ぶりっ子男好き聖女ヒロインが大嫌いなので悪役令嬢やり遂げます!

リオール

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29、悪役令嬢の疑問

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「で、聞きたいことって何よ!?」

 コンマ数秒でボロボロの顔が治るのはギャグ漫画の基本だ。それを目の当たりにした私の感動が皆様に伝わるだろうか。

 切り替えの早さがあなたの取り柄。そんなぶりっ子──もうぶりっ子捨ててる気もするけど──聖女が、フンッと鼻を鳴らして髪をいじりながら聞いてきた。なんだ枝毛か、手入れは大事だぞ。

「あたしの髪は最高にキューティクルでサラッサラよ!──て、そうじゃないでしょーが、聞きたいことあるんでしょ!?」
「あ~そうだったそうだった、も~話の腰を折らないでよ」
「折ったのはあんたでしょーがぁぁ!?」
「まあ冗談はこれくらいにして」
「あんたホント、長生きするわ」

 ありがとう、私も出来れば長生きしたいです。全ルートデスエンドの女ですけど。

「あのさあ、ゴブリンはともかくとして、あのガーゴイルの群れ。あれ、あんたの仕業じゃないの?」
「はあ!?んなわけ無いでしょ!」

 てことは無自覚か。
 私は先ほどの光景を思い出す。

『こんな国、滅ぼしてやるわ!』

 そう言ったとき。確かにぶりっ子の周囲に黒い靄が広がったのだ。それを見てるのは、おそらく私だけでは無いだろう。

 あの靄のダークさは異様だった。何の能力も持たない自分でも、ヤバイやつだってのは理解できた。

 その靄をぶりっ子が発した直後にこの状況だ。おかしいと思うだろう、誰だって。

 そしてガーゴイル。
 私の前世の記憶に触れる、あの容貌。あれは……確かにとあるイベントスチルで見た。そう、あのイベントは──

「ねえぶりっ子」
「あんた覚える気ないでしょ。あたしの名前はミサキよ!」
「ぶりミサキ、あんたひょっとして」
「誰がぶりミサキじゃい!」

 いいツッコミに平常時なら応えてあげたいんだけど。いかんせん、状況が許さない。私は努めて真剣な顔でぶりミサキを見た。

「あんたひょっとして……魔王の封印失敗したんじゃないの?」











 長い沈黙がその場に横たわる。起きて沈黙!横たわってる時じゃ無いわ!

「は?」

 あ、沈黙が起きた。ぶりミサキが間抜け声を発した。

「あんた……何言ってんの?」
「いやだから魔王封印イベント、あったでしょ?あれ、本当に成功したの?」

 大丈夫かとみんなに心配(?)されてたのに、意外に頑張って(主にテリスや周囲の人間が)クリアしたあのイベント。

 あのイベントを原作ゲームでプレイした時。巨大ガーゴイルのような魔王の周囲に、小さいというかノーマルなガーゴイルが居るスチルがあったのを覚えてる。今襲ってきてるガーゴイル、そのスチルのガーゴイルにそっくりなんですけど。

 これ、魔王の手先のガーゴイルなんじゃないの?

 問うと、いきなりぶりミサキの目が挙動不審になりだした。

 泳いでる泳いでる、サンマやイワシ、フグとか色々……目の中に魚が泳いでるよー。

「ぶりミサキ?」
「ななななににににいいいいっててててんんんんのよよよよ?」
「なんで『の』はどもらないんだ」
「ななななににににいいいいっててててんんんんののののよよよよ?」
「言い直すな、文字数増えるだろうが」
「何言ってんのよ!?」
「どもらず言えるんかい!」

 明らかに動揺してるし!怪しいことこの上ない!

「そもそもどうやって魔王封印したの?」

 あの時はまだ聖女候補で力も覚醒してなかったのに。──そう考えると王家、鬼だな。その後すんごい聖女ファンになってたよな、あの王。

 話がそれた。
 で、どうやって封印したのか。私の問いにウッと詰まるぶりミサキ。

「ど、どうやってって……そりゃあ……」
「そりゃあ?」
「封印の祠着いたら~なんか祠を塞いでた大きな岩が急に動き出してぇ~」
「ほうほう」
「中からすんごい不細工な顔の化け物が出てきてぇ」
「うんうん」
「そいつがいきなり『我は魔王だ!』とか叫ぶから、話が違うじゃないのってあんたの名前を叫んでぇ」
「叫ぶな」
「んで封印した」
「最後の端折りがハンパないな!」

 封印のとこ、そこ最重要だから!

「だから!」
「だから!?」
「あまりに不細工で見るに堪えなかったから!」
「から!?」
「祠入り口の大岩を動かして塞いだのよ!」
「凄いな、力持ち!」
「んで帰ったのよ!」
「帰んなよ!!」

 それ封印じゃないし!

 魔王が開けた扉を閉じただけだから!そりゃ魔王もっかい開けるわ!鍵かけてこいよ!

「なんでそんなので封印されたって認定されたの!?」

 バッと顔を見た相手は真っ青だ。その名もテリスくん。今や王弟という立場の。

「だだだだって!」
「だって何!?」
「ミサキが封印完了だって言ったんだもん!」
「もんじゃねーわ!!」

 父親みたいな口調で何言ってんだ!そんないい加減でいいのか!?

「う~ん、まあ確かにあの時は魔王の気配が消えたんだよねえ」

 そこにのほほんとした声のベルシュ様。

「え、そうなんですか?」
「そうそう。いくらなんでも自己申告で封印完了したと認めないよ」
「そうだね、魔塔の方でも封印されたと検知したんだよね」

 頷くベルシュ様に同意するゾルゼンス。

 え~そうなんだ。

「では封印が不十分だったということですか?」
「不十分というか……封印はされてないんだと思うよ」

 ゾルゼンスの言葉に頭の中が混乱する。んんん?どういうことだ?

「察するに……魔王が勘違いしたんじゃない?今の話からするに、封印が弱まって眠りから覚めた魔王が、扉である岩を動かして外に出た!ら、聖女っぽいやつがまた岩を動かして閉じた!あ、封印されちゃった~仕方ないまた寝るか~←この時点で一端魔王の気配が消えて封印されたと国や魔塔勘違い。でもふと魔王が気付いちゃう……あれでも待てよ、なんか封印されてなくっぽくね?じゃあ出るか、悪さするか、王宮攻めちゃえ~!←今ココ」
「んな馬鹿なあぁぁ!!」

 ゾルゼンスの説明が非常に有り得そうだと思った自分を否定したくて叫ぶ!

「んな馬鹿なあぁぁ!!」

 お前が叫ぶな、ぶりミサキぃ!!

「なんでちゃんと封印施さないのよ!方法は教わってたんでしょ!?」
「だってあまりに醜かったんだもん!あんたに想像できる!?イケメン魔王を期待して行けばまさかの化け物魔王!このショックがあんたに理解できる!?」
「そもそも魔王にイケメン求めてんじゃないわ!」

 ぎゃいのぎゃいの言い合ってたら。

 ドーンッ!とこれまでとは比較にならないほどの大きな音が響いた。

 見ると、パーティ会場である宮殿の屋根が見事に無くなってるのだ!わ~星キレ~……じゃねえわ!なんかでっかいのがバッサバッサ降りてきたんですけど!

「でか!」

 思わず叫ぶ。
 あ~……これアレだよねえ。

 でっかい三メートルくらいのガーゴイル。

 アレだよなあ。

「なあぶりミサキ」
「誰がぶりミサキじゃい
「アレってアレじゃないの?」
「アレって何よ」
「アレだよアレ。『ま』で始まるやつ」
「マリモ?」
「あほか?」

 どうも、現実逃避な二人です。そんな我々を放置のまま、ベルシュ様にゾルゼンス、騎士に魔道士達が身構える。

 そして

ヴォォォォ!!

 耳を覆いたくなるような恐ろしい咆哮と共に、巨大ガーゴイルは口を開いた。

「我は魔王なり!!」

 ──やっぱ魔王じゃないかぁぁぁぁ!!!




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