悪役令嬢にざまぁされるのはご免です!私は壁になりました。

リオール

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26、愛妹が読む本を一度チェックしようと決意しました

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「次はメンバーを入れ替えませんか」

 シュリエッタ様のお家──つまりは公爵家所有の別荘で休憩&昼食をとってるとき。

 私はいつになく真剣な顔をしていた。
 事は深刻だ。いやホントに。

「何よ急に。何が不満なのよ」
「不満しか無い!一度あの空間を体験してみ!?降りる頃にはゲッソリするわ!」
「痩せれて丁度いいじゃない」
「ぬおおおぉ!!」

 チェイシーは絶対楽しんでるだろ!人の不幸は蜜の味ってか!貴様悪役令嬢か!

 原作のキャラ設定がおかしくなってる気配を感じながら、頭をかきむしっていたら。

「仕方が無い。私達の馬車に来るがいい」
「あ、ヘルンドル様は結構です」

 謹んでご辞退申し上げます。

「いっそ男女に分かれるなんてのどうっすかね」

 折角の道中、女子会しよーぜ。
 私の提案はキュリアス様の死にそうな顔で却下された。なんで。グリンマルト以外のメンズと一緒は死ねと言われるようなもんてか、そうだね、分かるわ。

「ではこんなのはどうでしょうか」

 ポンと手を打つシュリエッタ様の提案に、反対する者はおりませんでした。
 そんなわけで。

 女子四人は1台の馬車に。やったね!
 キュリアス様とグリンマルトが1台に。ごめんね!
 そして

「わーカオスぅ」

 ヘルンドル、ムサシム、メンテリオスという、ある意味ちょっと様子を見てみたい。でも中に加わるのは絶対嫌!

 そんな空間の出っ来上っがり~!

 そうして馬車が走り出してからしばらくして。

「では、風魔法を……」

 走り出してすぐ、私は楽しい女子会馬車を楽しむべくいそいそとポッキー……とは言わないけど、前世ではそう呼んでいたのに似たお菓子を取り出す。
 チェイシーの氷魔法のかかった保冷バッグに入れてるから、夏でもチョコが溶けなくて最高だぜ!

 そうしてポリポリ食べてたら、シュリエッタ様が何やら風魔法を唱え始めた。

 すると

『ちょうどいい、前々から聞きたいと思っていたのだ。この機会にお前の本心を話せ、メンテリオス』
「ふごっ!?」

 ポッキーを詰まらせかけて、慌ててお茶を飲む。

 な、なになになに!?
 なんでヘルンドルの声が聞こえるわけ!?

「ふふ、風魔法にはこういう使い方もあるんですのよ」

 そう言って微笑むシュリエッタ様の右手の平……上に向けられた掌の上に光の玉が浮いている。どうやら声はそこから聞こえてくるようだ。

『本心と言いますと?』
 メンテリオスの声だ。

 つまりこれはあれだ、風が奴らの馬車の声を届けてくれると──盗聴じゃねーか!!

「風が勝手に声を運んでくれるだけですわ。私は風を起こしてるだけですのに。うふふふ……」

 恐っ!黒シュリエッタ様恐い!

 そうか、なんか納得いった。
 原作のアイシュラがざまぁされるとき。
 悪役令嬢に仕立て上げようとして、シュリエッタ様を断罪しようとした時に。彼女は様々な証拠を用意して反論してきたのだ。その中に音声記録もあったとか。
 この方法でやってたのかー!

 そりゃ聞かれちゃまずい会話も、簡単に記録魔法で録音されちゃうわなあ。ざまぁされるわなぁ。

 端から原作アイシュラに勝ち目はなかったのだ。

 横に座る1歳下のアミュキューラよりも幼く見える少女は、けれど見た目で判断すると痛い目見るよをしかと教えてくれる存在でした。
 くわばらくわばら……

 恐れおののく私を尻目に、暑苦しい男子会の会話は続く。

『とぼけるな。お前がアイシュラをどう思ってるかに決まってるだろうが。なぜいつも私の邪魔をする』

 こうやって真剣に話してるとヘルンドルもまともそうなのになあ。どこで間違った。

『便箋100枚のラブレターなんてアイシュラ様が読むわけないでしょ。無駄な努力が可哀想なので燃やして差し上げたんです。感謝してくださいよ』

 前言撤回、ヘルンドルはやっぱりヘルンドルだ。そしてメンテリオスグッジョブ!

 私の知らないところで、意外と執事らしく頑張ってくれてたのか。ちょっと見直す。ヘルンドル恐い。

「だんだんお兄様は危ない人になってきましたわね」

 溜め息をつくチェイシー。妹としても流石に見逃せないよね。
 いっそ氷漬けにでもしては如何でしょうか。

「後の宰相候補としては優秀なんですけどねえ」

 シュリエッタ様も困った顔をする。
 将来キュリアス様の側に立つ人材として、どうすべきか悩ましいところなんだろうなあ。

「お姉さまは魔性の女というやつなんですわね」

 なんか一人楽しそうなんですけど。サラッと恐いこと言わないでアミュキューラ……。

『ヘルンドル、アイシュラ嬢はどう頑張ってもお前には振り向かんぞ。俺が保証する』
『そんな保証いらんわ!』

 ムサシム様は相変わらず良いこと言うなあ。
 こんな素敵な人、他に無いよ。婚約解消やめませんか、チェイシーさんや。

「あ、婚約解消はもうほぼ決まったよ」
「え、マジか」

 まさかのチェイシーの言葉に、皆が目を見はる。
 えええ、聞いてたとはいえ急展開!

「夏休み明ける前には正式に文書交わすと思うから。アイシュラ、大変だろうけど頑張ってね~」

 何が!?
 婚約解消するのはチェイシーでしょうが!
 私に何を頑張れと!?

 不吉な予言を残して、チェイシーはポンポンと肩を叩くのだった。

「お姉さまは魔性の女なんですわ。素敵……先日読んだ本と同じだわ……」

 アミュキューラ、だから恐いこと言わないで!私が言えた義理じゃないけど、そんな本読まないでええぇぇ!







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