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12、
しおりを挟む「はい、カルシス。あ~ん!」
「ミルザ姫、そういうのはちょっと……」
「え~どうして~?昔はよくやってたじゃない!」
「それは幼い頃の話であって……」
「そんなの関係ないわよう!ほらあ、照れない照れない!」
もう私だけではない。
その殺気……カルシス様は、もう隠す気が無くなってきたのか、他の皆も気付き始めている。
表面上はどうにか笑顔を保ってるものの……。
「ねえディアナ、あれヤバくない?」
小声で耳打ちしてくるのはアイラルだ。それに対して「大丈夫だよ」とは流石に答えられないなあ。
どうにか笑みを保とうとして引きつる口元。眉間に青筋。とどめに氷の目。
心に仮面をかぶり、化かし合いをするのが貴族。それらの世界にこれから飛び込もうという上位貴族の子息たちは、既に相手の感情を読み取る訓練を幾年もこなしてきた。
カルシス様は、魑魅魍魎が住まう王城で仮面を上手くかぶり続けてきたのだけれど……その仮面が剥がれそう。というか、目の肥えた皆の目には既に王太子が怒り心頭なのが見て取れた。
のだが。
カルシス同様、化かし合いの本場である王家に生まれたはずのミルザ王女。
「うっふふ~、カルシスったらあ、そんな緊張しなくていいのよ~?いくら私が可愛いからって照れすぎー!」
いっちばんカルシス様の心情を理解出来てないってどういうこと!?それでよく今まで王家で生き残れましたね!
「ミルザ……いい加減にしてよ。僕にはディアナという婚約者が居るんだから。このようなこと、他の女性と出来るわけがないでしょ?」
「えーカルシスお堅~い!あ、もしかしてディーちゃんが恐いの?いやだカルシス、そんなんじゃ尻に敷かれちゃうわよ!男はもっと強くならなきゃ!ディーちゃんに遠慮する必要なんてないんだから、ほらあ!」
やめてえぇ~!ミルザ王女、自分の為にもうやめて!明日の朝日が見たいなら、ホントやめて。あとディーちゃん呼びもやめろ。
多分カルシス様はミルザ王女を殴る一歩手前。右手がワキワキしてるの、多分私以外も気付いてる。やらかしそうになったら止めるぞ、ってポルスとか他の令息達が目で会話してるし!
まさに一触即発の状況。
だがそこはカルシス様。これまで培ってきた仮面はギリギリのところで保たれるのだった。
「ミルザ、本当にいい加減にしようね?淑女として人前でこのような事をするのは、恥ずかしいよ?」
その言葉には流石に何かしら響いたのか、ようやくミルザ王女はその手を下ろした。
「え~?まあ人前で恥ずかしいって言うのなら仕方ないけど~」
いや違うし。カルシス様が言ってることを微妙に歪めて受け取ってるよね、それ。
捉えからはともかくとして、いちゃつこうとするのを止めた事でどうにか悪い空気が収まりそうになったのだが。
そこで終わるミルザ王女ではない事をすぐに痛感する。
「じゃあ~、ミルザが淹れたお茶を飲んでくれたら我慢する!」
まだピンチは終わりではなかった。
脳裏に浮かぶ、先日ミルザ王女が怪しい商人から受け取った液体。
あれが瞬時に思い出されるのだった……。
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