幻想機動輝星

sabuo

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第1章 再起動 『ZERO』HAS COME TO

第38話 覚醒(3)

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人間達の世界、『人間界』と重なり合うように存在し、人間界と大きさや位置がまったく同じの大陸が存在し、
神族や魔族、人間が共存している、私達が住んでいるこの『亜界』
その歴史の基本となっている聖なる暦、『聖暦』。それが始まってから約3000年。
我々はある脅威にさらされている。


聖暦2991年、第三次神魔大戦の最中、その脅威は出現した。
正体不明の魔法生物らしきもの。通称『フリークス』
人間界の言語の一種、『イングリッシュ』で奇形、変種などの意味を持つ単語を、通称に持つこれは、亜界。とりわけ『極東』と呼ばれる各地を襲い、甚大なる被害を与えた。
当時、極東にあった四つの国は、この脅威に対抗するため、極東連合(FEU)と極東連合軍(FEUA)を設立。
更にフリークスの研究と、それに対抗する兵器を開発するために極東連合軍対特殊事象戦略機動部隊。通称、戦略機動隊(SMF)を結成した。

SMFは対フリークス兵器群の研究、開発に着手。その最もたるもの。それが人型機動兵器、ウィザード・ギア(WG)である。

SMFは現在、その目的を対フリークス兵器の研究、開発だけに留まらせず、対フリークス戦術・戦略の域に拡大させている。

前線基地や観測基地などが密集させ、『基地群』と呼ばれる集合体を極東列島(人間界においては日本列島)各地に形成し、ここに大量のWGを配備しているのがなによりの証拠であるといえる。
山城第一、梅田第二、武蔵野第三、坂出第四、釧路第五、それが極東列島にある基地群の名称だ。
SMFの本部は、この基地群の中で一番最初にできた。『山城第一基地群』にある。

亜界がフリークスを確認し、戦争状態になってから約30年になる。
神族国家の連合『聖教会教導連合』や魔族国家の連合『首長会議連合』は『フリークスの存在は極東四ヵ国の嘘であり、極東連合は単なる軍事同盟である』と言っている。確かに、極東連合は軍事同盟の側面も持っている。しかし、私は提言する。
フリークスは実在する。
私は戦略機動隊の従軍記者として、フリークスをその目で見た。
そして確信した、フリークスは亜界の脅威であると。


今回、戦略機動隊は私に一定の情報開示と、対フリークス戦の今を報告する本を出すことを許可した。
私が対フリークス戦を取材して分かった事実を、報告しようと思う。


再度、提言する。フリークスは現実であり、亜界の脅威であると。



―――エマ・タチバナ著『亜界の脅威・フリークス』より抜粋。





「君は我がSMFの開発局で、魔力の研究をしていたんだ」
黒髪にメガネをかけた人間の男。SMF総司令、レオス・オブライエンはそう言った。
「魔力の…研究?」
俺はエマ・タチバナ著の『亜界の脅威・フリークス』から顔を上げ、レオス・オブライエンの発言を聞き返した。
俺はもう、会話ができるレベルまで回復していた。
始めはまさか、と思っていたが、猫耳の看護師が来て確信した。
俺は異世界に来たらしい。
しかも、聞く話によれば、俺は数ヶ月前にもうこの世界に来て、このSMFという組織で魔力の研究をしていて、記憶を失ったらしい。
納得した。どうりであの医者が俺の名前を知っている訳だった。
しかし、今の俺にとっては初対面だ。
異世界の、いや亜界の事情やらそういった事も初耳だ。だからこのエマ・タチバナが書いた本は助かった。
文章も(俺にとって)分かりやすく、五分で全て斜め読みし、俺は事情を理解した。
要は某戦闘妖精の光学異性体みたいな奴が襲ってきているファンタジーな世界という訳か、と俺は結論した。
「しかし記憶を失ったとはいえ、君の魔力に関する知識まで無くなってなくてよかったよ…ああ、すまん悪かった」
「いえ、この亜界の魔法技術についてはさっぱりです…何か俺、重要なことでもやっていたんですか?」
「まあね…とにかく、無事でよかった。とにかく今は体を休めて、君は衰弱している」
異世界に来た、いや記憶を失った俺は衰弱していた。
どうも俺は街中で体中から血を噴き出してぶっ倒れたらしい。
右目がつぶれているのはそのせいか…と、思ったがそうでは無い。右目は最初に発見された時に既にそうなっていたそうだ。
最初の発見された時は瀕死だったらしい。
その時の記憶はもちろん無い。問題はそれ以前の記憶が無い。
亜界に来る前、俺は何をしていた?
一番最後の記憶は中学の卒業式の時、大塚第二中学歴史研究部部長、葛葉陽一郎と話した時だ。それ以降の記憶が無い。
何があったのだろうか? 
俺に、何があったのだろうか?
「…思い出せない、か?」
レオス・オブライエンは俺の表情で察したらしく、「安心しろ」と言った。
「いつか思い出すさ、ほら、物を無くした時なんか、後からふとどこにやったか思い出したりするだろ。それと同じだ」
そう言って、「じゃあまた来る、しっかりと眠ること、それが君の任務だ」と言って病室から出て行った。

窓の外を見る。
オレンジ色だった。夕方。
俺はベットの横にある台の上、デジタル時計を見る。時刻は17時56分。
まだ寝るには早かったが、俺は目を閉じた。




「光男君?」
知っている声だった。
俺は目を開いた。
黒髪ロングの、制服姿の女子。そいつが俺を見ていた。



「…茜?」
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