ぶりっ子男好き聖女ヒロインが大嫌いなので悪役令嬢やり遂げます!

リオール

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番外編-恋愛end~ベルシュver.(後編)

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「…………」
「…………」

 城へと戻る道中。
 私もベルシュ様も無言だった。

 き、気まずい……!

 何が気まずいって。
 未だに手を繋いだ状態が!

「あ、あの、ベルシュ様……」

 思い切って、声をかける。

「なんだい?」

 返事はしてくれるが、前を向いたまま足も止めるつもりもないベルシュ様に、私は言った。

「手、放してもらえませんか?」

 言った、言ったよ!
 そしてすぐに解放してもらえる事を期待したのだけど。

 ピタリ。

 ベルシュ様は立ち止まっただけで、手を放してはくれなかった。

「どうして?」
「ど、どうしてって……別に握っていただかなくても、迷子になんてなりませんから」
「本当に?」
「なりませんよ!」

 私はどういうキャラなんですか!そんなドジっ子じゃないです!

「放してしまったら……アンナは私から離れない?」
「へ?」

 何を言ってるんだろう?
 手を放してって言ってるだけなのに。

 どうにも論点がずれてるようなベルシュ様の言葉に、私は困って言葉を失ってしまった。う~ん、どうしたらいいんだろうか?

 またも無言が続く中、不意にベルシュ様は私の手を強く引いた。

「きゃあ!?」

 引っ張りこまれる路地裏。
 誰も居ない場所で。
 メインストリートから死角になるその位置で。

 私は壁に押し付けられていた。顔の両横には、王の手。逃げ道を塞ぐように──。

 これは……
 これは!
 つまりは壁ドン!

「べ、ベルシュ様?」

 どうしたんですか?
 恐る恐る声をかけたら、俯いたままで何かを呟いた。

 ん?なんだって?

「相変わらず、ミサキとは仲がいいんだね」

 目、腐ってませんか?どこをどう見たらそう見えるの?

 予想外の言葉に驚いて言葉を失っていたら。
 バッと顔を上げて睨むように見つめられた。

「ミサキを見かけた途端に走り出しちゃって……私よりミサキがいいの?」
「へ!?」

 そこ!?気になるのそこなの!?
 いやいや、ぶりっ子が居るとこトラブル有りの経験者ですから。
 問題が起こらないようにと慌ててダッシュしただけですよ。

 と言ったところで納得してくれるのかどうか……。

 どう言ったものかと頭を悩ませていたら。

フワリ……

「!?」

 ベルシュ様が私の肩に額を乗せてきた。ベルシュ様の髪がフワフワと頬に当たってこそばゆいです!って問題はそこじゃないわな!

「べべべ、ベルシュ様!?」
「あ~……情けないなあ……」

 焦って名前を呼ぶ私に対して、弱々しい声を返すのはベルシュ様だ。
 体を押し返そうとした手を止める。

「ベルシュ様?」
「あんな事を言われた程度でムキになるなんて情けない……」

 あんなこと?
 それはつまりさっきの国民の皆さんの言葉だろうか?

 聖女と結婚すれば~とかってやつ?

 黙っていると、肩から頭を上げてベルシュ様が見つめてきた。近いな……。

「ねえ、アンナ」
「ひゃい?」

 噛んだ!声裏返ってるし!
 心臓飛び出すんじゃないかってくらいドキドキしてるのが自分でも分かる。
 なんだこれは、なんだこれは!

「私はね、キミ以外考えられないんだ。キミ以外要らない、キミだけに側に居て欲しいんだ」
「は……はあ……」
「お願いだよ、婚約解消したいなんて言わないで……ずっと私の側に居てよ」
「…………」

 今までずっと近くに居たけど。
 こんなに切なそうな顔を見た事があるだろうか?

 私は何も言えなかった。イエスともノーとも。

 黙ってると、そっと頬に手を当てられた。

「愛してるんだ、アンナ……ずっとずっと前から……キミだけを愛してる」
「────!!」

 頬がカッとなるのが分かった。今、私の顔はきっと茹でダコ状態だ!

「分かってる、勝手な事言ってるって。私の気持ちを押し付けてるんだって分かってる。でもこうでもしないとキミはどこかへ行ってしまいそうで……」

 不安げに揺れる青の瞳。

 それを見た瞬間。
 何かが胸の中でストンと落ちるのが分かった。

 分かってしまった。

 どうして婚約解消したいと言いつつ、必死になって動かなかったのか。
 どうして今日、一緒にお出かけする事を受け入れたのか。
 どうして──繋がれた手を、振りほどけなかったのか。

 ああ……掴まっちゃったなあ……。

 どこか諦めのような自嘲のような笑みを浮かべて、一瞬目を閉じて。

 再び開いた私の目は、真っ直ぐ前を見ていたんだ。
 ──国王の……ベルシュ様の顔を。

「ねえベルシュ様。たしか卵焼き、好きでしたよね?」
「?」

 突然の私の言葉に意図が分からず、困惑がその目に浮かぶ。が、私はお構いなしに言葉を続けた。

「ほら、私が考案してよく当家のシェフに作ってもらってた卵焼き。好きでしょ?」
「う、うん?」

 言わんとしてる事が分からない。不思議そうに首を傾げるベルシュ様の胸元に手をそっと当てる。

「今度は私が作りましょうか?」
「え、ホントに?」

 よく分からない、けど嬉しい!そんな風にパッと顔を明るくして笑ってもらえると私も嬉しいです。
 ニコッと笑みを返して私は言う。

「きっと最初は失敗しちゃうだろうから。何度も作りますね?」
「アンナが作ったのなら焦げても炭でも食べるよ!」

 いや、炭は食べないで。
 苦笑する私にベルシュ様はニコニコと笑みを返してきた。

「大丈夫ですよ。何度でも何度でも……ずっと作りますから」
「────ずっ……と?」
「ええ、ずっと?」
「これからずっと?」
「ええ、これからずっと。たまには一緒に作るのもいいかもしれませんね?」
「!!アンナ、それって……!」

 ようやく理解出来たのかもしれない。
 眩しいほどの輝く笑みを浮かべた。

「王妃が卵焼きなんて作っていいのかどうか分かりませんけど」
「アンナ!」

 言い終わるか否やの瞬間。
 私はきつくきつく……ベルシュ様に抱きしめられた。

「アンナ、アンナ……!愛してる!キミだけを……キミを愛してる」
「私も愛してます、ベルシュ様……」

 やっと気づいた、本当の気持ち。自分の気持ち。

 私はとっくにこの人に心奪われていたんだ。
 ベルシュ様無しでは居られなかったんだ。

 そっと少しだけ体が離れて──すぐにその距離はゼロになる。

 初めての口づけは、甘いとか何も感じなかったけど。

 心が温かくなるのが分かった。

 長い長い口づけの後、ようやく離されて。
 私の顔を見たベルシュ様にクスリと笑われた。

「アンナ、真っ赤……」
「!!あ、あんまり見ないでください!」

 こちとら前世から合わせて何十年、恋愛と無縁でしたから!
 赤くもなりますよ!

 慌てて体を離そうとしたけれど、ベルシュ様は許してくれなかった。

「もう一度」
「ふえ!?」
「もう一度、いい……?」

 そう言って、ベルシュ様は顔を近づけてきた。

 拒否権ってあるんでしょうか!?

 そんな私の言葉は発せられる事はなく。
 甘いキスによって塞がれるのだった──






 きっとこれから大変なことは一杯あるだろう。
 辛くて苦しくて……泣く事だってあるかもしれない。

 でも大丈夫。

 貴方と一緒なら。私の安らぎの場所である貴方さへ居れば。

 私はいつだって笑顔でいられる。

 きっと
 大丈夫だ

 愛する貴方と共に──






~【番外編-恋愛end~ベルシュver.】fin.~




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