ぶりっ子男好き聖女ヒロインが大嫌いなので悪役令嬢やり遂げます!

リオール

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12、今回は悪役令嬢の出番ないですね

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「まあまあ、ベルシュは人気者ねえ」

 それまで物静かに成り行きを見守っていた王妃様が、ニコニコと穏やかな笑顔で発言した。

 にこやか……に見えるけど、その目の奥の光が恐いです、王妃様。

 国王夫妻は結婚のキッカケは政略だけど、超がつくほどのラブラブで側室は居ない。
 ベルシュ様をはじめとした子供五人はすべて王妃様の子だ。──その細い体で本当に五人もお産みになったんですかと真剣に問い詰めたいほどに美しい体系をされてるけれど。

 そんな彼女は母として王妃として、我が子の結婚相手には厳しい目を向けてくる。私も最初の頃は値踏みするというか観察されてるのが非常によく分かる痛~い視線をビシビシ受けたものだ。

 そんな王妃様の視線が──痛い!今、すんごい痛い!私自身に向けられてるわけじゃないのに痛い!

「聖女たる私は次期王となられるベルシュ様と結婚すべきだと思うんです」

 ねえ気付いて!ビシビシ突き刺さる視線に気付いてえぇぇ!

 当の本人以外、おそらくはこの場に居る者全員が感じてるであろう王妃のナイフ視線。みんな顔色が真っ青だ。私もね。
 なのになんでぶりっ子ヒロインは気付かないんだろう。大丈夫か、この子。

「ふふふ、正直な子は嫌いではないわ。けれど貴女はまだ聖女『候補』でしょう?少し気が早いのではなくて?それに聖女でなくともアンナシェリの事をベルシュは大好きだから、このままでいいと思うのだけど?」
「ベルシュ様はアンナシェリ様に騙されてるんです!私をもっと知ってくだされば、絶対、ぜぇ~ったい!私の事を好きになります!!!!」

 開いた口が塞がらないとはこの事か。さすがに王妃も呆気にとられてる。口元を隠す扇の向こうには果たしてどんな表情が隠れてるのか……考えたくない。怖いよ!

 もう私帰っていいかな~。周りのみんなも帰りたそうにしてますよー。今夜はお開きにしませんか?

 と、そこへツカツカと静かに優雅に……けれど物凄い勢いで私の横を通過する人が──。あれ、あの人って……

 勢いよく現れた人物は、そのままの勢いでぶりっ子の側に行き。そして──




ゴーーーーーンッッッ!!!




 除夜の鐘じゃないっすよ。こんなとこ鐘ないから。

 ナイスな音を立てたのは、空っぽの頭。中身ないからいい音するねえ。

 と、ぶりっ子の頭に振り下ろされた拳の主を見ながらしみじみ思った。いや素晴らしいゲンコツで何より。拍手喝采したいです、伯爵!!

 そう、ぶりっ子の頭を気持ちいいくらいに殴ったのは、誰あろうぶりっ子ヒロインを引き取った伯爵本人だった。

 白髪交じりと言うか白髪の方が比率の多い頭にほぼ真っ白な髭を顎に生やした、ナイスミドル。その顔はすんごい鬼顔になっていた。体大きくて迫力あるけど、顔もいかついなあ。

「お、おま、おまあ……」

 おまあって何ですか、怒り過ぎて言葉になってませんよ伯爵。
 そんな伯爵の後ろにツツツと現れた女性。

 こちらもそこそこ白髪交じりの女性。優雅な仕草は女性貴族としては模範的すぎるほどに美しい所作である。私には出来んな、あんな素敵な動き。

 その女性は伯爵に静かに歩み寄り。
 目の前の存在──ぶりっ子ヒロインを見つめ。
 頭を押さえて涙目のぶりっ子にニッコリ微笑みかけて。




ゴーーーーーンッッッ!!!




 はいヒット。見事なゲンコツ入りました。いや素晴らしい、やっぱり拍手したい!
 優雅なゲンコツって初めて見たよ!でもちゃんと痛そうなのが凄いね!私もいつかあんなグーパン出来るように精進しよう!

 優雅なゲンコツをヒロインにくらわした女性。それはぶりっ子を先にゲンコツした伯爵の奥方で──つまりはぶりっ子を引き取った伯爵家の方だってこと。

 そりゃ怒るわなあ。自分とこの者がとんでもない無礼な行動してるんだもの。聖女とかどうでもいいよな、さすがに。

「っっっったぁ~~~い!何すんのようっ!」

 ほんとお前にとって身分とかどうでもいいのな、すげーよ。自分は聖女だ大事にしろ!て態度なのにな。
 涙をポロポロ流してるだけなら可愛いとか思えるのに。その性格ないわ、勿体ない。

 ギロリと伯爵夫妻を睨みつけるヒロインは、それ以上に恐ろしい鬼の形相の伯爵と雪女も真っ青の氷の微笑をたたえる奥方に黙り込んでしまった。さすがに危機感を感じたか、良かったね命拾いしたよね。多分。

 伯爵は大きく深呼吸をして、ひきつる顔をどうにかおさえこんで……国王夫妻に深々と頭を下げた。奥方もそれにならう。……ぶりっ子の頭を思いっきり押さえつけて頭下げさせてるけど、あれ結構力いるよね。伯爵夫人、強いなあ。

「お騒がせして申し訳ありません。この無礼は後日改めてお詫びを……」
「いいんですよ、伯爵。面白い子ではありませんか。大変でしょうけどこれからもその子をお願いね」

 キッチリ教育しとけよ。
 
 あれ、なんか心の声が聞こえた気がしたな。気のせいかな。
 同じく冷気吹きすさぶ笑顔の王妃がそう言ったことでこの件は終わりとなった。

 ぶりっ子ヒロインは伯爵夫妻に連れられて帰って行った。は~、今夜だけで私の寿命かなり縮んだ気がするわ。

 そして夜会は国王の合図で再び音楽が流れだし──あまりの事態に気付いてなかったけど、し~~~~ん、と見事に静まりかえってたのね、会場──再び賑やかな声と共に再開となった。

 というかまだパーティ続けるのか、みんなちょっとの事では動じないんだなあ、大人。

 まあ私は子供ですし。夜も遅いですし。
 そろそろ失礼をば……

「あれ、アンナどこいくの?私と一曲踊ってよ」

 失礼できませんでした。

 にこやかに微笑みかけてくる王太子。差し出された手を振り払えるわけもなく。
 私は令嬢らしくニッコリと微笑みかえしてその手を取るのだった。

 なんか忘れてる気がするんだけどなあ~とか思いながら。

 視界の片隅で未だうずくまる影を完全に忘れて、私は王太子とダンスに興じるのであった。

 








 

=====作者の独り言=====

子供が風邪ひいて学校休んでたので書く間がありませんでした。
(夜に書く気力もなく……)
おまけに仕事も多くって……。
ようやく落ち着いてきたので、少しずつ更新していきます<(_ _)>
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