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エピローグ
しおりを挟むバサリと書類の束が机に置かれた。
分厚いそれを読み終えた王子が、小さく息を吐いた。
「疲れましたか?」
「いや。実に面白かった」
気遣えば、笑みと共に言われた言葉にこちらもクスリと笑ってしまった。
「そんなもの読んで面白いですか?」
「面白いよ。キミが虐げられてる箇所は実に腹立たしかったけど。それに対してのキミがやったこと……実に痛快だったよ」
「そうでしょうか」
シュタウト国が第一王子アーロン。
黒い前髪をかき分けて、一口紅茶をすする様は実に絵になる。
そんな彼と共に王宮に住むことになった私、元ボランジュ国公爵令嬢のミレナ。
その私が彼に渡した書類は、これまでの人生に関する記録だった。
幼い頃から今に至るまで、どのような人生を送ったか。
どうしてそんなこと知りたいのかよく分からないが、教えて欲しいと言われたので書いたまでのこと。話すと長くなるからねえ。──結局書く方が疲れたんだけどね!
にしても、私が虐げられてた話と『ざまぁ』する話なんて、本当に面白かったのかしら?
もし私が王子の立場なら──ドン引きすると思うんだけどな。
「姫様も何かお飲みになりますか?」
王子にお代わりを用意しているメイドが、笑みを浮かべて私に問うてきた。
その申し出自体は嬉しいのだけど。
けど!
「姫様?」
「その呼び方!やめてぇぇ!!!!」
あまりに恥ずかしくて、机に突っ伏すわ!
なぜかこのシュタウト国王城に来てからというもの、皆が皆、私のことを姫様と呼ぶ。
私、そんないいものじゃないんですけど!?
「姫様ですから姫様ですわ」
「何その理屈!」
「貴女様は確かにこのシュタウト国王家の血を引くお方ですもの。姫様以外の何者でもありません」
反論しようと思ったけれど、そそくさと新しい紅茶を用意すべく部屋を出て行くメイド。
残された私は、パクパクと口を動かすことしか出来なかった。
そんな私をクスクス笑うのはアーロン王子だ。
「いい加減に慣れたらどうだい?」
「そんな簡単に慣れるものではありません」
公爵家でもお嬢様扱いされてなかった私が、お姫様扱いされて平然としてられますか!
「まあそう言わずに」
「うひゃあ!?」
憮然とする私の頬をスッと撫でる手に思わず叫んだ。セクハラすなあ!
「お姫様呼ばわりが嫌なら──奥様と呼ばれる方がいいかな?」
「はい?」
「いずれは王妃様と呼ばれたら……うん、その方がいいかもね」
「なんの話ですか?」
「ん~?未来の話?」
なぜに疑問に疑問形で返すんですか。
それ以上問い詰めても答えてくれそうにないので、はあ……とため息をついておく。
「もういいです。とりあえずこれはもういいですか?」
虐げられてた私のざまぁ記録。
こんなものは闇歴史そのものだ、すぐに廃棄すべきだろう。
そう思って書類に手を伸ばしたら、その手を取られた。
「なん──」
「いや、これは残しておこう。実に面白かったから」
「ご冗談を。こんな闇歴史──」
「これがあれば、王妃を侮辱すれば酷い目に遭うぞと分かるだろ?」
「いやもう、何の話だか──」
「というわけで、これは書籍化して皆に配ろうと思う」
「はあ!?」
待て。
待って。
真剣に待って。
「いや、なんの嫌がらせ……」
「それが嫌なら、今から俺と一緒にお茶しようね」
「はい?」
「でもって、明日は一緒にお忍びで街にくりだそうか?デートしよう」
「はい?」
「他にも一緒に色々しようね。ずっとずっと」
「あ、私用事を思い出しました。帰ります」
「ミレナ」
なんか空気が不穏になってきたぞ。
すっくと立ちあがった私は、けれど背後から伸ばされる腕に絡めとられた。
「逃がさないよ」
耳元で囁かれる声に、腰砕けになりそうなのを必死で耐えながら。
あ、これ逃げれないやつだ。
そう覚悟しながらも、本気で嫌だと思ってない自分に苦笑するのだった。
私の人生記録が風に舞うのを視界の片隅で認めながら。
満面の笑みで、王太子の顔を見つめて──
思い切り頬をつねってやった。
~fin.~
===あとがき===
ちょっとダラダラしてしまったなと反省です。
ラストざまぁは何とも…思ってた以上にダークになりました(苦笑
ちなみに書いてませんが、ボランジュ国は一夜にして国民の半分が亡くなりました。助かった人々は、少なからずシュタウトが嫌いではなかった人達。国としては排除しても、一枚岩で全員が嫌ってるなんてこと、ありえませんから。その辺を、特に選民思想が強かった王家と貴族が勘違いしてたこと。それが間違いの始まりですね。おそらく残ったボランジュは隣国シュタウトに吸収となるでしょう。
妹のカンナに関しては、最も罪が軽いかなと思いましたので死の描写はしておりません。
もしかしたら生きてるかもしれないし、そうでないかもしれない。それはお好きな方にご想像いただければと。
次は短くショートショートが書きたいなあ…分かりませんが。
またのご縁がございましたら宜しくお願い致します。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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