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1、
膝から崩れ落ちるとは正にこの事だと思った。
私は今見た、見てしまった衝撃のシーンにショックを受けて、文字通り立ってられなくてその場に座り込んでしまったのだ。
衝撃の現場……婚約者である伯爵家が令息、カルシスの浮気現場を。
誰が思うだろう、婚約者が浮気するなんて。人目がつかないとはいえ皆無ではないはずの、王立学園の裏庭の片隅。そんな場所で、婚約者以外の女性とキスをするなんて。
誰が思うだろう、その浮気相手が自分の親友だなんて。
私がそれを見てしまったのは本当に偶然だった。静かな場所で本を読みたいなと思って行ったのが、その場所だっただけのこと。
人の気配を感じて、ああ先客が居るな、それでは別の場所を探そう……と踵を返そうとした瞬間。
耳に飛び込んできた声に足を止めてしまった。
「カルシスも悪い人」
クスクス笑いながら、自分の婚約者の名前を呼ぶ声。
「リメリアもだろう?」
同じくクスクス笑いながら呼ぶ名は、自分の親友のそれ。
どちらも知ってる名前。同じ名前の生徒はおそらく居ないはず。居たとしても二人ともに同じ名前だなんて、そんな偶然あるはずもない。
あるはずもないのだが。
それでも一抹の期待を寄せて、私はこっそり覗き見た。
見て、その場に崩れ落ちたのだ。
婚約者カルシスと、親友リメリアがキスをしてるのを。
それも──ピチャピチャと下卑た音が聞こえてくるほどに濃厚なものだった。
「んん、カルシス……もっとお……」
淫乱にねだるリメリア。それに応えるカルシス。
どう見てもそれは初めてのものではなかった。おそらくは何度も交わされた……。
目の前が真っ暗になる。
どうして?いつから?
いつだってリメリアは私に親身になってくれてたのに。なかなかなじめなかった学園で、初めて出来た友達だったのに。
カルシスとは子供の頃から共に過ごしてきた。お互い親が決めた婚約ではあったけれど、それでも私達は確かに愛し合っていたはずなのに。
そう思っていたのは私だけということ?
親友だと思っていたのも。
愛し合ってる婚約だと思っていたのも。
全て、全て……私の勘違いだったというのだろうか?
「ふあ……ん、駄目よカルシス、そんなとこ触っちゃ……」
「大丈夫だよリメリア。こんなとこ、誰も来ないさ」
「でもお……あん……もう。悪い人ね……あ……もっと……」
「リメリアこそ。淫乱だな」
「言わないでえ……」
更に二人は最悪な事に、もっと酷い行為を始めたのだ。
まさか。
学園で?
いや、問題はそこではないと分かってはいるのだが、麻痺した頭ではまともな思考が働いてはくれなかった。
結局二人は私が見てるのも知らず、最後まで事を及んだのだ。その醜い痴態を最後まで……私は、見てしまったのだった。
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