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第31記
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ケイジがあの時に会った人たちの事。
―――――銃《じゅう》を所持していた女性がいた事。
捕《つか》まっていた特能力者の男性が、そこにいた事。
それから、EPFの隊員により接触《せっしょく》した事―――――。
ケイジが頭を悩《なや》ませて書いた報告書には、そういったケイジがいま認識《にんしき》している事象《じしょう》が1つ1つ書かれている。
この書き方はルールとして重要だ。
特能力者との関わりを考える『EAU』では、実際にそのとき何があったのか思い出せる限りを切り取って書くやり方を推奨《すいしょう》している。
ケイジが体験したことを流れとして、1つ1つをわかりやすくし、当事者の認識データとして保存され、発現研究にも参考にされる場合がある。
もちろん、それらは事件や事象の解析をする場合にもまとめ用《もち》いられる。
まぁ、お腹が減って思い出せない時などは、ちょっとつらい作業だろうけど。
それに、ケイジは言語化というか、語彙《ボキャブラリー》の少なさの部分で苦戦する事が多いみたいで。
その辺りはアミョさんがいろいろ気遣《きづか》ってくれて助かっている。
ミリアはその目で見つめていた、モニタに映る文字を目でじぃっ・・と追っていたけれど。
ケイジの文章を、・・1回目にさっと最後まで読んだ後は、もう2、3回同じように繰り返して全て読んだのを確かめた。
ケイジが書いた内容は、完全に1つの犯罪事件として成立する範疇《はんちゅう》だ。
かい摘《つま》むと、一般市民らしき女性が銃を所持していて、別の市民の男性を威嚇《いかく》・脅迫《きょうはく》していて、これは犯罪《はんざい》に当たる。
動機《どうき》はわからないけど、可能性としては強盗《ごうとう》か脅迫《きょうはく》のなにかか。
『EPF』の隊員の応援で、事なきを得たっていうところだ。
少し奇妙《きみょう》なのは、銃を持つ女性の距離感とか、雰囲気がおかしかったという、それを根拠《こんきょ》に彼らが知り合いだったんじゃないかっていう、ケイジの所感《しょかん》の部分で。
2人が知り合いなら、なぜそんな危ない状況になったのか。
2人が残《のこ》る前にも、けっこうな人数がいたらしいし。
まあ、ケイジにもわからないのなら、書いている以上の事は私にもわからない。
あとの調査は、これを受け取る解析《かいせき》・分析《ぶんせき》チームの仕事だろう。
少なくとも発現現象が絡《から》んでいるようなので、今頃だってアイウェアの映像などの記録を交《まじ》えて、彼らは嬉々《きき》として解析《かいせき》・研究してるかもしれない、たぶん。
それから警備部からも要請《ようせい》が来るようなら、連携《れんけい》して、これらのデータを提供したりするわけで。
その場にいた関係者《かんけいしゃ》の身元の確認や罪状《ざいじょう》などは、そうやって警備部が固《かた》めていく、というのが通常の流れだろう。
正直、ケイジ達の方でそんな緊迫《きんぱく》した事が起きていたなんて、全《まった》く思っていなかったけど。
でも、なんとなく、あのとき合流したケイジとリースがちょっと変な態度だったことは。
2人が、いつになく口数が少ないような、変な感じだったのは。
この事件の直後で、まあ、つまり、いろいろ気が立っていたのかもしれない。
一般市民の特能力者がいて、『EPF』の戦闘員の介入に、接触とか・・・関係者には逃げられているみたいだし、ふむ。
なんか、ややこしい状況だったみたいだ。
まあ、アミョさんたちの指示もあって、ケイジ達の立場からは問題なく対処《たいしょ》できていたようだし、今さら私が何か言える事も無いようだ。
そう、ケイジ達は特に問題を起こしたわけじゃ無いみたいだし、こちらやケイジ達の立場からすれば上出来《じょうでき》だろう。
まあ、・・私がいま許可なくこの事件概要に目を通してるのは、グレーゾーンな気がするけども。
黙《だま》ってればわからないか。
それより、書類としては求められてる動機《どうき》や理由の部分は確かに弱いけど、不備《ふび》はないとは思うんだけれど。
ただ、ちょっと気になったのは・・。
「『なんで行こうと思ったのか』が書いてないね?」
一番最初の、ケイジが書くべき理由が書いてなかった。
私たちが一緒に行動していたのに、急にこの現場へ向かった、きっかけというか。
確か、私があの時に聞いたときも、ケイジはハッキリ答えなかったはずで。
そんなケイジは、今は傍《そば》で椅子の背もたれに寄り掛かっていて。
私の声が聞こえてるはずのケイジも、画面を見てるだけの横顔は微妙に動いたくらいだ。
「・・・」
特に話そうとしない、のは、なんからしくない、ってちょっと思ったけど。
なにか考えているのかと思って、ミリアはちょっと、横顔を覗《のぞ》いてみてた・・・。
「なんとなくだ。」
って、ケイジはきっぱり言ってた。
ちょっと嫌そうに顔をそっぽ向かせていたけど。
それが、ウソぽいというか。
でも別に、ちょっと考えてみていても、このケイジに深い理由なんて無さそうだし。
ケイジだし。
本気で、やっぱり何にも考えてないってのはありそうだ。
それ以上に、『感覚で』とか・・・ふむ。
「できればそういうのを書いてほしいんだけどね。」
アミョさんがちょっと、肩を竦《すく》めて苦笑いだった。
まあ、そうだよな、とミリアも思う。
でも、それっぽい理由は何となく思いついてる。
ケイジには走査系の能力がほぼないらしいので、ってことは・・・リースが隣にいるのが、『大きな理由』になるんだと思うんだけれどね、たぶん。
証拠《しょうこ》は無いけれど。
「ケイジは手を出さなかったんだね?」
ミリアが訊《たず》ねるケイジは。
「なんだよ?悪いか?」
「いや。銃《じゅう》を持ってたみたいだし、危険な事はしなくて良かったよ」
「・・・」
どういう形であれ、問題が起きるのは良くないから。
アミョさんたち、オペレーターの人たちのサポートもあったんだろうけど。
そういう意味でも、ケイジが手を出さなかったのは良かった。
「・・・」
まあ、ちょっとケイジが無言の、静かで大人しくなってた気がするけど。
ちょっと、アミョさんと目が合ったミリアは、ちょっと肩を竦《すく》めて見せてた。
「まあ、大丈夫そうだね、」
ケイジから離《はな》れてミリアも、近くの自分のデスクへ行き、マグカップを置いて椅子に座り、端末《たんまつ》モニタを点《つ》けた。
そのモニタの傍《そば》には、黄色い花の『やわらかサボテン』が、何とも言えないポーズでこっちを見ている気がする、サボテンには目は無いけれど。
のを見てれば、すぐにモニタの準備ができるから、操作《そうさ》して、既にメッセージが届いていたのと、いくつかの書類や案内に目を通していってみる。
「良ければこっちの事件、記録に目を通せるようお願いしてみようか?」
「・・できるんですか?」
自分に言われているのに遅れて気づいたミリアは、アミョさんへ顔を上げていた。
「たぶんね。できないならできないって言われるまでさ、」
まあ、それもそうか。
警備部に提出《ていしゅつ》する分のデータも、守秘義務《しゅひぎむ》があったり追加で発生したり、ってけっこう権利・義務関係は複雑《ふくざつ》らしいんだけれど、ちゃんと見れる部分があるなら後学《こうがく》のためにも見ておきたい。
「お願いします。」
「どうせ全部記録されてるんならそれでいいじゃんか。な?」
ようやく退屈《たいくつ》な仕事から解放されたケイジが、背もたれに寄っかかってギシギシやってる。
「ある程度は文章にして、君のサインが必要って事さ」
「そういえばリースの分も・・、」
「ああ。もう受け取った、」
「いつの間に、」
ミリアがリースいる方を振り返れば、ノートやら携帯やらをいじっていたリースはソファの上で、目を閉じてもう寝てるみたいだ。
って、また寝てるのかい。
「あいつ・・、」
って、ケイジもリースを見てて、なんか不服《ふふく》そうだったけど。
「ガイ、こっちも報告書欲しいんだって。お願いね、」
「俺か?・・まあ書くこともなさそうだしな、すぐ終わりそうだ。」
「そうね。そっちに回しとく。私は他の書類を見てる、」
「わかった、」
ガイは立ち上がるとこっちへ、デスクへ歩いてくるようで、大丈夫そうだ。
「・・ん?」
ミリアがモニタに向かってる手をちょっと、止めてたけど。
「どうした?」
ちょうど、ちょっと身体が重そうなガイが隣《となり》のデスクに座っていた。
「ん-、」
ミリアはちょっと、天井を見て、考えてみてたけど。
「『なぜ、行かせたのか?』、ってことかな。質問書?直接来るなんて珍しいなぁ」
って、アミョさんがこっちのモニタを覗《のぞ》き込んでた。
「まあ、深い意味は無いんじゃないかい?」
「なんだ?」
「理由を書いてくれってさ、」
「ああ・・?」
ケイジが、ガイから聞いてもちょっと不思議そうだったけど。
理由を適当に挙げるだけなら簡単なんだけど、『ケイジとリースが何かに気づいたようだったから』、って。
それでいいか、と手早く書いてみる。
「ミリア君の指示でケイジ君たちが向かったんだったね。だけど、質問が来るってことは、もう少しはっきり書いた方がいいかもね」
って、アミョさんに言われたけど。
「・・気を付けます、」
簡単すぎたらダメらしい。
評価にも繋《つな》がったりするのかな。
「ん?」
ケイジが向こうで振り返ったようだけど。
ん-、・・なら、それっぽく書けばいいのか、『私のチームは現場付近の警戒中だったので、部下の報告を考慮し、任務にも・・・』
「なんかやったのかよ?」
って、向こうでケイジが、ニヤっとしてたので。
たぶん、からかう気満々のようだから。
ミリアが、ちょっと眉を動かしてジトっと、ケイジを睨《にら》み返してたけども。
ケイジはニヤニヤしながら立ち上がって、ソファの方へ歩いて行ったようだった。
「まあまあ、」
苦笑いのアミョさんに、宥《なだ》められたけど。
『別に、イラっとしてるわけじゃないんですけど』、って言うのは、なんか止めといたミリアだ。
「これもしかして、ケイジの事件か?」
って、ガイがそう、向こうのテレビを見ていたようだ。
『――――――この事件は、女性が拳銃のようなものを所持していたとして、警備部に逮捕されました。警備部は、2つの事件の関連は無いとしながらも、現場がコールフリート・アベニューの付近という事もあり、危険性を考慮《こうりょ》した捜査を続けているようです。』
「あれ?そうだね。もう公開したのか、」
「ぽい」
アミョさんとケイジも、ニュースを見ていて。
それにガイは、もう手早くケイジ達の報告書に目を通したのか。
『現在、現場に居合わせたという関係者の情報は公開されていませんが、当時、集団で逃亡するような姿も目撃《もくげき》されており、警備部は公式に事件当時に関する有力な情報の提供を呼び掛けています。』
『また、確保《かくほ》の際に容疑者に重症の怪我を負わせた疑いがあり、各所から状況説明を求めるのと同時に、その対応が適切だったのかと疑問の声が少なからず上がっているようです。
警備部は命に別状《べつじょう》はないとしていますが、証拠となる映像は公開しておらず・・・―――――
』
「なんか違ぇな、」
って、ソファでふんぞり返ってるというか、心置きなくくつろいでいるケイジが言ってた。
「情報が?」
ミリアが声を掛けても、ケイジは特に答えなかったけれど。
・・聞こえているのなら、たぶんそういうことだろう。
デスクで手を止めていたミリアは、ニュースへ向けていた顔を前へ戻して。
デスクの上に立てかけてあったノートを手に取り、立ち上がって。
ついでに、目に付いていた、小さなサボテンぬいぐるみのそれを、手を伸ばして、その感触《かんしょく》を、ぐにぐにと。
手に握《にぎ》るやわらかい感触を確かめながら歩き・・・、と忘れてたマグカップを見つけて。
そのポケットに『やわらかサボテン』を軽く押し込んで、ちょっと頭が出てるまま、マグカップも持ってソファへ歩いて行ってた。
―――――EAUとして公式に活動している間は、私たちが使用するアイウェアに映ったものは、基本的に満遍《まんべん》なく記録されている。
だから、ケイジ達が見たものもニュースなどのメディアの人たちからすれば、知りたい情報でいっぱいなんだと思う。
それとは別に、私たちが作成する報告書は、感じた事や気づいたことを捕捉する事と、そこで起きた事態を第三者の解析チームが確認する、というのが主な目的になる。
それは、実際に起きた事への、確認と同意書の意味を持つようなものだ。
少し過剰《かじょう》にも感じる、なぜそんなに慎重《しんちょう》に記録を取るのかというと。
『特能力者がいた現場』の分析には、『現場にいた人間にしか気づけないものあるかもしれない』、という可能性が『正しい認識』という意味合いを変化させる事がある。
発現現象というのは、既知《きち》の物理現象の外と思われる事象が起こったりする、などいろんな理由はあるけれど。
その中でも無視できない事は、『精神感応《テレパス》系の発現影響』だ。
学会でも既に、『対象の認識を少なからずも、誤認させるという発現現象が存在する』と発表され、確認された。
だから、『EAU』でも最新の発現者への対応マニュアルでは常に、アイウェアなどによる補助が強く推奨《すいしょう》されているのは、その対策《たいさく》の1つでもある。
まあ、そんな事態は現場では滅多《めった》にない事だともわかっているんだけど。
大人数を攪乱《かくらん》するほどの、そんなに強い『精神感応《テレパス》系』の発現者なんて、確認されてもいないのだから。
小さな影響なら作戦行動において無視はできる、という考え方も正しいとは思う。
でも、研究の視点で言えば、それらの可能性も全て含めた現場分析が必要で。
実際、そういう意味でも、科学的なデータは採《と》れるだけ採っているというのが現状だ。
本人たちの認識《にんしき》以外にも、そのサンプルを採るためのアイウェアだったり。
私たちが着込んでいる戦闘《バトル》スーツなどに備《そな》わってる機能でも、リアルタイムに心拍数や体温、発汗量などといった生体《せいたい》データもできる範囲《はんい》で採《と》られている。
あまり実感は無いけれど、以前に同意書を書いたりしたので、その範囲内でやっているはずだ。
そういう所まで解析するから、解析チームからは綿密《めんみつ》な、なんらかの細かい質問や、指示や要望が現場にいた私たちにも来るわけで。
時間も遅くなってきた今もまだ私たちが帰れないのは、そういった向こうの都合《つごう》に付き合わなきゃいけないからでもある。
まあ、そういうのも契約《けいやく》の内だし。
さすがに夜中まで拘束《こうそく》されることは無いと思うけど。
・・・たぶん、解析チームが主に気になっているのはケイジやリース達の事件の方で。
ケイジやリースたちが書いたあの報告で納得されれば・・、帰れるんじゃないかと思う。
アミョさんがちょっと手伝ってたし、大丈夫だと思うけど。
・・・ケイジは、そういうのをそれっぽく書くことがとても苦手なのは、何となく知っているし。
・・たぶん、色んなことに対する言語化が上手くはないんだと思う・・・というか、下手なんだと思う・・・。
―――――くぁ・・っと、ちょっと、ミリアはあくびをしてたけど。
・・ミリアはソファに座っていて、目の前のテーブルの上に置いたノートを見ていて。
そこには、書類や資料が広げられているけれど。
小さく息を吐くタイミングで、横に置いてる、ちょっと冷めた即席ミルクティーを右手に取って、ちょっと飲んだ。
鼻《はな》を少し抜けたのは爽《さわ》やかな香りで。
そして、カップを置いたらまた右手で、操作していくつかの書類に目を通したらサインしていく。
たまに思い出して、左手に摘《つ》まむように持ってるドーナッツを、小さくなってきたその端っこを齧《かじ》って。
ノートに表示されてるのは、ケイジの事件の報告書や、他にも事件関連のいくつかの書類や。
また新しくネットの情報を開いて、甘味とバターの良い香りをモグモグしながら、眺《なが》めている。
『現在の『コールフリート・アベニュー』付近の映像です。現場は今も警備のえ・・・―――――で活動していたEPF正規部隊、『インフロント - 4』の正式コメントです。』
そう・・、気づいて何気《なにげ》なく顔を上げれば、大きなモニタの映像の中で。
「あれ?チャンネル変えた?」
アミョさんの不思議そうな声と。
「ニュースならいいんだろ、」
ケイジがリモコンを持って太々《ふてぶて》しいのと。
「まあ、そうだね、」
それから―――――モニタには、現場にいたという『EPF』の部隊が、横に整列した姿も映し出されている。
『EPF』の正式な戦闘服に身を包んだ彼らは、軍部の保存用のカバーや垂れ幕を背にしていて、隊長である彼が前に出て何かを話している光景から。
『我々は、我々の仕事をした。』
低い声で、軍人然とした大きな体格の強面《こわもて》の人は、たしか『ザレッド』というコードネームを持つ部隊長だ。
彼らは、あのとき、私たちと同じ場所にいた人たちのはずだ。
『市民の無事は確認した。状況が戻るのもすぐだろう。』
その姿もいろいろなメディアで紹介されていたのを見た事がある。
『『EPF』の彼らは状況が安定したことに安堵《あんど》をしつつ、より一層《いっそう》の安全を市民に誓《ちか》いました。』
ナレーションを交えても、端的《たんてき》な印象で。
『今後も、何があろうと、リリー・スピアーズの治安は我々が守っている。』
―――――銃《じゅう》を所持していた女性がいた事。
捕《つか》まっていた特能力者の男性が、そこにいた事。
それから、EPFの隊員により接触《せっしょく》した事―――――。
ケイジが頭を悩《なや》ませて書いた報告書には、そういったケイジがいま認識《にんしき》している事象《じしょう》が1つ1つ書かれている。
この書き方はルールとして重要だ。
特能力者との関わりを考える『EAU』では、実際にそのとき何があったのか思い出せる限りを切り取って書くやり方を推奨《すいしょう》している。
ケイジが体験したことを流れとして、1つ1つをわかりやすくし、当事者の認識データとして保存され、発現研究にも参考にされる場合がある。
もちろん、それらは事件や事象の解析をする場合にもまとめ用《もち》いられる。
まぁ、お腹が減って思い出せない時などは、ちょっとつらい作業だろうけど。
それに、ケイジは言語化というか、語彙《ボキャブラリー》の少なさの部分で苦戦する事が多いみたいで。
その辺りはアミョさんがいろいろ気遣《きづか》ってくれて助かっている。
ミリアはその目で見つめていた、モニタに映る文字を目でじぃっ・・と追っていたけれど。
ケイジの文章を、・・1回目にさっと最後まで読んだ後は、もう2、3回同じように繰り返して全て読んだのを確かめた。
ケイジが書いた内容は、完全に1つの犯罪事件として成立する範疇《はんちゅう》だ。
かい摘《つま》むと、一般市民らしき女性が銃を所持していて、別の市民の男性を威嚇《いかく》・脅迫《きょうはく》していて、これは犯罪《はんざい》に当たる。
動機《どうき》はわからないけど、可能性としては強盗《ごうとう》か脅迫《きょうはく》のなにかか。
『EPF』の隊員の応援で、事なきを得たっていうところだ。
少し奇妙《きみょう》なのは、銃を持つ女性の距離感とか、雰囲気がおかしかったという、それを根拠《こんきょ》に彼らが知り合いだったんじゃないかっていう、ケイジの所感《しょかん》の部分で。
2人が知り合いなら、なぜそんな危ない状況になったのか。
2人が残《のこ》る前にも、けっこうな人数がいたらしいし。
まあ、ケイジにもわからないのなら、書いている以上の事は私にもわからない。
あとの調査は、これを受け取る解析《かいせき》・分析《ぶんせき》チームの仕事だろう。
少なくとも発現現象が絡《から》んでいるようなので、今頃だってアイウェアの映像などの記録を交《まじ》えて、彼らは嬉々《きき》として解析《かいせき》・研究してるかもしれない、たぶん。
それから警備部からも要請《ようせい》が来るようなら、連携《れんけい》して、これらのデータを提供したりするわけで。
その場にいた関係者《かんけいしゃ》の身元の確認や罪状《ざいじょう》などは、そうやって警備部が固《かた》めていく、というのが通常の流れだろう。
正直、ケイジ達の方でそんな緊迫《きんぱく》した事が起きていたなんて、全《まった》く思っていなかったけど。
でも、なんとなく、あのとき合流したケイジとリースがちょっと変な態度だったことは。
2人が、いつになく口数が少ないような、変な感じだったのは。
この事件の直後で、まあ、つまり、いろいろ気が立っていたのかもしれない。
一般市民の特能力者がいて、『EPF』の戦闘員の介入に、接触とか・・・関係者には逃げられているみたいだし、ふむ。
なんか、ややこしい状況だったみたいだ。
まあ、アミョさんたちの指示もあって、ケイジ達の立場からは問題なく対処《たいしょ》できていたようだし、今さら私が何か言える事も無いようだ。
そう、ケイジ達は特に問題を起こしたわけじゃ無いみたいだし、こちらやケイジ達の立場からすれば上出来《じょうでき》だろう。
まあ、・・私がいま許可なくこの事件概要に目を通してるのは、グレーゾーンな気がするけども。
黙《だま》ってればわからないか。
それより、書類としては求められてる動機《どうき》や理由の部分は確かに弱いけど、不備《ふび》はないとは思うんだけれど。
ただ、ちょっと気になったのは・・。
「『なんで行こうと思ったのか』が書いてないね?」
一番最初の、ケイジが書くべき理由が書いてなかった。
私たちが一緒に行動していたのに、急にこの現場へ向かった、きっかけというか。
確か、私があの時に聞いたときも、ケイジはハッキリ答えなかったはずで。
そんなケイジは、今は傍《そば》で椅子の背もたれに寄り掛かっていて。
私の声が聞こえてるはずのケイジも、画面を見てるだけの横顔は微妙に動いたくらいだ。
「・・・」
特に話そうとしない、のは、なんからしくない、ってちょっと思ったけど。
なにか考えているのかと思って、ミリアはちょっと、横顔を覗《のぞ》いてみてた・・・。
「なんとなくだ。」
って、ケイジはきっぱり言ってた。
ちょっと嫌そうに顔をそっぽ向かせていたけど。
それが、ウソぽいというか。
でも別に、ちょっと考えてみていても、このケイジに深い理由なんて無さそうだし。
ケイジだし。
本気で、やっぱり何にも考えてないってのはありそうだ。
それ以上に、『感覚で』とか・・・ふむ。
「できればそういうのを書いてほしいんだけどね。」
アミョさんがちょっと、肩を竦《すく》めて苦笑いだった。
まあ、そうだよな、とミリアも思う。
でも、それっぽい理由は何となく思いついてる。
ケイジには走査系の能力がほぼないらしいので、ってことは・・・リースが隣にいるのが、『大きな理由』になるんだと思うんだけれどね、たぶん。
証拠《しょうこ》は無いけれど。
「ケイジは手を出さなかったんだね?」
ミリアが訊《たず》ねるケイジは。
「なんだよ?悪いか?」
「いや。銃《じゅう》を持ってたみたいだし、危険な事はしなくて良かったよ」
「・・・」
どういう形であれ、問題が起きるのは良くないから。
アミョさんたち、オペレーターの人たちのサポートもあったんだろうけど。
そういう意味でも、ケイジが手を出さなかったのは良かった。
「・・・」
まあ、ちょっとケイジが無言の、静かで大人しくなってた気がするけど。
ちょっと、アミョさんと目が合ったミリアは、ちょっと肩を竦《すく》めて見せてた。
「まあ、大丈夫そうだね、」
ケイジから離《はな》れてミリアも、近くの自分のデスクへ行き、マグカップを置いて椅子に座り、端末《たんまつ》モニタを点《つ》けた。
そのモニタの傍《そば》には、黄色い花の『やわらかサボテン』が、何とも言えないポーズでこっちを見ている気がする、サボテンには目は無いけれど。
のを見てれば、すぐにモニタの準備ができるから、操作《そうさ》して、既にメッセージが届いていたのと、いくつかの書類や案内に目を通していってみる。
「良ければこっちの事件、記録に目を通せるようお願いしてみようか?」
「・・できるんですか?」
自分に言われているのに遅れて気づいたミリアは、アミョさんへ顔を上げていた。
「たぶんね。できないならできないって言われるまでさ、」
まあ、それもそうか。
警備部に提出《ていしゅつ》する分のデータも、守秘義務《しゅひぎむ》があったり追加で発生したり、ってけっこう権利・義務関係は複雑《ふくざつ》らしいんだけれど、ちゃんと見れる部分があるなら後学《こうがく》のためにも見ておきたい。
「お願いします。」
「どうせ全部記録されてるんならそれでいいじゃんか。な?」
ようやく退屈《たいくつ》な仕事から解放されたケイジが、背もたれに寄っかかってギシギシやってる。
「ある程度は文章にして、君のサインが必要って事さ」
「そういえばリースの分も・・、」
「ああ。もう受け取った、」
「いつの間に、」
ミリアがリースいる方を振り返れば、ノートやら携帯やらをいじっていたリースはソファの上で、目を閉じてもう寝てるみたいだ。
って、また寝てるのかい。
「あいつ・・、」
って、ケイジもリースを見てて、なんか不服《ふふく》そうだったけど。
「ガイ、こっちも報告書欲しいんだって。お願いね、」
「俺か?・・まあ書くこともなさそうだしな、すぐ終わりそうだ。」
「そうね。そっちに回しとく。私は他の書類を見てる、」
「わかった、」
ガイは立ち上がるとこっちへ、デスクへ歩いてくるようで、大丈夫そうだ。
「・・ん?」
ミリアがモニタに向かってる手をちょっと、止めてたけど。
「どうした?」
ちょうど、ちょっと身体が重そうなガイが隣《となり》のデスクに座っていた。
「ん-、」
ミリアはちょっと、天井を見て、考えてみてたけど。
「『なぜ、行かせたのか?』、ってことかな。質問書?直接来るなんて珍しいなぁ」
って、アミョさんがこっちのモニタを覗《のぞ》き込んでた。
「まあ、深い意味は無いんじゃないかい?」
「なんだ?」
「理由を書いてくれってさ、」
「ああ・・?」
ケイジが、ガイから聞いてもちょっと不思議そうだったけど。
理由を適当に挙げるだけなら簡単なんだけど、『ケイジとリースが何かに気づいたようだったから』、って。
それでいいか、と手早く書いてみる。
「ミリア君の指示でケイジ君たちが向かったんだったね。だけど、質問が来るってことは、もう少しはっきり書いた方がいいかもね」
って、アミョさんに言われたけど。
「・・気を付けます、」
簡単すぎたらダメらしい。
評価にも繋《つな》がったりするのかな。
「ん?」
ケイジが向こうで振り返ったようだけど。
ん-、・・なら、それっぽく書けばいいのか、『私のチームは現場付近の警戒中だったので、部下の報告を考慮し、任務にも・・・』
「なんかやったのかよ?」
って、向こうでケイジが、ニヤっとしてたので。
たぶん、からかう気満々のようだから。
ミリアが、ちょっと眉を動かしてジトっと、ケイジを睨《にら》み返してたけども。
ケイジはニヤニヤしながら立ち上がって、ソファの方へ歩いて行ったようだった。
「まあまあ、」
苦笑いのアミョさんに、宥《なだ》められたけど。
『別に、イラっとしてるわけじゃないんですけど』、って言うのは、なんか止めといたミリアだ。
「これもしかして、ケイジの事件か?」
って、ガイがそう、向こうのテレビを見ていたようだ。
『――――――この事件は、女性が拳銃のようなものを所持していたとして、警備部に逮捕されました。警備部は、2つの事件の関連は無いとしながらも、現場がコールフリート・アベニューの付近という事もあり、危険性を考慮《こうりょ》した捜査を続けているようです。』
「あれ?そうだね。もう公開したのか、」
「ぽい」
アミョさんとケイジも、ニュースを見ていて。
それにガイは、もう手早くケイジ達の報告書に目を通したのか。
『現在、現場に居合わせたという関係者の情報は公開されていませんが、当時、集団で逃亡するような姿も目撃《もくげき》されており、警備部は公式に事件当時に関する有力な情報の提供を呼び掛けています。』
『また、確保《かくほ》の際に容疑者に重症の怪我を負わせた疑いがあり、各所から状況説明を求めるのと同時に、その対応が適切だったのかと疑問の声が少なからず上がっているようです。
警備部は命に別状《べつじょう》はないとしていますが、証拠となる映像は公開しておらず・・・―――――
』
「なんか違ぇな、」
って、ソファでふんぞり返ってるというか、心置きなくくつろいでいるケイジが言ってた。
「情報が?」
ミリアが声を掛けても、ケイジは特に答えなかったけれど。
・・聞こえているのなら、たぶんそういうことだろう。
デスクで手を止めていたミリアは、ニュースへ向けていた顔を前へ戻して。
デスクの上に立てかけてあったノートを手に取り、立ち上がって。
ついでに、目に付いていた、小さなサボテンぬいぐるみのそれを、手を伸ばして、その感触《かんしょく》を、ぐにぐにと。
手に握《にぎ》るやわらかい感触を確かめながら歩き・・・、と忘れてたマグカップを見つけて。
そのポケットに『やわらかサボテン』を軽く押し込んで、ちょっと頭が出てるまま、マグカップも持ってソファへ歩いて行ってた。
―――――EAUとして公式に活動している間は、私たちが使用するアイウェアに映ったものは、基本的に満遍《まんべん》なく記録されている。
だから、ケイジ達が見たものもニュースなどのメディアの人たちからすれば、知りたい情報でいっぱいなんだと思う。
それとは別に、私たちが作成する報告書は、感じた事や気づいたことを捕捉する事と、そこで起きた事態を第三者の解析チームが確認する、というのが主な目的になる。
それは、実際に起きた事への、確認と同意書の意味を持つようなものだ。
少し過剰《かじょう》にも感じる、なぜそんなに慎重《しんちょう》に記録を取るのかというと。
『特能力者がいた現場』の分析には、『現場にいた人間にしか気づけないものあるかもしれない』、という可能性が『正しい認識』という意味合いを変化させる事がある。
発現現象というのは、既知《きち》の物理現象の外と思われる事象が起こったりする、などいろんな理由はあるけれど。
その中でも無視できない事は、『精神感応《テレパス》系の発現影響』だ。
学会でも既に、『対象の認識を少なからずも、誤認させるという発現現象が存在する』と発表され、確認された。
だから、『EAU』でも最新の発現者への対応マニュアルでは常に、アイウェアなどによる補助が強く推奨《すいしょう》されているのは、その対策《たいさく》の1つでもある。
まあ、そんな事態は現場では滅多《めった》にない事だともわかっているんだけど。
大人数を攪乱《かくらん》するほどの、そんなに強い『精神感応《テレパス》系』の発現者なんて、確認されてもいないのだから。
小さな影響なら作戦行動において無視はできる、という考え方も正しいとは思う。
でも、研究の視点で言えば、それらの可能性も全て含めた現場分析が必要で。
実際、そういう意味でも、科学的なデータは採《と》れるだけ採っているというのが現状だ。
本人たちの認識《にんしき》以外にも、そのサンプルを採るためのアイウェアだったり。
私たちが着込んでいる戦闘《バトル》スーツなどに備《そな》わってる機能でも、リアルタイムに心拍数や体温、発汗量などといった生体《せいたい》データもできる範囲《はんい》で採《と》られている。
あまり実感は無いけれど、以前に同意書を書いたりしたので、その範囲内でやっているはずだ。
そういう所まで解析するから、解析チームからは綿密《めんみつ》な、なんらかの細かい質問や、指示や要望が現場にいた私たちにも来るわけで。
時間も遅くなってきた今もまだ私たちが帰れないのは、そういった向こうの都合《つごう》に付き合わなきゃいけないからでもある。
まあ、そういうのも契約《けいやく》の内だし。
さすがに夜中まで拘束《こうそく》されることは無いと思うけど。
・・・たぶん、解析チームが主に気になっているのはケイジやリース達の事件の方で。
ケイジやリースたちが書いたあの報告で納得されれば・・、帰れるんじゃないかと思う。
アミョさんがちょっと手伝ってたし、大丈夫だと思うけど。
・・・ケイジは、そういうのをそれっぽく書くことがとても苦手なのは、何となく知っているし。
・・たぶん、色んなことに対する言語化が上手くはないんだと思う・・・というか、下手なんだと思う・・・。
―――――くぁ・・っと、ちょっと、ミリアはあくびをしてたけど。
・・ミリアはソファに座っていて、目の前のテーブルの上に置いたノートを見ていて。
そこには、書類や資料が広げられているけれど。
小さく息を吐くタイミングで、横に置いてる、ちょっと冷めた即席ミルクティーを右手に取って、ちょっと飲んだ。
鼻《はな》を少し抜けたのは爽《さわ》やかな香りで。
そして、カップを置いたらまた右手で、操作していくつかの書類に目を通したらサインしていく。
たまに思い出して、左手に摘《つ》まむように持ってるドーナッツを、小さくなってきたその端っこを齧《かじ》って。
ノートに表示されてるのは、ケイジの事件の報告書や、他にも事件関連のいくつかの書類や。
また新しくネットの情報を開いて、甘味とバターの良い香りをモグモグしながら、眺《なが》めている。
『現在の『コールフリート・アベニュー』付近の映像です。現場は今も警備のえ・・・―――――で活動していたEPF正規部隊、『インフロント - 4』の正式コメントです。』
そう・・、気づいて何気《なにげ》なく顔を上げれば、大きなモニタの映像の中で。
「あれ?チャンネル変えた?」
アミョさんの不思議そうな声と。
「ニュースならいいんだろ、」
ケイジがリモコンを持って太々《ふてぶて》しいのと。
「まあ、そうだね、」
それから―――――モニタには、現場にいたという『EPF』の部隊が、横に整列した姿も映し出されている。
『EPF』の正式な戦闘服に身を包んだ彼らは、軍部の保存用のカバーや垂れ幕を背にしていて、隊長である彼が前に出て何かを話している光景から。
『我々は、我々の仕事をした。』
低い声で、軍人然とした大きな体格の強面《こわもて》の人は、たしか『ザレッド』というコードネームを持つ部隊長だ。
彼らは、あのとき、私たちと同じ場所にいた人たちのはずだ。
『市民の無事は確認した。状況が戻るのもすぐだろう。』
その姿もいろいろなメディアで紹介されていたのを見た事がある。
『『EPF』の彼らは状況が安定したことに安堵《あんど》をしつつ、より一層《いっそう》の安全を市民に誓《ちか》いました。』
ナレーションを交えても、端的《たんてき》な印象で。
『今後も、何があろうと、リリー・スピアーズの治安は我々が守っている。』
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