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最終話 ※テルート視点
しおりを挟む「お帰りなさいませ、テルート様」
「ああ」
可愛くも愛しい婚約者(になる予定)との逢瀬が終わり、王城に戻った俺は、自室に戻る前にとある場所へと向かった。
それは王城の奥深く、ひっそりと……存在を知る者などほとんどいない、特別な地下牢だった。
主に表沙汰にしにくい犯罪者などを入れるそれ。もう長年入った者などおらず、荒れ果て汚いそこは、あいつにはピッタリだと躊躇なく放り込んだ。
──あいつ。カルシス……ではない。
カルシスという男も大概許しがたい存在だったので、ミーシャの希望通り去勢した。まあその前に多少の拷問はしたけれど、それは許して欲しい。
可愛いミーシャと婚約などという、最上の幸運に恵まれたというのに。ミーシャの心を踏みにじり、傷つけたのだ。それくらいしても良いと思う。
で、カルシスは今は男娼の館に居る。それも評判が最悪なところへ入れてやったので、今頃はひっきりなしに男の相手をさせられてることだろう。どれだけもつか──それを予想するのも、また一興。
それくらいで許してやるんだから……自分も随分と甘いものだ。
カルシスの件はそれで終わりだとした自分の甘さに苦笑しつつ、足は地下牢へと向かう。
その先に居るのは──
「変わりないか?」
「は!」
異常ありません!そう言って牢番が俺に啓礼する。
それを一瞥してから、俺は暗い地下牢の中へと目を向けた。
牢の中。
そこに居る、薄汚い存在へと。
本当ならそんなもの、視界に入れたくもないのだが。やむを得ないとはいえ、どうしても顔をしかめてしまう。
コツコツと足音を響かせて、俺は鉄格子の前へと立った。
座り込み、膝を抱えて顔を埋めていた奴が、ふと顔を上げて──俺を確認して、凄い勢いで鉄格子へと飛びついてきた。
ガシャンと無機質な音が響く。
「んー!んむんむむー!!」
「いい様だな、リメリアよ」
そう。地下牢に居たのは、ミーシャのかつての親友で、裏切者で、彼女を殺そうとした大罪人。
リメリアだった。
俺がかつて切った口は、一応の手当てとして包帯が巻かれていた。が、それももうボロボロで汚れている。
「さて。喜べ。お前はもう死んだ事になっている」
ニヤリと笑いながらそう告げれば、一瞬キョトンとした後。
その言葉を理解した瞬間、驚愕で目を見開きながら、鉄格子をガシャガシャと揺らすのだった。その間抜けな様が更に笑える。
「表向きは、公爵令嬢を殺害しようとした罪により処刑。お前の一族も爵位剥奪、追放となった。誰もお前を助けはしないし、そもそも生きてると思ってないわけだ」
「んんんー!!」
しゃべることの出来なくなった愚かな女は、目に涙を溜めて何かを訴える。
だが同情の余地など一片たりともありはしない。俺はただ薄笑いを浮かべるのみ。
「これからはその身をもって、己の罪を理解して生き続けろ。お前だけは絶対に許さない。ミーシャを傷つけた罪、殺そうとした罪。一生をかけて償え」
「んむむ!?」
俺が何をしようとしてるのか。
分からないからこそ、その目に恐怖の色が宿る。
俺は背後に佇む部下に合図した。
頷き、そいつは一旦退室し。程なくして戻る。
数名の人間を引き連れて。
「──!!」
それが誰か。
すぐさま理解したのだろう。リメリアが顔を青ざめさせて後ずさる。
「そうだ。こいつらはお前が誘惑した男の関係者だ。ミーシャのように婚約者を寝取られた女性、夫がお前と関係を持ち夫婦仲が破綻した妻、はては父親がお前との肉欲に溺れ家庭が崩壊した娘……」
それだけではない。
「お前は色々貢がせてたみたいだな。破産した男もいる」
まあこれは男の方も自業自得ではあるが。この際関係ない。
「お前の淫乱さが招いた不幸の数々。その被害の数は膨大だな」
恨みの内容は様々だ。だが、八つ当たりであろうと逆恨みであろうと……皆、リメリアに復讐したいという気持ちは同じだ。
どいつもこいつも……悪鬼のごとき形相でリメリアを睨んでいた。
蒼白な顔で後ずさるリメリア。だが牢内の壁が無情にもそれを阻む。
「拘束しろ」
俺は部下に命じる。
「ん──!?」
牢屋の扉が開けられ、数名の部下がリメリアを拘束する。動けない状態の彼女を冷めた目で見降ろした後。
俺はリメリアに恨みを持つ面々に顔を向けた。
「好きにしていいぞ」
それだけを伝え、俺は地下牢を後にした。
頷いた者たちが手に持つ獲物を、視界の片隅に認めて。
「んんん──!!!!」
心地よい、リメリアの悲鳴を最後に耳にして。
唇が弧を描くのを止める事が出来ないまま、俺は地下牢を後にしたのだった。
可愛い可愛い、愛しいミーシャ。
美しいキミを認めた瞬間、すぐにキミだと分かったよ。やはり運命だと思った。
あの時の俺の喜びの大きさ、どれだけのものか分かるかい?
なのに。
キミに婚約者が居ると知ったときの俺の絶望。その深さをキミは理解してるかな?
許せなかった。
あの屑二人はけして許さないと決めた。
許せなかった。
俺の事を忘れていたキミを。
だから俺は誓う。
キミを苦しめたやつらは地獄に落とす。
そしてキミは。
俺無しでは生きれないくらいに、俺に夢中にさせてみせよう。
そんな俺の心情を。
キミは永遠に知る事は無いんだろうね──
~fin.~
===あとがき===
最後までお読みただきありがとうございました。
あれ、随分ダークな終わりになったな…。テルートの闇が深い(◎_◎;)
婚約破棄だけで終わらなかったのはミーシャもでしたね。
まあミーシャは溺愛されて幸せになることでしょう。多分。
色々なご意見ありがとうございました。
相も変わらずの未熟さを痛感しつつ、次の作品に繋げていけたらよいなと思います。
ギャグかダークかどうしようと悩んで、程々のを今回は目指したつもりが失敗してる感があります。
ので、次は思い切りギャグかダーク、になるでしょう。と言いつつ、また実験的な話になるかもしれません。
予定は未定。
またご縁がありましたら宜しくお願い致します<(_ _)>
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てルート殿下いいー♡
結婚編読んでみたいです
一気読みさせて貰いました!
私は一途な重い愛、大好きなのでテルート好きです(*/▽\*)キャッ
ヤンデレ最高派なので最後までめっちゃ楽しく読めました!
ありがとうございました(..◜ᴗ◝..)
感想ありがとうございます(^-^)
テルートを受け入れてくださるとは…嬉しいです!急にヤンデレが書きたくなるのです(^-^;
こちらこそお読み頂きありがとうございました!
ヒロインが好きになれない...
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