、どうしてそこで腕を絡ませるの?そういうのアリなの?そういうお国柄なの?特殊ですね!──いや絶対違うだろおぉっ!!!!
世界には言霊というものがある。言ったことが真実となる。
今、私は確実に。
ミルザ王女の事が嫌いになりました。
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