ぶりっ子男好き聖女ヒロインが大嫌いなので悪役令嬢やり遂げます!

リオール

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44、悪役令嬢だって超シリアス!

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『公爵令嬢アンナシェリ!貴様は大罪を犯した!よって斬首刑と処す!』

 目の前には冷酷な宣言をするベルシュ様。

 右手はバッと私に突き出され。
 左手は──

『アンナ様、私にあんな酷いことばかりして……うう、酷いです』

 ベルシュ様に腰を抱かれた、異世界より舞い降りし聖女──ミサキ。
 彼女は王太子にしなだれかかりながら、よよよと涙を流していた。

「そんな!違います!私は何もしていない!」

 そんな私の言葉など、誰も聞いては居なかった。

『酷い女だね、君は。ミサキに随分酷いことしたんだってね?階段から突き落とすなんて……一歩間違えれば死んでたよ?そりゃ処刑にもなるさ』
「ゾルゼンス!?」

『お前のような女が姉になるなど考えただけで吐き気がする!ミサキは処刑は酷いと言ってたけれど、これでも生温いくらいさ。苦しめてとことん苦しんでから死ねばいいのに』
「テリス、あなた……」

『おお恐ろしい。このような悪女は見た事が無い。もはや魔女ぞ。魔女が王妃になど考えただけでも恐ろしいわ!』
『そうですわね、あなた。この娘は生かしておけば何をするか分からない。早く──今すぐにでも処刑なさるのがよろしいわ』
「王──!……王妃様……!」

 誰も私の話を聞いてくれない。
 誰も私の無実を信じてくれない。

 みんな私を悪女だと、魔女だと責める。ののしる。断罪する。

 そうして絶望の淵に立たされた私の目の前に、ベルシュ様がゆっくり歩み出る。

 その手には剣が握られていた。

「ベルシュ様!?」
『死ね、アンナシェリ!!』

 私の叫びと。
 王太子の叫びが交錯し。

 剣が頭上に振り下ろされた────!!




※ ※ ※




「きゃあああああああああああああああああ!!!!!」

 自身の叫び声で、私はガバリと体を起こした。

 肩を揺らしながらハアハアと荒い呼吸。

 額に髪が張り付いて気持ち悪い。汗びっしょりになってるのが分かった。

 そうしてゆっくりと視線を周囲に向ける。

 見知った屋敷の中庭。
 夕焼けを背に、驚いた顔でコチラを見ている面々。

 彼らは一様に、私を心配そうに見ていた。いや、実際心配してくれてるのだろう。

「アンナ!?大丈夫かい!?」

 血相を変えて真っ先に走り寄ってきたのは、今は国王となったベルシュ様。政務はいいのですか?と聞こうとして、喉がカラカラで声も満足に出せない事に気付いた。

「お嬢様、これを」

 すかさずメイドがグラスに入った水を差しだしてくれた。ありがとうとお礼を言って、それを私は静かに飲み干す。それをみんな黙って見守ってくれている。

 飲み終わり、グラスをテーブルに置く。

 ほう……と息を吐いた。
 少し、落ち着いた。
 まだドキドキしてる心臓を押さえて、目を閉じて。そして開く。

 やっぱり見える景色は変わらない。

 私を心配げに見つめる彼らが、そこに居た。

「大丈夫、アンナ?」
「はい、ベルシュ様。……あの、お仕事はもういいのですか?」

 聞くと、ふわりと優し気に微笑まれた。

「もう今日は終わったからね。アンナに会いたくて来てしまったんだ」

 その言葉に私も微笑みを返す。

「はい、タオル。どうしたんだ、悪夢でも見たか?」

 頭にフワフワのタオルが乗せられた。以前服を出してくれたように、このタオルも出してくれたのだろうか。

 ゾルゼンスの好意をありがたく受け取り、私はタオルで汗を拭いた。本当は全身びっしょりだから、今すぐにでも流しに行きたいところだけど。今は我慢しよう。

「ちょっと……恐い夢を見ました」

 そう言った私の顔は、きっと弱々しい笑みになっていたに違いない。

 ポンポンと頭を撫でてくれる優しさに、涙が出そうになった。慌ててタオルで顔を拭くフリをする。

「夢魔でも出たか?アンナに手出しするような愚か者には、私が厳しい罰を与えておこう」

 そんな私からタオルを取って優しく拭いてくれるのは、魔王弟ケアミスだ。

「ぎゃう?」

 心配そうに顔を覗き込んでくるのはカルス。

 私はカルスをギュッと抱きしめた。現実だと実感したくて……その温もりが、これを現実だと教えてくれる。

 抱き締めながら、何度も考えたことをまた考える。

 終わったんだろうか。
 本当に、全て終わったんだろうか。

 ミサキは神殿に入った。学園は平和になった。

 私は、もう、悪役令嬢じゃない。

 それでも不安は消えてくれない。
 何かあるんじゃないかと、ふとした瞬間に恐くなる。かつて死を覚悟した。その覚悟が、今なお私に纏わり付く。

 そうでなければいけないと。
 デスエンドにならなければいけないと。
 心の中の誰かが呟くんだ。

 だから本当は学校も辞めて、ひっそり田舎暮らしでもしたいのだけど。

「落ち着いたかい?」
 優しい声のベルシュ様。

「今夜は寝るまで側に居るから安心するがいい」
 柔らかな笑みをたたえるケアミス。

「何なら添い寝してあげようか?」
 悪戯な笑みを浮かべウインクするゾルゼンス。

 彼らの優しさが嬉しくて。温かくて。

「みんな、ありがとう」

 私は少し安堵して、心からの笑顔を浮かべた。

 のだけど。

「…………」
「…………」
「…………」

「え。な、何?」

 なぜか黙り込んで凝視してくる三人に、なぜか胸がざわつき焦る。

 え、私何か変なこと言った?どうしてみんなビックリした目で見てるのだ?

「……初めて見た」
「え、ベルシュ様何か言いました?」

「う~ん、確かに。アンナの満面の、心からの笑み……俺だけが見てたなら良かったんだけど」
「ゾルゼンス?」

「その笑みは魔族の私をも浄化しそうだな。何とも……眩しい」
「は?え?ケアミス?」

 え、何言ってんの、この人達。目が腐ってんじゃないか?

 妙なこと言う三人にたじろいで、立ち上がった私は後ずさる。何となくこの場を去りたいな~なんて。

「アンナ、今宵は私と過ごさないか?」
「何言ってんだ、お前は相手にされてないよ、王様。俺と一緒が一番安心だぞ、アンナ」
「人間界はどす黒く濁っている。闇一色の魔の国はむしろ安心できるぞ。私と共に来い、アンナ」

 えーえーえー。
 やだこの人達、変なスイッチ入ってる!なんで?どうして?

 顔がヒクつくのが分かりながら、私はこの場をどう切り抜けようかと頭を悩ませていた。当然、誰の手を取る気もないからね!

 三すくみならぬ四すくみ?
 誰もが見えない牽制をしつつ、どう動くか悩んでいた。

 その時だった。





ヒュルルルル……

「──!────!」





 ん?何か聞こえるような?

「──いて!そこを退いてえぇ!!」

 え、上?

 突如降ってきた声に顔を上に向けて。

 直後。

「ふぎゃああぁ!?」

 衝撃と共に視界が暗転するのだった──


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