【4話完結】聖女に陥れられ婚約破棄・国外追放となりましたので出て行きます~そして私はほくそ笑む

リオール

文字の大きさ
3 / 4

聖女

しおりを挟む
 
 
 ジュリアン公爵令嬢が無言で立ち去るのを見た私は、そのまま扉の前に立った。何も言わずとも扉の前に待機した者が開けてくれる。私はそれを微笑みながら見つめていた。

 扉が開かれる。パーティ会場の扉が。私は静かに扉をくぐり、しずしずと歩を進めた。

「ミリー!遅かったな、待ちくたびれたぞ!」

 そんな私に大きな声をかけて手を伸ばす存在。この国の王太子であるバルト様だ。

 ──私の獲物、だ。

 手に入れようと思ったのは気まぐれでも何でもない。必要だと思ったから。
 勿論彼自身ではない。王族、王太子、そんな彼だから手に入れようと思った。これまで王太子妃教育を頑張ってきたジュリアン様には申し訳ないけれど……これはどうしても必要なのだから。

 聖女である私には必要なのだから。

 この国はとても平和だ。それはもう欠伸が出そうなくらいに退屈で平凡な日々が続くほどに。

 ──そんなつまらない日々では駄目だと私は思う。

 だってそうでしょう?人々は最初こそ満足感を得るけれど、平和な日々が続き過ぎるとそれが普通になってしまうのだ。幸せだと感じないのだ。
 もっともっと幸せを感じてもらうには、危険な状況に身を置かなくてはいけないわ。

 そして国の発展にもつながらない。平和だと人はどうしてこんなにもボンクラになるのだろう。危険と隣り合わせの日々を送ると、不思議と国は発展するのだ。追い詰められて、良い案が浮かびやすいのかもしれない。

 だから聖女である私は、この国の幸せのため、発展のために動く事にした。
 その第一歩が王太子の婚約者の座だ。ひいては王妃となるために。
 ……いいえ、そうではないわね。



 私が王となるために。



 王となってこの国を率いて見せよう。
 悪を呼び寄せてこの国を危険な目に遭わせよう。賊の類は勿論のこと、魔物もいっぱい呼び寄せよう。なに聖女の力をもってすれば簡単なこと。

 人々は私が癒しの力しかない聖女だと思ってるようだけどそれは大きな勘違いだ。

 聖女の力は無限にある。
 聖なることも悪なることも。聖女には自由自在。
 異国へは無理難題を押し付けるのもいいかもしれない。その結果、国交断絶ともなれば……また知恵を絞り発展するだろう。

 これらを成し遂げるため、阿呆な王太子はこのまま阿呆で居てもらわねばならない。私の傀儡となってもらわねばならない。

 そうして頃合いを見て、隠居させよう。
 それもまた簡単なこと。聖女の力をもってすれば、王太子など簡単に寝たきりに出来る。大丈夫、私は聖女だから。殺しはしない、ギリギリ生かしておいてあげる。

 その後は私が実権を握り、代理の王としてこの国を掌握しよう。

「ミリー、きみを苦しめていた存在は追放したぞ。さあおいでミリー、これからはきみが僕の婚約者だ。僕と共に幸せになろう」
「はいバルト様。貴方様と国のために……私は貴方と共にありましょう」

 ニッコリと微笑めば、王太子は優しく私を抱きしめた。その腕に抱かれながら、私は会場の空気を肌に感じていた。
 王太子への不信感一色の空気を。

 なんの証言もない、非などないはずのジュリアン様を追放した王太子。彼への不信感がヒシヒシと感じられる。
 きっとその不信感はいずれ大きな不満となって爆発するだろう。下手すればクーデターに発展するかもしれない。

発展。

 それもいいかもしれない。素晴らしい発展となるかもしれない。

 ああゾクゾクするわ。
 私は聖女。聖なる力をもった女。
 国のため、人々のため、私はこの力を使いましょう。

 そうして私は王太子の腕の中で、静かにほくそ笑んだ──




しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

醜い私を救ってくれたのはモフモフでした ~聖女の結界が消えたと、婚約破棄した公爵が後悔してももう遅い。私は他国で王子から溺愛されます~

上下左右
恋愛
 聖女クレアは泣きボクロのせいで、婚約者の公爵から醜女扱いされていた。だが彼女には唯一の心の支えがいた。愛犬のハクである。  だがある日、ハクが公爵に殺されてしまう。そんな彼女に追い打ちをかけるように、「醜い貴様との婚約を破棄する」と宣言され、新しい婚約者としてサーシャを紹介される。  サーシャはクレアと同じく異世界からの転生者で、この世界が乙女ゲームだと知っていた。ゲームの知識を利用して、悪役令嬢となるはずだったクレアから聖女の立場を奪いに来たのである。  絶望するクレアだったが、彼女の前にハクの生まれ変わりを名乗る他国の王子が現れる。そこからハクに溺愛される日々を過ごすのだった。  一方、クレアを失った王国は結界の力を失い、魔物の被害にあう。その責任を追求され、公爵はクレアを失ったことを後悔するのだった。  本物語は、不幸な聖女が、前世の知識で逆転劇を果たし、モフモフ王子から溺愛されながらハッピーエンドを迎えるまでの物語である。

森聖女エレナ〜追放先の隣国を発展させたら元婚約者が泣きついてきたので処刑します〜

けんゆう
恋愛
緑豊かなグリンタフ帝国の森聖女だったエレナは、大自然の調和を守る大魔道機関を管理し、帝国の繁栄を地道に支える存在だった。だが、「無能」と罵られ、婚約破棄され、国から追放される。  「お前など不要だ」 と嘲笑う皇太子デュボワと森聖女助手のレイカは彼女を見下し、「いなくなっても帝国は繁栄する」 と豪語した。  しかし、大魔道機関の管理を失った帝国は、作物が枯れ、国は衰退の一途を辿る。  一方、エレナは隣国のセリスタン共和国へ流れ着き、自分の持つ「森聖力」の真価 に気づく……

悪役令嬢に転生しました。何もしてないのに転生ヒロインに原作そのままの悪役にされそうなので先手を打って私が聖女になろうと思います。

下菊みこと
恋愛
性格の悪い転生ヒロインから、ちゃっかり聖女の地位を奪う転生悪役令嬢のお話。 ご都合主義のハッピーエンド。 ざまぁは添えるだけ。 小説家になろう様でも投稿しています。

公爵令嬢ですが、実は神の加護を持つ最強チート持ちです。婚約破棄? ご勝手に

ゆっこ
恋愛
 王都アルヴェリアの中心にある王城。その豪奢な大広間で、今宵は王太子主催の舞踏会が開かれていた。貴族の子弟たちが華やかなドレスと礼装に身を包み、音楽と笑い声が響く中、私——リシェル・フォン・アーデンフェルトは、端の席で静かに紅茶を飲んでいた。  私は公爵家の長女であり、かつては王太子殿下の婚約者だった。……そう、「かつては」と言わねばならないのだろう。今、まさにこの瞬間をもって。 「リシェル・フォン・アーデンフェルト。君との婚約を、ここに正式に破棄する!」  唐突な宣言。静まり返る大広間。注がれる無数の視線。それらすべてを、私はただ一口紅茶を啜りながら見返した。  婚約破棄の相手、王太子レオンハルト・ヴァルツァーは、金髪碧眼のいかにも“主役”然とした青年である。彼の隣には、勝ち誇ったような笑みを浮かべる少女が寄り添っていた。 「そして私は、新たにこのセシリア・ルミエール嬢を伴侶に選ぶ。彼女こそが、真に民を導くにふさわしい『聖女』だ!」  ああ、なるほど。これが今日の筋書きだったのね。

乙女ゲームの断罪シーンの夢を見たのでとりあえず王子を平手打ちしたら夢じゃなかった

恋愛
気が付くとそこは知らないパーティー会場だった。 そこへ入場してきたのは"ビッターバター"王国の王子と、エスコートされた男爵令嬢。 ビッターバターという変な国名を聞いてここがゲームと同じ世界の夢だと気付く。 夢ならいいんじゃない?と王子の顔を平手打ちしようと思った令嬢のお話。  四話構成です。 ※ラテ令嬢の独り言がかなり多いです! お気に入り登録していただけると嬉しいです。 暇つぶしにでもなれば……! 思いつきと勢いで書いたものなので名前が適当&名無しなのでご了承下さい。 一度でもふっと笑ってもらえたら嬉しいです。

地下百階に幽閉された公爵令嬢

夜桜
恋愛
 婚約者の辺境伯ダスクにうんざりしていた公爵令嬢アニスは、婚約破棄を突き付けた。すると、彼はアニスを地下百階にある牢屋に幽閉した。一生地上に出られないと絶望するアニスだったが……。

婚約破棄された王太女は召喚勇者の生贄にされる。

克全
恋愛
ムーア王国のカミラ王女は、そのあまりに醜い容貌に怪物王女と陰で呼ばれていた。それでも前王妃から産まれた第一王女であったので、養子を迎えて女王となるはずだった。だがどうしても女王に成りたい第二王女と、外戚として権力を振るいたいミルズ王国のイザヤ王と、現王妃ゾーイの陰謀で勇者召喚の生贄にされてしまう。 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿させていただいています。

【R15】婚約破棄イベントを無事終えたのに「婚約破棄はなかったことにしてくれ」と言われました

あんころもちです
恋愛
やり直しした人生で無事破滅フラグを回避し婚約破棄を終えた元悪役令嬢 しかし婚約破棄後、元婚約者が部屋を尋ねに来た。

処理中です...