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路地に消えた犯人
情報屋
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五人目の訪問者は、白髪に銀縁眼鏡をかけ、A4サイズの茶封筒を小脇に抱えた中年の制服警官だった。
「お久しぶりです、睦美さま」
そういうと、制服警官は帽子を脱ぎ、流れるように頭を下げた。
「あら、伊庭さん、早いですね」
睦美は立ち上がり時計を見る。時刻は午後四時になろうかというところだった。
「申し訳ありません。ちょうどこちらに用がありまして」
「そうなんですか。それにしても珍しいですね、伊庭さんがくるなんて」
「そうですね、こうして顔を合わせるのも、二年半ぶりになりましょうか。この事務所も、またにぎやかになったようで」
「にぎやか過ぎる時もありますけど。架純くん、久能くん、こちらは伊庭諭之吉さん。亥口くんの同僚よ」
それを聞き、手持ち無沙汰に立っていた久能と架純は「はじめまして、久能といいます」「架純です」と頭を下げる。
「これはどうも、伊庭と申します」
「私はこのビルの管理人で、四季島っていーます。どーもよろしくです」
四季島は椅子に座ったまま、ひょこりとお辞儀をした。それに伊庭も、礼儀正しく「はじめまして」と返す。
「四季島さんなら心配なさらずに。信頼できる人物です」
その言葉に、「私、口は堅いんで」と四季島は親指を立てる。
「かしこまりました。それでは、これが依頼されていた資料になります」
そういうと、伊庭は茶封筒を睦美に手渡す。睦美は「ありがとうございます」といい、それを受け取る。
「中身、確認させていただきます」
「どうぞ」
睦美は茶封筒から、分厚い資料の束を取り出し、パラパラとめくってゆく。久能たちは、黙ってその様子を見つめている。
「さすがです、伊庭さん」
睦美は茶封筒に書類を戻し、そういった。
「いえいえ、優秀な同僚たちのおかげです」
「お代は、今お渡ししますか?」
「それは後日、うちの新人が受け取りに参ります」
「あら、新人さん。それは楽しみ」
「最近の若者で、どうも抜けたところもありますが、優秀な奴ですから」
この人がいうのだから、その新人というのも優秀なのだろう、そう思わせる説得力があった。
「どうです、お茶でもしていきませんか? 久しぶりにお話したいこともありますし」
「すいません、時間があまりないもので。それはまたの機会にということで」
「そうですね、楽しみにしておきます」
そこで初めて、伊庭は柔和な笑みを浮かべた。
「そうそう、これは普段お贔屓にしていただいているお礼なんですが……」
伊庭は思い出したようにそういうと、ポケットから折りたたんだメモ用紙を取り出して睦美に差し出す。
それは睦美にしては予期していなかったことのようで、ちょっと不思議そうな顔でメモに目を落とす。
「手に入れたばかりの情報です。裏が取れていないので、信頼度はEといったところですが、よろしければお使いください」
「亥口くんから?」
「いえ、私からです。それから捜査本部は、現在、誘導員の周辺を中心に捜査を進めています」
それを聞き、睦美は一つ息を吐く。そして「ずいぶんと耳が早いのね」と微笑んだ。
「それが仕事ですので。それでは、またなにかありましたらご利用ください」
そういうと、伊庭はドアの前に立ち頭を下げた。そして帽子を目深にかぶって出ていった。
ゆっくりと閉まるドアを見ながら、久能は伊庭の穏やかな目の奥にある鋭さを思い出していた。
「お久しぶりです、睦美さま」
そういうと、制服警官は帽子を脱ぎ、流れるように頭を下げた。
「あら、伊庭さん、早いですね」
睦美は立ち上がり時計を見る。時刻は午後四時になろうかというところだった。
「申し訳ありません。ちょうどこちらに用がありまして」
「そうなんですか。それにしても珍しいですね、伊庭さんがくるなんて」
「そうですね、こうして顔を合わせるのも、二年半ぶりになりましょうか。この事務所も、またにぎやかになったようで」
「にぎやか過ぎる時もありますけど。架純くん、久能くん、こちらは伊庭諭之吉さん。亥口くんの同僚よ」
それを聞き、手持ち無沙汰に立っていた久能と架純は「はじめまして、久能といいます」「架純です」と頭を下げる。
「これはどうも、伊庭と申します」
「私はこのビルの管理人で、四季島っていーます。どーもよろしくです」
四季島は椅子に座ったまま、ひょこりとお辞儀をした。それに伊庭も、礼儀正しく「はじめまして」と返す。
「四季島さんなら心配なさらずに。信頼できる人物です」
その言葉に、「私、口は堅いんで」と四季島は親指を立てる。
「かしこまりました。それでは、これが依頼されていた資料になります」
そういうと、伊庭は茶封筒を睦美に手渡す。睦美は「ありがとうございます」といい、それを受け取る。
「中身、確認させていただきます」
「どうぞ」
睦美は茶封筒から、分厚い資料の束を取り出し、パラパラとめくってゆく。久能たちは、黙ってその様子を見つめている。
「さすがです、伊庭さん」
睦美は茶封筒に書類を戻し、そういった。
「いえいえ、優秀な同僚たちのおかげです」
「お代は、今お渡ししますか?」
「それは後日、うちの新人が受け取りに参ります」
「あら、新人さん。それは楽しみ」
「最近の若者で、どうも抜けたところもありますが、優秀な奴ですから」
この人がいうのだから、その新人というのも優秀なのだろう、そう思わせる説得力があった。
「どうです、お茶でもしていきませんか? 久しぶりにお話したいこともありますし」
「すいません、時間があまりないもので。それはまたの機会にということで」
「そうですね、楽しみにしておきます」
そこで初めて、伊庭は柔和な笑みを浮かべた。
「そうそう、これは普段お贔屓にしていただいているお礼なんですが……」
伊庭は思い出したようにそういうと、ポケットから折りたたんだメモ用紙を取り出して睦美に差し出す。
それは睦美にしては予期していなかったことのようで、ちょっと不思議そうな顔でメモに目を落とす。
「手に入れたばかりの情報です。裏が取れていないので、信頼度はEといったところですが、よろしければお使いください」
「亥口くんから?」
「いえ、私からです。それから捜査本部は、現在、誘導員の周辺を中心に捜査を進めています」
それを聞き、睦美は一つ息を吐く。そして「ずいぶんと耳が早いのね」と微笑んだ。
「それが仕事ですので。それでは、またなにかありましたらご利用ください」
そういうと、伊庭はドアの前に立ち頭を下げた。そして帽子を目深にかぶって出ていった。
ゆっくりと閉まるドアを見ながら、久能は伊庭の穏やかな目の奥にある鋭さを思い出していた。
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