吸血鬼公爵に嫁いだ私は血を吸われることもなく、もふもふ堪能しながら溺愛されまくってます

リオール

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第一部

10、吸血鬼と使用人(2)

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「ヨシュは恐くなかったんですか?」

 素朴な疑問をぶつけてみる。
 公爵の人となりを知る前に、まず吸血鬼へのイメージから普通は敬遠するはずなのに。

 まさか攫われてきたとかだったら、とりあえず公爵往復ビンタ。
 決意してビンタの準備してたら。

「あ、僕初代様からずっとお仕えしてるので」

 とか爆弾投下してきましたわ。
 初代って!

 何百年前の話ですか!

 え、ひょっとしてヨシュって……

「ヨシュって……もしや吸血鬼ですか?」

 いや待て、吸血鬼は他にも存在するだろうけど希少で群れないと聞いたことがある。その話が嘘でないなら、ヨシュが吸血鬼って事はないか。

 となると。
 一つの可能性が頭をかすめる。
 吸血鬼が居るところに、かの者あり……

「まさか……狼男?」
「せ~いか~~~~い!すごい、フィーリアラ様って賢いんですね!」

 もっと褒めて!
 とかちょっと喜んでる場合ではなくて。

 あー狼男かあ……そうか~そうなのか~狼男って長寿だったのね~知らなかったわ~

 なんかちょっと遠い目になってしまった。

 ……ヴァンパイアにウルフマンっていうと、どちらも恐ろしいイメージあるんだけどなあ。
 カタカナにするとかっこよく感じるのになあ。

 遠くなってた目を近くに向ける。

 モフモフわんこを抱きしめた吸血鬼。
 ニコニコと人の良さそうな顔してる狼男。

 なんだこれ、としか感想出ませんでした。






「一つお聞きしてもよろしいでしょうか」

 気持ちを切り替えて、少し真面目な話をしましょう。
 絶対に確認しておくべき事を聞かなくては。

「なんなりと」

 答えるヨシュに頷く公爵。

 緊張で口が重くなる。ひょっとしたら地雷となるかもしれない質問に、知らず頬を汗が一筋流れる。

 深呼吸一つ。
 よし!

「ゼル様は……血を吸われるのですか?」
「ぐはあ!」

 もういーよそれ。
 名前呼んだだけですやん。
 なんで顔赤くして胸押さえてハアハアしてますのん。
 ランちゃんがものっそ引いてますやん。

「も、もう一度呼んで……」
「呼びません」

 なんか変態が現れた。呼ぶか!リクエストすな!呼ぶか!(2回言う)

 会話が出来ない公爵は置いといて。
 代わりにヨシュが「あ~」と答えてくれた。

「そうですよねえ、やっぱそこ気になりますよねぇ」
「ものすごく」

 気になります!

 ウンウンと頷いていたら、苦笑するヨシュ。

「まあ……始祖とは違って孫であるゼル様は、人の血の方が多くその身に流れておられますが。一応血は飲まれます。というか、飲まないと生きれません」

 んやっぱりかあ!!!

 内心頭を抱える。
 覚悟してたとはいえ、それはやっぱりちょっとキツイ。

 かすかに見える口元の尖った歯。それはやっぱり……そのため、なんだろうなあ。
 
 ということは。

「やはり私は……生贄なんでしょうか」

 ちょっと悲しくなってしまった。

 好みど真ん中の吸血鬼公爵は、やっぱり吸血鬼で。
 血を飲まないと生きていけない吸血鬼で。

 人間とは相いれないんだと思うと。
 私とは共に生きれない存在なんだと痛感すると。

 なぜか、胸がとても苦しくなった。
 なぜか涙が出そうになった。

 その理由を、私はまだ知らない──






 
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