引退したオジサン勇者に子供ができました。いきなり「パパ」と言われても!?

リオール

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第四章〜戦士の村

5、

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 懐かしい旧友が住む村にて、その中心部の広場で正座ナウ。

「なんで俺が悪者になってるんだ」
「お前以外にどこに悪者いんだよ」
「理不尽だ! 向こうが勝手にバトルしかけてきたのに!」
「アリーは子供、16歳! お前40代のオッサンだろうが! 大人がなに大人げない事してやがる! しかもお前元勇者だろうが! 魔王倒したんだぞ!?」

 ブーブーと文句を言えば、倍以上の剣幕で言い返されてしまいました。なにこの理不尽きわまりない仕打ち。

「しかも俺の娘になにセクハラしてやがる」
「お前の娘だなんて知るかよ」
「俺の娘じゃなくてもすんな!」
「不可抗力だって言ってんだろ!」

 説教に文句を返せば、正座する足にズンと重みが加わった。

「……なにしてんだお前」
「なにって、ちょうどいい椅子があるから座ってんだろ」
「いやそれ俺の膝」
「なにが悲しゅうて男の膝に座らにゃいかんのだ」
「じゃあ座んなよ!」
「おめえがちっとも反省しないからだろうが!」

 俺の膝に加わった重み、それすなわちガジマルドの巨体である。重いっつーの。
 ぎゃあぎゃあ言ってる俺らを遠巻きに見ているのは、興味津々な村人。それから白い目で見てくるシャティア。

「父をそんな目で見ないでください」
「レオンはレオンであってパパじゃない」

 棒読みで言われると胸にくるもんあるな。
 なんかこう、グサッと刺さるもんが。

 ガジマルドは俺の膝からのきはしたが、パパは怒ってます! って感じで俺を睨んでいる。
 俺はむしろ、背後で微笑み浮かべたままのササラ奥様のほうが恐いんですけど。

 思わず顔をひきつらせた俺。フッと陰って何かと見上げれば、ガジマルドとササラの愛娘であるところの、アリーが立っていた。

「なんだよ」

 お前のせいでこんな公開処刑状態なんだぞ。と、恨みがましく睨めど、気にする風もなくアリーは俺の前にしゃがみ込んだ。目線が同じ高さで合う。
 マジマジと見つめてくるから、思わず体がのけぞった。

「そんなに見るなよ。減るじゃないか」
「なにが?」
「まあ色々と。俺のイケメン度合いとか……あだっ」

 ふざけたこと言ったら、ガジマルドに殴られた。冗談の分からんやつめ!
 しかしアリーは自分の父親の怒りもなんのその、俺を見つめ続ける。いやなんなのその目。言いたいことがあるなら、はよ言え。

「あなた本当に勇者なのねえ」
「は?」
「パパが『親友が来た!』って喜んでたから、ちょっとどんなもんか試させてもらおうと思ったんだけど……ホントに強いや」
「そりゃまあ」

 人間誰だって褒められて悪い気はしない。そしてチョロい俺は、強いと言われて単純に気分が良くなる。チョロ助である。

「おいアリー、そんなこと言ってもこいつは調子に乗るだけだぞ。仕返しなら俺が見張っててやるから存分にやれ」
「おい」

 なに勝手なこと言ってやがる。

「お前それでも俺の親友か!?」
「友情より娘への愛情!」

 ちくしょう! 所詮友情なんてこんなもんだ!
 ブスッとしてたらグイッと顔を正面に向けさせられた。今グキッて言わなかった? ねえグキッて!

「惚れた」
「……は?」

 首が痛いんですが。
 と文句を言おうとした口は、間抜けにポカンと開いたまま動かない。は? しか出せなかった。

「うんごめん、俺ついに耳が遠くなったのかも。今なんて言った?」
「惚れたわ」
「……ガジマルド、俺の耳はついに幻聴をとらえるようになってしまったらしい。いい医者知らないか?」
「奇遇だな、俺も幻聴が聞こえたところだ。ササラ、この村で一番の医者は……」
「あんたら現実見なさいよ」

 俺の聞き返しに、やっぱり同じ幻聴を繰り返すアリー。
 ガジマルドと二人して、こりゃ耳がやばいわ、医者が必要とか言ってたら、ササラに冷たい目を向けられたました。

 ササラの「阿呆か」という目を受けた俺とガジマルドは、同時にバッとアリーを見た。

「わ、二人とも目がでっか」

 さすが親友、同じような反応だね。と言うアリーの言葉を無視して、俺とガジマルドは頬がくっ付くほどの距離で、アリーを凝視。

「「はあ!?」」

 見事にハモるのであった。
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