探偵の作法

水戸村肇

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trace and theorize

モーニングルーティン

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 枕元で震える音で、久能連三郎は目を覚ます。
 時刻は午前六時ちょうど。
 久能は洗面所で歯を磨き、顔を洗う。
 それから台所で朝食づくり。今日はトーストにベーコンエッグをのせたもの、それにサラダにジャスミンティー。
 それらを手にリビングへ。
 FMラジオを聴きながら、トーストこをひとかじり。とろける白身とベーコン、塩コショウの味が口のなかで混じりあう。
 うん、いい感じだ。
 久能は明日の朝食のメニューを考えながら、食後のジャスミンティーの香りを楽しむ。
 そうこうしていると一時間。ラジオから聞こえてくるのは、朝のニュース。

『本日未明、美野愛みのい市にある菜籾なもみ旅館で発見された……』

 久能と架純が遭遇した路地で起きた殺人事件から、今日で二週間が経っていた。
 久能や架純への疑惑の目は、夷藤という交通誘導員の存在により即座に否定されたといっていい。
 けれど大方の予想に反し、その後に犯人が捕まったという報道はなされていない。

『被害者は二十代とみられる男性で……』

 探偵という職業は、依頼人がいなければ成り立たない。そして依頼人がいなければ動けない。
 関係もないのに勝手に首を突っ込むことは、現実世界における探偵の仕事ではない。
 現実と物語は違うのだ。この一ヶ月ほどでそれがわかった。と同時に、やりがいのあることもわかった。
 なので久能も架純も気にはしながらも、自ら進んで調べるということはなく、報道で触れる程度にとどめていた。

『また現場からは遺書のようなものが見つかっており……』

 久能はジャスミンティーを飲み干し、食器類を手に台所へ。
 そこで久能は今日が燃えるゴミの日だということを思い出し、まとめておいたゴミ袋の封をして部屋を出た。

『遺書の内容から、警察は今月、明日原市で起きた殺人事件との関連を……』

 朝の短いニュースは終わり、無人の部屋に軽やかな洋楽が流れだす。こうして久能の一日は始まった。
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