《SSTG》『セハザ《no1》-(3)-』

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第2章 - Sec 2

Sec 2 - 第8記

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 「だってお前、すげぇ顔してるぞ、」
って、ケイジに言われた。

・・・・。

えっと、ちょっと意味が分からないんだけども。

とりあえず、ケイジが言う『揉《も》め事を起こすなよ』っていうのも、どういう意味なのかわからないけども。

『ケンカするな』と言ってるのか、別にケンカする気なんて全然無いし。
むしろケイジ達の方が面倒事《めんどうごと》を起こしそうだし、ケンカとかじゃないにしても、それをケイジから言われるのはなんか変だし―――――。

―――――とか、考えながら、軽くだけど、本当に軽くだけど、指と両手の平で挟《はさ》むように、ミリアは頬《ほお》をほぐしている。

―――――というか、ちょっと顔が固いかもしれないけど、すごい顔してるとか、別にそんなわけ無いし。
ってちょっと、・・はっとして、ミリアは閉じてた瞼《まぶた》を、カっと見開いた・・!

「揉《も》め事なんて、起こした事ないけどね。」
そう堂々《どうどう》と言う、あくまで冷静なミリアだ。
「だからまだ起こしてねぇけど、」
「でしょ?」
ほら、とミリアは鼻を高くして。
「あ?そういやぁ、」
って、何かに気が付いたケイジは。
「あれだ、『朝《あさ》』だ、」
って言ってくるケイジで。
『朝《あさ》』・・・??・・・。

「・・・。」
あ。
朝、そういえば。

ミリアも思い出した。
今朝《けさ》、呼び出された時に、『偉《えら》い人たち』がヒートアップした、っていうのが私の言葉がきっかけだったような、のをケイジは言っているのかもしれない。

そんなの、言われて思い出したけど。
あれは・・ん-・・・―――――

―――――って、黒い目のケイジが真っ直ぐこっちをじっと見ている、のと目がさっきから合ってるのに気が付いた、ミリアだけど。

――――――あれは『揉め事』の内には・・入らない、んじゃないかな、って思うんだけど・・あれも『揉め事』と言われれば・・・?・・?
でもあれは『不可抗力《ふかこうりょく》』だし。
理由を聞かれれば答えるものだし、私が何も言わなくてもお説教は続いてたかもしれないし、そもそも今朝《けさ》の呼び出しが無ければ、あんなめんどくさい事にならないわけだし――――――
――――――考えが袋小路《ふくろこうじ》に入りかけていたミリアの。

見つめ合っている、堂々とこっちを見ているケイジの目と目を―――――つい、と目を微妙《びみょう》に逸《そ》らしたミリアだけれども。

「だろ?」
って、すかさず勝ち誇《ほこ》った様なケイジだ。

いや、ケイジは軽い調子で言ったみたいだけれど、得意げになったのはその表情に透《す》けて見える・・・。

「何があったんだって?」
って、急にガーニィが興味津々《きょうみしんしん》に、横から。
「今朝だって?」
あ、ガーニィたちは知らないんだった。
「ガーニィは耳をふさいでいろ、」
「おぉいぃ、」
ガイに押しのけられて、窘《たしな》められていたけど。

「えホん、」
ミリアは小さく咳払《せきばら》いをしてた。
別に喉《のど》に引っかかりは無いけれど。
つまり、一旦落ち着いて仕切《しき》り直そう、っていうことだ。

周りの人たちに余計な事を聞かれると、また変な噂《うわさ》が流れるかもしれないし・・・完全にみんなこっちを見ていて聞いてるし。

「んだろ?」
でも、更に言ってくるケイジはニヤっとして、ぜんぜん、お構《かま》いなしに、こっちのメッセージも何も、考えてないかもしれない・・。
「あのね。」
ミリアはそう、一息吸って。
一息を、吐いた。
「あれ私のせいだった?」
「そうだろ?」
ケイジに、はっきり言われた。
・・・・・・。
「まあまあまあ、」
ガイが横から和《なご》やかに、宥《なだ》めてくれるけれど。
口を閉じてたミリアは。
はぁ・・っと、ミリアは一息ため息を吐いて。

そして、改《あらた》めて息を大きめに吸う・・。

「あのね、今のはあっちがぶつかってきたんだから、あっちが謝《あやま》るのが礼儀《れいぎ》でしょ?」
「謝《あやま》ってなかったか?」
「そうでしょ?」
「そりゃあっちが悪いな、」
というか、ケイジじゃなくて、ガイが『うんうん』、頷《うなず》いてるけど。
・・・ガイを横目に、ジトっと見ているミリアは。
なんか適当《てきとう》に話を合わせられている気がする・・。
けども、・・ちょっと力の入ってる、開きかけてた口を閉じた・・・。
もう別にいいか、って――――。

「お前ら仲良いな、」
って、急に言われた、ガーニィに。

「・・えぇ?」

「なんでだよ、」
ケイジが不満《ふまん》そうだ。
というか、周りの彼らも話をしっかり聞いてて、頷《うなず》いてるみたいだった。

「同《おんな》じ顔してるぞ、」
って。
「はは、」
って、ちょっと彼らにくすっとも笑われた。

・・お互《たが》いの顔を見合わせたミリアとケイジは、本当に、お互《たが》いの嫌《いや》そうな顔を、そしてまた更に嫌《いや》そうに表情が動いたのを、見合わせてたわけで。

「ははは、」
それでさらに、笑われたみたいだ。

・・・ミリアは・・・なんか、なんというか。

とりあえず。
口をきゅっと閉じて、スンとした。
もう、・・何も言わない方が良い気がしたので。
無表情《むひょうじょう》を貫《つらぬ》く・・・。

ていうか、離《はな》れた向こうでリースが1人だけのソファにもたれるように座っていて、眠そうに欠伸《あくび》をしていたのが、視界の端《はし》にちらりと見えた・・・。

・・リースは、マイペースだなぁ、って改《あらた》めて思った。

「まあ、ここはさ、いろんな奴らが来てるからなぁ、」
って、傍《そば》でガーニィが言ってる。
「『Class - B』とか『C』だけの時とはまた少し毛色《けいろ》が違うよな?」
「ああ、まあな。」
彼らも頷《うなず》いてるけど、まあ、それはそうだと思う。
「『C』とか『B』は基本的に、感覚は一般人っつうか、軍部とかとは程遠《ほどとお》いヤツらが多いだろ、
だけど『A』はぶっちゃけると、なんか怖《こわ》いんだよな、」
「まあ、なあ。」
って、彼らが話している。
『怖い』?・・か。
・・・まあ、そうか、普通の、一般の人の感覚《かんかく》だと、そうかもしれない。
確かに、『A』には雰囲気《ふんいき》が違う人も多いとは思う。
それは、仕事の内容の違いが大きいと思うし、仕事にどこまで踏《ふ》み込んでいるかの違いかもしれない。
でも、なんだかんだ言ってガーニィたち、彼らは周りをよく見ているようだ。

『――――全員を確認した。』
って、スピーカーを通した大きな声が、大部屋の中に満たされた。
『――――この場で待機《たいき》している奴らはもう暫《しばら》くそうしていろ。こちらの準備が終わり次第《しだい》また声をかける。10分もかからないだろう。それまではこの部屋で自由にしていてくれ。
質問が多かったから今答えるが、ロッカールームは別の部屋にある。が、後で案内する。以上だ、』

その大部屋《おおべや》内のアナウンスを後に、周囲がまたいっそう賑《にぎ》やかになったみたいだった。
その辺りの椅子《いす》を引っ張ってきたり、ソファを使う人も増えている。

「どうすっかな、」
「俺、メシちょっと見に行く、」
「俺も、」
そう、ガーニィの知り合いの彼らも向こうのケータリングのコーナーへ足を向けたようだった。
「じゃな、」

最後に軽く挨拶《あいさつ》する彼で、ミリアは、周りのガイたちや、それからガーニィと目が合って、肩を軽く竦《すく》めて見せた。

「まあ、正直、『A』の奴らは軍経験者《ぐんけいけんしゃ》とか傭兵《ようへい》とかが多いっていうから、とっつきにくそうだったんだけどな。」
って、話し始めるガーニィは、彼らとは一緒に行かないみたいだ。
「お前らみたいな奴らだと話しやすい、」
って。
ふむ・・・それって、私たちが『A』っぽくないってことだろうか。
いや、別に他意《たい》は無いと思うけど、考えがまだトゲトゲしているのかもしれない、ってミリアはちょっと瞼《まぶた》をキュっと一度閉じておいた。
「なんかあんのか?それ、」
ケイジがそう言ったので、目を開けたけど、ケイジはガーニィに聞いてたようだ。
「話しやすいって良い事だろ?」
「良いか?」
「話す時に困るじゃんか、」
「無理して話す必要もないだろ?」
って、ケイジはちょっと潰《つぶ》れてるサンドイッチの最後を口に入れた。
「お前ら、ここに来てる奴らチェックしたか?」
って、ガーニィがモグモグしているケイジに言ってたけど。
「ん?」
「いや?」
「『A』の奴らが半分とその半分が『B』、『C』って感じだな。俺の知ってる中じゃ『B』のロアジュの奴らが目立つけど、『C』のセイガやクロ、前の合同訓練に来てた奴らもけっこう来てるみたいで。
トップスコアを残したヤツらもいるし、そうでないヤツもいる。
どんなヤツなのかわからない奴もいる。
『特別に有望《ゆうぼう》そうなヤツが集まってる』っていう印象《いんしょう》もあるな、前と違《ちが》って。
『C』はクセが強いって言うから物差《ものさ》しもよくわからんけど。
ぁ、能力の話だぜ?人格《キャラ》とかの話じゃないからな?
前は誰でもいいから参加できるって感じだったろ?
あ、ケイジとリースはいなかったな。
そんで、少し聞き回ってみたけどな。『B』と『C』の奴らもここへ来たことがあるヤツはいなさそうだ。
まだ俺も話してない奴らがいるから、なんか知ってるかもしれないが。知り合いはもうほとんど話しかけたんだよなぁ。
『A』か『B』かなんてのは見た目じゃわからないからなぁ、」

まあ、IDをスキャンできないなら、所属は外見《がいけん》だけじゃわからないだろう。
正直、私もほとんどわからないので、見覚えのある人以外はその人たちの雰囲気《ふんいき》や仕草で所属《しょぞく》を、『A』っぽいとか『B』っぽい、って判断《はんだん》するくらいしかしてない。
まあ、話しかけるなら直接聞いても良いんだけど。

「話しかけりゃいいじゃんかよ、」
って、サンドイッチを飲み込んだケイジが聞いてたけど。
「怖いじゃんかよ」
ガーニィからさっきも聞いたような答えが返ってきた。

ガーニィはその辺りを緊張《きんちょう》しているみたいだ。
彼は『B』・・だったっけ?
というか、ガーニィが私たちにいろいろ教えてくれるのは、『敢《あ》えて』なのか。
まあ、集めた情報を『敢《あ》えて教えてくれた』、ってことは、何かしら『考えがあって』のことかもしれない。
少なくとも、『どうだ?情報は役に立つだろ?』とケイジに具体的《ぐたいてき》な情報で返した、って事だろうけど。

「ここにいる奴らは有望《ゆうぼう》って言ったよな?」
って、ガイが何か気が付いたようだ。
「有望《ゆうぼう》か、」
ケイジも。
「ん?」
「ってことは、お前もその有望枠《ゆうぼうわく》なのか?」
「はっはっ、んなわけねぇって、」
ガーニィが自分で笑ってるけど。
「まだ俺もよくわかんないんだって。つうか、お前らがぜんぜん周りを気にしない事を俺は言いたい。」
ってガーニィに言われたけど、そう言われると、そうかもしれない。

今日も招待《しょうたい》されたから来ただけだし。
そもそも、イベントは主催《しゅさい》する側に何かしらのテーマがあるのも当然だと思うし、今回の目的もただの交流のためだけじゃないだろう。
返信《へんしん》には、『幅《はば》広《ひろ》いカテゴリの各種《かくしゅ》戦闘員《せんとういん》の技術向上のため』、とも書かれていたような気がするけど。

「オレって『A』の奴らって有名人の名前と噂ぐらいしか知らないからな。なんかヤバいヤツとかって知ってる?」
って、ガーニィは。
「知らね」
って、ケイジが正直に言ってた。
「教えてくれてもいいだろ?」
ガーニィが逆に、ちょっと驚《おどろ》いたようだ。

まあ、ガーニィもいろいろ話したし、必要な情報かどうかはさておき、こっちがわかる事だったら教えても良いんだけど・・・。
別に話せそうなことも無さそうなんだよね・・・、『ヤバい人』ってそんな噂《うわさ》も聞かないし。

「質問がストレート直接的過《す》ぎるな・・」
ガイの言う通りだ。
「ヤバいって?どういう意味だ?」
例えば、凄《すご》い人の事なのか、無茶をする人とか、めんどくさい人の事なのか。
「あー、ヤバいってそりゃぁ、問題児《もんだいじ》とか・・・」
って、ガーニィが言いながらこっちを見て―――――ミリアと目が合っていた、のも明らかで、そのままスンっと口を閉じたガーニィ―――――までを、ミリアも見ていた。
・・・。
「・・え?誰が言ってんのそれ、」
心外《しんがい》なミリアだ。
「いやっ、誰も言ってないっス。」
「あん?」
心外《しんがい》なミリアなだけだったんだけど、ガーニィがケイジとミリアにちょっと詰《つ》められて、さくっと発言《はつげん》を即撤回《そくてっかい》してた。
「いや、そうじゃなくて、」
明らかにこっちを見てたガーニィの仕草《しぐさ》で、そんな噂《うわさ》があるってわかって、心外《しんがい》なだけなんだけど。
「まあ、俺らには噂《うわさ》が事欠かないかもな。」
って、ガイがなんか頷《うなず》きながら、したり顔で。
客観的《きゃっかんてき》な視点《してん》なのか、いや、笑っているし、面白がっているようにも見えるけど・・・。
「まあそうだな。」
って、ケイジが、なぜか受け入れたみたいだ。
「言い方、『問題児《もんだいじ》』って。」
ミリアは不服《ふふく》だけど。

「まあ、基本的に『A』の人らは仕事仲間だ。」
って、ガイがもうそっちの説明を繋《つな》いでた。

「変な人なんて見た事ないな。それに、先《ま》ず試験《テスト》で落とされるだろ。」
だから仕方なく、口を閉じたミリアだけども・・・。
「ん、そういや外でやる試験は厳《きび》しいんだったな。ま、そりゃそうか。わかりやすく異常《いじょう》なヤツなんて『A』にいく試験《しけん》で引っかかるもんな?だとしたら・・」
「うん?」
「あれだな、危ないのは『C』とか『B』にいる外来《がいらい》の奴らかなってさ?」
ん?
「ん、そうなのか・・?」
「ただでさえいろんな奴らがいるんだぜ?関《かか》わるなら逆に、未熟《みじゅく》なヤツの方が危ないだろ?」
あぁ、そういうことか。
技術的にも未熟《みじゅく》な人の方が、かえって『危なっかしい』、ってことか。
『外来《がいらい》』とも言ったけど、『EAU』の対外《たいがい》的にも主目的《しゅもくてき》である『リリー・スピアーズの特務協戦・警備・戦闘』などが主《おも》な仕事じゃない人たちの事を言ってるのだろう。
「そんな事まで考えてんのか」
「だって、変な奴に話しかけたらすぐヤバいし。悪い奴らに目をつけられたら即《そく》終わりだし。つうか、逆に考えれば今は『A』の奴らに自然に話しかけられる貴重《きちょう》なチャンスってことなんだよな。」
「まあ、そうだな?」
「え?お前行くのか?」
「どうすっかな。」
「お前、なんか色々すげぇな」
「1人で行くのもなぁ・・・付いて来てくれない?」
「行かね」
「そっちはどんななんだ?グループで来たのか?」
「ん、ああ。俺らはチーム組んでるとかじゃないからさ、同じコーチの仲間《ダチ》というか。だけど俺は、今はこのメンツを見て来たくなかったと本気で思ってる、」
って、ガーニィは冗談《じょうだん》とも思えない笑顔じゃない、本当に嫌《いや》そうな変な表情だ。
「情報収集《じょうほうしゅうしゅう》って必要だろ?」
「ぶはっ、」
って、ケイジが思わず噴《ふ》き出してた。
なので、つられたミリアも、ちょっと口を閉じて、ちょっとだけ笑うのを我慢《がまん》して、鼻を小さく鳴《な》らしたけど。

「だって聞いてた話と違うだろ?こんなメンツに放り込まれるなんて思ってなかったっていうか・・・、」
「ははっ・・」

「――――――ぁああっ!!!」

――――――って、甲高《かんだか》く大きな声が近くで・・した・・・!―――――びくっ!としてた、ミリアは・・・。

「お前っ!ミリアだーっ!」
って、傍《そば》で、大きな声の小さい子がこっちを指差《ゆびさ》してて、というか、名前も呼ばれてて・・・。

というか、至近距離《しきんきょり》で、よりうるさい、大き過ぎる声だ、その余韻《よいん》で耳が変な感じになったのを、ミリアは指で抑《おさ》えながら・・・―――――今も、こっちをジロジロと見てくるその子は・・・小さな、子供?少年のような、活発《かっぱつ》そうなくりくりした瞳《ひとみ》なんだろうけど、今はこっちを睨《にら》むように、私の顔を、身体や、つま先まで強い目つきでジロジロと、機敏《きびん》な動きで見ているようだ・・・近すぎて、なんか、あれだけど。

人がたくさんいる中で、この子も通りがかった1人のような。
あと、小さいと思ったけど、身長は私と同じくらいのようだ。
周りの他の人たち、大きな人たちと比べる事もできないんだけれど。
その子はちょっと怖《こわ》い顔で、ずずいっと覗《のぞ》き込んでくるような姿勢《しせい》だから、今は私の方が大きいくらいだ。

って、その子がまた機敏《きびん》に動いて、息を吸うのがわかった。
「お前がミリアだなぁああ?」
って、やっぱり声が大きい、そして近い。
少し声を低くしてるのか、その子の、丸みの面影《おもかげ》のある目が今は細く、ねめつけてくる、ので。

「うるっせぇな、なんだこいつ?」
って、ケイジが疑問《ぎもん》を口にしてたけど―――――。

「なンだお前?」
「あぁあん?」
って、その子とケイジがさっそく、目つき悪《わる》く絡《から》み合おうとしているけども。

「・・あ、うん。ミ、ミリアだけど?」
ミリアは、その子に瞬《またた》きながらも、ようやく、頷《うなず》けた。

「うん?」
こっちを、ちょっと瞬《またた》くその子は。
「あ、」
思い出したようで。

「フぅぉーんっ・・・・」
またミリアをジロジロ見てくるこの子が、また近いし、声に込める力が強すぎてイントネーションもちょっと変になっている感じが、耳の奥《おく》まで圧《あつ》をかけてきてた。
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