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しおりを挟む「すみませんでした」
「いや~あれから大変だったよ」
ニコニコニコニコ。
不気味なまでに笑顔のカルシス様の前で、項垂れる私。これ、床に額をつけて土下座すべきじゃね?
それくらいに笑顔のカルシス様は恐かった。
今、私は王子の執務室に居る。貴族の重鎮達にアイラルやポルスも同席中。俺様カルシス様と二人きりじゃないだけマシか。
目を覚ました瞬間、なぜここに居るのか分からなかった。あれ、私、自分の屋敷でお茶会してたよね?どうして王城に居るわけ?
と思って目が点になってたら、「一応体に問題無いか、王室お抱えの医師に検査させるために連れて来た」と言われました。さいで。
「ミルザを押し倒したんだよ」
「はあ……」
「引きはがそうとしても、凄い力でなかなか離れなくてね」
「えええ……」
「キスしようとしてたんだよ?──それはどうにか未遂に終わらせたけどね」
「ひい!」
恐ろしくて悲鳴が出たわ!
いや、ミルザ王女にした事に対して出た悲鳴でもあるが、それ以上に冷気吹きすさぶカルシス様の笑みが恐くてね!
今更可愛い系王子の仮面を被る必要も無いだろうが、かと言って本気の本性を出すのも憚れると思ったのか、微妙なキャラのカルシス様。それが妙に恐い。
「ミルザ王女の事が好きで好きで仕方ないんだよね?」
「いえ、むしろ嫌……うえっほん」
「お嫁さんにしたいんだって?」
「いや、私も女ですから嫁にするのはどうかと……」
「二人だけの世界に行って、イチャイチャしたいとも言ってたね」
「私はあまりイチャコラするのは好きでは無いです」
「──ミルザ王女さえ居れば、他に何も要らないの?」
「それより甘いお菓子さえあればハッピーかな」
圧が恐い圧が恐い、カルシス様の圧が恐いよ!もう何答えてんのか自分でも分からん!「そうじゃないでしょ」ってアイラルのツッコミが聞こえるけど、どう答えていいか分かんないんだもの!
ミルザ王女が何かを入れたお茶を飲んでから後──ほとんど記憶が無いのよね。なんか熱かったなあってのは覚えてるのだけど。何したのかサッパリ。気付けばこの部屋のソファに横になってた。
で、目を覚ましたらなぜか王子による公開処刑が始まったと。
怒りでこめかみがピクピクしてる王子に、私はビクビクしている。そんな私にアイラル達が説明してくれた。
「──惚れ薬?」
「そう、惚れ薬」
「ミルザ様だけを好きになる薬?」
「そう。それをカルシス様に飲ませて、皆の前でイチャイチャしながら宣言させるつもりだったみたい」
「何を?」
「ディアナと婚約破棄して、ミルザ王女と結婚すると」
「わお」
「わおではない」
「……はい、すみません」
アイラルの説明に驚いたらカルシス様がジロッと睨んできて怒られた。いやホント、ごめんなさい。
そして冒頭に戻ると。
「ミルザ王女はどうなったんですか?」
私は王家家臣であるオジサンズを見て問うた。
毒では無かった。だが一国の王子に薬を盛ろうとしたのは事実だ。下手すりゃ大問題だ。
だがやった事は許されないが、全てはカルシス様が好き過ぎてやったこと。これで隣国は、しばらくは我が国に強く出れないだろう……とは政治的観点。
「ミルザ王女は、三年生になると同時に帰国する事になりました」
「あ、直ぐにじゃないんですね」
「本来なら直ぐに帰国させるところなんですが……隣国が謝罪として色々好条件な話をしてきましてな。ならばこちらも事を大きくする必要もないと、国王がおっしゃいまして。あと少しだけ……キリのよいところまでは滞在を許可しました」
ただし、もうこの王城に住まわせる事はしない、とのことで。
隣国の大使が住まう屋敷へと移る事となった。最初からそこに住まわせてれば良かったんじゃないの?
なるほどなるほど。大人の事情が色々飛び交ったわけですね。
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