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31、悪役令嬢の提案
しおりを挟む「貴女の花嫁となります!」
その私の叫びにギョッとなる気配がした。
「は?」
「アンナ!?」
「アンナ、何を!」
ぶりミサキ⇒ベルシュ様⇒ゾルゼンスの順に驚愕の声を出す。そうだよねそうだよね、そりゃそうだよね。でもそんな彼らの反応は今は無視だ。
私は言葉を続ける。
「魔王様ほどにイケメンで聡明でお強い方を私は知りません!あなたの妻となれたなら、これほどに幸せな事はないでしょう!魔王様の妻となりお側で支え……一生を共にしたいと思います!」
私の叫びにその場がシンとなる。
ベルシュ様とゾルゼンスは泣きそうな顔してるし。そんな顔しないで!と私は彼らにニコリと微笑みかける。
そこへ割って入ったのは、空気読まない女王のぶりミサキであった。
「アンナシェリ……あたし、あんたを誤解してたわ。そうよ、あんたはあたしの踏み台となって──」
「──って、この聖女が言ってましたあぁ!!!!」
「うおおおおおおおおおい!!!!!」
凄い勢いで私にツッコミをかけてくるぶりっ子の手をガッと掴む!そして先ほどシンディをぶん投げたのと同じ要領で──
「せいやあっ!!」
「んぎゃあああ!?!?!?」
ぶん投げたああ!
「お受け取りください、魔王様!」
あなたの花嫁ですよー!
「ぬおっ!?」
まさか投げるとは思ってなかったのだろう。まさか飛んでくるとは予想だにしてなかったのだろう。
思わず魔王はベシッと……ぶりミサキを 叩いた。
「ふぎゃ!?」
虫のように叩かれたぶりミサキが地面に落ちる。わー痛そー。全然同情してない冷めた目で見ていたら。ムクリとぶりミサキが起き上がった。おお、さすがに頑丈だ!
キッと顔を上げたぶりミサキが私を睨みつけてくる。
「何すんのよ、あんたはあ!毎度毎度なんて事して──」
「我の妻となりたいのか?」
「──くれるのよ!って……は?」
私を睨みつけていたぶりミサキが、背後からの声に思わず振り向いた。振り向いて腰を抜かす。そりゃそうだ、巨大な魔王が眼前に立ってるんだもの。離れてる私でも怖い。
怯えるぶりミサキに、魔王がグッと顔を近づける。
「我の妻となりたいのか?我と共にありたいと……主はそう言うのか?」
「だだだ誰が!」
ここで怯えて言葉を発する事が出来ない、なんて事がないのは流石と言えよう。
「誰があんたみたいな化物と!」
ちょっと命知らずな発言すぎる気がするけど。大丈夫かいな、あの子。
「ふむ……これが噂に聞く『ツンデレ』というやつか?」
「──は?」
おおお、なんという事でしょう!ずっと封印されてたってのに、どうしてそんな言葉を知ってるというのか!流石魔王様!
「ななな、何言って……」
「祠を出てからしばらく、今の世界状況を探っておったら様々な事を見聞きしてのう……。なかなかに面白いとは思っておったのだ。確かに今の世を滅ぼすのは勿体ない」
「はあ!?」
「イケメンという言葉も知っておるぞ。そうかそうか、イケメンの我の妻になりたいか。愛いやつよ」
「うい?ういって何よ!?」
「愛い奴ってのは可愛い奴ってことだよー」
「あたしが可愛いですって!?──当然でしょうが!」
言葉の意味を教えてやったら何か元気になってるし。バッと立ち上がって仁王立ちしてビシッと魔王に指突き付けてるし。ある意味最強だな、あやつ。
「あの子──馬鹿なのかな」
最恐の魔法使いがボソッと呟いたけど同意です。というか馬鹿確定でいいと思います。
何だか元気になったところで、そのまま魔王と去ってくれませんかねえ。魔王の方はどうやら乗り気のようだし。
「私が可愛いのは当然だけど!可愛い私が化物の嫁になんて有り得ないわ!」
ちっ。魔王よりもやっぱりぶりっ子の方が面倒か。ぶりっ子のくせに何て面倒な。
「あんたが望んでいた王の妻となるんだよ?魔王の王妃なんて普通なれない超レア。それを逃すの?」
「じゃああんたが魔王妃になりなさいよ!」
「ちっ」
さすがにそれはノーサンキュー。おのれ……ぶりっ子しぶとい。う~ん、どうしようか。
「もう魔王滅ぼす方が早いんじゃないかな?」
そこへベルシュ様の提案。いやそりゃそうなんですけどね。ベルシュ様とゾルゼンスが居れば十分可能なのは知ってますけどね。
「ついでに巻き込まれたって体であの聖女消してもいいかな」
「よしそれで!」
ゾルゼンスの提案に一も二も無く同意!それでいきましょうよ!
チラリと王であるベルシュ様を見ると、苦笑してる。王と言う立場としてはすんなり受け入れにくいんだろうけど。
「まあ……聖女が国の為に体はったって伝説になったら、あの子も本望だろうね」
はい、王のOK出ました。あわれぶりっ子。ここでお別れかあ……。
なんて思ってたら。
「ふざけるな、魔王!ミサキを返せえぇ!!!!」
あああ、忘れてた、忘れてましたよ!ぶりっ子ヒロイン親衛隊がいたことを!まだ居た事を!
「ベルシュ様、テリス王子以下モブが魔王に向かっちゃいましたよ」
「あの馬鹿……」
さすがのベルシュ様も頭を抱えていらっしゃる。大変ですね、馬鹿な身内がいると。
わあああ……と、テリス以下数名が魔王に向かったわけだけど。
ヴオオオオ!!!!
魔王の殺気こもった咆哮でアッサリ腰を抜かしていた。弱っ!
「何やってんのよ使えないわね!ベルシュ様あ、ゾルゼンス様あん、助けてくださいー!」
「聖女が救い求めてますよ」
「どうしてかなあ、全然助けようって気にならないから不思議」
「俺も。魔力が高まらないんだよねえ」
分かる、どうしてかやる気出ないよね。これが聖女の力か!みんなのやる気を消滅させる力をもった聖女!凄い、なんの役にも立たない能力!
「とりあえず死んどけばベルシュ様もゾルゼンス様もやる気出して助けてくれるかもよー」
「ざけんなあぁ!」
私の提案はアッサリぶりっ子に却下されてしまった。何でだ、いい案だと思ったのに。
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