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しおりを挟む私は首を傾げてリリアに言った。
「甘いもの全かけケーキくらいに甘やかす婚約者が居るのに、浮気するのってどうよ」
「浮気じゃないんじゃないですか?」
「浮気じゃないのにデートってなんぞ」
「女性から誘われて断れなかったとか……?」
疑問形じゃないか。リリアにも分からないのに適当なこと言わないでよ。
にしてもよく分からない。私の事が好き?甘やかしてる?でも毎日別の女性とデート?
どういう心境なのよそれ。
男心が理解できない女ですよ。
「ドルンは何か言ってた?」
「俺に聞くな、メッサル様に聞け、だそうです」
「ちっ役に立たないな、やはり明日頬を引っ張る刑を実行だ」
「人の婚約者の頬を伸ばさないでください」
「そんなケチケチしないで」
言ったら、チッチッチ、とリリアは人差し指を立てて横に振った。なんぞ。
「お姉様、メッサル様が女性と二人きりでお出かけされるのを嫌がるならば、人の婚約者の頬を引っ張ってはいけませんよ」
「どうして?ドルンだよ?」
「いくら妹の婚約者であっても、友人であっても、婚約者の女性からすれば良い気はしないものなのです。それが愛のない婚約であっても、それでも自分の婚約者に別の女性が関わってるのは気分が良いものではありません」
「そういうもの?」
「そういうものです。メッサル様に色々な女性が関わるから、お姉様は気分悪かったのでしょう?メッサル様の行動が気に入らなかったのでしょう?同じことをしてどうするのですか」
よく分からないが分かった気がする。
私からすればドルンは幼馴染で妹の婚約者で将来は義弟となる存在。それだけだし話したりスキンシップをすることに何も考えてはいなかったが……そうか、見る立場が違えば、自分の恋人なり婚約者なりが別の女性と親しくしてるわけだから、いい気はしないわけね。
勉強になります。
「リリアってドルンの事が本当に好きなのね」
実はお姉ちゃんの行動にもヤキモチ妬いてたのね。ひゅー、ドルンは幸せ者だあ。
「いえ、あくまで例えとして言っただけですので。別にお姉様とドルンが親しくしてても気にしてません」
「顔赤いよ」
「暑いんです、上着脱ぎます」
「風邪ひくわよ」
「お黙りなさい」
お黙りなさい再び。なんかさっきと逆のやり取りだな。
でもそうか、そうかそうか……
つまるところは、真実が見えないことに問題があるのだな。
「私、メッサル様が女性と居るところを見てはモヤモヤしてたんだよねえ」
「だから好きなんでしょう」
「メッサル様が私に甘いとか考えた事なかったわあ」
「メッサル様不憫」
婚約破棄をしたいと言われたから、思わず受けたし、婚約破棄を父にも進言したけれど……。
「一度、メッサル様とちゃんと話した方がいいのかな」
「そうなさってください」
それで解決するのか、やっぱり破棄したいと思うのかは分からない。
ただ何もせずにこのまま終わりってのは……やっぱり寂しいのかもしれない。
「お姉様が落ち込んでるのは気持ち悪いですし、見てるこちらも悲しくなります」
「慰めてるのか落としてるのか分からん言い方ね」
まあリリアなりに心配してくれたんだと分かるよ。妹の言葉にホッコリする夜であった。
「ちゃらんぽらんなお姉様の性格を受け入れて下さるのは、メッサル様くらいですよ」
「嘘おん」
そんなに私はちゃらんぽらんなのだろうか。と、妹の言葉にショックを受けた夜であった。
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