ぶりっ子男好き聖女ヒロインが大嫌いなので悪役令嬢やり遂げます!

リオール

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27、王の胸で悪役令嬢は涙する

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 腐っても王。加齢臭という発酵臭を漂わせていても、そこは王。やっぱり王。

 とんでもない発言に誰も何も言えなかった。

 たった一人を除いては。

「────ざけんなあ!」
「ぬごおっ!?」

 近くのテーブルにあった水差しをおもっきしぶん投げた!ゴンッと鈍い音が響いて──そして王が倒れる音とガラスの水差しが割れる音が響いた。

 ええええええええええええ!!!!

 みんなの心の叫びが聞こえるけど、気にしない!だって私、悪役令嬢ですから!

 ずっと考えていた。
 断罪された時、私はどうすればいいのかを。

 拘束されているならいざ知らず、今の私は自由に動ける。ならばやる事は一つだろう!

 王がどうした!私は死刑が決まった罪人だ!どうせ結果が同じなら思う存分抵抗してやるわ!

 そうして体が動いた。
 倒れた王にダッシュで走り寄る。それを止める者は居ない。

 ぶっ倒れた王を無理矢理起こして、そして
「何が聖女のオーラだ!何が聖女はこの国に必要だ!本当に国に必要なものが何かも分からん阿呆が!」

 パーン
 はい、ビンタ一発。

「何が悪行だ!教育的指導という言葉知ってるか!?このド阿呆が!」

 パパーン!
 はい、往復ビンタ!

「何が投獄だ、何が斬首だ!聖女虐げたとか意味不明なこと言ってる暇があれば、まともな国政やってろ、糞阿呆がぁ!」

 バキィッ!
 はい、右ストレート入りました。
 王、伸びました。

 しーん

 ハアハアと荒い私の息遣い以外、何も聞こえない。

 その時。

 コツ、コツ、と一人の足音が響いた。
 その気配が私の背後に来たかと思うと──

「アンナぁぁ~~~!」
「ふえ!?」

 グワシッ!と背後から抱きしめられたあぁ!
 なんだなんだ!?
 王太子か!?ベルシュ様か!?

「ちょちょちょ!ベルシュ様!皆が見てます!離して離して!」
「アンナ、アンナあぁ!やはり君だ、君だけが私の妻たりえる!私には君しかいない!君が好きだああ!!!」
「い~やあぁぁぁ!」

 そんな事をこんな場で言うなああ!

 私の抵抗虚しく王太子は私を離さない!
 ちょ、誰か助けて!父上、兄上、シンディ!誰かああ!

 助けを求める視線を投げても逸らされるか微笑まれて終わった。うおおい!!

 そんな私達の横を通り過ぎる一つの影。
 あ、王妃様だ。なんか黒いオーラ出てるから魔人かと思いましたよ。

 その後、王の阿鼻叫喚の声が響き渡るわけだけど。
 まあ当然誰も助けなかったよ。







「そういうわけで、本日をもってこの人は王ではなくなりました。新王はベルシュです。賛成の者は拍手!」

 王妃のその言葉と同時に、ワッと歓声があがり──割れんばかりの拍手がその場を埋め尽くした。

 それは生者か屍か。
 もう顔がボコボコで原型留めてない王の首根っこ掴んでブランブランさせてる王妃──元王妃様は最強で最高だと思います。素敵、私もあんな女性になりたい!

「アンナもああいう王妃になれるよ」
「王妃はノーサンキューでございます」

 しれっと爆弾投下しないでください、ベルシュ様。

「王になったからって権力を振り回したら、あの馬鹿と同じだよ。同じになりたいの、新王?」

 ゾルゼンスの黒い笑みと言葉が恐いんですけど。なんか納得いってないって顔してるよなあ。

「もちろんアンナの意思を尊重するさ。したうえでの発言なんだけど?」
「どう見ても王妃になりたくないみたいだけど?どうする、王を捨てるのか?」
「それは流石にもう出来そうにないから、王は諦めて受け入れるけど。アンナを諦めるつもりはない」
「……往生際の悪い事を」
「誉め言葉ととっておくよ」

 黒い黒い黒い!
 二人とも笑みが黒いですよ!
 ゴゴゴ……ってなんか効果音が見えますよ!なんですか、この状況は!

 王妃様が王をフルボッコして、強引に元王妃様と元王になり。
 ベルシュ様が新王になって。
 みんなが泣いて喜ぶ。

 ──なんだこの状況は。

 未だ離して貰えないベルシュ様の腕の中で、私は呆然としていた。

 まあなんだ……これはつまり。

 つまるところ、私は原作に打ち勝ったってことなんだろうか?
 デスエンドを回避したってことだろうか?

 あれだけ覚悟していたデスエンドを回避──やはり恐怖を感じていたのだろうか。生きられる事を嬉しく思えるのだろうか。この涙は安心なのか喜びなのか。

 分からないまま私は涙を流した。新王の……ベルシュ様の腕の中にいる私の涙に気付く者は居ないから、私は遠慮なく涙したのだった。

 ──何かを忘れてることに気付かないで……







「何でそうなるのよ!」

 誰もが忘れていた。

 否、忘れていたかった。それの存在を。
 だってもうこれで大団円でいいじゃないかって雰囲気だったから。
 悪しき王が滅び国に平和が戻りました、めでたしめでたし……でいいじゃないか!って空気だったから。

 空気読まない、読めない存在を皆が忘れていたのだ。

 ぶりっ子聖女の存在を。

「何よ何よ何よ!私は聖女よ!私の祝福があればこの国はもっと栄えるのよ!どうして邪険にするのよ、どうして大事にしないのよ!もっと大切にしなさいよ、敬いなさいよ、ひれ伏しなさいよ!」

 もう、やめときなよ。
 全ては終わった。全ては詰んだ。

 もう、このままノーマルエンドでいいじゃないか。自らバッドエンドに進む必要はないんだ。

 そんな私の言葉は届かない。ぶりっ子の耳には、何も届かない──

「いいわよ、そっちがその気なら私にも考えがあるわ!聖女と決まった瞬間から私の頭の中に、様々な能力が生まれるのを感じていたんだから!──その力を使って……」

 やめなよ!
 やめるんだ!

 私の言葉は届かず。
 ぶりっ子は、詰みの言葉を口にする。

「こんな国、滅ぼしてやるわ!」

 それは聖女が悪になる時。
 真っ白なはずの存在が真っ黒になる瞬間。

 そしてそれは来る。
 聖女が封じたそれを、聖女自身が呼び起こし。
 そして聖女の元へと呼ぶ。




ガシャアアン!!!!




 突如、会場の窓ガラスが割れた。
 耳をつんざく爆発音。

 そして。




ヴオオオオ!!!!




 恐ろしい咆哮が響き渡った。









=====作者の独り言=====

前回と今回のタイトルにある「王」は、実は違う「王」だったというオチ
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