櫻花荘に吹く風~103号室の恋~

柚子季杏

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櫻花荘に吹く風~103号室の恋~ (完)

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 著作の中では何度と無く表現の一環として書いてきた。
 けれど由野にとっても、同姓とこうした関係を実際に結ぶのは初めての事。本当にその場所が感じるのか、どういった反応を示すのかを実際に経験した事は無かっただけに、春海の示す反応に安堵の息を吐いた。
「見付けられて良かった……春ちゃん、一緒に気持ち良くなろうね」
「由野さ……ん、一緒…に――ふ、ぁ、ああっ」
 二本の指で拡げた隙間に、三本目の指を挿し入れながら、由野が春海の強張った肩へ、項へと唇と舌を使って想いを伝える。
 小さな窄まりからはぐちゅぐちゅという濡れた音が響き、身体の強張りが解れると共に内襞が柔らかく蕩け出して、由野の指へと纏わりついてきた。

 慣れないながらもひとつずつ春海の快感の源を探り出しながら、由野は春海の内に挿し入れた指を動かし続けた。蕩けた内襞が絡み付く感触が、まるで既に自身の欲望を突き入れているような錯覚すら起させる。
 銜え込ませた三本を動かして先ほど見付けたばかりの敏感なポイントを擽れば、春海の腰が揺れ動く。その度に硬度を保ったままの春海の昂りから溢れ出した蜜が、由野の布団に染みを広げていく。
「ぁ、あっ、由野さ、由野さん」
「春ちゃん…ごめんね、僕もそろそろ、限界」
「ぇ――ぁ……」
「これを、君のここに……春ちゃんとひとつにならせて欲しい」
 初めて体験するキャパシティを超えた快楽に翻弄されるまま声を上げる春海の、きつくシーツを握り締めていた手を取ると、由野は自身の滾ったものへと導いた。
 春海の痴態を目の当たりにしていただけで、十分過ぎるほどに育った熱い塊に触れた春海の手が、恐々と、けれど その形を確かめるようにスライドする。その刺激にぶるりと身を震わせた由野の尖端から、扱き出された欲望が溢れ出て、春海の手を淫らに濡らしていった。
「すご、ぃ――ボクのと、全然違う……」
「く……春ちゃ、そんなにしちゃ、駄目だよ」
「ふあっ! あ、んっんぁ!」
 甘く蕩けたその声に、春海の手に握られた熱棒が質量を増す。
 奥歯を噛み締める事で波を逃がした由野が、おいたをした子を叱るように、内に差し入れたままだった指をぐるりと回しながらひと息に引き抜いた。

「春ちゃん…春海――力、抜いてて……」
「ひっ――ぅ、んっ…はっ、あ、あ、あっ」
「……きっつ――」
「―――ッ」
 指を引き抜かれた事で、物足り無そうにヒクヒクと収縮する小さな蕾の入口へと、尖端の滑りを馴染ませるように擦り付けた由野が、そのままゆっくりと身を進めていく。
 十分に慣らしたつもりでいた蕾はそれでも尚狭く、指よりも太い欲望の証を飲み込ませていく作業は容易ではなかった。
 一気に奥まで占領してしまいたくなる衝動を堪えて、それでも由野なりの最大限で春海を気遣いながら、少しずつ、少しずつ路を抉じ開けて行った。
「っ、は……全部、入ったよ…分かる?」
 たっぷりと時間をかけて収めた由野の屹立が、春海の入口を限界にまで押し広げている。
「ぁ、由…野さ――熱……じんじん、する――」
「……だから、あんまりそういう事言っちゃっ駄目だってば――これでもかなり、我慢してるのに」
「お腹の中、由野さ、で、一杯……嬉し……」
「ッ、ごめん、まだ辛いかもしれないけど、もう無理だ――動くよ?」
 涙の滲んだ瞳で幸せそうに微笑まれ、やっとの事で埋めた熱棒が脈動を刻む。熱の篭もった荒い息を吐き出した由野は、切れ切れに言葉を紡ぎ出すと同時に、腰を動かし始めた。
 入口は狭くてきつきつだというのに、一歩内へと踏み込んだ先は熱く蕩け、細かな嬬動を繰り返しながら由野を更に奥へ引き入れる動きを繰り返す。柔らかく包み込んでくる粘膜が熱棒に絡み付き、直ぐにでも放ってしまいたくなりそうな甘い疼きを由野は必死で堪えた。
「あっあっ、んあっ由野さ、ヤ、変、ボク――ああっ」
「春海…名前、呼んで――僕の名前、呼んで欲しい」
「ひっ、ん…あ、ゆ、譲さ、譲さんっ」
 最初は探り探り動かしていた腰の動きが、徐々に速さを増していく。きつい締め付けを振り切りながら、少しずつ力強いストロークでの抽送へと切り替えて行く。
 挿入されても萎えること無く昂ったままの春海の欲望へと手を回した由野は、穿つリズムで蜜に塗れて濡れる屹立を扱き立てた。

 二人から立ち昇る熱と荒い呼吸が満ちる部屋の中に、淫猥な水音が響く。
 滑る春海自身は、由野から与えられる刺激にくちゅくちゅと新たな蜜を零し続け、熱棒を埋めた蕾からは、由野から溢れた想いが潤滑剤のようになってその動きを助けていた。
「春、春海――っ…は、ぁ……もっと、もっと呼んで、春海っ」
「あッああっ、譲、さ……ぁっ、譲さ…んぅぅ」
 耳の後ろを吸い上げながら由野が春海の名を呼べば、その度内襞が喜びを表すように震えて熱棒を締め付ける。
 熱く蕩けた内側が絡み付いて、由野の全てを奪おうと襞のひとつひとつが細かな収縮を繰り返した。

 自らの名がその赤く濡れた唇から紡ぎ出される音が心地好くて、強請れば強請るだけ由野の声に応えようとする春海が愛しくて。
「ひぁっ、ああ、そこ、駄目…譲さ、駄目っ」
「良いよ、イっても――」
「ゃ、ヤダっ嫌、だっ……譲さ、待って、ヤダぁ」
「……春海? 春ちゃん、どうした? 痛かった?」
 先ほど指先が見付けた春海の敏感なポイントを、熱棒の括れで押し上げるように動きを繰り返す由野へと、春海が震える腕を差し向けてくる。
 今までの甘えた否定の言葉と違う響きを持つ切羽詰ったその声に、由野の動きが止まった。

 他人と身体を重ねる行為が初めてであろう春海に対して、無理をし過ぎてしまっただろうか。
 由野の顎を伝い落ちた汗が、春海の染みひとつ無い背にぽとりと落ちる。その僅かな刺激にすら背を撓らせる春海が、整わない呼吸のままゆっくりと由野へ顔を向けて寄越した。
「ゃ、だ……」
「春海?」
「これ、この格好、嫌……譲さんの顔、見えないの…ヤダ――」
「――ッ、春……くそっ、何でそんな、可愛い事ばっかり言うかな」
 繋がった苦しい体勢のまま、由野へ向き直ろうと必死に身を捩る春海を、由野は背後からきつく抱き締めた。
 柔らかな粘膜に包み込まれたままの熱棒が弾けてしまいそうな衝動の波を、眉根を寄せて遣り過ごす。
「んっ、あっ! ああっ、あ、あ、譲さッ」
「これなら、良い?」
 離すまいと収縮を繰り返す蕾からひと息に自身を抜き取った由野が、春海の身体を仰向けへと回転させた。
 力の抜けた両脚を抱え上げた由野は、閉じ切れずにひくひくと蠢く小さな入口へと、再び灼熱を突き入れる。時間を掛けてゆっくりなどという心配りは出来なかった。それでも柔らかいままの内側は、性急な突き上げにも柔軟に応える。
「あっ譲さん、譲さん…好き、好き――」
「はっ、ん……春ちゃん、春海――僕も、好きだよ」
 向かい合わせのこの体勢の方が、春海に掛かる負担は大きい筈なのに。それでも安心したように由野の背を掻き抱く腕が、求められている事の証明のような気がして、由野にはその腕の強さが嬉しかった。
「あぅ、んっ、譲、さ……も、もう、ボク、ボク」
「ん、僕も、もう……っく」
「っ、ふ、ぁあ―――ッ!」
 春海のポイントを擦り上げながら、ひと際奥を目掛けて穿つ。
 それに合わせて限界まで膨らんだ春海の昂りを、尖端を引っ掻くようにしながら扱き上げると、春海の身体が一瞬の硬直を見せた直後に大きく撓った。
 吐き出された白濁とした蜜が色付く両の尖りを濡らして行く様が、言いようの無い興奮を由野へと運んでくる。
 由野を包み込む内襞も、由野の全てを飲み込もうとするかのように、きつく熱棒を締め上げ、その心地好さの導くままに、由野もまた春海の最奥へと熱い想いの全てを注ぎ込んだのだった。






 ―― あれから2年。

 あの時書いていた話は、雑誌掲載でそれなりの反響を得た様で。編集部へと届いたアンケート葉書では、受けの三好が可愛いという声が多数寄せられた。
 アンケート葉書のコピーを見せた時には流石に気恥ずかしそうにしていた春海だったけれど、先日書き下ろし付きで発行されたノベルズを、わざわざ自腹で購入してきたらしい。
 書いている本人ですら書店での購入は気後れしてしまうというのに、どんな顔をして買って来たのかと思えば、由野の口元は自然と緩む。

(今も可愛いけど、あの時の春ちゃん、可愛かったな……)
 思い出すのは由野の腕に包まれて、穏やかな寝息を立てていた春海の姿。
 指先で擽るようにして頬を撫でると、閉じていた睫毛がふるっと震えた。目覚めて真っ赤な顔をしながらも視線をしっかりと合わせて寄越した春海が、掠れた声で告げた朝の挨拶。
 初めての行為の影響で立って歩くのがやっとだった春海に寄り添い、あの日は由野と春海は並んで朝食の準備をしたのだった。
(我ながら、あれは不味かったよな……)
 春海の指導を受けながら作ったはずの朝食は、お世辞にも美味しいとは言えない出来栄えで。
 不恰好に刻まれた野菜を箸で摘んだ観月からは、白けた眼差しを向けられた事まで、序でに思い出してしまう。

「……今日の夕飯は出前取るぞ」
 出された食事をひと口食べた瞬間に告げられた観月の言葉と呆れたような眼差し。
「観月くん――」
「みっちゃん、あの、あのね……ありがと」
「ふんっ、礼なんて言われるような事何もしてねえよ。それより夕飯、俺ピザね。シーフード。支払いは由野さんね」
「え……わ、分かった」
「――――まあ、食えなくはないけどさ……」
 それだけ言って再び箸を動かし始めた観月に、春海と由野は赤らんだ顔を見合わせて微笑んだ。
 多くを語らずとも二人の仲を取り持ち、認めてくれた観月の優しさが伝わって来る。口に出して言うのは憚られたけれど、必ず幸せにするからと、観月に向かって、由野は心の中でひとつ頭を下げたのだった。



(まさか自分が、同性相手に恋に落ちるなんてね)
 春海に出会う前の由野には考えられない自身の変化が、今はこんなにも幸せな日々を与えてくれている。
 少し冷めたマグカップのお茶を啜った由野が、台所へチラリと視線を送った。相変わらずちょっとばかり外れた音程で鼻歌を歌う春海が、楽しそうに朝餉の用意をする姿が微笑ましくて、見ているだけで笑顔が浮かぶ。
「由野さん、目玉焼きとオムレツ、どっちがいいです?」
「そうだなあ……目玉焼きが食べたいかも」
「了解でーす!」
 視線に気付いた春海からの問い掛けに答えた由野の後ろから、爽やかな風が吹き抜けた。
「うわ、いい風……天気いいなあ」
 振り返り見遣った窓の外、桜の木の上に広がる梅雨明けの青空。大きく枝葉を広げた桜が風に揺られてさわさわと揺れ動く。
 濃く色を変えた桜の葉に反射した光の粒子が、煌きながら室内へと差し込んできた。
「夏が過ぎて、秋が来て、冬が訪れて……また春が巡る、か――」

 桜の大木が見守り続ける櫻花荘。
 気の良い仲間と愛しい相手。
 ここで出会い、この場所で過ごす幾つもの季節。
 願わくばいつまでも、こうして共に過ごして行きたい。



「よしっ、完成! 皆に声掛けて来ますね」
「あ、待って春ちゃん」
「何ですか? ――ッ、由野さっ!」
「皆が来てからじゃ出来ないからね」
 廊下へ向かおうとする春海を手招きで呼び寄せた由野が、首を傾げる春海の唇を軽い音を立てて奪う。
 おはようの挨拶だよと片目を瞑る由野に、頬を赤く染めた春海が照れ隠し代わりに由野の胸元をひと叩きして飛び出して行く。

「朝ご飯出来たよー! みんな、起きてー!」
 階段下で叫ぶ春海の声に、二階の扉が次々に音を立てる。
 いつもと変わらない朝の風景が、また、始まる。


 ―― 下宿処『櫻花荘』 
       花の季節が終わっても
          恋の花が散る事は無し ――



 ◇ end ◇
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