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しおりを挟む「カルシス、これとっても美味しいですわ、食べてみてくださいませ!」
「うん、ミルザ、こっちを食べたら後で貰うね」
相も変わらず名前を呼び捨てしあって仲の良いことで。
誰と誰が?
勿論、王太子カルシス様とミルザ王女のことである。
いつものお昼時間、ランチタイム。私とカルシス様は、天気が良ければいつも学園の中庭にシートを敷いてくつろぎながらお弁当をいただく。それが今までの形だった。
だが編入初日から、ミルザ様が乱入してくるようになったのだ。けしてカルシス様が誘ったわけではない。そこ重要。
正直、邪魔だなとは思う。学園生活は気を張る状況が続くのだから、せめて昼くらいは本来のカルシスで在れるように……そう思ったからこそ、学食に行かずに居るというのに。
(これではカルシス様のストレスが大きくなるだけだわ……)
そう思えども、良好な関係を維持してる隣国……の姫君を邪険に扱うわけにもいかず、顔を引きつらせて受け入れるしかないのが現実だ。
チラリと見やると、カルシス様はいつも通りの白いキャラに徹している。ニコニコと当たり障りのない笑みを浮かべてるけれど……本心がどうなってるか考えるとちょっと怖い。
ストレス発散に、剣の稽古が激しくなりそうだ。相手をする騎士を憐れに思って、心の中で合掌。
とりあえず早く食べてミルザ王女と別行動を。そう思って、パクパク食べてる私の耳に、ミルザ王女の甘ったるい声が届く。
「んもう、カルシス様ったらあ!ほら、これですよ~、食べてください♪」
「ミルザ、自分で食べれるから……」
「子供の頃はこうしてたでしょう?気になさらず……はい、あ~ん♪」
あ~んじゃねーわ!語尾に♪付けんな!
思わず私は手に握ったカップを割りそうになる。が、どうにか平静を保ち、カップの命は長らえた。カルシス様の物と同様、頑丈なカップにしておいて良かった。
だが良くない。全然状況は良くない。
いくら幼い頃からの仲であったとしても、婚約者である私の眼前でその行動はどうなのだろう?
怒っていい?殴っていい?ちょっと面貸せと締めてもいい?──良くない?それは残念。
……などという私の心の葛藤を知らぬミルザ王女は、カルシス様の目の前にオカズを突き出したまま制止してる。フォークにブッ刺した物を人様に向けるとか、マナー悪すぎませんかねえ。
知らずジトッと睨みつけてしまったようで、こちらを見たミルザ王女と目が合ってしまった。おっと。
慌てて目を逸らしたけど、見られたかな?
そう思ってると、ミルザ王女が悲鳴を上げた。
「きゃあ!」
「ミルザ?」
「か、カルシス様……!今ディアナ様が凄い顔で私を睨んでました!怖いですぅ!」
否定はしない。睨んだのは否定しない。
だが怖いという、その感情が嘘である事は私には分かっていた。
「そうなの?ディアナ、ミルザを睨んでは駄目だよ?」
「──申し訳ありません」
どうして私が謝らねばならないのか。理不尽だが、身分の差とはそういうものなのだろう。そして睨んだのは事実だから。
だけど。
先ほどミルザ様と視線が合った時、慌てて逸らした私だったが、逸らす直前にしかと見たのだ。
ニヤリと。
勝ち誇った笑みを彼女が浮かべた事を。
そして今、カルシス様の背後で怯えるフリをしながらも、しっかりニヤニヤと隠せぬ笑みを浮かべてる事を。
私は見逃さないのだった。
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