ぶりっ子男好き聖女ヒロインが大嫌いなので悪役令嬢やり遂げます!

リオール

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11、悪役令嬢だってシリアスになります

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 ドクンドクン

 心臓の音がうるさい。

 気品と威厳に満ち溢れた国王は、ただ存在するだけで気圧される程の威圧感を持っていた。
 けして荒くれの王ではない。恐怖で支配する王ではない。テリスはともかく、温和な王太子を見れば分かるが、国王と王妃もまた温和な方だ。

 だからと言って甘い愚鈍な王でもない。
 優秀なのだ。国は確かに栄え活気に溢れた国民は、満ち足りた生活を送っている。それは王の手腕の凄さを物語ってもいる。

 けれど私は恐いのだ。王が。国王夫妻が。

 初めて会ったわけではない。当然だ、私は王太子の婚約者なのだから。何度も会ってたくさん会話を交わした。

 その時も緊張したけれど、今回ほど緊張するものではなかった。

 なぜなら今は夜会の最中だから。

 そして原作ゲームの中で、悪役令嬢アンナシェリが断罪されるのもまた、パーティ会場だから。ゲームの場合はよくある王太子ら三年生の卒業パーティだったから状況は違うけれど。

 ゲームの最後、アンナシェリは王太子と聖女カップルを前に断罪される。死罪を言い渡すのは……国王だ。攻略対象が別でもそれは変わらない。死罪はいつも国王から。暗殺や獄死というパターンもあるけれど、どれも国王が関わっている。

 この世界で、アンナシェリにとって国王は、死の象徴みたいなものなんだ。

 まだ時期じゃ無い。けれど色々イレギュラーな事が起こっている状況で──その大半は私が引き起こしてる自覚はあるけどさ──断罪が早まらないとも限らない。

 そして思い出す。先日のテリスの言葉を。
 国王夫妻に私の問題行動を告げると確かに彼は言っていた。
 テリスの進言を信じずとも、真実か否かを調べたかもしれない。そうして私の存在は問題だと判じたかもしれない。

 死罪は元より、投獄でも追放でもなんでも受け入れる覚悟はある。それでもどうしても緊張してしまうのは許して欲しい。人間だから。

 とはいえまだ早い。まだぶりっ子ヒロインは懲りてないし、人間性が変わってる様子はない。このまま私が退場となれば、王太子を始めとして貴族令息たちがぶりっ子の魔の手に落ちるのは容易に想像できた。そうして駄目人間集団と化すのに時間はかからない。

 まだ駄目だ、まだ退場したくないのに!

 もしかしたら、強引に本来の形に戻すために私を退場させようと、原作の強制力が働いたのかもしれない。

 王の前で皆が頭を垂れる中、同じく頭を下げる私は脳をフル回転させていた。

 勿論、死罪や追放を言われた場合の対処法は──

 …………

 無いんだけどね!

 まあなるようになるさと開き直っとこう。

 国王が気楽にせよと告げたことにより、その場の緊張が少し和らいだ。
 王家主催とはいえ、最初の挨拶を除いてはあまりこういった場には参加しない王。だから大人たちも皆、何事かと緊張していたのだ。

 それでも気安く王に話しかける者は居なかった。
 ──当然のように一人を除いてなんだけど。

「王様に王妃様!初めまして、私ミサキと言います!聖女です!!!!」

 お前……なんかもう色々凄いわ。感心するわ。呆れ通り越して感動すら覚えるわ。

 いくらゲームの中──ヒロインである自信があるとはいえ……そこまで不敬な行動できる君をおいらマジ尊敬。

 でもそこは心が広い国王と王妃。ニコニコ笑って受け入れてる、凄いな。海は広いな大きいな、海より広い心の持ち主なんじゃない?

「聖女なので王太子と結婚してもいいですか!?」

 そしてお前すげーよ!
 なんでそんなド直球なの!?俺はいつでもストレート勝負ってか!スポコン漫画の世界に移動しろよ!

 周囲のざわめきが凄いです。そりゃそうだよね。
 いくら聖女候補とは言え、王太子には私というれっきとした婚約者がいるのだから。それも貴族トップクラスの公爵令嬢。

 真っ青になってるのはテリス王子。そりゃそうだ、必死のアピール完全スルーだもんね。あんなにミサキラブなのに。お気の毒さま。

「ほう……お前が異世界から来たとか言う聖女候補か。なるほどなるほど、型破りで面白い奴だな。だが王太子にはそこのアンナシェリ嬢という婚約者が既に決まっておる。テリスではどうだ?」
「嫌です!」

 キッパリバッサリ!

 男らし~な~。も~凄いな~。いくら私でもあそこまでは出来んわ~。

 さっきまで緊張してた自分が馬鹿みたいだ。なんかこのままいくと、ぶりっ子ヒロインの方が死罪になるんじゃね?

 とりあえず床にうずくまって泣いてるテリスどうにかしてやれよ。踏んで良いなら踏むけどさ。




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