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櫻花荘に吹く風~103号室の恋~ (8)
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静かな台所でおむすびを握りながら、春海は珍しく難しい顔をしていた。
どう考えても、このところの由野の様子はおかしい。いくら鈍感だといわれる春海でもおかしいと思うほど、故意に避けられている気がするのだ。
朝は声を掛けても締め切りが近いから部屋で食べると言われ、お盆に自分の分の朝食を乗せてそそくさと自室へ戻ってしまう。
昼は昼で途中で集中力を切らしたくないからと、ひと息吐いた時に食べられるようなものを、何か用意して置いてくれればいいと言われる始末。そればかりか、今日のようにおむすびを頼まれた時には、図書館へ出掛けたまま夕食時まで戻って来ない事もあった。
「ボク、また気付かない内に何かしちゃったのかな……」
広げてあったラップの上に海苔を巻いたおむすびを乗せた春海は、親指についていた飯粒を舌先でペロリと舐め取りなら、小さく溜息を吐いた。
昔から、自分では普通だと思っている行動が、他人には面白くなく取られる事を知っている。流石に高校や専門学校では、小中学校の頃のような子供染みた嫌がらせをされる事は無かったけれど。
『お前ウゼーんだよ! その顔で俺の事見んなよな』
『だっせえーまだそれやってんの? 俺だったらそんなのぱぱっと終わるぜ?』
子供の頃に投げ掛けられた言葉の数々が思い出される。
俯く事しか出来なかった春海に、その度観月は
『あいつら春海と仲良くなりたいんだぜ? ガキだよなー』
そんな風に言って慰めてくれたけれど、それは単に慰めなのだという事は理解していた。
観月が割って入って来てくれる度に、舌打ちと共に去って行った級友達の姿に、益々悲しくなった事を思い出す。
スローペースでドジな春海は、格好のからかいの的だっただけなのだと思う。きっと由野も、料理しか取り得の無い、それも素人料理に毛が生えた程度の物しか作れない自分に、ひと月以上同じ屋根の下で暮らして来た今、愛想を尽かしたのだろう。
(……あれ…何だろう? 何か、涙出そうかも)
どれだけ悲しくたって、寂しくたって、あの頃は一度だって泣いた事は無かったのに。由野に嫌われてしまったのかもと思っただけで、鼻の奥がツンと痛くなる。
「春ちゃん、おにぎり出来たかな?」
「っ、あ、はいっ、今荒熱冷ましてたんで、後は包むだけです」
「そっか、ありがとう」
今包みますね、そう言いながら慌ててラップに包んだ小さめのおむすびを3個手渡すと、ここ数日の態度の変化からしては珍しく、由野がじっと春海の顔を見つめてくる。
その視線が居た堪れなく感じて、春海は顔を俯け前髪を指の先で数度引っ張った。これは小さい時からの春海の癖だ。緊張したり、落ち着かない気分の時に、思わず出てしまう。
以前勤めていた料理店では 「今から食材を扱おうとしている手で髪を触るな」 と、料理長から何度も指摘されたのだけれど、直そうと思ってもなかなか直るものでは無かった。
「何かあった?」
「え? 何も、無いですよ?」
「……そう、なら良いんだけど――ちょっと、元気ないような気がしたから。おにぎり、ありがとね。じゃあ、行って来ます」
「あっ、い、いってらっしゃい!」
由野が自分のことを気に掛けてくれた。嫌われている訳ではないらしい。そう感じられるような久々の遣り取りに、たったそれだけの事で、あんなに悲しかった気持ちがあっという間に浮上してくる。
背を向け掛けた由野の背中に満面の笑顔で声を掛けた春海へと、チラリと視線を流した由野がもう一度小さな声で 「行って来ます」 と告げてダイニングを後にする。
由野の表情までは春海には見えなかったけれど、耳が少し赤かったような気がした。
「今日は朝から暑いもんね、図書館行くのは正解かも」
浮上してきた気分のまま、春海は一人納得すると、序でに自分のお昼もおむすびにしようと呟きながら、鼻歌交じりに台所へと戻るのだった。
けれどその日の夕食も、結局由野には部屋で食べると言われてしまい。
昼間に一度風船のように膨らんだはずの気分が、再び空気が抜け出していくかの如く萎れていく。
(一緒にご飯、食べたかったな……)
二人分の用意しか無い食卓を眺めながらしゅんとする春海に、向かいに腰を下ろした観月が声を張り上げた。
「超美味い! 春海、これまた今度作ってよ、すっげえ好きかもこれ」
「みっちゃん……ありがと」
明らかに春海を気遣っての事だと分かる大きな声に、春海も小さく笑みを返した。
今日のメニューは肉が食べたいという観月のリクエストに応えて、チキン南蛮。このところ仕事に根を詰めている風の由野の事が気になって、疲れが取れると言われている酢を使えるメニューをと考えた結果である。
一部ではタルタルソース等で食する地域もあるようだけれど、春海のこのメニューは母親直伝のものだった。
薄くスライス玉葱と人参をボールに入れ、煮立たせとろみをつけた、醤油ベースの甘酢タレを熱いまま注ぎ入れる。包丁を入れて1センチ程の厚さに伸ばした鶏モモ肉に、薄く衣を付けてざっと揚げ、食べ易い幅に切った後ざく切りにしたレタスを敷いた皿に盛る。その上から、先ほどタレに漬けておいた野菜をタレごと掛ければ完成だ。
小鉢用には刻み納豆を乗せたミニ豆腐。箸休めには旬のグリンピースを茹で、出汁と塩で味を整えた翡翠煮も準備した。
ご飯は梅とシラスを混ぜ込んだサッパリ味。
おかずに合わせて、吸い物にはキノコをたっぷり入れたサンラータン風の中華スープ。
昼の浮かれた気分のまま、あれもこれもと思い浮かべたメニューをずらりと作った。それなのに、一番見たかった顔が、食卓には無くて。
その事にがっかりしている自分に気付きながらも、春海にはどうしても気持ちを切り変える事が出来ない。
(またみっちゃんに気を遣わせちゃったよ……ダメダメじゃん、ボク)
もそもそと箸を動かしながら、観月の声を聞くとも無しに聞く。
ここ最近、三人以上で食卓を囲んでの賑やかな夕飯というものから、だいぶ遠ざかっているように思う。
基本夜の仕事である北斗と共に夕食を食べられるのは、彼の休みの日だけ。杉田も今では週に数度しか帰って来ない。
観月はなるべく春海と一緒に食べられるようにとシフトを調整してくれているのだが、それでも遅番勤務の時もあるのが現実で。
六人は楽に座れるダイニングテーブルに、独りぽつんと座って食べる夕飯は寂しい。
母子二人きりでの生活を過ごして来た春海にとって、ここでの生活が始まって一番嬉しかったのが、大勢で食卓を囲めるという事だった。
くだらない話やその日の出来事を話しながら、自分の料理に舌鼓を打ってくれる。それが凄く楽しくて、春海は皆の話をにこにことしながら聞いているのが好きだった。
けれど今は、観月と二人。ともすれば一人きりでの食事。
母親と二人で生活をしていた頃にはさほど思わなかった一人での食事が、どれほど味気ないものかという事を、春海は櫻花荘に暮らして初めて知った。
「……あーもう!」
「え? 何? 何か言った、みっちゃん?」
それまで飯粒を飛ばす勢いで話し続けていた観月が、突然箸を置いて立ち上がった。
落ち込んでいる春海の気持ちを盛り上げようとしてくれているのだという事を分かっていながら、話の大半を流し聞きしていた春海は、ハッとして観月の姿を目で追う。
台所へと行った観月は麦茶とグラスを2つ持って戻って来ると、自分の席には戻らずに春海の隣へと腰を下ろした。
「――みっちゃん?」
「そんなに、由野さんの事が気になるのか?」
「えっと、気になる、っていうか……ただちょっと、寂しいなぁって、思って。最近一緒にご飯食べてくれないし、ボク、何かしちゃったのかな……」
怒らせてしまったかと思った観月からの思わぬ優しい問い掛けに、春海も食事の手を止める。俯きがちになりながらも、ずっと心に抱えていた思いをぽつりぽつりと吐き出せば、膝に置いた手の甲へ言葉と共に零れ落ちた水滴がひとつ、弾けた。
どう考えても、このところの由野の様子はおかしい。いくら鈍感だといわれる春海でもおかしいと思うほど、故意に避けられている気がするのだ。
朝は声を掛けても締め切りが近いから部屋で食べると言われ、お盆に自分の分の朝食を乗せてそそくさと自室へ戻ってしまう。
昼は昼で途中で集中力を切らしたくないからと、ひと息吐いた時に食べられるようなものを、何か用意して置いてくれればいいと言われる始末。そればかりか、今日のようにおむすびを頼まれた時には、図書館へ出掛けたまま夕食時まで戻って来ない事もあった。
「ボク、また気付かない内に何かしちゃったのかな……」
広げてあったラップの上に海苔を巻いたおむすびを乗せた春海は、親指についていた飯粒を舌先でペロリと舐め取りなら、小さく溜息を吐いた。
昔から、自分では普通だと思っている行動が、他人には面白くなく取られる事を知っている。流石に高校や専門学校では、小中学校の頃のような子供染みた嫌がらせをされる事は無かったけれど。
『お前ウゼーんだよ! その顔で俺の事見んなよな』
『だっせえーまだそれやってんの? 俺だったらそんなのぱぱっと終わるぜ?』
子供の頃に投げ掛けられた言葉の数々が思い出される。
俯く事しか出来なかった春海に、その度観月は
『あいつら春海と仲良くなりたいんだぜ? ガキだよなー』
そんな風に言って慰めてくれたけれど、それは単に慰めなのだという事は理解していた。
観月が割って入って来てくれる度に、舌打ちと共に去って行った級友達の姿に、益々悲しくなった事を思い出す。
スローペースでドジな春海は、格好のからかいの的だっただけなのだと思う。きっと由野も、料理しか取り得の無い、それも素人料理に毛が生えた程度の物しか作れない自分に、ひと月以上同じ屋根の下で暮らして来た今、愛想を尽かしたのだろう。
(……あれ…何だろう? 何か、涙出そうかも)
どれだけ悲しくたって、寂しくたって、あの頃は一度だって泣いた事は無かったのに。由野に嫌われてしまったのかもと思っただけで、鼻の奥がツンと痛くなる。
「春ちゃん、おにぎり出来たかな?」
「っ、あ、はいっ、今荒熱冷ましてたんで、後は包むだけです」
「そっか、ありがとう」
今包みますね、そう言いながら慌ててラップに包んだ小さめのおむすびを3個手渡すと、ここ数日の態度の変化からしては珍しく、由野がじっと春海の顔を見つめてくる。
その視線が居た堪れなく感じて、春海は顔を俯け前髪を指の先で数度引っ張った。これは小さい時からの春海の癖だ。緊張したり、落ち着かない気分の時に、思わず出てしまう。
以前勤めていた料理店では 「今から食材を扱おうとしている手で髪を触るな」 と、料理長から何度も指摘されたのだけれど、直そうと思ってもなかなか直るものでは無かった。
「何かあった?」
「え? 何も、無いですよ?」
「……そう、なら良いんだけど――ちょっと、元気ないような気がしたから。おにぎり、ありがとね。じゃあ、行って来ます」
「あっ、い、いってらっしゃい!」
由野が自分のことを気に掛けてくれた。嫌われている訳ではないらしい。そう感じられるような久々の遣り取りに、たったそれだけの事で、あんなに悲しかった気持ちがあっという間に浮上してくる。
背を向け掛けた由野の背中に満面の笑顔で声を掛けた春海へと、チラリと視線を流した由野がもう一度小さな声で 「行って来ます」 と告げてダイニングを後にする。
由野の表情までは春海には見えなかったけれど、耳が少し赤かったような気がした。
「今日は朝から暑いもんね、図書館行くのは正解かも」
浮上してきた気分のまま、春海は一人納得すると、序でに自分のお昼もおむすびにしようと呟きながら、鼻歌交じりに台所へと戻るのだった。
けれどその日の夕食も、結局由野には部屋で食べると言われてしまい。
昼間に一度風船のように膨らんだはずの気分が、再び空気が抜け出していくかの如く萎れていく。
(一緒にご飯、食べたかったな……)
二人分の用意しか無い食卓を眺めながらしゅんとする春海に、向かいに腰を下ろした観月が声を張り上げた。
「超美味い! 春海、これまた今度作ってよ、すっげえ好きかもこれ」
「みっちゃん……ありがと」
明らかに春海を気遣っての事だと分かる大きな声に、春海も小さく笑みを返した。
今日のメニューは肉が食べたいという観月のリクエストに応えて、チキン南蛮。このところ仕事に根を詰めている風の由野の事が気になって、疲れが取れると言われている酢を使えるメニューをと考えた結果である。
一部ではタルタルソース等で食する地域もあるようだけれど、春海のこのメニューは母親直伝のものだった。
薄くスライス玉葱と人参をボールに入れ、煮立たせとろみをつけた、醤油ベースの甘酢タレを熱いまま注ぎ入れる。包丁を入れて1センチ程の厚さに伸ばした鶏モモ肉に、薄く衣を付けてざっと揚げ、食べ易い幅に切った後ざく切りにしたレタスを敷いた皿に盛る。その上から、先ほどタレに漬けておいた野菜をタレごと掛ければ完成だ。
小鉢用には刻み納豆を乗せたミニ豆腐。箸休めには旬のグリンピースを茹で、出汁と塩で味を整えた翡翠煮も準備した。
ご飯は梅とシラスを混ぜ込んだサッパリ味。
おかずに合わせて、吸い物にはキノコをたっぷり入れたサンラータン風の中華スープ。
昼の浮かれた気分のまま、あれもこれもと思い浮かべたメニューをずらりと作った。それなのに、一番見たかった顔が、食卓には無くて。
その事にがっかりしている自分に気付きながらも、春海にはどうしても気持ちを切り変える事が出来ない。
(またみっちゃんに気を遣わせちゃったよ……ダメダメじゃん、ボク)
もそもそと箸を動かしながら、観月の声を聞くとも無しに聞く。
ここ最近、三人以上で食卓を囲んでの賑やかな夕飯というものから、だいぶ遠ざかっているように思う。
基本夜の仕事である北斗と共に夕食を食べられるのは、彼の休みの日だけ。杉田も今では週に数度しか帰って来ない。
観月はなるべく春海と一緒に食べられるようにとシフトを調整してくれているのだが、それでも遅番勤務の時もあるのが現実で。
六人は楽に座れるダイニングテーブルに、独りぽつんと座って食べる夕飯は寂しい。
母子二人きりでの生活を過ごして来た春海にとって、ここでの生活が始まって一番嬉しかったのが、大勢で食卓を囲めるという事だった。
くだらない話やその日の出来事を話しながら、自分の料理に舌鼓を打ってくれる。それが凄く楽しくて、春海は皆の話をにこにことしながら聞いているのが好きだった。
けれど今は、観月と二人。ともすれば一人きりでの食事。
母親と二人で生活をしていた頃にはさほど思わなかった一人での食事が、どれほど味気ないものかという事を、春海は櫻花荘に暮らして初めて知った。
「……あーもう!」
「え? 何? 何か言った、みっちゃん?」
それまで飯粒を飛ばす勢いで話し続けていた観月が、突然箸を置いて立ち上がった。
落ち込んでいる春海の気持ちを盛り上げようとしてくれているのだという事を分かっていながら、話の大半を流し聞きしていた春海は、ハッとして観月の姿を目で追う。
台所へと行った観月は麦茶とグラスを2つ持って戻って来ると、自分の席には戻らずに春海の隣へと腰を下ろした。
「――みっちゃん?」
「そんなに、由野さんの事が気になるのか?」
「えっと、気になる、っていうか……ただちょっと、寂しいなぁって、思って。最近一緒にご飯食べてくれないし、ボク、何かしちゃったのかな……」
怒らせてしまったかと思った観月からの思わぬ優しい問い掛けに、春海も食事の手を止める。俯きがちになりながらも、ずっと心に抱えていた思いをぽつりぽつりと吐き出せば、膝に置いた手の甲へ言葉と共に零れ落ちた水滴がひとつ、弾けた。
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