【4話完結】聖女に陥れられ婚約破棄・国外追放となりましたので出て行きます~そして私はほくそ笑む

リオール

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国外追放

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 話を聞いてはくれないのだな。
 10年もの間、婚約関係にあった相手の冷たい態度に少し傷つく。でもそんな風に傷つく時間も勿体ないとすぐに気付く。気付いて私は動く事に決めた。

 時間というものは大事なのだ。愚か者に関わってる場合ではない。

 私は無言で頭を下げて、王太子に背を向けた。心配そうに見つめる目が複数。どれも大切な友達だ。
話がしたい。せめて別れの挨拶をしたい。そう思っても、王太子にあらぬ嫌疑をかけられ婚約破棄された私が話しかけては迷惑をかけることになる。
 唇をかみしめて、私は会場を後にしたのだった。

 会場の扉を自分で開けるという屈辱と共に廊下に出る。そこに立っていた人物を目にして、驚いて立ち止まった。

「ミリー様……?」
「あらジュリアン様ではありませんか。どうされたのですか?」

 聖女ミリー。
 まばゆい金髪と金の瞳を持った彼女は、この世に生まれ出でたその瞬間から聖女として崇められてきた。そして彼女はその期待を裏切ることなく、驚愕の治癒の力を発揮させたのだ。
 彼女に治せない怪我や病はない。彼女の力をもってすれば、人の死因は治療が間に合わない即死か突然死、老衰以外ありえなくなった。その力は限りなく神に近いものとなった。

「ジュリアン様?」

 考え込んでいると、不思議そうな顔で覗き込まれてしまった。その顔に他意は無いように見えた。
 私が彼女に悪意ある行動をした……そう王太子は言った。ミリー様が涙ながらに訴えてきたと言った。
 本当に彼女はそんな嘘を言ったのだろうか?無邪気で純粋で……悪意など欠片も感じさせないその瞳を見て、私は真実とは何なのか分からなくなってしまった。

「バルト様が私との婚約破棄を宣言されました。更に私は国外追放だそうです」

 この私の言葉に対する反応で、彼女の真意が分かるだろうか。そう思って私は彼女の挙動を漏らすことなく見ようとジッと目を凝らした。そんな私をキョトンと見つめた彼女は……直後、破顔する。

「まあ!まあまあ!そうですか、そうですのね!婚約破棄!国外追放!」

 輝かんばかりに美しく、思わず目を細めてしまいそうになる眩しい程の笑顔で彼女はそう言った。言って最後にこう言ったのだ。

「おめでとうございます!!」

 その言葉で全てを理解した私は、無言でその場を後にした。
 はめられたのだ、全て仕組まれていたのだ。聖女ミリーによって。
 彼女の目的が何か分からないが……おそらくは王太子の妻の座だろう。そしてそれは後に王妃という座となる。
 王家と公爵家の政略による婚約だった私と王太子だから、当然利があっての婚約だ。それが破談となってなお聖女との婚約は、お釣りがくる程の優良物件だろう。

 悔しい、悲しい、情けない……様々な感情が一気に押し寄せてきた私は、帰りの馬車の中で一人静かに涙を流すのだった。



「一体どういうことだ。なぜ婚約破棄などと……」

 公爵家屋敷に戻ると、怒り心頭の父が出迎えてくれた。もう話が届いてるらしい。つい先ほどの事だ、普通なら有り得ない。つまりそれだけ周到に準備されていたということなのだろうか。
 それほどに王太子は、私との婚約破棄をしたかったのか。そんなにも前から計画されていたのか。

 その事実にショックを受ける。
 婚約破棄を受け入れると決めたのに、心がざわついた。ジワリと涙が滲む。
 涙が零れる前に、フワリと温かい感触に包まれた。父が私を抱きしめてくれたのだ。その優しい腕に抱かれながら、胸に顔を押し付けて、私は静かに泣いた。

「お前は王太子を好いていたからな。さぞや無念であろう」

 父の言葉に私は静かにかぶりを振った。違う、そうではないのだと。この涙はそういう意味ではないのだと。

「もうバルト様への情はありません。これはただただ悔しいのです。今まで努力してきたことを全て踏みにじられたことが……悔しくて仕方ないのです」

 嘘偽りで終わらされた。努力を無駄にされた。悔しくて仕方ない。

「王家を訴えるか?調べればきっと真相は明らかになろう」

 父の言葉に私はまた頭を横に振る。父の胸に顔を埋めたまま、くぐもった声で私は言った。

「いいえ。もうこの国にしがみつくつもりはありません。今はむしろ出てしまいたい。家族や友とのお別れは悲しいですが……寂しいですが、それ以上にもうこの国に居たくはないのです」
「……そうか」

 私の言葉を静かに受け止めて、父は私の頭を解放して涙でぐしゃぐしゃの顔を見た。

「愛しい娘よ。私はお前の望む通りにしよう。どこの国に行きたい?伝手はいくらでもあるぞ。ああそうだ、一つ良いところがある」

 望みを口にする間もなく矢継ぎ早に言葉を紡いだ父は、そう言ってある物を取りに行くのだった。


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