1 / 4
1、
しおりを挟む「リンカ!お前は自分を聖女だと偽って国全体を騙していたな!詐欺は大罪だ、よってお前を国外追放する!!」
「そんな……!アーサー様、私はこれまで頑張って来ました!なのに国外追放なんて……」
「うるさい黙れ!本物の聖女はここにいるアシェリーだ!聖女としての証、聖印が確かに彼女の背中にはある、私は見た!だがリンカ、お前は?お前に聖印はあるのか!?」
「そ、それはありませんが……ですがこれまで私は国の為に……!」
「国の為になんだ、聖女ではないということは、お前の力は偽物だということだ!これまでの功績も全て偶然による偽物なのではないか!?」
「そんな……」
「皆の者、今の私の話を聞いたな!?リンカは何一つ自身が聖女であることを証明できない!だがここにいる公爵令嬢アシェリーには聖印という、明らかに証明できるものがあるのだ!リンカは偽物、本物の聖女はアシェリーだ!よって私の婚約者はアシェリーとなる。文句はないな!?」
王太子の発言に否やがあろうか。王太子と公爵令嬢という文句なしの関係に、夜会に集まった貴族たちはワッと歓声を上げる。
対して平民出身の、今や偽聖女というレッテルが貼られた私に向けられる視線は……非常に冷たい。そこに置かれた飲み物用の氷より冷たいんじゃなかろうか。
「この偽者が!よくも騙したな!」
「私の娘の病気が治ったのも偶然だったのね!寄付金を返して!」
「枯れた大地が復活したのも偶然だったんだな!この詐欺師め!」
「聖女を語り国を騙すなど、なんと恐ろしい女か!追放など生温い、処刑しろ!」
好き放題言ってくれる。元が平民の私の味方になる者などいるはずもなく、罵倒され続けていたら不意に腕を掴まれた。王城の衛兵だ。
「連れて行け」
王太子であるアーサー様は冷たく命令を下し、衛兵はそれに黙って従う。弁明する機会すらもなく……私は地下牢へと連れられたのだった。
ピチョン
「ひあおえあうっ!?」
連れられた地下牢はジメジメとして汚く、空気も悪い。天井から落ちてきた水滴が首に落ちてきて、変な悲鳴が出たわ。
「うるさいぞ、黙れ!」
牢番がガンッと強く牢の扉を叩く。そのまま立ち去る足音が聞こえた。それが聞こえなくなったところで、私は深く溜め息をつき、据え置かれたカビ臭い寝台に座り込むのだった。
聖女として国の為に働いて五年。12歳の時に神託があったとのことで教会が私を迎えにきてから、だ。その間に私は聖女として国の為、人々の為にあくせく働いた。
癒しを求めて来る人達を治療し、飢饉に苦しむ土地へ向かっては土地を潤した。
それら全ては聖女の力……ではないんだけどね!
そうだよ、私本当に聖女じゃないんですよ!
神託が下ったってのは、まああれだ、教会の勘違いだ。『なんか目覚めちゃったかも!』と言って癒しの力とか村で行使してたら、噂が広がって……背びれに尾ひれ手びれも付いて……結果、神託が下ったとまで話が膨らんじゃったわけだね。
言ってないよ私、神託が下りましたなんて。
言ってないよ私、聖女でーすなんて。一度も。なんか聖女と言われてまーす、とは言ったことあるけどさ。
でもなんで癒しの力に目覚めたんだろうと不思議に思った事もある。だがまあ人生なんてそんなものだ。あれだよあれ、死にそうになるととんでもない力に目覚めるってやつ。火事場の馬鹿力?
当時村は雨が降らなくて作物が取れず飢えに苦しんでいた。そこへもって病が流行しちゃってさ。私の親も瀕死。私も飢えで瀕死。あ、これ死ぬやつ、とか思ってた。
そしたら目覚めたんだ。
軽いとか思わないでよ。能力が目覚める時なんてこんなもんだよ。そんなもんなんだよ!
たまたまこの国では珍しい癒しの力に目覚めただけなんだよ!
ちょっと肥沃の力に目覚めただけなんだよ!
だからもう一度言おう、私は自分を聖女だなんて言ってない。一度も言ってない。
なのに教会も王家も貴族も、みんなして私を聖女だと決めつけて。
でもって聖女ならばと王太子と婚約させて。
私の人生好き勝手決めてくれたところで……この仕打ちですよ!
ふざけんな!と怒ってもいい案件だと思います。
118
あなたにおすすめの小説
私の妹は確かに聖女ですけど、私は女神本人ですわよ?
みおな
ファンタジー
私の妹は、聖女と呼ばれている。
妖精たちから魔法を授けられた者たちと違い、女神から魔法を授けられた者、それが聖女だ。
聖女は一世代にひとりしか現れない。
だから、私の婚約者である第二王子は声高らかに宣言する。
「ここに、ユースティティアとの婚約を破棄し、聖女フロラリアとの婚約を宣言する!」
あらあら。私はかまいませんけど、私が何者かご存知なのかしら?
それに妹フロラリアはシスコンですわよ?
この国、滅びないとよろしいわね?
召喚聖女が来たのでお前は用済みだと追放されましたが、今更帰って来いと言われても無理ですから
神崎 ルナ
恋愛
アイリーンは聖女のお役目を10年以上してきた。
だが、今回とても強い力を持った聖女を異世界から召喚できた、ということでアイリーンは婚約破棄され、さらに冤罪を着せられ、国外追放されてしまう。
その後、異世界から召喚された聖女は能力は高いがさぼり癖がひどく、これならばアイリーンの方が何倍もマシ、と迎えが来るが既にアイリーンは新しい生活を手に入れていた。
聖女の力に目覚めた私の、八年越しのただいま
藤 ゆみ子
恋愛
ある日、聖女の力に目覚めたローズは、勇者パーティーの一員として魔王討伐に行くことが決まる。
婚約者のエリオットからお守りにとペンダントを貰い、待っているからと言われるが、出発の前日に婚約を破棄するという書簡が届く。
エリオットへの想いに蓋をして魔王討伐へ行くが、ペンダントには秘密があった。
【短編】追放された聖女は王都でちゃっかり暮らしてる「新聖女が王子の子を身ごもった?」結界を守るために元聖女たちが立ち上がる
みねバイヤーン
恋愛
「ジョセフィーヌ、聖なる力を失い、新聖女コレットの力を奪おうとした罪で、そなたを辺境の修道院に追放いたす」謁見の間にルーカス第三王子の声が朗々と響き渡る。
「異議あり!」ジョセフィーヌは間髪を入れず意義を唱え、証言を述べる。
「証言一、とある元聖女マデリーン。殿下は十代の聖女しか興味がない。証言二、とある元聖女ノエミ。殿下は背が高く、ほっそりしてるのに出るとこ出てるのが好き。証言三、とある元聖女オードリー。殿下は、手は出さない、見てるだけ」
「ええーい、やめーい。不敬罪で追放」
追放された元聖女ジョセフィーヌはさっさと王都に戻って、魚屋で働いてる。そんな中、聖女コレットがルーカス殿下の子を身ごもったという噂が。王国の結界を守るため、元聖女たちは立ち上がった。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
感情の無い聖女様は、公爵への生贄にされてしまいました
九条 雛
恋愛
「――私など、ただの〝祈り人形〟でございます。人形に感情はありませぬ……」
悪逆非道の公爵の元へと生贄として捧げられてしまった聖女は、格子の付いた窓を見上げてそう呟く。
公爵は嗜虐に満ちた笑みを浮かべ言い放つ。
「これからは、三食きちんと食べてもらおう。こうして俺のモノとなったからには、今までのような生活を送れるとは思わぬことだな」
――これは、不幸な境遇で心を閉ざしてしまった少女と、その笑顔を取り戻そうとする男の物語。
聖女は神の力を借りて病を治しますので、神の教えに背いた病でいまさら泣きついてきても、私は知りませんから!
甘い秋空
恋愛
神の教えに背いた病が広まり始めている中、私は聖女から外され、婚約も破棄されました。
唯一の理解者である王妃の指示によって、幽閉生活に入りましたが、そこには……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる