虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?

リオール

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裏2-2、婚約者にざまぁ

 
 
「一体どうしたんだモリア、その格好は……何かあったのか?」

 そうですよね、気になりますよね。
 姉の今の姿……裸体にシーツを巻いただけの状態なんて、尋常ではない。しかも庭の隅に建てられた小屋から出てきたのだ。

 何があったのかと心配するのも当然というもの。

 そもそもどうして王太子がこんな所にいるのかしら?

「あ、あ……こ、これはその……」

 どう言い訳して良いのか分からず、どもるモリアに王太子が近づいてきた。お付きの者に何やら命じてから。
 側近たちは慌ただしく屋敷の方へと向かって行った。メイドでも呼びに行ったか、それとも親かしら?

「大丈夫かい?」

 気遣うように姉に近付き、自身が着ていた上着を彼女にかける。優しく思いやりのある王太子。
 だがそんな気遣いすら、今の姉には重たいのだろう。出来れば早く何処かへ行って欲しい。その思いが彷徨う目から伺い知れた。

「あ、その……だ、大丈夫です。アルンド様こそ、どうしてこんな所に?門から真っ直ぐ屋敷へと向かわれなかったのですか?」

 門から屋敷の一本道を辿れば、こんな庭の片隅に行き着くはずもない。
 絶対王太子がこんな場所に来るわけ無いのだ。

 誰も、何もしなければ。

 だがその問いにキョトンとして首を傾げたのは王太子の方だった。

「え?モリアがこっちに来てくれと言ったんだろう?門番からモリアがこっちに居ると……こちらに来るように言ってると聞かされたのだけど」
「は────?」

 音がすればザッと聞こえそうな勢いで、血の気が引く姉。
 次いで、凄い勢いで私を見る。

「ミレナ!あんたまさか──!!」
「あ~そう言えば。さっき門番にお姉様の場所を教えたかもしれません。ついでにアルンド様をお姉様の居る場所に案内するよう、お父様に言われた……気がしたので、門番にそう伝えた……かもしれませんねえ」

 気がしただけですけど。
 かもしれない話ですけど。

 だからスッカリ忘れてましたよ。そうかそうか、それで王太子がこんな所にやって来たのですね。これで全てのつじつまが合いました。

「ミレナ?ミレナって……妹君のかい?そう言えばその髪色、確かにミレナ嬢だね。これまた見すぼらし姿で分からなかったよ。その姿は一体?」

 ああそうでしたそうでした。王太子が来られる時は基本的に小屋にこもってろって言われてるんですよね。絶対会わないように。だから素直に休憩がてら小屋に戻って来たんでした。

「ご無沙汰しております、アルンド様。このような格好で失礼しますことお許しください。これには色々事情がありまして……そこは我が公爵家の私的な事ですのでご容赦くださいますよう……」
「ふうん?まあいい、どうでもいい」

 表立って私を疎ましくしてるような態度は出さないけれど、やはりこの容姿は好ましくないのだろう。あまりまともに会話したことない王太子は今日も塩対応だ。

「で、モリア。きみはどうしてそんな恰好を──」

 再び王太子の詰問が向かい、ビクッとなるモリア。
 だが言い訳をするより早く。

 絶体絶命のピンチは訪れる。

「う~ん……い、一体何が起きたんだ……」

 ガラガラと瓦礫をかき分け小屋の中から出てきた人物。
 その姿。

 この場に居た者が一斉にそちらに目を向けて。

 全員が全員、固まるのだった。

「は!?え、は!?ええ!?あ、アルンド様!?」

 気絶から覚醒したばかりのベニート。
 彼は。
 完全なる裸体。
 何も身につけてない状況で、出てきたのだった。ぎゃああ!目が腐る!!

「ベニート!?その格好は一体……!?」
「え、あ、いや、これはその……!!」

 思わず私は目を背けたけれど、王太子は目ん玉ひん剥いて叫ぶのだった。

「ベニート!そしてモリア!お、お前たち二人揃って裸で……!!」
「ちちち、違うんですアルンド様!違うんです!」
「何が違うんだモリア!この状況が全てを物語っているだろう!お前たちまさかそういう関係なのか!?」
「いいいいや、違うんです!俺はモリアに誘惑されて無理矢理……!!」
「馬鹿!黙りなさいよ大馬鹿!!」

 本当に大馬鹿だ。
 誘惑されたとか無理矢理だとか。

 今そんな事は関係ないのだ。きっかけなんてどうでもいいのだ。

 王太子にとって大問題なのは、二人が『そういう関係』であることなのに。

 もうこれで言い訳は通用しなくなった。ベニートが関係を認めたのだから。

「ベニート!!貴様こんな事をして許されると思うなよ!侯爵家もろとも覚悟しておけ!」
「ち、違う!違うんです!俺はただモリアと共に裸の体操をしてただけで……!!」
「黙れ!この痴れ者が!!」

 裸の体操って!
 それ、余計な想像力を掻き立てるだけじゃない!!

 ベニートって本当に痴れ者ねえ。知ってたけど。

「違う、違うの、違うのよう!無理矢理……そう、脅されて仕方なく!仕方なくなんです!!」

 悲鳴のように叫んで泣き崩れる姉を一瞥し。
 もはや慰めの言葉など一つも出す気のない王太子は、汚らわしいものを見る目で姉を見下ろすのだった。

「覚悟しておけモリア。私を──王家をコケにしたのだ。公爵家も覚悟しておけ!」
「そんな!待ってくださいアルンド様!待ってええぇぇ!!!!」

 鬼の形相で足早に立ち去る王太子。
 シーツ一枚で必死に追いかけるモリア。
 大急ぎで服を着るベニート。

 嵐は去り、私はようやく服を着終わったベニートに近付くのだった。

「ベニート」
「なんだよ!?」

 八つ当たりのように私に怒鳴っても、もう全ては取り返しつかなくなったのよ。分かってるのかしら?

 殴りかかって来そうな勢いのベニートから絶妙な距離を保ったまま、私は言った。

「どうやら貴方との結婚、無くなりそうね」
「──!!」

 そしてニッコリと微笑み。
 告げた。

「良かったわ」




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