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しおりを挟む学園が休みの本日は、我が公爵家主催のお茶会である。参加者は皆、同じ学園に通っているので、見慣れた面々の集まりとなる。
こういうのは正直面倒ではあるけれど、貴族の子供として生まれた以上、卒業後は皆それなりの道を歩む。今からパイプを作るのは必要で、こういう場は重要なのだ。学園内では学業に忙しくて、なかなか込み入った話などをする間もないから。
「ディアナ様、このクリーム菓子、とても美味しいですわ」
「それはシェフが新たに考案したものなのですが、お口に合い良かったです」
別にお堅い決まりがあるわけでもないけれど、自然と男女に分かれる。そして女子はこうやってお茶とお菓子を囲ってキャイキャイやるものだ。特に我が家が主催の場合、私自身が堅苦しいのが嫌いだから、マナーはあまり重視してない。
「聞いてくださいよ~、お兄様ったら私に向かって『太ったな』とか言うんですよ~」
「あらあら、レディに対して失礼ですわね」
「だからあの人、もてないんです!未だに婚約者も決まらないんだから……」
「婚約者と言えば、フィフィ様は卒業後は隣国に嫁がれるんですよね?」
「そうなんです。正直不安なんですけど、彼のお仕事でどうしても……。でも彼さえ居れば大丈夫な気がします」
「愛ですわね、愛ですわね!」
「きゃ~羨ましいですわ~!」
……完全な女子会である。
まあ女子が集まれば、恋バナに発展するのは当然というもの。これは当然の流れなのである。男子諸君はちょっと離れたところで雑談してるから、みんな気にせず楽しくトーク、
そんないつもの流れで。
けれどいつもの流れを変える存在。
「あ……」
誰かが声を上げ、知らず皆で声の主が見つめる先を見やった。
その先には──気軽なお茶会に、真っ赤なド派手ドレスを着た存在が立って居た。
流れを変える存在、ミルザ王女様だ。
今日のお茶会は、公爵家と侯爵家のみの集いなのだが、当然王太子とミルザ王女も招待してるのだ。
王太子は、後々自身の側近となる者達と談笑してたと思ったのだけど……見れば、そんな王太子にしな垂れかかる存在が一人。それがミルザ王女だった。
「な、何ですのあれ」
誰かが信じられない物を見るような目をしながら言う。
「いくら同じ王家として顔見知りとはいえ、あのように殿方の体に簡単に触れるなんて……」
「それもカルシス王太子様ですよ?ディアナ様の婚約者であらせられますのに!」
「信じられませんわ!」
「ディアナ様、流石に文句を言っても良いかと思います!」
信じられない!呆れた!
皆がそう言って憤ってくれる。私はそれが嬉しい。
のでニコニコしてたら、親友で幼馴染その2のアイラルにポカリと頭を叩かれてしまった。
「なにニヤニヤしてるのよ、気持ち悪い」
ニコニコとニヤニヤでは随分印象変わるよね!?酷くない!?
「みんなが私の為に怒ってくれてるから、嬉しくて『ニコニコ』してたのよ!」
文句を言ってもシレッとしてる。おのれ~と睨んでもどこ吹く風だ。アイラルとはいつもこんなノリだから、誰も気にしないけどね。
「そんなことより」
私の頭を殴る事とか気持ち悪いとか言われた事は『そんなこと』ではないと思うのだけど。まあいいか、今はそんなことより重要な事があるのだ。
「みんなも言ったけど、あれ、本当に放っておいていいの?」
あれ。
そう言って指さされた先。
強引にミルザ様に引っ張られてテーブルにつき、フォークにブッ刺したケーキを『あ~ん』されてる王太子。
そんな状態の、あれ。
隣国と揉めるのはまずいと、必死に温和に対応してる王太子だけど。
うん。
まあ。
そうだね。
そろそろその目の奥に潜む殺気に対して、どうにかせんとイカンかなと思います。
──皆はその殺気に気付かず、別の意味で言ってると思うんだけど。
さてどうしたものかな。
私は思案に暮れるのだった。
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