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01 : 待ち望んでた婚約破棄です!
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「っっ、おいっ、アリス!!一体何処へ行こうと言うんだ!!」
私の部屋の扉を勢いよく開けて、息を切らせながら声を荒げる小太りの男。
髪はボサボサで顔にはニキビが多く、権力だけが唯一の取り柄のこの男。
不本意ながら私の夫、ロイド=グレイス伯爵だ。
「何処って……。新たな嫁ぎ先ですが、何か?」
「なっ……!!」
怒りと悲しみが混ざったような顔で、引き攣った驚きの声を上げる。
いや、そもそもこの離婚の話、貴方が前から言ってた事でしょうが。
というのもこの伯爵は、この街一帯を治める貴族ロイド家の長男なのだが。ロイド家の借金のかたに出された私を、スタイルが気に入ったとかいう理由で引き取ったのだ。
両親の店の経営が上手くいかず出来てしまった借金の足しになるならと、かたに出される分には嫌な気持ちはなかったのだが、嫁ぎ先がこの男というのが悪かった。
口は悪く何の取り柄も無いくせにプライドだけは無駄に高く、揚げ足を取ろうものなら小一時間怒鳴られたものだ。
ーーそして前日、この家で開かれた立食パーティーの折。
酒臭い息を吐きながらグレイスが私に言った一言が。
「お前俺に釣り合わないわ。この家出てってくれ」
……だった。
自分から引き取っておいてこの男はバカなのか?
そんな言葉が喉を通りそうになったがなんとか収め、了解しました、明日にはお暇させていただきます今までありがとうございました的な事を言ってその場を去った。
ーーさて、この先どうしようかな。
私をグレイスが引き取ったことで借金は無くなった筈だから、両親の店に戻ってお手伝いをするか。
そう考えながら私の部屋の扉に手をかけた私の後ろから声がかかった。
その声は中性的でありながら男らしさを含んでおり、品の高い知性を感じさせる、そんな声色でーー。
「ロイド=グレイスの妻、アリス=セトラーさんだね?君が今しがた彼と離縁したのは聞いていたんだが……。どうだろう。私と婚約を結んでくれないか?」
後ろを向いた私の目に入ったのは、サラサラに手入れされた少しカールの入った金髪、鼻筋の整った美しい顔立ち、長身によく似合う黒色のスーツ。
まさに、私が子供の頃に憧れていた王子様のような……!
「あぁ、申し遅れました私。ノワール=ギルラートと申します」
「ノワール、家……」
この街に住む、いやこの大陸に住むノワール家を知らない人はいない。
なぜならノワール家は……王国三大貴族の一つ、だからだ……。
なぜ、あのノワール家の人がこんなところに、ってか私に声を!?しかも婚約!!???
困惑してしまって思わずふらついてしまった私の肩を掴み、顔をグイッと近づけてくると。
「大丈夫かい?……いきなりこんな話をしてしまってごめんね、アリス」
そんな整った顔で近づかれたら……!
ああっ、ヤバい……。キュン死しそう……。
そんなこんなで、田舎領主のドラ息子との離縁が決まり、ギルラート様との婚約が決まったのだった。
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
新作です!もし面白い、続きを読みたいと思ってくださればぜひ感想やお気に入り登録をお願いします!
その程度によって他作品とどちらを優先して書くかを決めさせてもらいますので……!
私の部屋の扉を勢いよく開けて、息を切らせながら声を荒げる小太りの男。
髪はボサボサで顔にはニキビが多く、権力だけが唯一の取り柄のこの男。
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怒りと悲しみが混ざったような顔で、引き攣った驚きの声を上げる。
いや、そもそもこの離婚の話、貴方が前から言ってた事でしょうが。
というのもこの伯爵は、この街一帯を治める貴族ロイド家の長男なのだが。ロイド家の借金のかたに出された私を、スタイルが気に入ったとかいう理由で引き取ったのだ。
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ーーそして前日、この家で開かれた立食パーティーの折。
酒臭い息を吐きながらグレイスが私に言った一言が。
「お前俺に釣り合わないわ。この家出てってくれ」
……だった。
自分から引き取っておいてこの男はバカなのか?
そんな言葉が喉を通りそうになったがなんとか収め、了解しました、明日にはお暇させていただきます今までありがとうございました的な事を言ってその場を去った。
ーーさて、この先どうしようかな。
私をグレイスが引き取ったことで借金は無くなった筈だから、両親の店に戻ってお手伝いをするか。
そう考えながら私の部屋の扉に手をかけた私の後ろから声がかかった。
その声は中性的でありながら男らしさを含んでおり、品の高い知性を感じさせる、そんな声色でーー。
「ロイド=グレイスの妻、アリス=セトラーさんだね?君が今しがた彼と離縁したのは聞いていたんだが……。どうだろう。私と婚約を結んでくれないか?」
後ろを向いた私の目に入ったのは、サラサラに手入れされた少しカールの入った金髪、鼻筋の整った美しい顔立ち、長身によく似合う黒色のスーツ。
まさに、私が子供の頃に憧れていた王子様のような……!
「あぁ、申し遅れました私。ノワール=ギルラートと申します」
「ノワール、家……」
この街に住む、いやこの大陸に住むノワール家を知らない人はいない。
なぜならノワール家は……王国三大貴族の一つ、だからだ……。
なぜ、あのノワール家の人がこんなところに、ってか私に声を!?しかも婚約!!???
困惑してしまって思わずふらついてしまった私の肩を掴み、顔をグイッと近づけてくると。
「大丈夫かい?……いきなりこんな話をしてしまってごめんね、アリス」
そんな整った顔で近づかれたら……!
ああっ、ヤバい……。キュン死しそう……。
そんなこんなで、田舎領主のドラ息子との離縁が決まり、ギルラート様との婚約が決まったのだった。
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