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しおりを挟む「ね、ね、ディーちゃん、ねえ知ってる?カルシスって実は猫舌なのよ!熱いの駄目だからフ~フ~してあげなきゃいけないの!ね、知ってた!?」
この言葉。ただこの言葉を言われただけなんだけど、それだけで『あ、こいつ嫌いだわ~』とか思った私は心が狭いんでしょうかね!?
ちなみに発言者はミルザ王女です。一緒にご飯してる最中に、カルシス様が呼び出されて席を離れた途端これ。何なのこれ。
「知らなかったでしょ?ね、ね、知らなかったんでしょ?だと思った~、カルシスの事はミルが一番知ってるからぁ~。ディーちゃん、カルシスの事で知りたい事あったら何でも聞いてね☆」
最後にオマケの星をつけて、ウィンクまでされました。ウィンクと同時に☆が飛んできた気がするので打ち返してもいいですかね。打ち返してその頭に星をブッ刺したいです。嘘です、冗談。いや99%本気だけどね。
これは所謂マウントというやつだろうか?
カルシス様の婚約者である私に対する牽制?カルシス様の事は自分の方が良く知ってる?いやいや、そんなの子供の頃の話でしょうが。私だって幼馴染その1・2の二人の事なら色々あれこれ知ってるけど、それもやっぱり幼い頃の話だ。今現在の彼らのアレコレにそんな詳しくはない。
それはミルザ様にとってのカルシス様も同じこと。
彼女が知ってるのはあくまで幼い頃の話だ。今の彼のこと、大して知るはずもないというのに……。
「カルシス様は、かつて熱いのが苦手だったそうですが、別に猫舌ではありません。その証拠に、今では熱い方がお好きですよ。真夏だろうと汗ひとつかかずにお茶飲んでるのとか、むしろ感心しますから」
本気で感心するからね。
真夏だろうと熱いスープに熱いお茶が大好き。なんならお風呂も熱々が良いとかで、ちょっと私には理解できない。なんて言おうものならホッペを引っ張られる刑が待ってるので、私も汗ダラダラになりながらお茶付き合ってるけど。
そんなわけで、今のカルシス様の事は私の方が良く知ってますよ。
と、これまた牽制してみるのだが。
「やっだーディーちゃんったら!そんなマウントとろうとして楽しいの~?器ちっさ!ちっさすぎるとカルシスに嫌われちゃうよ~?☆」
牽制にもならずに、肩バシバシ叩いてまた星を飛ばされてしまった。痛いんですけど。その華奢な体のどこにそんな力が?と聞きたくなるくらいの力で叩かれる。いやマウント取りに来たの、そっちが先なんですけど。
というか、その『ディーちゃん』ってのやめてもらえませんかね。非常にイラッときます。
「ミルザ様、その呼び方はちょっと……」
「そんなことより~聞いてよ~!」
お前が私の話聞け。そんな私の心の声は届くことなく、ミルザ王女は話し続ける。
「カルシスったらミルに甘いんだよ~。昨夜もね、眠れないからカルシスの部屋に行ったの」
お前一緒の城住んでるからって調子乗んなよ?年頃の女性が夜中に男性の部屋に侵入って、マジで何やってんの?
私の目が白目になってるのとか剣呑な光を宿してるとか、ちゃんと見ろ。
「子供の頃みたく一緒に寝よ~って言ったらあ、メイドに温かいミルクを用意させたの!これ飲んだらグッスリ眠れるよって部屋まで送ってくれたんだ~。ね、ね、優しいでしょ~?」
夜這いをそんな堂々と言われると、何も言えなくなりますね、はい。
そしてそれはだね。
『ホットミルク飲んで部屋戻ってとっとと寝ろ!ガキが俺の自由時間を邪魔するんじゃねえ、殺すぞ!』
という意味が込められてるんだと思います。
そんな黒カルシス様を知らない、能天気な姫様は。
延々とカルシスはぁ~とか言い続けてるのだった。
早く帰って来てカルシス様。私、右の拳がムズムズするの抑えられそうにないです、はい。
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