【4話完結】聖女に陥れられ婚約破棄・国外追放となりましたので出て行きます~そして私はほくそ笑む

リオール

文字の大きさ
1 / 4

婚約破棄

しおりを挟む
 
 
「ジュリアン公爵令嬢、きみとの婚約は破棄し、僕は聖女ミリーと婚約する」
「そんな……!どうしてですか、バルト様!私の何がいけなかったのでしょう!?」

 婚約者として共に過ごした10年は何だったのか。学園を卒業するめでたき日に、私は王太子から婚約破棄を宣言されてしまいました。

 ですが分かりません、どうしてなのでしょうか。

 確かに聖女ミリー様は金色の髪と瞳を持った神々しいまでの美しさをお持ちです。そしてその癒しの力は教会に属するどれほど高位の神職者よりも強いものです。

 けれど私とバルト様はうまくやっていると思っていたのです。婚約してから10年、18歳になる今の今まで仲良く出来ていたと思っていたのに……。
 私は悲しみに打ちひしがれ、その場に崩れ落ちました。
 きっかけは政略によるものでも、私は心からバルト様を愛していたから。

「だってきみは無能じゃないか」

 そんな私に心無い言葉をバルト様はかけてきました。
 無能?自分が有能だと思った事はありませんが、無能と言われるほどだとは思ってませんでした。ショックで呆然とする私に、バルト様は追い打ちをかけてきました。

「ミリーは癒しの力で国民を救ってくれる。だがきみは何が出来る?ただ僕のそばでニコニコしてるだけだろう?そんな無能、要らないよ」

 要らないよ。そんな簡単に私のことを捨てられるのですね。
 その言葉で何か──私の中の何かがプツンと切れてバキンと音を立てて壊れました。もう……いいです。分かりました、全て受け入れましょう。

 流れる涙を拭い、私は立ち上がります。卒業パーティの場ですから、他の生徒が見てる前でこれ以上情けない姿は見せられません。視界の隅には親しい学友たちが心配そうに私を見てるのが確認できました。
 ああ、情けない姿を見せてしまったわ。

 私は公爵家が令嬢。醜態を晒すわけにはいかない。どのような時でもうろたえることなく、毅然とした態度で……と教えられたではないの。王太子妃としての教育に、幼いころからの公爵家令嬢としての教育で。

 しっかりしなくちゃ……。

 私は一つ息を吐いて、目を閉じ……次に開いた時には王太子を真っ直ぐ見据えた。その目は自分でも分かるくらいに強い光を持っていたと思う。

「分かりました、バルト様。婚約破棄、お受けいたします」
「ジュリアンが受ける受けないを決めるんじゃない。王族である僕の言葉が絶対だ。そんなことも理解できないなんて、本当にジュリアンは馬鹿だな」

 その言葉で私のバルト様への思いはゼロとなりました。いいえマイナスかもしれません。
 卒業パーティ会場の空気がザワリと動いたことを、この王太子は気付いたでしょうか。自分の発言の愚かさを、この王子は理解できてるのでしょうか。

 ──きっと理解できてないのでしょうね。

 王族を絶対と思ってる輩はろくでもないものである。それはこの国では誰もが理解していること。
 王族のために国があり国民が居るわけではない。
 国のため民のために王族が居て貴族が居るのだ。

 勘違いし、王族を絶対と言ってしまったこの王子に……はたして明るい未来があるのだろうか。

 愚か者との婚約が無くなった事を、今は内心喜ぶ。

「お話は終わりでしょうか。せっかくのパーティですので皆が楽しめるよう、空気を入れ替えて……」
「終わりじゃないぞ。ジュリアン、お前は国外追放だ」
「……え?」

 まさかの呼び捨て。そして国外追放の言い渡し。
 言われた事を理解するのに少し時間を要してしまった私は、間を置いて王太子に問い返した。

「国外追放、ですか……?」
「そうだ。無能なくせに聖女を害することだけは出来るようだからな。そんな奴はこの国には不要だ。即刻出て行け」
「……害する?」

 なんのことか分からず首を傾げる私を、心底嫌なものでも見るような目で……目を細め、眉間に皺を寄せて王太子は言った。

「ミリーの悪口を言いふらし、水をかけたり服を破いたりの嫌がらせをしたそうじゃないか。更に階段から突き落としたそうだな」
「そんなことはしておりません」
「嘘をつくな。彼女は聖女で癒しの力があるから怪我は治せたが、心の傷は治らない。彼女は涙ながらに僕に訴えてきたんだぞ」
「ではミリー様の嘘でしょう」
「聖女が嘘をつくはずがないだろう!!」

 全く身に覚えのないことなのでミリー様の嘘だと言えば大声で怒鳴られてしまい、体がビクリと震えた。




しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

前世の記憶を持つ守護聖女は婚約破棄されました。

さざれ石みだれ
恋愛
「カテリーナ。お前との婚約を破棄する!」 王子殿下に婚約破棄を突きつけられたのは、伯爵家次女、薄幸のカテリーナ。 前世で伝説の聖女であった彼女は、王都に対する闇の軍団の攻撃を防いでいた。 侵入しようとする悪霊は、聖女の力によって浄化されているのだ。 王国にとってなくてはならない存在のカテリーナであったが、とある理由で正体を明かすことができない。 政略的に決められた結婚にも納得し、静かに守護の祈りを捧げる日々を送っていたのだ。 ところが、王子殿下は婚約破棄したその場で巷で聖女と噂される女性、シャイナを侍らせ婚約を宣言する。 カテリーナは婚約者にふさわしくなく、本物の聖女であるシャイナが正に王家の正室として適格だと口にしたのだ。

「 この国を出て行け!」と婚約者に怒鳴られました。さっさと出て行きますわ喜んで。

十条沙良
恋愛
この国の幸せの為に頑張ってきた私ですが、もう我慢しません。

嘘吐きは悪役聖女のはじまり ~婚約破棄された私はざまぁで人生逆転します~

上下左右
恋愛
「クラリスよ。貴様のような嘘吐き聖女と結婚することはできない。婚約は破棄させてもらうぞ!」 男爵令嬢マリアの嘘により、第二王子ハラルドとの婚約を破棄された私! 正直者の聖女として生きてきたのに、こんな目に遭うなんて……嘘の恐ろしさを私は知るのでした。 絶望して涙を流す私の前に姿を現したのは第一王子ケインでした。彼は嘘吐き王子として悪名高い男でしたが、なぜだか私のことを溺愛していました。 そんな彼が私の婚約破棄を許せるはずもなく、ハラルドへの復讐を提案します。 「僕はいつだって君の味方だ。さぁ、嘘の力で復讐しよう!」 正直者は救われない。現実を知った聖女の進むべき道とは…… 本作は前編・後編の二部構成の小説になります。サクッと読み終わりたい方は是非読んでみてください!!

冤罪で処刑されることになりましたが、聖女の力で逆に断罪してあげます

霜月琥珀
恋愛
一話で完結します。

【読切】悪役令嬢、営業スキルで馬鹿王子を撃退いたします。〜馬鹿王子&自称聖女、泥まみれで叫んでます〜

Nekoyama
恋愛
婚約破棄!? いえいえ、営業スキルで逆に慰謝料たっぷりいただきます! 平凡OL・恵梨香は、悪役令嬢セシリアに転生。ゲーム通りに婚約破棄されかけたが、冷静対応と契約魔法で王家を一撃KO! 元婚約者アランと元ヒロイン気取りリリスは見事に社会的爆死。 一方セシリアは、推し魔術師オーネスのもとで弟子生活スタート! 平和な塔の上から、ザマァ劇場を高みの見物する爽快逆転ラブコメ!

そのフラグをへし折りまくっていることに気づかなかったあなたの負け

藤田あおい
恋愛
卒業パーティーで、婚約破棄を言い渡されたアリエッタ。 しかし、そこにアリエッタの幼馴染の男が現れる。 アリエッタの婚約者の殿下を奪った少女は、慌てた様子で、「フラグは立っているのに、なんで?」と叫ぶ。 どうやら、この世界は恋愛小説の世界らしい。 しかし、アリエッタの中には、その小説を知っている前世の私の人格がいた。 その前世の私の助言によって、フラグをへし折られていることを知らない男爵令嬢は、本命ルート入りを失敗してしまったのだった。

今まで国に尽くしてきた聖女である私が、追放ですか? だったらいい機会です、さようなら!!

久遠りも
恋愛
今まで国に尽くしてきた聖女である私が、追放ですか? ...だったら、いい機会です、さようなら!! 二話完結です。 ※ゆるゆる設定です。 ※誤字脱字等あればお気軽にご指摘ください。

偽聖女の汚名を着せられ婚約破棄された元聖女ですが、『結界魔法』がことのほか便利なので魔獣の森でもふもふスローライフ始めます!

南田 此仁
恋愛
「システィーナ、今この場をもっておまえとの婚約を破棄する!」  パーティー会場で高らかに上がった声は、数瞬前まで婚約者だった王太子のもの。  王太子は続けて言う。  システィーナの妹こそが本物の聖女であり、システィーナは聖女を騙った罪人であると。  突然婚約者と聖女の肩書きを失ったシスティーナは、国外追放を言い渡されて故郷をも失うこととなった。  馬車も従者もなく、ただ一人自分を信じてついてきてくれた護衛騎士のダーナンとともに馬に乗って城を出る。  目指すは西の隣国。  八日間の旅を経て、国境の門を出た。しかし国外に出てもなお、見届け人たちは後をついてくる。  魔獣の森を迂回しようと進路を変えた瞬間。ついに彼らは剣を手に、こちらへと向かってきた。 「まずいな、このままじゃ追いつかれる……!」  多勢に無勢。  窮地のシスティーナは叫ぶ。 「魔獣の森に入って! 私の考えが正しければ、たぶん大丈夫だから!」 ■この三連休で完結します。14000文字程度の短編です。

処理中です...