ぶりっ子男好き聖女ヒロインが大嫌いなので悪役令嬢やり遂げます!

リオール

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番外編-恋愛end~ケアミスver.(6)

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「ひい!」

 思わず出る悲鳴。
 そりゃ出ますよ!

「け、ケアミス?」

 恐る恐る声をかければ。

「なんだ?」

 あ、良かった、ちゃんと返事はしてくれるんだ。目は全然笑ってないけど。

「ひょっとして怒っていらっさる?」
「其方の体に気安く触れた、糞な輩に対してな」

 その言い方!めっさ怒ってらっしゃいますね!?

 思っていた以上にケアミスは独占欲が強いようだ。いやあ照れるわあ。とか言ってる場合じゃないね!

「あ、あの、ちょっと手を放して貰えますか?」

 向こうは私がまさか公爵令嬢だとは思うまい。そんな振る舞い一切してない自覚はあるし!

 なもんで、丁寧に言ったんだけど。

「え、なんで?」

 なんでときたもんだ!いいから放せ、放せと頼めば放すのが紳士ってもんでしょ!?違うか冒険者か。

「ちょっとそこの魔族と話があるので、手を放してください」
「はあ!?あんた分かってんのかよ、それ魔族だぞ?」

 知ってますよ、あなたよりもすんごい良く存じてます。

「確かな実力は分からないが、かなりの手練れだ。間違ってもあんたみたいなお嬢ちゃんが相手出来るやつじゃあない。今俺らと一緒に帰らないと一生帰れないぞ?」

 ええ、ええ、それもよく分かってます。ケアミスは私を気に入ってくれてるから大丈夫だけど、やろうと思えば一瞬で私は殺されます。よく分かってますよ!

「洗脳か?いや、魔力の気配は感じないが……」
「どっちにしろこんな危ない場所に置いてくわけにゃいかねえだろ」
「もしかして魔族と通じてる魔女という可能性も」

 あれ、なんか不穏な方向に話行ってるな。冒険者達がボソボソと会話してるけど、目の前だからよく聞こえるんですよ。

 頼むから帰ってほしい。
 私も帰りたいけど、それは今じゃない気がするんだ。今はケアミスを置いて帰れない。それだけは分かるんだ。

「どっちでもいいや、とりあえず連れ帰って神殿にでも連れてきゃなんとかなるだろ」

 だから空気読んで帰ってくれよ、冒険者ぁ!

 お気楽に侵入してきたあんたらは知らないでしょうが!今目の前で恐い顔してる魔族は、この魔の国で二番目に強い人だからね!?

 なんとなく正体言わない方がいい気がしたから言わないけど!絶対に怒らせてはいけないランキング上位に、確実に食い込むから!ちなみに世界で一番怒らせていけないのはゾルゼンスだと思います。

 どうしたら穏便に冒険者たちに帰ってもらうか。無い頭をフル回転していたら。

 横やりが入ったのはその瞬間。

「ねえあんた達。そこの魔族は魔王の弟よ?まずあんた達じゃ歯が立たないから。とっとと帰った方が身のためだと思うけど?」

 ぶりミサキいぃぃぃ!!!!

「おま!なんてことを!」
「え?何かまずいこと言った、私?」
「まずいなんてもんじゃないわ!吐くほど不味いわ!」
「それはあんたが作るクッキーの話じゃ……」
「作った事ねえわ!」

 多分作っても不味くなるのは分かってるけどね!不味いの意味が違うからね!?

 焦ってなんか意味不明な会話になってるけど。

 冒険者たちの空気が……気配が一気に緊張したものに変わるのが分かった。

「魔王の弟?」
「おい、それってかなり高位の魔族なんじゃあ?」
「じゃああいつをヤれば、かなり魔族は弱るんじゃねーの?」

 まずい!

「なりませんから!魔王が居る限り、魔族の力は弱りませんから!魔王弟ヤったくらいで魔族弱くなりませんから!」

 だから帰って!
 そう叫んだけど、私の言葉は彼らには届かない。

「そりゃ……無謀かもしんねーけど」
「だな。冒険者として、このままスゴスゴ帰れるかっつー話だな」
「そうそう、帰って笑い者になるくらいなら……死んだ方がマシってな」

 あああもおおおお!!!!

 どうして!
 冒険者ってのはこうもクソ真面目なんだ!正義感強いんだ!まあだからこその冒険者なんだろうけど!

「ミサキの馬鹿!穏便に帰らせようと思ったのに!なに油注いでくれてんのよ!?」
「ええええ、なんかゴメン~」

 八つ当たり気味に怒鳴ったら、さすがにやらかしたと思ったのか素直に謝られてしまった。うん、謝ってくれてももう遅いけどね!

 こうなったら!

 冒険者を帰すのが無理ならば。
 私に出来る事は一つ。

「ふんっ!」

 渾身の力を持って腕を振る。するとあっさり掴まれていた手は放れた。おそらく意識が別に向いたからだろう。

「あ!おい!」

 それでも慌てて手が伸ばされるのをかわして。

 私はケアミスに向かって走り出すのだった。

「ケアミス!私を連れて戻って!」

 私を連れてこの場を去って!
 それが私に出来る唯一最大の方法。
 誰も傷つかないようにする唯一の手段。

「ちぃっ!おい、──!!」

 それが誰の名前かなんて知らない。戦士が背後の魔導士を振り返っていたから、おそらくはその人の名前を呼んだのだろう。

 だがそれを気にしてる余裕は無い。私は無我夢中で走り。

 そしてケアミスに手を伸ばし。

 抱きついた!








 ──いや、抱きついたはずだった。
 けれど。

 どうしてだろう。
 ケアミスの目は驚愕に見開かれ。

 伸ばされてくる手を取る事が出来ない。

 走っていたはずなのに。
 突如その足は力を失って。

 その場に私は崩れ落ちる。

「アンナシェリィィィ!!!!!」

 ケアミスの絶叫が響き。

 倒れ込む瞬間に見えた光景で理解した。

 私は、どうやら。

 魔導士の魔法によって、その胸を貫かれたらしい。

 貫かれ、血を流して。

 その場に倒れ込んだのだった。


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