幻想機動輝星

sabuo

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第2章 騎士の夢 BLADE RUNNER

第55話 三毛猫機動実証(3)

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「と、言う訳で反省会を行う」
そういうアヴェントの顔は疲れきっていた。いやアヴェントだけではない、集まったみんな、俺を含めて疲れていた。
時刻は午後十一時、場所は近江山城の第一作戦室。普通なら寝ている時間だ。それなのに何故起きているのかといえば、
「オール、三毛猫の状況の報告を頼む」
「うん」
オールがやつれ果てた顔でパソコンを操作、作戦室のディスプレイに三毛猫の状態を表示させる。
「まず結論から言って、三毛猫の方は無事だ。装甲、フレーム、機器…はさすがにめちゃくちゃに破損したけど、でもこれも交換前提の設計だから取り替えるだけで大丈夫、ブースターが吹っ飛んでいたけどこれもすぐに交換が終わる。けどイジェクトシートは回収しているから再びつければいい。リナイ君とイータ君も無事だ、だから三毛猫に関しては明日にでも動かせる、事故原因を改修してからだけど」
「それは後で…リナイ、イータ、本当に大丈夫か?」
「うん、怖かったけど、ぜんぜん大丈夫。また乗れるよ」
リナイは手を挙げて元気に答えた。後ろにいるイータもピンピンしている、二人はかすり傷一つ無く脱出できた。
「二人とも骨折等、擦過傷も無い、リナイちゃんたちのメンタルも大丈夫だよ」と医務担当のラビラトスが答えた。
「それはよかった…で、ザーフ近江山城の状態は」
「左舷中央部の装甲に傷が、それ以外は無い…衝突の衝撃で自室で昼寝していたルース先生の頭に国語辞典が直撃する事案が発生したけど」
後ろのほう、ルース先生が笑顔で座っているがどう考えても怒っている、その事を俺を含むみんなが分かっていた。
が、無視してアヴェントは「航行は可能なのか?」と続ける。
「大丈夫だ、問題ない」とザーフ、
「装甲の傷なんてよくあることだ。フリークスの特攻(カミカゼ・アタック)なんかで、な。一応ザジルに見てもらったが」
「大穴を空けたまま航行をしている航空艦を見たことがある、それにくらべればあのような傷はまったく問題にならない、全然大丈夫だ」とザジルが保障した。
「そうか、でだ。暴走の原因は何か、分かったことはあるか? 朽木」
「根本的な事を言うなら、魔力の供給過多、だ」
俺はディスプレイを指し示し説明する。
「わかりやすくするため色々とはしょるが…ウィザード・ジェネレーターは基本、魔力を生み出して外に送る物だ。だがしかし、魔力の放出口、この場合はブースターだな、ここから放出できる魔力は限られているんだ。三毛猫のブースターはこの限度がかなり高い。が、それを超える出力でジェネレーターが魔力を生み出したんだ」
そしてその場合
「ブースターから出られない魔力が発生する、余剰魔力だ。ブースターの周辺にたまった余剰魔力はいったんそこにたまる。が、それが一定量を超えると」
行き場を失った魔力は出口を求めて暴れ、
「ジェネレーターに逆流する」
「その場合、どうなるんです?」と不安そうにイラクスが言った。
「詳しい記録が無いため俺の経験を元にした推測でいいか?」
「お願いします」
「大抵のウィザード・ジェネレーターは点火時に魔力を投入し魔力石に反応させる。いわゆる『魔力石反応』だ。それを維持したまま魔力を取り出す。ただしこれは魔力石反応による生成魔力の爆発的増加、いわいる『魔力暴走』と定義される『危険な状態』の一歩手前だ。そこに魔力が大量に流れ込むんだ。恐らく、瞬間的に超高出力魔力を放って爆発する」
「WGは?」
「残骸があったらマシな方だ、魔力爆発の威力は凄まじい。さすがのWGもそれを機体内でやられたら防げる訳が無い。跡形も無く吹っ飛ぶだろうな」
作戦室が静まり返った。
だが、ふとリナイが声を上げた、
「あれ、じゃあなんで爆発しなかったの?」
「緊急停止システムが作動した。そもそも俺の作ったウィザード・ジェネレーターは構造が通常とは違う。魔力石を少ない魔力で反応させて、半暴走させること無く魔力を生み出すように設計されていた…つまり、安定性が遥かにいいんだ」
整流装置の賜物だろう。あれのお陰で少ない魔力で魔力石を反応させる事ができる。
「だから、いきなり魔力石による反応をストップさせても大丈夫なんだ、普通のウィザード・ジェネレーターは停止させるとき内部の魔力を抜かなければならない。そうだろう?」
「うん、その通りだ」とオール。
「でも、それがどうしてブースターが止まらなくなった事に繋がるんだい? それに、記録には停止システムが作動した後もウィザード・ジェネレーターは稼動していたらしいけど」
「うん、それな」
俺は怒られる覚悟で言った。
「俺の作った停止システムは、まずジェネレータの魔力石反応を止めることを第一としている」
具体的には、魔力石の周りを『魔力遮断物質』と呼ばれる特殊な素材でできた筒状の壁がシャットアウトする。
「それで、その上でだ…溜まった魔力を外部に『強制的に』、それも『一気』に開放する」
「強制的に開放? 一気に?…あ」
オールは気づいたらしい。この意味を、
「つまり、溜まった魔力を強制的に…ブースターから溜まった魔力を無理やり開放したって事?」
「うん、そういうことだ。そしてよくよく考えて欲しい。三毛猫のジェネレーター出力は戦闘時一万キロW(ウィザード)だ。これは、一般的な魔術師が持つ魔力、一万人分に相当する…そしてこの桁の数値は、航空駆逐艦でよく出る」
つまり、
「停止時、まだ航空駆逐艦を飛ばせるだけの魔力があった訳だ。それを強制的にブースターから開放しようなんて…ああ、とんでも無い出力だったろうな…普通、そんな馬鹿な事はしない。だんだん、ゆっくりと魔力を放出する筈だ」
「……」
みんな、ようやく気づいたらしい。覚悟を決めよう。
「つまり、俺の設計ミスだ」





「あら、朽木君。まだやっていたんですか?」
格納庫内でウィザード・ジェネレーターの改修を1人で行っていた俺を呼んだのは、金髪の、眼鏡をかけた。
「ルース先生、どうして?」
「茜さんから頼まれて、へこんでると思うから励ましてやってくださいって」
「あいつ…」
いや、確かにへこんでいるけど、しかしそれ以上に。
「すごく眠い…」
「今夜中に改修するって言ったのは朽木君でしょう、しっかりとやりなさい」
「はい」
言い訳など無い。すべて俺の責任だ。
そう思いつつ、俺はパソコンを片手に、色々変更する。
「えーと、ここの緊急フェイズを…あった、これか」
改修と言っても、暴走原因である緊急停止システムを変更するだけだ。
具体的には、放出する魔力を一定量に抑え、さらにメインブースターだけでなく、機体各部のサブブースターにも放出して、放出魔力を分散させる。
「後は胸のハッチかな…そこからも魔力を出して…」
「…がんばってますね」
にっこりと、先生は微笑んだ。それに俺は答える。
「これが好きな事だからですよ。嫌いな事やしたくない事は徹底的にできないし、すぐ集中が途切れる。でも、これは俺の好きな事ですから」
「好きな事って、なに?」
「魔力・霊力関連全般です」
機体のシステム周りを終える。後はジェネレーター本体にまだ何か問題が無いか、調べる。
「魔力や霊力そのものに関する事なら何でも俺の専門です。ただ、魔術に関してはさっぱり」
「魔力や霊力は、魔術や聖術を行使するための物なのに?」
「逆です、先生。本当は魔力を応用するための魔術です」
魔術や聖術は、魔力の力を応用するための物だ。
「最初はそうだったんです。だけど長い時間が経つ内、逆になってしまったんです。この世界ではどうかは知りませんけど、人間界では」
「…相変わらず、魔力に関してはすごいんだな、朽木君」
ルース先生は俺の顔をまじまじと見ながら言った。
「朽木君が芹沢と名乗っていたときも、君は度々、先生に魔力の事を話してくれていたんですよ」
「そうなんですか?」
「ええ、それはとてもとてもうれしそうに…ウィザード・ジェネレーターは魔力技術の結晶だとかなんとか、凄くはしゃいでいたのよ」
「はしゃいで…」
そんなに嬉しそうに、どうしてだと思ったが、すぐに理由を思い出す。
「それは、当然でしょうね」
「え?」
きょとんとしたルース先生に、俺は答えた。



「ウィザード・ジェネレータの開発は、俺の夢の一つだったんです」
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