11 / 74
10、悪役令嬢はパーティでも通常運転です
しおりを挟む目映いばかりに美しく煌びやかな装飾に、空腹を刺激する見た目から味まで完璧な大量のご馳走。
気合いの入った礼装の人々は、食事に舌鼓を打ちつつ楽しげに会話を交わす。
今夜は年に一度の王宮でのパーティーだ。この定期開催以外は招待客が限定された王族の誕生パーティや、何かめでたい事が無い限り行われないので、みんな気合いが入ってるし出席者も多い。
知り合いを探すのにも一苦労……
「ベルシュ様あ、これ美味しいですよ、お一ついかがですか?はい、あ~ん!」
しねえな!苦労せずに知り合い簡単に見つけられるな!
「せーい!」
「へぶうっ!」
おー、ナイスな転がりっぷり。
私のパンチでゴロゴロ華麗に転がる様は、もう芸術の域に達してるよね。さすが聖女候補!
「何すんのよあんた!」
素が出てますよ、聖女、候補。
「聖女よ!」
「まだでしょ」
聖女認定されるのは知ってるけど、そのイベントはゲームの終盤だから。
「そもそも公爵令嬢が殴るんじゃ無いわよ!」
「いやだって、『あーん』とか言うから思わず」
「は?」
「『あーん』ならやっぱり『ぱーん……』」
「すとぉぉぉーっぷ!あんた何言ってんのよ、それ以上言うんじゃ無いわよ!」
チッ、変なとこで常識出しやがる。
ぶりっ子ヒロインとのバトル勃発から数日。奴はその手を緩めることは無く、連日男漁りに勤しんでいる。
その中でも圧倒的に多く絡むのがベルシュ様だ。やはり本命だからだろうな。あの手この手で王太子に近付くも、全く相手にされてないけど。この時点でかなり原作と異なってるんだけどねえ。
「ベルシュ様ぁん、アンナシェリ様が恐いん」
それでも懲りずにぶりっ子貫くんだから。強いよなお前!
「こりないなあ、お前も」
「ぐえっ!」
長い黒髪を後ろで束ねたのを、おもっきし後ろに引っ張ってやった。掴みやすくていいな、その髪形。なんか首がゴキッとか言った気がするけど、まあ気にするな。
「あ、あんたねえ……」
「あーごめんごめん、つい」
「仲いいねえ、二人とも」
睨み合ってると王太子の爆弾が投下された。
やめて王太子、その爆弾発言は大爆発よ!!
そんな風にギャイギャイ騒いでたら「そこまでだ、アンナシェリ嬢!!!!」と突如名前を呼ばれたんですけど。
え、何事?と振り返れば。
腰に手をあて仁王立ちのテリス王子が一人。あらやだご無沙汰、元気してたあ?
「黙って見ていれば聖女への悪行暴言の数々……これは許されん大罪だ!これ以上の狼藉は僕が許さない!」
僕が許さないと言われてもねえ……。
注目を集める中、どうしたものかと思案していたら。
ぶりっ子が先に動いた。
「テリス様あぁん、助けてくださうぃ!アンナシェリ様ったら酷いんですよぉ!」
うぃってなんだ「うぃ」って。相変わらずお前のぶりっ子語はおかしいな!
泣き真似したぶりっ子に抱きつかれて鼻の下伸ばしてるのはテリスだ。大概バカだよな、お前も。
「ははは、ミサキよ案ずる事はない、全て僕に任せておけ!魔女は僕がやっつけてやる!」
「あんなこと言ってるよアンナ」
「それは洒落ですか」
違いますかそうですか。
「どうする?」
完全に楽しんでますね、王太子。まあ私も楽しいですけど。
「テリス様、わたくしとミサキさんはとっても仲がいいんですよ」
「んなわけないでしょ!」
私の言葉に思わず反論してきたぶりっ子。素が出てるよ、危ないよ~。
ぶりっ子は慌てて口を押さえるも、なんか言いたそうにウズウズしてるね。
「見知らぬ世界に来てお寂しいかと思いまして、色々気にかけて差し上げてただけですのよ。そうそう、ミサキさんには元居た世界のお話しもたくさんお聞きしましたわ」
「え。そ、そうなのかミサキ?」
ビックリしたようにテリスがぶりっ子を見るが、当然ぶりっ子は首を横に振る。まあそうなるわな。
「いやですわ、ミサキさんたら。先日お話しいただいたあの話なんて特に面白かったのに!」
そう言って、私はべりッとぶりっ子をテリスから引きはがした。その腕に私の腕を絡ませる。傍から見れば仲良しこよし。
「な、なんのことでしょうか?」
「ほら、あの……漫才とかいうもの!」
「はああああ!!??」
出てる出てる、素が出てますよー。
完全に私の奇策に翻弄されてるぶりっ子は目を白黒させている。ふひ、面白ー!
「ああ、マンザイとかいうのを以前アンナから聞いたことがあったな。そうか、あれはミサキの世界の話だったのか」
ポンと王太子が手を叩く。
「はああ!?あんた何サラッと王太子に日本の話してんのよ!?」
「いやですわミサキさん、貴女が教えてくださったんじゃないですか。てか素が出てますよ、ほら聖女候補らしく、ほらほら」
「アンナシェリ様、何サラッと王太子に日本の話してますの!?」
「言ってる事同じじゃないか」
「うっさいわ!」
もう面白いからそのまま素でいけよ。ケラケラ笑ってたらすんごい睨まれた。テリス王子が呆気にとられてますぜ、聖女さんや。
「せっかくだから、そのマンザイっての見せて欲しいなあ」
天然王太子がとんでもないこと言ってきたな。
「だってさ。見せてあげれば、聖女候補」
「なんで私がそんなもんしなきゃいけないのよ!」
「え~毎度ばかばかしいお話を……」
「それは漫才じゃなくて落語じゃーい!」
「お後が宜しいようで~」
てけてんてん……
「……って、マジふざけんなお前ぇぇ!!」
「うっひゃっひゃ!最高!ミサキちゃん最高よ!!!」
見なよ、テリス王子や他の取り巻きのポカンとした顔。王太子一人大爆笑だし!
真っ赤な顔になったぶりっ子が胸倉掴んでこようとしたけど、それをヒョイと避けた。
さて……
バカ騒ぎが過ぎたかな。何だなんだと大人たちも集まってきたし。流石に潮時かな、帰ろっかな~。
そう思ってたら。
ザワリ……
場の空気が変わった。緊張感のある、シリアスな雰囲気に……。
何かと思って騒がしい方を見て。
「!!」
私もぶりっ子も緊張で体を固くしたのだった。
ゴクリと喉が鳴る。
私達の視線の先には、頭を垂れる貴族たちの姿。
そしてその先には──
「父上、母上」
王太子ベルシュ様の声。
そう、国王夫妻。
並々ならぬ威厳と気迫を携えたその人たちが。
静かにこちらへやってきたのだった──
=====作者の独り言=====
以前ぶりっ子ヒロインの容姿をピンク頭とか記載してましたが、修正しました。
昨夜寝落ちしたので夜中テンションで書けなかった……。
31
あなたにおすすめの小説
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」
公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。
忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。
「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」
冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。
彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。
一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。
これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
婚約破棄に、承知いたしました。と返したら爆笑されました。
パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢カルルは、ある夜会で王太子ジェラールから婚約破棄を言い渡される。しかし、カルルは泣くどころか、これまで立て替えていた経費や労働対価の「莫大な請求書」をその場で叩きつけた。
【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪
山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。
「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」
そうですか…。
私は離婚届にサインをする。
私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。
使用人が出掛けるのを確認してから
「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」
婚約破棄のその場で転生前の記憶が戻り、悪役令嬢として反撃開始いたします
タマ マコト
ファンタジー
革命前夜の王国で、公爵令嬢レティシアは盛大な舞踏会の場で王太子アルマンから一方的に婚約を破棄され、社交界の嘲笑の的になる。その瞬間、彼女は“日本の歴史オタク女子大生”だった前世の記憶を思い出し、この国が数年後に血塗れの革命で滅びる未来を知ってしまう。
悪役令嬢として嫌われ、切り捨てられた自分の立場と、公爵家の権力・財力を「運命改変の武器」にすると決めたレティシアは、貧民街への支援や貴族の不正調査をひそかに始める。その過程で、冷静で改革派の第二王子シャルルと出会い、互いに利害と興味を抱きながら、“歴史に逆らう悪役令嬢”として静かな反撃をスタートさせていく。
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる