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45、悪役令嬢と聖女-1
しおりを挟む「ふぬううう……!!」
突如、私の頭上に何か落ちてきた。あまりの衝撃に、私は地面に這いつくばっていた。何たる屈辱!
そして重い!
正体不明の重みに潰されてる私の頭上で声がする。
「は~危なかった。まさかあんなきっつい突風が吹くとは……危うく死ぬとこだったわあ」
正体は分かった!
だから重いっての!
背中にのしかかれ、うつ伏せ状態の私。視界が塞がれて私は何も見えず、ひたすら重みに耐えていた。
というか退け!
「あら?あらあらあら?ここってひょっとして?流石わたし!ちゃあんと目的地に着けたようね!」
だから──
「はぁ~いイケメンの皆様ぁ~ん!みんなのアイドルの登場ですわよ~ん!」
「いいから……退けええぇ~~~い!!」
ふんぬう!
私は渾身の力で体を起こした!
「きゃあ!?」
叫びと共に上に乗っかってた奴が悲鳴を上げたが、私の知らぬ事!
やっとこさ上に乗った異物をどけた私は、額の汗を拭き、異物を見やった。
「誰がアイドルだあぁっ!!」
叫んで私は足下に転がる異物──ぶりっ子を見下ろした。
「あ、あらやだアンナ、居たのね」
「居たも何も、ここ、我が公爵家の庭ですけどね!」
白々しいわ!
私はパンパンと服の汚れを払いながら、ぶりっ子を睨みつける。当然やつには全くこたえてないけど。
「そんなの知らないわよう。イケメンセンサーがここだって教えてくれたから」
「どんなセンサーやねん」
もっと役立つセンサーを働かせろ!
つーか、なぜここに来た。
「そもそも何の用よ」
「何の用よと聞かれたら!」
え、何それ、ちょっと待って。
「答えてあげ……むがふう!!」
「ちょっと待てやあ!それはアカンまじアカンやつ!」
それやったら、この世界を抹消されかねんから!頼むからやめて!
以前私も似たようなことやったけど、そんな事は棚に上げて叫んだら、暴れて抵抗してたぶりっ子の動きがピタリと止まった。
「ふぁふぉるふぁら?」
うん、何言ってるか分かんないから手を放す。手はタオルで拭いておこう……。
「頼むから?」
「え、うん、まあそうね」
「あんたが私に頼むのね?」
「え?あーうん?まあ、そうなる……のか?」
いやなんかおかしくない?頼むからってのは言葉のあやであってだね。
そんな鼻広げて見下されるものでは無いと思うのだけど。
「頼むから?は~ん、頼むから、頼むからねえ?」
腰に手を当て、ぶりっ子がザッと一歩前に出た。そして地面を指さす。
「頼むからにはそれ相応の態度で示してもらおうかしらあ!?土下座とかあ!?」
うん。
こいつ何しに来たのか分かんないけど。
とりあえず締めていいですかねえ。
「──で?何か言う事は?」
「調子に乗ってずびばぜんでじだ」
目の前にはチョンと正座のぶりっ子一人。え、勿論締めた後ですよ。なんでこうなると予想立たないんだろう、このぶりっ子は。
「あたしは聖女なのに、聖女なのに……」
なんかブツブツ言ってて恐いんですけど。
そしてなぜ貴方がたは呑気に見学してるんですか。
ベルシュ様筆頭に、ゾルゼンスもケアミスも。なぜかテーブルについて紅茶すすってるし。
暇なら帰れ!もう夜だっつの!お腹空いたわ、ご飯食べたい!
時間を思い出したら、急激に空腹を感じ始めた。そして思い出したら当然のように鳴りますね。
ぐうううう~
お腹が。
いや違いますよ、私ちゃいますよ。
今のお腹の音を出した主を冷めた目で、私は見下ろした。つまりはぶりっ子を。
「あらやだ、夕飯とらずに神殿抜け出してきたから。テヘペロ」
テヘペロじゃねえわ!
何言ってんだお前は!
この私でさえお腹を操作して鳴るのを抑えてるというのに、お前は……!
ぬる~い視線を送っていたら、ぶりっ子がおもむろに立ち上がった。
「はあ……仕方ないわね。このあたしが一緒に夕飯食べてあげても良くってよ?」
肩にかかった髪をファサリと払いのけて、手を腰に当てたぶりっ子を。
もっかい締めたのは当然のことだと思います。
※ ※ ※
「は?飽きた?」
私は呆れた声と共に、目の前のぶりっ子を驚きの目で見る。
対してぶりっ子は食事を頬張りながら、無言で頷いた。
──って、ちゃっかり食ってんじゃねーわ!
何となく流れでぶりっ子が居るのだけど。
ちなみにイケメン三人は帰った。うちの父親がメンチ切ったから。娘に群がる虫を追い払い……って、恐いわ、おとーさま。あとベルシュ様って一応まだ婚約者じゃなかったっけ?いいの、そんなで?
ぶりっ子は頷いてからグラスの飲料を飲み干してグラスを置いた。静かに口をクロスで拭き。
そして再び口を開いた。
「だからあ、飽きたの、神殿の仕事」
「いや飽きたって、あーた」
あんだけ締めたのに、まだ懲りないんだろうか。もっかい大仏頭にしてやろーか。
私はチラリと、テーブルの上に用意されたご飯を食べてるカルスを見やった。
その視線に気付いたのか、ぶりっ子は慌てて頭を振る。
「あ、いやいや、飽きたけど逃げ出すつもりは無いわよ!?今日だってちゃあんとお仕事したし、明日だって高齢者施設へボランティアに行くつもりだし!」
ほうほう。
確かに、ぶりっ子は今のところ真面目に聖女のお仕事してると、神殿から王家に、そしてベルシュ様から私へと聞いてはいる。
なるほど、逃げるつもりはない。
が、しかし。
「たまには休みたいし遊びたいのよ」
まあねえ……まだ若いんだし。遊びたいざかりなのは分かるよ。
そしてお仕事には休息も必要だ。
私だって鬼じゃあない。そこまで締め上げるつもりは毛頭ないわけだけど。
で、その結果が先ほどの行動と?
「イケメンセンサーが働いたと?」
「そうそう、そうなのよう!」
そうなのようじゃねーわあぁ!
その後。
デザートは当然のように取り上げました。ええ、当然ですよ。
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