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しおりを挟む熱い、体がとてつもなく熱い、まるで自分自身が燃えてるようだ。
「ディアナ!くそ、やはり毒か!?」
カルシス様の聞いた事無いような焦った声。ヒッと小さな悲鳴が聞こえたので、きっとミルザ王女を睨みつけてるのだろう。そこまでは理解出来るのだが、そちらへ目をやる余裕は無い。
「ちょっとディアナ、しっかり!そうだ、解毒薬……毒を使用するならば、対となる解毒薬もまたあるはず!」
私の背中をさすりながら、アイラルが叫ぶのが聞こえた。たまに酷いこと言う子だけど、本当は私のことちゃんと思いやってくれてるんだよね。
「ディアナ、しっかりしなさい!あんた馬鹿なんだから毒の周りに鈍感なはずでしょ!?もっと毒の回りを遅らせなさい!違うか、馬鹿だから即効性無かったのか!」
──うん、たまにじゃないわ、いつもだわ。
「ミルザ!解毒薬はどこだ!?さっさと言え!!」
「うえええ!?か、カルシス!?貴方そんなキャラじゃないでしょ!?いつものポワンとして可愛い系の貴方はどこへ行ったの!?」
「んなこと今関係あるかー!!!!」
「きゃーっ!?」
外交問題!外交問題ぃー!
やばいくらいに本性出てるカルシス様は、勢いのままにミルザ王女の胸倉掴んでる!熱くて苦しいけれどそれがチラリと見えて、ヤバイと思うのだけど。
……声が、出ない。
不意にグニャリと視界が歪んだ。あ、これマジでヤバイやつかな?
皆が焦ってミルザ王女を睨みつける気配がした。
それに対して流石に不利な状況を感じたのか……ミルザ王女が半泣きの声を出す。
「げ、解毒薬なんて無いわよう……」
「無い!?そんなわけあるか!どんな毒でも製造される時、必ず一緒に解毒薬が開発されるものだ!今持ってないというのなら、毒の種類を話せ!」
「だから毒じゃないって言ってるでしょ!?」
半泣き状態になってるのにカルシス様に責められたミルザ王女は、ついには逆切れだ。
「何度も言ってるけど毒じゃないわよ!どうして私が大好きなカルシス殺さなきゃいけないのよ!?」
「我が国とお前の国とでは影では色々あることくらい、王族のお前だって知ってるだろうが!建前上は友好的だが、いつ何をしてくるか分からないと警戒してたんだ!」
「だからってカルシスを殺すなんてことしないわよ!!!!」
そもそも毒を盛るのに、こんな大勢いる場所でやらないわ!
最後にミルザ王女はそう叫んだ。それには説得力がある、と思う。
「では何だ!何を入れたのだ!?」
更に問い詰めるカルシス様に対し、けれど王女は口ごもる。「そ、それは……」と言って、ハッキリ言おうとしない。
「く……」
「ディアナ!?」
あ~熱い、ものすごく体が熱い。頭がボ~ッとしてきた。
だが、不意に体が軽くなるのを感じる。熱いし頭も重たいのに……なのに、なんでだろう。
「……ちょっとディアナ、動かない方が……」
突如無言で立ち上がる私に、アイラルが慌てる。私を制止しようとする彼女を無視して、私はカルシス様達の方へと顔を向けた。
体が熱い。頬も……全てが……熱い。
カルシス様とミルザ王女が、驚いた顔で私を見つめている。その瞬間、ドクンとまた心臓が跳ねた。
二人は私を見ているけれど……私は二人揃ってを見ることはしない。
私が見つめる先は、ただ一人。
たった一人……。
「あ、まずい」
そう呟いた人物。その人物が後ずさろうとした瞬間!私は駆けた!
「ディアナ!?」
誰かが私の名を呼ぶけれど、それに答える余裕は無かった。
早く、早く……
貴女の元へ──!!!!
「ミルザ様あぁぁぁ!!!!」
「んきゃああああ!?!?!?」
ガバチョ!!
そんな効果音の元に私はミルザ王女に抱きつき!
──押し倒したあ!!!!!
「きゃああああ!?ちょっと退きなさいよ、馬鹿ぁ!!」
「馬鹿でも何でもいいです!どうしてか分かりませんが、貴女が愛しくて仕方ありません!んああああ、か~わいぃ~~~~!!!!」
「ぎゃああ!頬ずりするな、手をニギニギするな、抱きしめるなああああ!!!!!」
阿鼻叫喚。
地獄絵図とはこの事か。
私達を遠巻きに見つめる全員が、呆然としながら固まっていた。助けてと叫ぶミルザ王女を助ける者は──居ない。
ややあって、どうにか体を動かしたカルシス様が近づく気配がした。
「ミルザ……何となく分かったが、入れた物ってもしかして……」
「もしかしなくても惚れ薬よ!私の事を好きになる薬よおぉぉぉ!!数時間で効力切れるけど……ひぃ~助けてえぇぇ~~~~~!!!!」
ミルザ王女の叫びがその場に響いて──消えた。
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