10 / 74
9、悪役令嬢とヒロインのバトル開始ですよ
しおりを挟むひとしきり笑ったゾルゼンスは、満足げな顔でテリス王子の方を向いた。
「ま、両成敗ってとこなんじゃない?」
「どこが!」
だからそんなに怒るなと言いたげなゾルゼンスに、けれどテリスは全く納得してないようだ。
「どこが両成敗だ!聖女には何も落ち度無いだろ!」
え、無いの?あの行動に落ち度ないの?
見てたよね、今の映像。それで尚そんなこと言えるの凄いわ。
ぶりっ子ヒロイン贔屓もここまでくると笑えるわ。笑わないけど。
「嫌がる相手、それも不特定多数の殿方とベタベタするのは聖女候補どころか女性としてどうかと思いますけど」
「仕方ないだろう!ミサキがそれだけ魅力的なんだから!」
あははははははは
乾いた笑い出るわあ。
駄目だこの人この王子。
別にぶりっ子ヒロインが魅了魔法使ってるとかでは無いんだけどなあ。よくこんな盲目なまでにぶりっ子絶対正義説を口に出来るな。
「……てやる」
「は?」
「父上と母上にチクってやる!兄上は魔女に騙されてるって!王室に相応しいのは聖女たるミサキだって言ってやる!!」
「子供ですか」
ビシッと指差しながら言う内容が、何ともお粗末。ちっぽけな様に呆れるわ。
「ううう煩い煩い煩い!いい気になってられるのも今のうちだ、覚悟しりょよ!」
「噛んでますよ」
覚悟しりょ……プ~、可愛いでしゅね、それ!
言ってやったら最後は涙目になりながら王子退場。何なんだあれは。
「とんだ馬鹿王子が居たもんだな」
「ホントですねえ」
激しく同意ですよ。
そんな事があった数日後。
ここんとこぶりっ子が随分大人しいなあとか思ってたら。
「ちょっとツラ貸しなさいよ」
ツラ貸せときたもんだ。ぶりっ子どこいった。私しか居ないから素を出すってか、そうですかそうですか。
場所は学園校舎裏の人気が無い場所。こんなとこ何で知ってんの。
「わたくし忙しいんですけど。何のご用ですの?」
聞いたらギロッと睨んできた。なんですのん。
「あんた……転生者でしょ?」
「は?」
予想外な問いに間抜けな返事をしてしまったわ。
ポカンとしてると、ガッと胸倉掴まれた。
「とぼけんじゃないわよ!あんたの言動おかしすぎ!どう考えても元日本人、転生者でしょ!」
お~、やっと気付いたかあ。別に隠すつもりは無かったので結構わかりやすかったと思うんだけど。時間かかったなあ。
「あら何のことでしょ?わたくしは只の悪役令嬢ですわよ」
「やっぱり!」
ケケケ、今頃気付くとは愚か者め!
「そうと分かれば話が早いわ!あんた死にたくなかったら手ぇ引きなさいよ!」
「や~だぷ~」
誰が引くか!
「わたし悪役令嬢なんで!これからも貴女に悪辣非道な行いを徹底的にやるから!」
と高らかに宣言してやったわ!
「ふっざけんじゃないわよ!あんたも転生者なら私の気持ち分かんでしょーが!!」
分かるか!ぶりっ子のどの辺を分かれと!
「逆ハーなんて乙女の憧れ、永遠の夢!こんな美味しい状況で何もしないっておかしいでしょ!」
「え、乙女?どこに?」
「殴るわよ!誰がどう見てもヒロインの私は乙女にきまってんでしょ!」
うわ、引くわあ。殴りてえ。右手がうずくわ。
ミサキは死んでこの世界に転生というわけではなく、日常生活過ごしてたらいきなりこの世界に飛んできた、ということらしい。
もちろん乙女ゲームはプレイしていたらしい。
でもこの世界が舞台のゲームは知らないんだと。なぜやらぬ!プレイしてたら君もきっとぶりっ子ヒロインにイラっときてたはず!私の気持ちが分かるはずなのに!
「私にいじめられるの嫌なら、とりあえずぶりっ子やめて攻略対象一人にしたら?」
キモイぶりっ子やめて対象一人に一途になるなら、私も考え改めるよ?そしたらお互いハッピー、はっぴぃえんどぉ!
「やだ」
「なんで」
「そんな勿体ないこと誰がするか!」
あまりの阿呆な発言に一瞬意識飛びそうになったわ!白目むくわ!
「勿体ないって……結局最後には誰か一人を選ぶんでしょうが!」
「とーぜん王太子選ぶけどね!」
何当然とか言っとんじゃい!
「王太子は私の婚約者なんだけど」
「ヒロインが王太子と結ばれるの当然でしょ」
何この平行線な会話。
一向に進まないんだけど!
「じゃあ虐めてもいいのね!?」
「死罪になってもいいの!?」
「望むところぉ!」
「ふぎゃお!」
バッとぶりっ子の背後に回り、片脇に頭潜り込ませて相手の腰を両腕で抱えて~
後方に反り投げる!
いい音がして、ぶりっ子の頭は地面にめり込んだ。これ、乙女ゲームにあるまじき光景だよなあ。と言うか、普通死ぬよね。
「知ってる?これ、バックドロップって言うのよ!」
「そふぇくらい知っふぇるわよ!」
さすがゲームの世界、ヒロインは殺しても死なない!分かってたけど。元気そうで何より。
「知ってる?日本名は岩石落としって言うんだって!」
「ひるきゃ(知るか)あぁ!!だしぇえええ!!」
頭が地面にめり込んでるのに、よくしゃべれるなあ。ゲームだからか、ヒロインだからか、ぶりっ子だからか。聖女の力では無いだろうな、うん。
「ほら嫌でしょ?今なら第二王子あたり簡単に攻略出来そうだと思うんだけど?」
王太子の次に美味しいと思うよ?
地面から引っ張り出してあげれば、汚れも気にせずフンッと鼻を鳴らしてのたもうた。
「好みじゃないから嫌!」
ふざけんなこの野郎!!
いいだろう、勝負しようじゃないか!
私とぶりっ子、どちらがハッピーエンドでバッドエンドとなるか。はたまた二人揃ってバッドエンドとなるか!それともイレギュラー展開となるか!
戦いのゴングが今、鳴り響いたのだった。
46
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」
公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。
忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。
「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」
冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。
彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。
一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。
これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
婚約破棄に、承知いたしました。と返したら爆笑されました。
パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢カルルは、ある夜会で王太子ジェラールから婚約破棄を言い渡される。しかし、カルルは泣くどころか、これまで立て替えていた経費や労働対価の「莫大な請求書」をその場で叩きつけた。
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
王国最強の天才魔導士は、追放された悪役令嬢の息子でした
由香
ファンタジー
追放された悪役令嬢が選んだのは復讐ではなく、母として息子を守ること。
無自覚天才に育った息子は、魔法を遊び感覚で扱い、王国を震撼させてしまう。
再び招かれたのは、かつて母を追放した国。
礼儀正しく圧倒する息子と、静かに完全勝利する母。
これは、親子が選ぶ“最も美しいざまぁ”。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる