屑な夫と妹に殺された私は異世界転生して復讐する

リオール

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5、思い出される嫌な記憶

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「お帰り~フィアラ」
「ただいま、ランディ」

 何かに引っ張られるような感覚と共に、私は現世へと戻って来た。侯爵令嬢フィアラットの体へと。

「なかなか凄いことしてきたね」

 ちょっと引きつるランディに笑って誤魔化しておく。

「う~ん、私も驚いた。あんな酷い事を出来ちゃうんだなあって」
「フィアラは怒らせないようにしないとこれから恐いな……」
「やだなあ、ランディはあんな屑達とは違うし!あんなことしないよ!」

 笑ってバシバシとその肩を叩く。いたた……と苦笑するランディを見ながら、ちょっと自己嫌悪。

 どうも前世の世界へ行くと、一気に前世の自分の恨みが爆発するようで。自制が効かなくなる。

「気を付けないと……」

 あっさり苦しみを終わらせるなんてしない。
 なんてことを思ってると知ったら、ランディはまた顔を引きつらせるだろう。なので言わないで思うだけにしておいた。

 あまり頻繁に前世に行くのは良くないとのことで。

 今日はこれにてお開きとなった。

「ありがとね、ランディ。それじゃあまた明日」
「ああ学園で」

 手を振るランディに私も馬車の中から振り返して。
 屋敷へと帰途に就くのだった。




※ ※ ※




「あーくっそ!また負けたあ!」

 バンッと荒々しい音を立てて帰って来たのは明彦だ。

 ヂャラッと音を立てて車のキーを投げつける。──もちろん私に向かってだ。

 軽い痛みを感じた頭を撫でて、私は無言でその鍵を拾った。

「……また、パチンコ?」

 明彦が働かなくなって久しい。
 昼近くまで寝てからパチンコ、夜は郁美と過ごす……これが明彦の基本の一日となっている。

 私は正社員としての仕事を探していたのだけれど。そうなると俺の昼飯はどうなるんだ!と明彦に殴られてから、仕方なくバイトの掛け持ちに切り替えたのだ。

 午前の仕事を終えて帰宅し明彦の昼食を作る。
 そしてこれからまた仕事だ。
 通勤に車は使えない。明彦が使うから。私は自転車で行かなくてはいけないのだが、なにせ田舎。

 往復の時間を考えると、昼食を食べてる時間も無かった。

「んだよ、なんか文句あんのか!?」

 怒鳴られると体が震えて強張る。

 いつからこうなったのか。
 最初は殴られて。
 今は怒鳴られるだけで、何も言えなくなってしまった。

 不機嫌な明彦はいつ爆発してもおかしくない。
 私は慌てて仕事に出ようと自転車の鍵を持った。

「わ、たし……仕事、行ってくる、ね……」

 ボソボソと小声で言って。
 慌てて玄関に向かおうとしたら。

「おい、ちょっと待て!」

 腕を掴まれて阻まれてしまった。
 ビクリと体が震える。

「な、なに?」
「ちょっとうずくんだよ。相手しろ」
「ひ──い、嫌だよ、これから仕事で……」
「うっせえ、口答えすんな!」

 怒鳴られるのと同時、口の中に広がる血の味。
 また顔を殴られたのだ。
 口の中を切るくらいに強く殴られた私は、また体が動かなくなる。

 そんな私に圧し掛かって来た明彦は。

 もう抵抗する事も諦めてしまった、動かぬ私を相手に、己の欲望をぶちまけるのだった──




※ ※ ※




 目を覚ます。
 そこは見慣れた天井で。

 広い室内、寝心地のいいベッド。

 私は確かにフィアラット=ゼルス=ノルディアス侯爵令嬢だった。

 けれど今見た夢のせいで、私の頬は涙でびしょ濡れになっていたのだ。

 どうして?ランディの魔法は今はかかってないはずなのに。
 普通に眠っていたはずなのに。

 なのに夢を見た。
 いや、あれは確かに前世の記憶だ。

 魔法はあくまでキッカケでしか無かったのだろうか……?

 そうなのかもしれない。

 私は静かに体を起こし。
 震える体をギュッと抱きしめた。

「許せない……」

 暗闇の中、一人呟く。

「許さない」

 ハッキリと、口にして。

 私はまた復讐を決意する。




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