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第四章〜戦士の村
11、
しおりを挟む魔族の城ってのは、大体が共通して似たような造りになってたりする。設計士が少ないんかな。
理由はどうあれ、そんなわけで攻略は簡単だ。──さすがに魔王城は全然造りが違って、かなり苦労したが。
壁が落ちて来て分断されはしたが、基本構造は大して変わらんだろう。最終的には、どちらの道であろうと同じ場所に出るはず。そのはず。
「どちらかが死亡確定ルートでないことを祈っとくわ」
「縁起でもないこと言うな!」
俺がヒラヒラ手を振って言えば、壁穴から石ころが飛んできた。それをパッと手で受け止めてグシャッと握りつぶす。ガジマルドほどじゃないが、俺だってそれなりに力あんのよ。勇者ですから。
「じゃあまた後で。あんまり遅いと、俺が先に全部片づけちまうぞ」
「ほざけ、こっちのセリフだ!」
俺の言葉に負けじと返すガジマルド。穴から見えるお互いの顔。ニヤリと笑って俺達は背を向けた。
俺の横では「いいの?」といった顔のビータン。多分ガジマルドと一緒のエリンも、同じような顔をしているんだろうな。
「いいんだよ、あいつは大丈夫だ」
馬鹿なことばかり言っているが、俺はあいつに全幅の信頼を寄せている。
それはきっとガジマルドも同じだろう。
だから俺達は疑わない。必ず生きて再会できることを。全員無事に戻れることを。
俺は信じている。
* * *
「……なんとまあ、豪気なこと」
勇者一行が間抜けなやり取りをしているのを、実は見ている人物が一人。
ことの発端である女魔族だ。名を、サティスティファイリュイと言う。「言いにくい」と言われ続けて数百年、略してサティとなったのはほんの百年ほど前のこと。
何と言われようと自分の名前が大好きだったサティスティファイリュイが、略されることを受け入れたのは、誰あろう魔王がその略称を考えたから。
サティスティファ……以下略、は、憧れ尊敬していた魔王に「お前はサティで良いだろう」と言われた日のことを今も覚えている。その瞬間、心が喜びに震えたことも忘れない。それほどの幸せ。
大好きだった魔王を奪ったのは、誰でもない、勇者。そしてその一行。
長らく勇者一行の行方は分からなかったが、ようやく見つけた一人、大戦士ガジマルド。しかし強固な結界に阻まれ、復讐の機会はおとずれなかった。
ずっと見張っていたら、まさかの勇者登場。どうしたものかと逡巡していれば、まさかの結界崩壊。どうやら勇者の気に当てられた上に、戦士が気を抜いたことが原因と思われる。
いや、理由なぞどうでも良かった。ただ復讐の時は来たれり! と立ち上がるまでのこと。
そうしてうまいこと勇者と戦士の娘を手に入れることに成功。
これで何もかもうまくいくと思ったのに。
のに!
「お前たち、なにやってるんだい」
振り返れば奴がいる。そう、配下の魔物たちである。
お気に入りの獣タイプ、モフモフを集めたというのに、癒やしのはずの彼らが今日は癒やしてくれない。
なぜなら全員が、勇者の娘──シャティアとか名乗った──にメロメロだからである。
勇者の娘、まさかのモンスターテイマー。
「お前、おいで」
格別お気に入りの白いモフモフに声をかけるも、イヤイヤと首を振って拒否された。
ガーンッ!!!!
頭を殴られたようなショックをサティは受ける。
「おいでったらおいで!!」
「おばさーん、あんまり怒るとシワになるよー」
「なんですってえ!?」
生意気なことを口にするのは、戦士の娘──アリーと名乗った──である。
そちらもシャティアのおかげか、モフモフに埋もれている。
元々、勇者一行には復讐したいと思えど、それ以外に危害を加えるつもりはないサティ。
とはいえ、人質とは思えぬ身勝手さに怒りMAXだ。だが危害はやっぱり加えたくない。
「あんたたち、そいつらを地下牢に連れて行きな!」
言ったところで、やっぱりイヤイヤされる。
「なんなのよお、あんたたちは!」
サティが意図したわけではなく、勝手に分断してしまった勇者一行。
早く来て! と思うのは身勝手であろうか。
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