62 / 74
番外編-恋愛end~ケアミスver.(7)
しおりを挟む
※筆者注※
ギャグ無いです、シリアスです
===============
「────!!」
何かが聞こえる。
「──ナシェリ!!」
聞き覚えがあるような、無いような。
「アンナシェリ!!」
それはハッキリと。
ずっと聞いていたいと思っていた。その声は、私にはとても優しく甘いものだった。
「アンナシェリ!目を開けろ!」
名前を呼ばれるたびに、くすぐったいと感じていたのはいつからだったか。
けれど私はその呼びかけに答える事が出来ずにいた。
聞こえているのに。
確かに聞こえてはいるのに。
体が動かない。
手も……指一本すら、動かせない。
目を開ける事も。
もう、何も出来ない。
呼吸も、もう──
不思議と痛みは無かった。けれど。それはつまり、終わりを意味してるのかもしれない。
死ぬんだろうか。
私はここで。
ケアミスの腕に抱かれて。
──それもいいのかもしれない。
この気持ちはきっと許されないものだから。だからそうと気付かずに蓋をしようとしていた。逃げようとしていた。
けれどやっぱり隠せないものなんだ。
そばに居る事が叶わないのならば、いっそ──
「死ぬな、アンナシェリ!──くそ!」
「ちょっとケアミス、何するのよ!?」
「お前の治癒魔法でもどうにもならないというのなら、この方法しかあるまい!」
「ちょ!えええ!?」
ブシュッと不可解な音がして。
ズッ……と何かをすする音。
そして。
フワリ
唇に感じる、柔らかい感触。
その正体を考える間もなく、何かが口の中に流し込まれるのが分かった。
何かは分からないけど。
分からないけど、分かる。
最後の力を振り絞って、これを飲み込まないと駄目だって事が!
コクン
感覚の無い肉体ではその何かがちゃんと入ったのか分からないけれど。喉を上下させる事が出来たのか分からなかったけれど。
そうでなくても体内に入るしかないのだ、それは。
だっていつまで経っても、唇に触れたそれは離れなかったから。
いつまでも。
いつまでも私の口を塞いでいる、その何か。
私の口中を動き回るそれは、柔らかくて温かくて気持ちよくて……。
ん?
柔らかい。
温かい。
確かに感じるそれ。
体を抱きしめられてる感触に。
後頭部に回されてる手。
全てを感じる?
さっきまでは感覚も無くなっていたというのに、どうした事かそれらが分かるようになってるのだ。
試しにと指先に力を入れてみると。
ピクリと動いた。
「!!」
動く?体が動く?というか、なんだか体が──熱い?
「────かはっ!」
「アンナシェリ!?」
苦しくなって思わずその温もりを押しやれば。ケアミスの驚いた声が聞こえた。
でも私は今、それどころじゃなかった!
だって、だって……なんだか体が変だから!
「あっつ!」
「アンナ!?」
「体が!あっつい!!!!」
燃えるように熱い!なんなんだこれは、体が物凄く熱い!
あまりに苦しくて何かに縋りたくて手を伸ばしたら、その手を掴まれた。
カッと目を見開けば、そこには──
「ケアミス……?」
「大丈夫だ、アンナ。すぐに体に馴染む。少し苦しいが、それも一瞬だから」
何が馴染むと言うんだろう?何を言ってるんだろう?
でも不思議と私の体は落ち着いてきた。ケアミスに抱きしめられて。安心するように。
まだ体は熱いけれど、不思議な安心感に身を委ねる。
「私は……」
「大丈夫だ、もう大丈夫だから」
だから、今はおやすみ。
そう言われて、額に口づけを落とされた直後。
私の意識は闇に呑まれるのだった。
※ ※ ※
昏々と眠り続けるアンナを、大事そうに愛しそうに見つめて。優しく抱き上げるケアミス。
いわゆるお姫様抱っこってやつね。
「ケアミス……アンナは……」
「お前の考えてる通りだ」
「そうなの……」
「私は屋敷に帰ってアンナをベッドで休ませる。お前はどうする?」
チラリと横目で見られてしまえば肩を竦めるしかない。
背後には、半死半生の冒険者達が横たわっていた。全員意識は失ってはいるが、かろうじて生きている。
本当にかろうじてってとこが恐いけど。
あの時。
ケアミスに駆け寄るアンナを、彼らがどう思ったのか。
魔族に与する裏切者か魔女とでも捉えたのか。
とにかく、その攻撃は確実にアンナを捉え、そしてその胸を貫いた。
それは致命傷に近くて、死が直前にあったアンナは私の治癒魔法も効かない状態だった。
どうしたらいいのかとオロオロしてたら、ブチぎれて冒険者たちを半殺しにしたケアミスが駆け寄ってきた。
そして、彼は自身の腕を傷つけて、その血をすすり。
迷わずアンナに口移しで飲ませたのだ。
それが何を意味する行為なのか、知らないはずなのに……私には分かってしまった。
それはケアミスの命を分け与える行為。全ての魔族にそんなことができるのか分からないけれど。ケアミスには出来るのだ。
人より丈夫な体をもつ魔族の血を分け与えられた人間は──同じく魔族となる。
ケアミスの血を飲んだアンナは、驚愕する私の目の前で一瞬にして傷が塞がっていった。
そして「熱い!」と叫んで開いたその目は──血のように赤くなっていた。
おそらくは、魔族への変貌の瞬間。それを私は見たのだろう。
アンナはアンナであって、アンナでは無くなったという事か。
胸に飛来するこの複雑な感情の意味を理解する事は出来ない。
考えるだけ無駄と感じた私は、大きな溜め息を一つついて。
冒険者達を治癒するべく背後を振り返る。
それを見ていたケアミスは、そのまま無言で飛び去って行った。
その様を、私は見ることはしなかった──
ギャグ無いです、シリアスです
===============
「────!!」
何かが聞こえる。
「──ナシェリ!!」
聞き覚えがあるような、無いような。
「アンナシェリ!!」
それはハッキリと。
ずっと聞いていたいと思っていた。その声は、私にはとても優しく甘いものだった。
「アンナシェリ!目を開けろ!」
名前を呼ばれるたびに、くすぐったいと感じていたのはいつからだったか。
けれど私はその呼びかけに答える事が出来ずにいた。
聞こえているのに。
確かに聞こえてはいるのに。
体が動かない。
手も……指一本すら、動かせない。
目を開ける事も。
もう、何も出来ない。
呼吸も、もう──
不思議と痛みは無かった。けれど。それはつまり、終わりを意味してるのかもしれない。
死ぬんだろうか。
私はここで。
ケアミスの腕に抱かれて。
──それもいいのかもしれない。
この気持ちはきっと許されないものだから。だからそうと気付かずに蓋をしようとしていた。逃げようとしていた。
けれどやっぱり隠せないものなんだ。
そばに居る事が叶わないのならば、いっそ──
「死ぬな、アンナシェリ!──くそ!」
「ちょっとケアミス、何するのよ!?」
「お前の治癒魔法でもどうにもならないというのなら、この方法しかあるまい!」
「ちょ!えええ!?」
ブシュッと不可解な音がして。
ズッ……と何かをすする音。
そして。
フワリ
唇に感じる、柔らかい感触。
その正体を考える間もなく、何かが口の中に流し込まれるのが分かった。
何かは分からないけど。
分からないけど、分かる。
最後の力を振り絞って、これを飲み込まないと駄目だって事が!
コクン
感覚の無い肉体ではその何かがちゃんと入ったのか分からないけれど。喉を上下させる事が出来たのか分からなかったけれど。
そうでなくても体内に入るしかないのだ、それは。
だっていつまで経っても、唇に触れたそれは離れなかったから。
いつまでも。
いつまでも私の口を塞いでいる、その何か。
私の口中を動き回るそれは、柔らかくて温かくて気持ちよくて……。
ん?
柔らかい。
温かい。
確かに感じるそれ。
体を抱きしめられてる感触に。
後頭部に回されてる手。
全てを感じる?
さっきまでは感覚も無くなっていたというのに、どうした事かそれらが分かるようになってるのだ。
試しにと指先に力を入れてみると。
ピクリと動いた。
「!!」
動く?体が動く?というか、なんだか体が──熱い?
「────かはっ!」
「アンナシェリ!?」
苦しくなって思わずその温もりを押しやれば。ケアミスの驚いた声が聞こえた。
でも私は今、それどころじゃなかった!
だって、だって……なんだか体が変だから!
「あっつ!」
「アンナ!?」
「体が!あっつい!!!!」
燃えるように熱い!なんなんだこれは、体が物凄く熱い!
あまりに苦しくて何かに縋りたくて手を伸ばしたら、その手を掴まれた。
カッと目を見開けば、そこには──
「ケアミス……?」
「大丈夫だ、アンナ。すぐに体に馴染む。少し苦しいが、それも一瞬だから」
何が馴染むと言うんだろう?何を言ってるんだろう?
でも不思議と私の体は落ち着いてきた。ケアミスに抱きしめられて。安心するように。
まだ体は熱いけれど、不思議な安心感に身を委ねる。
「私は……」
「大丈夫だ、もう大丈夫だから」
だから、今はおやすみ。
そう言われて、額に口づけを落とされた直後。
私の意識は闇に呑まれるのだった。
※ ※ ※
昏々と眠り続けるアンナを、大事そうに愛しそうに見つめて。優しく抱き上げるケアミス。
いわゆるお姫様抱っこってやつね。
「ケアミス……アンナは……」
「お前の考えてる通りだ」
「そうなの……」
「私は屋敷に帰ってアンナをベッドで休ませる。お前はどうする?」
チラリと横目で見られてしまえば肩を竦めるしかない。
背後には、半死半生の冒険者達が横たわっていた。全員意識は失ってはいるが、かろうじて生きている。
本当にかろうじてってとこが恐いけど。
あの時。
ケアミスに駆け寄るアンナを、彼らがどう思ったのか。
魔族に与する裏切者か魔女とでも捉えたのか。
とにかく、その攻撃は確実にアンナを捉え、そしてその胸を貫いた。
それは致命傷に近くて、死が直前にあったアンナは私の治癒魔法も効かない状態だった。
どうしたらいいのかとオロオロしてたら、ブチぎれて冒険者たちを半殺しにしたケアミスが駆け寄ってきた。
そして、彼は自身の腕を傷つけて、その血をすすり。
迷わずアンナに口移しで飲ませたのだ。
それが何を意味する行為なのか、知らないはずなのに……私には分かってしまった。
それはケアミスの命を分け与える行為。全ての魔族にそんなことができるのか分からないけれど。ケアミスには出来るのだ。
人より丈夫な体をもつ魔族の血を分け与えられた人間は──同じく魔族となる。
ケアミスの血を飲んだアンナは、驚愕する私の目の前で一瞬にして傷が塞がっていった。
そして「熱い!」と叫んで開いたその目は──血のように赤くなっていた。
おそらくは、魔族への変貌の瞬間。それを私は見たのだろう。
アンナはアンナであって、アンナでは無くなったという事か。
胸に飛来するこの複雑な感情の意味を理解する事は出来ない。
考えるだけ無駄と感じた私は、大きな溜め息を一つついて。
冒険者達を治癒するべく背後を振り返る。
それを見ていたケアミスは、そのまま無言で飛び去って行った。
その様を、私は見ることはしなかった──
0
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」
公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。
忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。
「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」
冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。
彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。
一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。
これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
婚約破棄に、承知いたしました。と返したら爆笑されました。
パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢カルルは、ある夜会で王太子ジェラールから婚約破棄を言い渡される。しかし、カルルは泣くどころか、これまで立て替えていた経費や労働対価の「莫大な請求書」をその場で叩きつけた。
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
王国最強の天才魔導士は、追放された悪役令嬢の息子でした
由香
ファンタジー
追放された悪役令嬢が選んだのは復讐ではなく、母として息子を守ること。
無自覚天才に育った息子は、魔法を遊び感覚で扱い、王国を震撼させてしまう。
再び招かれたのは、かつて母を追放した国。
礼儀正しく圧倒する息子と、静かに完全勝利する母。
これは、親子が選ぶ“最も美しいざまぁ”。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる