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30、話を聞かないのが悪役令嬢です
しおりを挟む「我は魔王なり!我は目覚め再びこの世界に降り立った!泣け、喚け、畏怖せよ人間!もはやお前達の世界は終わりと覚悟せよ!この世は我の物となり──げふぅっ!!」
ゴーン!
お、見事に当たったわあ!さっき馬鹿王に投げたごとく、落ちてたシルバートレーをぶん投げてみた。綺麗に当たって魔王が変な声出してぶっ倒れたよ。意外と弱いな、魔王。
コキコキ右手首を鳴らしてたら、ぶりミサキに信じられない目で見られた。
「あんた……何やってんの」
「何って魔王に銀盆投げただけだけど?」
「いやいやいやいや!どこの世界に魔王に盆投げるやつが居るのよ!しかも魔王何かしゃべってたし!話してる最中に攻撃とか最低でしょ!?」
「え~そんなの知らないよ。なんで魔王がしゃべくり終わるの待たないかんのだ」
大体おかしいといつも思ってたんだ。物語の中ではどうして悪者が話し終わるのをみんな待つの?親切なの?馬鹿なの?魔王って名乗った時点でヤバイやつなんだからヤッちゃおーよ!
「そんなわけで、ベルシュ様にゾルゼンス様。やっておしまいなさい!」
「あんた何様よ!」
「ほーほっほっほ!」
一度言ってみたかったセリフを言えただけで満足です!じゃ、そーいうことで!非力な私は逃げる卑怯者です!悪役令嬢ですから!これ免罪符ね。
「アンナ、かっこいい……」
「え」
「いいなあ、やっぱりアンナは面白い。是非俺の嫁にしたい」
「え」
予想外の二人からのリアクション。おかしいな、普通ここは白い目で見られるとこなんだけど。奇人変人の集いか。
と、思わず固まっていたら。
「グオオオ!誰だあ、我の言葉を邪魔するのはぁっ!!」
「キャーッ!起きたあ!」
ガバッと魔王が起き上がったあ!
恐い顔が更に恐くなってる!あ、怒ってる?ヤバイ逃げるか。
「ちょーっと待ちなさいよ!」
そこをガッとぶりミサキに止められる。ええい放せい!
「あんたが魔王を怒らせたんでしょ!生贄になりなさい!」
「封印しなかったぶりミサキが悪いんでしょ!?そっちが生贄になるべきだ!」
「聖女が死んでどうすんのよ!」
醜い争いごめんなさいよ。押しつけ合う女が二人。
「──聖女?」
が、そんな我らの声を拾っちゃうのが魔王。あ、まずい。
魔王がグルンと首を回してコチラを見る。ひ~、恐い顔!
「今、聖女とか言ったか?」
「はい、この人が言いました」
「ちょ、おま!」
私言ってないわ、言ったのはお前だろうが!迷わず私を差し出す鬼女がここに!
「これが聖女で盆投げてぶつけました」
「嘘言うなあぁ!!」
盆ぶつけたのは私だけど!魔王はむしろ聖女って言葉に反応してますやん!嘘は駄目、絶対!
ズーン、ズーン、と地面を響かせながら魔王が近付いてくる。ひいい、やっぱり大きい!恐い!
「アンナ、私の後ろに!」
「大丈夫だアンナ、俺の後ろに!」
やだもう二人ともイケメン!
私の前に守るように立つ二人にキュンとなるわ。乙女になるわ!
「ベルシュ様あん、ミサキも守ってくださいん」
「あ、ゾルゼンス殿に頼んでくれる?私は婚約者のアンナを守るのに忙しいから」
「え、じゃあ……ゾルゼンス様あん」
「本日の営業は終了しました」
ゾルゼンスに一票。ぶりミサキへの返しはゾルゼンスの方が私の好みですね。
「なんでよ!なんでみんな私にはつれないのよ!」
「自分の胸に手を当ててみれば?」
「胸?見ての通り豊満で立派よ!」
「知るか阿呆!」
胸をはるな!持ち上げるな!それを思わず見るな、モブの男ども!テリス始め誰かも分からん騎士やら魔道士やらのそこ!
ベルシュ様は全く無視で魔王睨んでるし、ゾルゼンス様は全てを凍てつかせる氷の目で見てるし。
「やだゾルゼンス様ったら!意外に好きなんだからあ!」
恐れ知らずのぶりミサキがそんなゾルゼンスをツンツンしてる。明日の太陽が拝めないかもしれない勇気ある行為に私も恐れおののくわ。
「我の存在を忘れるなあ!」
ごめんなさい、忘れてました!
思わず怒鳴る魔王を見ると、鬼もかくやの形相になってるし!子供が見たら確実にトラウマになるな、この顔。
「そこの黒髪の女!我は其方に見覚えがある!──お前が聖女だな!?」
「ぎゃー!バレてた!」
バレるも何も、封印の祠でご対面したんだろうが。魔王の顔見て大岩を閉じたのお前だろうが。そりゃ魔王覚えてるわ。
「ごめんなさい、私はこの世界に必要な存在なのでまだ死ねません!代わりにこの女を八つ裂きにしていいので私は助けてください!」
「おま!ふっざけんなあ!!!!」
誰も必要としてないわ!むしろ今魔王の生贄となって魔王静めてこの世界を救えや!
「あたしはヒロインなのよ!悪役令嬢が死ぬべきでしょ!?」
もう原作どっかいったわ!こんな展開ないわ!
「胸の、じゃない、未来の無いあんたより未来ある私が生きるべきなのよ!」
「おい今胸の無いとか言いかけただろ、失礼なそれなりに有るわい」
「大丈夫だよアンナ、私は大きさなんて気にしないから」
「そうだよアンナ、大きさより形だから。俺はアンナのが好きだ」
「待って二人とも、全然慰めになってないから。励まして。胸以上にえぐれた私の心を励まして持ち上げてください」
「持ち上げていいのなら」
言葉のあやを本気に取るな。
が、流石の二人も油断できないと魔王への構えを解くことはしなかった。うん、冗談はこれくらいにしておこう。本気で殺されそうな殺気が漂っている。
う~ん、もしここで私が殺されたならやはり原作強制力なのかなあ。もうぶりミサキじゃ当てにならないと思って魔王を投入してきたとも考えられるし。
どうあっても原作は私を死へと導きたいのだろうか。まあ確かに、私が居なければヒロインがハッピー展開になれる可能性が高まるんだけど。
ならば私が取るべき道は一つ!
何としても原作に抗ってやろうじゃないか!
「魔王様!」
盆をぶつけた相手を勇気振り絞って呼ぶ。足ガクガクですけどね!ガクブルですよ!
私の呼びかけに応じるかのように魔王が私を見た。わ~その黒い目怖いわあ。闇に呑まれそう!
私は恐怖に呑まれないようにプルプルと頭を小さく振って、一つ深呼吸。顔を上げた私はキッと魔王を見た。
「貴女の花嫁となります!」
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