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第2章 - Sec 2
Sec 2 - 第17話
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―――――サンドイッチを齧る、ミリアが――――――咀嚼しながら、また顔を上げて周りの様子を見る。
『これで終わりか?』
壇上の彼らは、どうやら、まだ希望者の数に満足していないようだ。
逡巡するようなみんなを見渡している。
でも、模擬戦をやるなら、希望した4人も加われば充分な気はするけれど、彼らはもう少しか希望者が欲しいようだ。
最初のデモンストレーション、規模はどれくらいなんだろう?
もし自分たちが実演に混ざるなら、普通はある程度の様子を見たいと思うものだと思う。
私もそうだし。
それと―――――先ほど手を上げた彼ら4人は『Class - C』の所属と言っていた。
ちょっと気になった、というわけじゃないけど、私も彼らの様子を少し見ていた。
この部屋に来る前から、一緒のバスの中とかでも、この集団には『それらしき人たち』がいる気はしていたけれど。
『Class - C』は『EAU』の中でも少し特殊な存在だと思う。
なぜなら、研究施設でもある『リプクマ』との関わりが他の『EAU』の人たちよりも深いからだ。
『リプクマ』では、一般の人などから志望した人たちを集めて様々な研究、『発現現象』関係の研究をしている。
そんな彼らが行うことは人の世のためになる活動だとして。
『EAU』内で、そんな『リプクマ』の研究に積極的に協力している特能力者たちが『Class - C』でもある。
その一方で、『Class - C』はその『リプクマ』から志願者を集めて戦闘員を育成するというもう1つの側面と方針があることが説明されている。
だから、たぶん、EAU内でも『C』の彼らとの面識がほぼ無いという人も多いと思う。
もちろん、私も含めてだ。
そんな所から来る『Class - C』の人たちがどういう人達なのか、ここにいる人たちも少なからず興味があると思う。
私は、『C』所属の人が実戦に出た、という話を聞いた事が無い。
『EAU』の戦闘員には戦う能力も必要なのは、大前提だから。
『彼らにはそれができるのか?』と、周りの人たちが関心を持つ点もそこだと思う。
飾らずに言うなら、『共に戦う場合、彼らはどうなのか?』。
『信頼が置ける相手なのか?』、『戦えるのか?』を、冷静に眺めようとしている人たちも、中にはいるように見える。
なので今の所、そんな『C』の彼らがこの場で好奇な目で見られているのは当然で。
――――――ふむ。
見た目は、私たちと同年代に近いという感じだ。
戦える・・というか、実戦経験があるかは、よくわからない。
まあ、十中八九、彼らは『特能力者』だろうから、外見だけで総合的な能力を判断しちゃいけないんだろうけど。
言動を見ていると独特の雰囲気を持っているというか、性格も積極的という印象で・・・。
――――――『脅し過ぎたか?
面白そうだと殺到しても困るが、肝っ玉が無い奴らばかりなのか?』
って、彼、ケプロさんはなんだか、檀上で見渡すように、圧があるような言い方をしていた。
さっきまで、演説していた時は真面目で固そうな人、という印象だったけど、見た目通りにそれだけでも無いようだ。
と、周囲の人たちが気が付く、そんな視線の動きを自然と目で追ったミリアも顔を向けて見つけた。
―――――お前たちもか?』
また新しく手を上げた、あそこの人たちが注目を集め始めるようで―――――――
――――ちょぉっと、いいすっかぁあ?」
って、そのなんだか、調子の抜けた声が、聞こえてきた。
えっと。
この場にそぐわない、と一瞬思った、ダルそうな大きめの声だった。
割り込むように放られたその声の出所は、『C』の彼ら、最初に手を上げたあの1人・・・。
たしか、『ミリュモ・ル・サラマン』・・って名乗ってたっけ?
1度確認されたのにまた手を上げていて、それから手を大きく振ってアピールしていた。
話し方が独特でちょっとダルそうな、鼻にかかった声はなんだかわざとなのか、それっぽい響きだ。
いわゆる、小バカにした感じというか。
「これってぇ、俺たちが指名したりできるんすかぁ~?」
周りの注目をまた集めながら、彼は言っていた。
『・・何をだ?』
壇上のケプロさんの声は冷静《れいせい》さの中に、怪訝な表情を一瞬だけ見せた気がした。
「相手を、」
「そう、相手を!」
もう1人が答えた、『C』の仲間のアイウェアを掛けている彼は『オルビ・マイヤー』って名乗ってたっけ?
ここからは遠目だけど改めて、そのシンプルな眼鏡は細いフレームが洗練されたデザインで、知的な感じはする。
でも、その微妙な厚みの辺りに流線形のそれっぽい膨らみがあって、もしかしたらAADなどの機能が付いているのかもしれない。
そういうのは大体、目の機能を補助するためのものだ。
それ以外には、単に普段からそれを着けていたい趣味の人とか。
『君らにはこちらが前もって決めておいた相手とやってもらう予定だ・・』
「えぇー?マジっすか?」
「・・だりぃ・・・」
「なんだあいつら・・?」
「遊んでんじゃねぇんだぞ・・?
周囲の、抑えている声が少し聞こえてくる・・あまり歓迎されていない様子みたいだ。
まあ、あの態度だから、当然だろうけど・・。
『なにか不満があるのか?』
「俺ら、『Class - A』の奴らとやれなきゃ意味ないんっすよ~、」
――――――『A』と・・・?
――――あいつら、何言ってんだ?」
「―――――生意気ってレベルじゃあねぇな?」
周りが少し、気が立ち始めているような、異様な雰囲気が感じられる。
・・でも、『C』の彼は気にしていないようで、少しニヤついた顔で壇上の彼らを見ていた。
彼の他の仲間たちも驚いてもいないし、動揺してもいないようで。
たぶん、最初から彼らはそのつもりだったのか・・。
―――――って・・・そう、誰かが静かになって・・次に、周りがざわっとした。
「――――なんだあいつら・・?あの口の利き方・・・?」
「『C』の奴ら・・・」
感情を逆撫でされたような誰かと、周囲の感情が染まり始めているのか・・・。
『そうか。』
ただ、相手をするステージ上の彼、ケプロさんは堂々と変わらず、落ち着いた声だ。
『そいつぁ良かったな。今回は混合だ。
決定している。
君らも他の隊員と肩を並べ、学べる機会が多くあると・・・―――――――
』
「―――――違ぇっすよ、わかってねぇなー」
『・・あ?』
壇上の彼の、少し、声音が変わった気がしたけど・・。
それは、彼の言葉遣いや態度のせいか。
「俺らがやりたいって言ってんっすよ、」
奔放な人なのか。
『EAU』には適正テストがあるから。
性格や行動のパターン項目も・・・『C』でも、そういうのをちゃんとチェックしていると思うけど―――――――
彼、ミリュモ・ル・サラマンは不遜な、不敵な笑みを浮かべていた。
『C』の隊員である彼は、・・隣の仲間のオルビ・マイヤーに肩を押さえられていたが。
「すいません、こいつはたまに口が悪いんで。」
多少の恐縮した態度を見せていたが。
『・・やりたいだけでは・・、・・・』
壇上の彼、ケプロさんがふと、耳元を気にしたようだ。
無線からの声、動きは小さくてもその素振りに見えた。
というか、その『C』の彼らの中で、顔を背ける様に小さくあくびを誤魔化す彼、確かガリナ・エルポって名乗った彼がそうしていたのも気が付いたけど。
「色々な準備をしてきたんでしょう?つうか、もったいなくないですか?
もっと『選択肢』を広げない理由も無くはないかと。」
『・・つまり、何が言いたい?』
ケプロさんが低く抑えた声で、ジロりと見た、その質問へ。
『C』の彼らは一瞬、笑みを見せた、不敵な笑みをまた・・・何かを獲った、かのような表情に見えた。
「『A』のトップ、来てるじゃないですか。」
そう・・・。
「戦う、ってのはどうですか?」
「っていう、スペシャルステージ、よくない?これ?」
ざわ・・っと、ざわついた・・周囲がざわりと・・・戸惑うような、動揺する人たちの息遣いが大きく膨らむ。
「訓練でしょ?余興みたいなもんじゃないっすか。
見に来たんでしょ?遊びに来たんですか?
トップとやらなきゃ、意味ないじゃないっすか。
疲れてるとか?昨日も酒飲み過ぎで寝てたとかじゃないっすか?」
「え、そんな奴ら、ヤバいじゃん、勝っちゃうじゃん。」
ステージ上で何かを言いかけた彼、ケプロさんだけど、口を閉じて向こうを見て、何かを確認したようだ――――――
「おまえら、遊びに来てんじゃねぇえんだぞ、おい、」
誰かが人を掻き分け詰め寄る、彼らの態度に怒ったようだ。
「まどろっこしいんっだよ・・・っ・・」
そう、低い音、かすれ声のようにも聞こえた、押し殺したその声は、今まで口を開かなかった彼、ディーだっけ・・。
彼は小さな声で、うざったそうな、顔を歪め、そして正面で対面した彼らと睨み合う―――――――
「俺ら、そのために来たんだよ。今さらクソ雑魚どもに勝ったって意味ねぇって、」
言い放った、大胆不敵に。
「ぁあ・・?・・」
「クソ・・・?」
ざわり・・と、ざわつく、さっきよりも大きなどよめきが立つ。
「・・・・」
《クソ雑魚・・ぷふっ・・・》
なんだか、笑っているような様子の彼の傍の仲間、ガリナ・エルポもいるけれど。
「ぉお、ぶっちゃけるなぁ、あいつら・・」
って、隣のガイが、感心なのか、呆れているのか、呟いてた。
ガイは頭を掻いてたけど、私がそれを見ていれば、腕組みをするガイもこっちに気が付いて、いつものように肩を小さく竦めて見せてきた。
ガイもちょっと引いてるのかもしれない。
「勝っちゃうじゃんか?したら?ヤバくねぇ?」
「クソ雑魚に勝ったって意味ねぇ、」
「あぁ?お前ら、誰の事を言ってんだ?おい?」
周囲の、誰かがたまらずイラついた声を上げたようだ。
「やりゃあ、わかる、」
彼、ディーが、そう・・・。
『お前ら、黙れ、』
「お前ら、それ以上言うんじゃあねぇえ、」
「でもさぁ、そういうの、きっちりしといた方が良いっしょ?」
「なんっか、違うんすよね、俺ら、あんたらと、」
『おい、お前ら、』
「なにがだ・・!?」
「本当に、強いのかなぁ?って」
「それそれそれ、それな、」
「んだと、お前ら・・」
「ヌぬぁあぁんんだあぁ、おめええぇえらぁあ、」
って、一回りも二回りも大きな声が突然、ミリアもビクっとちょっとした、大砲のように周りの人をビクッとさせて。
――――――掻き分ける様に前へ出て来ていた・・・あの、身体の大きな無精髭な彼は・・。
バークさんだ、周囲の制止の声も、抑えようとする人も引きずって力任せに前に出てきたようだ。
さっきロヌマたちが名前を言ってた、あのバークさんだ、『A』のリーダーをしている1人で。
えっと、たぶん、『EAU』の中で一番声が大きい、というのがミリアの前から持っている彼への純粋な印象だ。
「まぁさぁかぁ・・!?ケンカ売ってんのかぁあ!??」
って、バークさんが言ってるけど・・まあ、彼らはそうだと思うけれど・・・。
「バークっ、やめとけっておい、」
って、しがみついているのはゴドーさんで、バークさんを止めようとはしている、けど引きずられているようだ。
『バーク、よせ。周りもそいつを止めてろ、』
「はぁぁぁんっ!?おめぇら、ボコボコにされたい、ってことかぁああんん?」
「やんのかこらーっ・・!!?」
って、小さい、バークさんの陰にいたあれは、ロヌマも、大きなバークさんの隣で一緒に息巻いているようだけど・・・。
「なんだこのチビ、」
「ぬぁっ・!?」
ロヌマが、ちょっとショックを受けたようだ。
「え?っつうか、あんた『A』なの?」
「あん?そうだぞぉぅっ、今頃気づいたかぁ?おめぇらぁ、『A』だぞぅっ!俺らはぁあっ。どうだ?ビビり散らしたかぁあ!?」
「うわ、マジ・・?」
「幻滅だわぁ、」
「へぇっへっへぇ・・?ぁん?」
得意げに笑ってたバークさんが気が付いて。
「なんだとこるらぁあ!!?」
怒ってる。
「ぅうるぁあー!!?」
って、驚いたり怒ったり、ロヌマも、威嚇してるバークさんとロヌマが同調しているみたいだ。
「やっちまえー、バークー、ロヌマ―」
そんな2人を適当に周りで応援する無責任な人もいるようだ。
「んなの相手にすんじゃないよ、ロヌマっ、」
「ブっ●〇す!」
主にロヌマの方から、汚い言葉も聞こえてきたかもしれないけど。
まあよく聞こえなかったし、周りの影響だと思うことにするとして。
「ったく、シン、捕まえといて、離すんじゃないよっ」
とりあえず、バークさんとロヌマを止めようとしている周りの人たちは、彼らを羽交い絞めにしようとするだけで精いっぱいの様だ。
それをニヤニヤ笑っているような『C』の彼らは――――――。
「―――――なんだあいつら・・・?」
「『Class - C』のやつらだろ・・・」
「あの『C』か?研究オタクたちの・・おっと、これ悪口になるか?」
って、周囲の彼らの声も聞こえてくる。
「よっぽどプライド高ぇらしいなぁ・・?」
「なぁ、『C』って『頭』いじったりしてるって話、本当か?」
「いや、『C』全部があんなのじゃないって、知り合いいるけど――――――」
「――――ぶっははっはっは、」
「言われてるぞ、おい、どうすんだよ、お前ら」
大きな口で笑っている人もいたり、煽って、それが面白い余興だとでも思っているのか、まるで他人事のように・・・。
・・・まあ、他人事ではあるんだけど。
なんにせよ、この場の収拾がつかなくなってきているのは間違いなくて――――――
―――――――壇上の彼、進行役のケプロも無言で彼らを見ていたが。
口汚くなってきた彼らから、目線を動かした。
その先はこちらを傍観するように見守っていた責任者たち、数人の隊長たちやアイフェリアたちの方だ。
そこには今回のイベントの責任者の中である各隊長と、その中にエヴィン・バーダーたちもいる――――動かない――――彼らは静観|《せいかん》なのか。
――――――すごい事になってきたな・・?」
って、そんなガイの様子がちょっと楽しそうなので、とりあえずミリアは横目で、ジト目にちょっと見たけれど・・・。
『お前ら、モノには順序ってものが・・・――――――』
「―――――えぇ?逃げんの?」
『――――――――ったく・・、』
ステージ上の彼らか、スピーカーを通してため息のような声が漏れ聞こえてたけど。
周囲の数人の賛同する仲間たちが、無責任に応援しているようだ。
「あいつらなんで、あんなことやりたがってんだ?」
って、こんな騒ぎになってても、傍のケイジにはよくわかっていないようだ。
むしろ、面倒だろ?と言いたげな、そんなケイジはでも、ちょっとは興味を惹かれたのか、不思議が半分といった感じで向こうを見ていた。
まあ。
『C』の彼らのあの言いようだから、『A』である自分達もバークさん達みたいに言い返す側なのかもしれない、って。
ちょっと思ったけど。
「あんたらも『A』なの?」
「いいや『B』だよっ、悪いかよ?」
「俺は『A』だぞぅっ!どうだ?ビビり散らしたかぁあ!?」
「うわ、マジ、幻滅だわぁ、」
「っうぅうぁっせぇえよぉぉおっ、ピーチくぱーちく!うっせええぇええんだよぉお!おまえらぁあぁあ・・!」
「コいやぁあーっ!!?」
って、驚いたり怒ったりしてるバークさんたちだ。
まあ、やっぱり、別にあそこへ加わりたくはないけれど。
・・・中には、そんな彼らを囲むような人達もちょっと、表情が険しかったり、睨みつけてたり・・・―――――
―――――――・・ぁあ、わかった。』
そう、女性の低い声がした。
マイクへ意図せず入った声だったのか、ミリアが気が付いたステージの向こうで、アイフェリアさんが向こうへアイコンタクトを取った横顔を見せながら、前に出て来ていた姿を見つけた。
―――――フぁ・・っと――――息を吸う音と―――――――『傾注――――!!』
はっきりとした重い声、大きい・・・、いや、お腹に効く声。
それはビリりっと空気を震わせた・・―――――・・・その一言が、周囲の動きを止めた。
そう、場を静まり返らせた、一瞬の。
『この場は預かる、』
って、またどこからか聞こえるスピーカーを通した低い声、向こうにいる隊長の誰かからか。
『その提案、我々は『いま』、前向きに検討した。』
って、低音で伝えるその声はどこからか。
『つまり、面白そうだ。』
――――ざわっ・・と、周囲がどよめいたいように。
彼らみんなが、檀上を振り返った。
『予定を多少変更する。君たちの要望を取り入れる形にしよう』
「・・マぁジか、」
「おいおい、おい・・?」
「うは、めんどくせー・・・」
「――――――マジで予定変更するんですか?」
『ああ、決定した。』
どよめくままに、その場に立っている彼らは・・顔を見合わせ、次に・・発せられるはずの、なにかの言葉を・・・待つ――――――――
『これで終わりか?』
壇上の彼らは、どうやら、まだ希望者の数に満足していないようだ。
逡巡するようなみんなを見渡している。
でも、模擬戦をやるなら、希望した4人も加われば充分な気はするけれど、彼らはもう少しか希望者が欲しいようだ。
最初のデモンストレーション、規模はどれくらいなんだろう?
もし自分たちが実演に混ざるなら、普通はある程度の様子を見たいと思うものだと思う。
私もそうだし。
それと―――――先ほど手を上げた彼ら4人は『Class - C』の所属と言っていた。
ちょっと気になった、というわけじゃないけど、私も彼らの様子を少し見ていた。
この部屋に来る前から、一緒のバスの中とかでも、この集団には『それらしき人たち』がいる気はしていたけれど。
『Class - C』は『EAU』の中でも少し特殊な存在だと思う。
なぜなら、研究施設でもある『リプクマ』との関わりが他の『EAU』の人たちよりも深いからだ。
『リプクマ』では、一般の人などから志望した人たちを集めて様々な研究、『発現現象』関係の研究をしている。
そんな彼らが行うことは人の世のためになる活動だとして。
『EAU』内で、そんな『リプクマ』の研究に積極的に協力している特能力者たちが『Class - C』でもある。
その一方で、『Class - C』はその『リプクマ』から志願者を集めて戦闘員を育成するというもう1つの側面と方針があることが説明されている。
だから、たぶん、EAU内でも『C』の彼らとの面識がほぼ無いという人も多いと思う。
もちろん、私も含めてだ。
そんな所から来る『Class - C』の人たちがどういう人達なのか、ここにいる人たちも少なからず興味があると思う。
私は、『C』所属の人が実戦に出た、という話を聞いた事が無い。
『EAU』の戦闘員には戦う能力も必要なのは、大前提だから。
『彼らにはそれができるのか?』と、周りの人たちが関心を持つ点もそこだと思う。
飾らずに言うなら、『共に戦う場合、彼らはどうなのか?』。
『信頼が置ける相手なのか?』、『戦えるのか?』を、冷静に眺めようとしている人たちも、中にはいるように見える。
なので今の所、そんな『C』の彼らがこの場で好奇な目で見られているのは当然で。
――――――ふむ。
見た目は、私たちと同年代に近いという感じだ。
戦える・・というか、実戦経験があるかは、よくわからない。
まあ、十中八九、彼らは『特能力者』だろうから、外見だけで総合的な能力を判断しちゃいけないんだろうけど。
言動を見ていると独特の雰囲気を持っているというか、性格も積極的という印象で・・・。
――――――『脅し過ぎたか?
面白そうだと殺到しても困るが、肝っ玉が無い奴らばかりなのか?』
って、彼、ケプロさんはなんだか、檀上で見渡すように、圧があるような言い方をしていた。
さっきまで、演説していた時は真面目で固そうな人、という印象だったけど、見た目通りにそれだけでも無いようだ。
と、周囲の人たちが気が付く、そんな視線の動きを自然と目で追ったミリアも顔を向けて見つけた。
―――――お前たちもか?』
また新しく手を上げた、あそこの人たちが注目を集め始めるようで―――――――
――――ちょぉっと、いいすっかぁあ?」
って、そのなんだか、調子の抜けた声が、聞こえてきた。
えっと。
この場にそぐわない、と一瞬思った、ダルそうな大きめの声だった。
割り込むように放られたその声の出所は、『C』の彼ら、最初に手を上げたあの1人・・・。
たしか、『ミリュモ・ル・サラマン』・・って名乗ってたっけ?
1度確認されたのにまた手を上げていて、それから手を大きく振ってアピールしていた。
話し方が独特でちょっとダルそうな、鼻にかかった声はなんだかわざとなのか、それっぽい響きだ。
いわゆる、小バカにした感じというか。
「これってぇ、俺たちが指名したりできるんすかぁ~?」
周りの注目をまた集めながら、彼は言っていた。
『・・何をだ?』
壇上のケプロさんの声は冷静《れいせい》さの中に、怪訝な表情を一瞬だけ見せた気がした。
「相手を、」
「そう、相手を!」
もう1人が答えた、『C』の仲間のアイウェアを掛けている彼は『オルビ・マイヤー』って名乗ってたっけ?
ここからは遠目だけど改めて、そのシンプルな眼鏡は細いフレームが洗練されたデザインで、知的な感じはする。
でも、その微妙な厚みの辺りに流線形のそれっぽい膨らみがあって、もしかしたらAADなどの機能が付いているのかもしれない。
そういうのは大体、目の機能を補助するためのものだ。
それ以外には、単に普段からそれを着けていたい趣味の人とか。
『君らにはこちらが前もって決めておいた相手とやってもらう予定だ・・』
「えぇー?マジっすか?」
「・・だりぃ・・・」
「なんだあいつら・・?」
「遊んでんじゃねぇんだぞ・・?
周囲の、抑えている声が少し聞こえてくる・・あまり歓迎されていない様子みたいだ。
まあ、あの態度だから、当然だろうけど・・。
『なにか不満があるのか?』
「俺ら、『Class - A』の奴らとやれなきゃ意味ないんっすよ~、」
――――――『A』と・・・?
――――あいつら、何言ってんだ?」
「―――――生意気ってレベルじゃあねぇな?」
周りが少し、気が立ち始めているような、異様な雰囲気が感じられる。
・・でも、『C』の彼は気にしていないようで、少しニヤついた顔で壇上の彼らを見ていた。
彼の他の仲間たちも驚いてもいないし、動揺してもいないようで。
たぶん、最初から彼らはそのつもりだったのか・・。
―――――って・・・そう、誰かが静かになって・・次に、周りがざわっとした。
「――――なんだあいつら・・?あの口の利き方・・・?」
「『C』の奴ら・・・」
感情を逆撫でされたような誰かと、周囲の感情が染まり始めているのか・・・。
『そうか。』
ただ、相手をするステージ上の彼、ケプロさんは堂々と変わらず、落ち着いた声だ。
『そいつぁ良かったな。今回は混合だ。
決定している。
君らも他の隊員と肩を並べ、学べる機会が多くあると・・・―――――――
』
「―――――違ぇっすよ、わかってねぇなー」
『・・あ?』
壇上の彼の、少し、声音が変わった気がしたけど・・。
それは、彼の言葉遣いや態度のせいか。
「俺らがやりたいって言ってんっすよ、」
奔放な人なのか。
『EAU』には適正テストがあるから。
性格や行動のパターン項目も・・・『C』でも、そういうのをちゃんとチェックしていると思うけど―――――――
彼、ミリュモ・ル・サラマンは不遜な、不敵な笑みを浮かべていた。
『C』の隊員である彼は、・・隣の仲間のオルビ・マイヤーに肩を押さえられていたが。
「すいません、こいつはたまに口が悪いんで。」
多少の恐縮した態度を見せていたが。
『・・やりたいだけでは・・、・・・』
壇上の彼、ケプロさんがふと、耳元を気にしたようだ。
無線からの声、動きは小さくてもその素振りに見えた。
というか、その『C』の彼らの中で、顔を背ける様に小さくあくびを誤魔化す彼、確かガリナ・エルポって名乗った彼がそうしていたのも気が付いたけど。
「色々な準備をしてきたんでしょう?つうか、もったいなくないですか?
もっと『選択肢』を広げない理由も無くはないかと。」
『・・つまり、何が言いたい?』
ケプロさんが低く抑えた声で、ジロりと見た、その質問へ。
『C』の彼らは一瞬、笑みを見せた、不敵な笑みをまた・・・何かを獲った、かのような表情に見えた。
「『A』のトップ、来てるじゃないですか。」
そう・・・。
「戦う、ってのはどうですか?」
「っていう、スペシャルステージ、よくない?これ?」
ざわ・・っと、ざわついた・・周囲がざわりと・・・戸惑うような、動揺する人たちの息遣いが大きく膨らむ。
「訓練でしょ?余興みたいなもんじゃないっすか。
見に来たんでしょ?遊びに来たんですか?
トップとやらなきゃ、意味ないじゃないっすか。
疲れてるとか?昨日も酒飲み過ぎで寝てたとかじゃないっすか?」
「え、そんな奴ら、ヤバいじゃん、勝っちゃうじゃん。」
ステージ上で何かを言いかけた彼、ケプロさんだけど、口を閉じて向こうを見て、何かを確認したようだ――――――
「おまえら、遊びに来てんじゃねぇえんだぞ、おい、」
誰かが人を掻き分け詰め寄る、彼らの態度に怒ったようだ。
「まどろっこしいんっだよ・・・っ・・」
そう、低い音、かすれ声のようにも聞こえた、押し殺したその声は、今まで口を開かなかった彼、ディーだっけ・・。
彼は小さな声で、うざったそうな、顔を歪め、そして正面で対面した彼らと睨み合う―――――――
「俺ら、そのために来たんだよ。今さらクソ雑魚どもに勝ったって意味ねぇって、」
言い放った、大胆不敵に。
「ぁあ・・?・・」
「クソ・・・?」
ざわり・・と、ざわつく、さっきよりも大きなどよめきが立つ。
「・・・・」
《クソ雑魚・・ぷふっ・・・》
なんだか、笑っているような様子の彼の傍の仲間、ガリナ・エルポもいるけれど。
「ぉお、ぶっちゃけるなぁ、あいつら・・」
って、隣のガイが、感心なのか、呆れているのか、呟いてた。
ガイは頭を掻いてたけど、私がそれを見ていれば、腕組みをするガイもこっちに気が付いて、いつものように肩を小さく竦めて見せてきた。
ガイもちょっと引いてるのかもしれない。
「勝っちゃうじゃんか?したら?ヤバくねぇ?」
「クソ雑魚に勝ったって意味ねぇ、」
「あぁ?お前ら、誰の事を言ってんだ?おい?」
周囲の、誰かがたまらずイラついた声を上げたようだ。
「やりゃあ、わかる、」
彼、ディーが、そう・・・。
『お前ら、黙れ、』
「お前ら、それ以上言うんじゃあねぇえ、」
「でもさぁ、そういうの、きっちりしといた方が良いっしょ?」
「なんっか、違うんすよね、俺ら、あんたらと、」
『おい、お前ら、』
「なにがだ・・!?」
「本当に、強いのかなぁ?って」
「それそれそれ、それな、」
「んだと、お前ら・・」
「ヌぬぁあぁんんだあぁ、おめええぇえらぁあ、」
って、一回りも二回りも大きな声が突然、ミリアもビクっとちょっとした、大砲のように周りの人をビクッとさせて。
――――――掻き分ける様に前へ出て来ていた・・・あの、身体の大きな無精髭な彼は・・。
バークさんだ、周囲の制止の声も、抑えようとする人も引きずって力任せに前に出てきたようだ。
さっきロヌマたちが名前を言ってた、あのバークさんだ、『A』のリーダーをしている1人で。
えっと、たぶん、『EAU』の中で一番声が大きい、というのがミリアの前から持っている彼への純粋な印象だ。
「まぁさぁかぁ・・!?ケンカ売ってんのかぁあ!??」
って、バークさんが言ってるけど・・まあ、彼らはそうだと思うけれど・・・。
「バークっ、やめとけっておい、」
って、しがみついているのはゴドーさんで、バークさんを止めようとはしている、けど引きずられているようだ。
『バーク、よせ。周りもそいつを止めてろ、』
「はぁぁぁんっ!?おめぇら、ボコボコにされたい、ってことかぁああんん?」
「やんのかこらーっ・・!!?」
って、小さい、バークさんの陰にいたあれは、ロヌマも、大きなバークさんの隣で一緒に息巻いているようだけど・・・。
「なんだこのチビ、」
「ぬぁっ・!?」
ロヌマが、ちょっとショックを受けたようだ。
「え?っつうか、あんた『A』なの?」
「あん?そうだぞぉぅっ、今頃気づいたかぁ?おめぇらぁ、『A』だぞぅっ!俺らはぁあっ。どうだ?ビビり散らしたかぁあ!?」
「うわ、マジ・・?」
「幻滅だわぁ、」
「へぇっへっへぇ・・?ぁん?」
得意げに笑ってたバークさんが気が付いて。
「なんだとこるらぁあ!!?」
怒ってる。
「ぅうるぁあー!!?」
って、驚いたり怒ったり、ロヌマも、威嚇してるバークさんとロヌマが同調しているみたいだ。
「やっちまえー、バークー、ロヌマ―」
そんな2人を適当に周りで応援する無責任な人もいるようだ。
「んなの相手にすんじゃないよ、ロヌマっ、」
「ブっ●〇す!」
主にロヌマの方から、汚い言葉も聞こえてきたかもしれないけど。
まあよく聞こえなかったし、周りの影響だと思うことにするとして。
「ったく、シン、捕まえといて、離すんじゃないよっ」
とりあえず、バークさんとロヌマを止めようとしている周りの人たちは、彼らを羽交い絞めにしようとするだけで精いっぱいの様だ。
それをニヤニヤ笑っているような『C』の彼らは――――――。
「―――――なんだあいつら・・・?」
「『Class - C』のやつらだろ・・・」
「あの『C』か?研究オタクたちの・・おっと、これ悪口になるか?」
って、周囲の彼らの声も聞こえてくる。
「よっぽどプライド高ぇらしいなぁ・・?」
「なぁ、『C』って『頭』いじったりしてるって話、本当か?」
「いや、『C』全部があんなのじゃないって、知り合いいるけど――――――」
「――――ぶっははっはっは、」
「言われてるぞ、おい、どうすんだよ、お前ら」
大きな口で笑っている人もいたり、煽って、それが面白い余興だとでも思っているのか、まるで他人事のように・・・。
・・・まあ、他人事ではあるんだけど。
なんにせよ、この場の収拾がつかなくなってきているのは間違いなくて――――――
―――――――壇上の彼、進行役のケプロも無言で彼らを見ていたが。
口汚くなってきた彼らから、目線を動かした。
その先はこちらを傍観するように見守っていた責任者たち、数人の隊長たちやアイフェリアたちの方だ。
そこには今回のイベントの責任者の中である各隊長と、その中にエヴィン・バーダーたちもいる――――動かない――――彼らは静観|《せいかん》なのか。
――――――すごい事になってきたな・・?」
って、そんなガイの様子がちょっと楽しそうなので、とりあえずミリアは横目で、ジト目にちょっと見たけれど・・・。
『お前ら、モノには順序ってものが・・・――――――』
「―――――えぇ?逃げんの?」
『――――――――ったく・・、』
ステージ上の彼らか、スピーカーを通してため息のような声が漏れ聞こえてたけど。
周囲の数人の賛同する仲間たちが、無責任に応援しているようだ。
「あいつらなんで、あんなことやりたがってんだ?」
って、こんな騒ぎになってても、傍のケイジにはよくわかっていないようだ。
むしろ、面倒だろ?と言いたげな、そんなケイジはでも、ちょっとは興味を惹かれたのか、不思議が半分といった感じで向こうを見ていた。
まあ。
『C』の彼らのあの言いようだから、『A』である自分達もバークさん達みたいに言い返す側なのかもしれない、って。
ちょっと思ったけど。
「あんたらも『A』なの?」
「いいや『B』だよっ、悪いかよ?」
「俺は『A』だぞぅっ!どうだ?ビビり散らしたかぁあ!?」
「うわ、マジ、幻滅だわぁ、」
「っうぅうぁっせぇえよぉぉおっ、ピーチくぱーちく!うっせええぇええんだよぉお!おまえらぁあぁあ・・!」
「コいやぁあーっ!!?」
って、驚いたり怒ったりしてるバークさんたちだ。
まあ、やっぱり、別にあそこへ加わりたくはないけれど。
・・・中には、そんな彼らを囲むような人達もちょっと、表情が険しかったり、睨みつけてたり・・・―――――
―――――――・・ぁあ、わかった。』
そう、女性の低い声がした。
マイクへ意図せず入った声だったのか、ミリアが気が付いたステージの向こうで、アイフェリアさんが向こうへアイコンタクトを取った横顔を見せながら、前に出て来ていた姿を見つけた。
―――――フぁ・・っと――――息を吸う音と―――――――『傾注――――!!』
はっきりとした重い声、大きい・・・、いや、お腹に効く声。
それはビリりっと空気を震わせた・・―――――・・・その一言が、周囲の動きを止めた。
そう、場を静まり返らせた、一瞬の。
『この場は預かる、』
って、またどこからか聞こえるスピーカーを通した低い声、向こうにいる隊長の誰かからか。
『その提案、我々は『いま』、前向きに検討した。』
って、低音で伝えるその声はどこからか。
『つまり、面白そうだ。』
――――ざわっ・・と、周囲がどよめいたいように。
彼らみんなが、檀上を振り返った。
『予定を多少変更する。君たちの要望を取り入れる形にしよう』
「・・マぁジか、」
「おいおい、おい・・?」
「うは、めんどくせー・・・」
「――――――マジで予定変更するんですか?」
『ああ、決定した。』
どよめくままに、その場に立っている彼らは・・顔を見合わせ、次に・・発せられるはずの、なにかの言葉を・・・待つ――――――――
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