婚約者の本性を知るのは私だけ。みんな騙されないで〜!

リオール

文字の大きさ
11 / 17

11、

しおりを挟む
 
 
 学園が休みの本日は、我が公爵家主催のお茶会である。参加者は皆、同じ学園に通っているので、見慣れた面々の集まりとなる。
 こういうのは正直面倒ではあるけれど、貴族の子供として生まれた以上、卒業後は皆それなりの道を歩む。今からパイプを作るのは必要で、こういう場は重要なのだ。学園内では学業に忙しくて、なかなか込み入った話などをする間もないから。

「ディアナ様、このクリーム菓子、とても美味しいですわ」
「それはシェフが新たに考案したものなのですが、お口に合い良かったです」

 別にお堅い決まりがあるわけでもないけれど、自然と男女に分かれる。そして女子はこうやってお茶とお菓子を囲ってキャイキャイやるものだ。特に我が家が主催の場合、私自身が堅苦しいのが嫌いだから、マナーはあまり重視してない。

「聞いてくださいよ~、お兄様ったら私に向かって『太ったな』とか言うんですよ~」
「あらあら、レディに対して失礼ですわね」
「だからあの人、もてないんです!未だに婚約者も決まらないんだから……」
「婚約者と言えば、フィフィ様は卒業後は隣国に嫁がれるんですよね?」
「そうなんです。正直不安なんですけど、彼のお仕事でどうしても……。でも彼さえ居れば大丈夫な気がします」
「愛ですわね、愛ですわね!」
「きゃ~羨ましいですわ~!」

 ……完全な女子会である。
 まあ女子が集まれば、恋バナに発展するのは当然というもの。これは当然の流れなのである。男子諸君はちょっと離れたところで雑談してるから、みんな気にせず楽しくトーク、

 そんないつもの流れで。
 けれどいつもの流れを変える存在。

「あ……」

 誰かが声を上げ、知らず皆で声の主が見つめる先を見やった。

 その先には──気軽なお茶会に、真っ赤なド派手ドレスを着た存在が立って居た。

 流れを変える存在、ミルザ王女様だ。

 今日のお茶会は、公爵家と侯爵家のみの集いなのだが、当然王太子とミルザ王女も招待してるのだ。

 王太子は、後々自身の側近となる者達と談笑してたと思ったのだけど……見れば、そんな王太子にしな垂れかかる存在が一人。それがミルザ王女だった。

「な、何ですのあれ」

 誰かが信じられない物を見るような目をしながら言う。

「いくら同じ王家として顔見知りとはいえ、あのように殿方の体に簡単に触れるなんて……」
「それもカルシス王太子様ですよ?ディアナ様の婚約者であらせられますのに!」
「信じられませんわ!」
「ディアナ様、流石に文句を言っても良いかと思います!」

 信じられない!呆れた!
 皆がそう言って憤ってくれる。私はそれが嬉しい。

 のでニコニコしてたら、親友で幼馴染その2のアイラルにポカリと頭を叩かれてしまった。

「なにニヤニヤしてるのよ、気持ち悪い」

 ニコニコとニヤニヤでは随分印象変わるよね!?酷くない!?

「みんなが私の為に怒ってくれてるから、嬉しくて『ニコニコ』してたのよ!」

 文句を言ってもシレッとしてる。おのれ~と睨んでもどこ吹く風だ。アイラルとはいつもこんなノリだから、誰も気にしないけどね。

「そんなことより」

 私の頭を殴る事とか気持ち悪いとか言われた事は『そんなこと』ではないと思うのだけど。まあいいか、今はそんなことより重要な事があるのだ。

「みんなも言ったけど、あれ、本当に放っておいていいの?」

 あれ。
 そう言って指さされた先。
 強引にミルザ様に引っ張られてテーブルにつき、フォークにブッ刺したケーキを『あ~ん』されてる王太子。
 そんな状態の、あれ。

 隣国と揉めるのはまずいと、必死に温和に対応してる王太子だけど。

 うん。
 まあ。
 そうだね。

 そろそろその目の奥に潜む殺気に対して、どうにかせんとイカンかなと思います。

 ──皆はその殺気に気付かず、別の意味で言ってると思うんだけど。

 さてどうしたものかな。
 私は思案に暮れるのだった。


しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

イケメン恋人が超絶シスコンだった件

ツキノトモリ
恋愛
学内でも有名なイケメン・ケイジに一目惚れされたアイカ。だが、イケメンはアイカ似の妹を溺愛するシスコンだった。妹の代わりにされてるのではないかと悩んだアイカは別れを告げるが、ケイジは別れるつもりはないらしくーー?!

3回目巻き戻り令嬢ですが、今回はなんだか様子がおかしい

エヌ
恋愛
婚約破棄されて、断罪されて、処刑される。を繰り返して人生3回目。 だけどこの3回目、なんだか様子がおかしい 一部残酷な表現がございますので苦手な方はご注意下さい。

身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)

柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!) 辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。 結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。 正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。 さくっと読んでいただけるかと思います。

下賜されまして ~戦場の餓鬼と呼ばれた軍人との甘い日々~

イシュタル
恋愛
王宮から突然嫁がされた18歳の少女・ソフィアは、冷たい風の吹く屋敷へと降り立つ。迎えたのは、無愛想で人嫌いな騎士爵グラッド・エルグレイム。金貨の袋を渡され「好きにしろ」と言われた彼女は、侍女も使用人もいない屋敷で孤独な生活を始める。 王宮での優雅な日々とは一転、自分の髪を切り、服を整え、料理を学びながら、ソフィアは少しずつ「夫人」としての自立を模索していく。だが、辻馬車での盗難事件や料理の失敗、そして過労による倒れ込みなど、試練は次々と彼女を襲う。 そんな中、無口なグラッドの態度にも少しずつ変化が現れ始める。謝罪とも言えない金貨の袋、静かな気遣い、そして彼女の倒れた姿に見せた焦り。距離のあった二人の間に、わずかな波紋が広がっていく。 これは、王宮の寵姫から孤独な夫人へと変わる少女が、自らの手で居場所を築いていく物語。冷たい屋敷に灯る、静かな希望の光。 ⚠️本作はAIとの共同製作です。

【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました

雨宮羽那
恋愛
 結婚して5年。リディアは悩んでいた。  夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。  ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。  どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。  そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。  すると、あら不思議。  いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。 「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」 (誰ですかあなた) ◇◇◇◇ ※全3話。 ※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜

【完結】大好きな彼が妹と結婚する……と思ったら?

江崎美彩
恋愛
誰にでも愛される可愛い妹としっかり者の姉である私。 大好きな従兄弟と人気のカフェに並んでいたら、いつも通り気ままに振る舞う妹の後ろ姿を見ながら彼が「結婚したいと思ってる」って呟いて…… さっくり読める短編です。 異世界もののつもりで書いてますが、あまり異世界感はありません。

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

うっかり結婚を承諾したら……。

翠月るるな
恋愛
「結婚しようよ」 なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。 相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。 白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。 実際は思った感じではなくて──?

処理中です...