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序章 ある研究員の記録『ZERO』IS SLEEPING
第18話 声
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人が死んでいる。
「当然だ。戦場だからな」
あなたは何故生きている?。
「知らない」
あなたはこの戦場を出ることができるのか?
「できないだろうな」
あなたは絶望しているか?
「していない」
あなたは希望を持っているのか?
「持っている」
それは何故?
「上を向いて歩こう。そう決めた」
両腕が重い。
理由はすぐに分かった。
右上を茜が、左腕をアレサが、それぞれ枕にして寝ていた。
(・・・さて)
俺は周囲の音を探る。二人の寝息の他に、音が無いかを調べる。
(・・・いないな)
よし、取り合えずの安全は確保されているようだ。
布団の匂いと暖かさから考えて、今俺が寝ているのはいつも茜と一緒に寝ているベッド。
つまりここは俺達の部屋だ。
(茜は戸締りをしっかりする・・・乱入は無いだろう)
だからと言って警戒しない俺ではないが・・・しかし、
(なんで2人とも全裸なんだよ!!!)
いやまあ、確かに、男子としては夢のようなシチュエーションだけど、でも実践しなくていいから!!
横から見ればかなりヤバイシチュエーションだろう。
完全に事後だ。
俺が戦技研の制服着ているお陰でまだマシだけど、しかしまずい状況にあるのは間違いない。
今俺がすべきことは、
(この布団からの脱出ッ!!)
俺は慎重に腕を引く。まずは左腕、アレサの方からだ。
慎重に、慎重に・・・抜けた。
(まずは第一段階クリア・・・問題は)
茜が寝ている。そしてこういう時こそ注意しなければならない。
高度で極めてテクニカルな狸寝入りするからなあ。今起きている可能性は十分にある訳だ。
いざと言うときの為に左腕をいつでも使えるようにしながら、抜こう・・・と、思った時、
(・・・?)
茜の胸、その谷間に、何かが描かれていた。
(タトゥー・・・では無いな)
こいつはそういう事を絶対にしない・・・というかこの模様、いや紋章、どっかで見た気が、
「!!!」
危なかった。
マジに危なかった。
俺の左腕が義腕じゃなかったら死んでいた。
俺の左腕に、ナイフが突き刺さっている。それをやったのは、
「おはよう。光男君」
茜が、眼を開けた。
「さて、和平交渉(物理)も済んだことだし、あの後どうなったか教えてもらおうか」
「うん・・・分かったから・・・こちょこちょ・・・もうやめ・・・」
ぜえぜえ言いながら、茜はあの後の事を話し出した。
ちなみに、現在の時刻は14時32分。日付は5月3日だ。結構寝ていたようだ。
「まず作戦の結果だけどね。積み荷は無事届いたよ。リナイちゃんは今自宅で静かにしている。他のみんなも無事だよ」
「あの時何があった? リナイがどうとか・・・」
「それがね・・・あの時、リナイちゃんがいきなり倒れたの」
「倒れた?」
「うん。頭を抱えてね、すごく息が荒かった」
「・・・・・」
神が調子を崩すだと?
(あるのかそんなこと・・・いやあっていいのか?)
「その後、不意に気を失って・・・それっきり」
「そうだったのか・・・フリークスについては?」
「局長曰く・・・似ているけど・・・なんというか強化されてたみたい」
「強化?」
「高性能・・・何らかのグレードアップらしきものが施されてたみたい。詳しくは局長にも」
「まあ、フリークス自体分からないことが多いからなあ・・・にしても異常だが」
「局長も同じ事を言ってた・・・近頃のフリークスの様子がおかしいって」
「・・・先月の襲撃、か」
「うん。今までに無い事だって。そしてその件で、今緊急の会議が行われているの」
「緊急の会議?」
「今後の戦略方針。それらを再検討するって」
「・・・・・」
また、色々と厄介事が増えそうだな。
「そうだ、機動砲台については何かあったか?」
「ごめん・・・そこらへんは私にも聞かされてなくて」
「・・・そうか」
何かあったな。
「まあいい。とにかくみんなが無事でよかったよ・・・こいつも」
アレサは相変わらずベッドで寝ている。すごく優しい笑顔だった。可愛い。
守りたい、この笑顔。
「それはいいとして・・・なんで全裸なんだ?」
「それはもちろん。光男君の男としての本能を覚醒させて一緒ににゃんny」
「サドンインパクトォォォ!!!」
ストライク・パイルがあったら完璧だった。
「よくもまあそんな事やったもんだ。若いのによくやる」
「ええまあ」
14時42分、山城基地第一食堂。
俺はカウンター席で遅めの昼食をとっていた。
メニューはサンドイッチ。それとミルクコーヒーだ。
サンドイッチにはキャベツとハムが挟まっているシンプルな物だがすごくおいしい。お腹が空いていたせいだろうか。
「しかし昨日の夜中あんなことがあったとはな・・・道理で夜中騒がしかった訳だ」
そう、エプロンを着用した茶髪の鬼、ジョナス料理長は言う。
「騒がしかった?」
「ああ。Dプラントのほうだったか、作業服きた奴がいっぱいいたぞ・・・確か、下の方に向かっていたな」
「下の方、ですか・・・」
輸送列車か。
「結構大掛かりだったぞ。ここの上空にギガルの航空戦艦が停泊してな、基地の甲板部に大量のMBが配置されていたぞ」
「そうだったんですか?」
「ああ。明らかに過剰だった・・・相当なもの、お前は運んでいたようだな」
「そうみたいですね」
結局、積み荷の正体は分からずじまいか。
「そういや前から聞きたかったが・・・お前のその青い服、なんて言うんだ」
「これですか? 『はんてん』って言うんです」
ちなみに今の俺の服装はジャージに黄緑色のパーカー、そして金色で格子状の刺繍が入った青地のはんてんだ。
プレゼンツバイ、レオス・オブライエン。
「へえ、そう言うのか・・・そういやお前のそれ、どっかで」
「・・・お、朽木じゃね?」
そう言うのは首にタオルを巻いた、ジャージ姿の赤髪の鬼、
「ザーフ? なぜここに?」
「いや、ただの修行だけど?」
「修行だよ、修行」
そう言って、ザーフは俺の隣に座った。
「おっさん。こいつと同じサンドイッチくれ。腹が減った」
「おう」
そう言って料理長は奥の方に行った。今の時間帯、食堂の調理員が料理長ただ1人らしい。
「・・・ていうかお前、今日学校じゃあ?」
「いや、それがルース先生、今日の授業来れなくなったらしくてさあ、午前中の授業だけだったんだ」
「ああ、そういう事」
大方疲労だろうな。
「・・・でもなんでまた修行なんて?」
「いや・・・ただ、世界を旅したくてさ」
「世界?」
「ああ。色々な所を見てみたいんだよ。世界をさあ・・・」
「お、おう」
こいつ、意外と繊細なとこあるんだな・・・前の体育の時間、跳び箱を派手にぶっ壊した奴とは思えないぐらいに、
「まあ、その為に色々とやってんだ。体力作りは今からやっといた方がいいからな。それと、資金調達」
「・・・色々と考えているんだな」
「おーい、できたぞ」
料理長がサンドイッチをザーフに渡した。
それをザーフは一口で全て食べて、水を飲んだ。
この間、僅か二十秒。
「お前・・・ちゃんと味わっているのか?」
「ああ」
済ました顔で、ザーフは言った。
「ただ最近・・・なんかこう」
「どうした?」
「刺激・・・というか、何か新しいことをやってみたいんだよな」
新しいこと、か・・・
「そういやお前、確かザジル達と何かやっていたよな」
「ああ。WG作ってるけど」
「そうか・・・俺も混ぜてくんね」
「・・・は?」
「いやだから、お前達のWG作りを手伝うって言ってるんだ」
「え、ちょ、おま」
「じゃあ、そういう事で、よろしく頼むわー」
そう言って、ザーフは行ってしまった。
「・・・・・」
(分からん・・・)
なんなんだあいつは。
「・・・昔はもっとはしゃいでいたんだがなあ」
そう、料理長は言う。
「前はもっと単純な奴でな・・・最強のWGパイロットになるだとか航空艦の艦長になるとか、まあ、どれも失敗したが。それでも次から次へと・・・まあ、見ていて悪いもんじゃあなかったが。ただ」
「ただ?」
「五年前か? あいつがまだ浜大津の中等部にいた頃から大人しくなってなあ・・・なにがあったかは知らんが」
「そうですか・・・」
あいつもああ見えて、一枚岩じゃあないってことか。
「もっとも、前よりは大人しくなったってだけで、まだまだ単純な野郎だよ」
「同感です」
そう言って、俺は追加で注文しようとした時、端末が鳴った。アレサからメールだ。内容は、
『浅葱様が倒れました』
俺が浜大津総合学校の保健室に来たときには、もう茜が来ていた。
目の前のベットには、浅葱が寝ていた。
それを心配そうに、茜は見ていた。滅多に見せることの無い表情だ。
(そりゃそうだよな)
茜にとって、浅葱はただ一人の家族だ。
もちろん。生物学上の親は居るが、しかし家族としてみた場合、茜にとって家族は浅葱ただ1人だ。
「・・・浅葱」
茜がか細い声で言う。そして、その手をしっかりと握った。
「置いていかないで・・・」
茜にとって大切な存在、妹。それが浅葱だ。
俺はそっとそばを離れ、保健室を出て、待機していた交野に話を聞く。
「何があった?」
「・・・昨日の夜です」
交野は言う。
「『声』が聞こえたんです」
「『声』?」
声だと?
「どんな声だ?」
「なんて言ったらいいのか・・・分かりません」
「そうか・・・それは『耳』で聞いたのか? それとも」
それとも。
「『頭の中』に直接?」
「・・・後者です」
「・・・そうか」
こりゃあきな臭い話になって来た。
「その時『探り』を入れていたりしたか?」
「いえ。夜中に突然」
「時刻は?」
「確か・・・0時辺りだった気がします。昨日はなんとも無かったのでそのまま寝たんですけど・・・けど今朝になって浅葱の様子が変で、それで」
「倒れたと」
「心当たりが?」
「推測だけど・・・一種のショック症状かもな。お前はまだしも、浅葱は『感応』の力に慣れていない。そんな状態でそんなもの聞いたら」
「じゃあ、僕達に『声』が聞こえたのは『感応』の力があったからという事ですか?」
「恐らくはな」
リナイ神の気絶、MBの暴走。そして、アンノウン。
「ビンゴ、か・・・」
「ビンゴって?」
「交野。浅葱が動けるようになってからでいい。『声』について聞いてくれ」
「え、あ、はい。分かりました」
そう言って、俺は廊下を歩き出す。
「先輩、どこへ?」
「先に帰ってる。茜にはそう伝えてくれ」
そう言って、俺は廊下を歩く。
端末が鳴った。局長だ。
「そろそろ何か来そうな感じはしましたよ」
『さすがだな朽木研究員。目覚めたばかりでよく分かったな』
「局長なら暴走したMBの解析を最優先でやると思ったので」
『まったくその通りだ』
「それで、何か分かりましたか?」
『それがだな・・・』
局長は言った。
『MBに搭載されている管制制御システム。『A‐MOS』に何かが侵入した痕跡があった』
「・・・まさか」
『ああ。そのまさかだ』
局長は言う。
『『A‐MOS』が何者かに乗っ取られていた』
「当然だ。戦場だからな」
あなたは何故生きている?。
「知らない」
あなたはこの戦場を出ることができるのか?
「できないだろうな」
あなたは絶望しているか?
「していない」
あなたは希望を持っているのか?
「持っている」
それは何故?
「上を向いて歩こう。そう決めた」
両腕が重い。
理由はすぐに分かった。
右上を茜が、左腕をアレサが、それぞれ枕にして寝ていた。
(・・・さて)
俺は周囲の音を探る。二人の寝息の他に、音が無いかを調べる。
(・・・いないな)
よし、取り合えずの安全は確保されているようだ。
布団の匂いと暖かさから考えて、今俺が寝ているのはいつも茜と一緒に寝ているベッド。
つまりここは俺達の部屋だ。
(茜は戸締りをしっかりする・・・乱入は無いだろう)
だからと言って警戒しない俺ではないが・・・しかし、
(なんで2人とも全裸なんだよ!!!)
いやまあ、確かに、男子としては夢のようなシチュエーションだけど、でも実践しなくていいから!!
横から見ればかなりヤバイシチュエーションだろう。
完全に事後だ。
俺が戦技研の制服着ているお陰でまだマシだけど、しかしまずい状況にあるのは間違いない。
今俺がすべきことは、
(この布団からの脱出ッ!!)
俺は慎重に腕を引く。まずは左腕、アレサの方からだ。
慎重に、慎重に・・・抜けた。
(まずは第一段階クリア・・・問題は)
茜が寝ている。そしてこういう時こそ注意しなければならない。
高度で極めてテクニカルな狸寝入りするからなあ。今起きている可能性は十分にある訳だ。
いざと言うときの為に左腕をいつでも使えるようにしながら、抜こう・・・と、思った時、
(・・・?)
茜の胸、その谷間に、何かが描かれていた。
(タトゥー・・・では無いな)
こいつはそういう事を絶対にしない・・・というかこの模様、いや紋章、どっかで見た気が、
「!!!」
危なかった。
マジに危なかった。
俺の左腕が義腕じゃなかったら死んでいた。
俺の左腕に、ナイフが突き刺さっている。それをやったのは、
「おはよう。光男君」
茜が、眼を開けた。
「さて、和平交渉(物理)も済んだことだし、あの後どうなったか教えてもらおうか」
「うん・・・分かったから・・・こちょこちょ・・・もうやめ・・・」
ぜえぜえ言いながら、茜はあの後の事を話し出した。
ちなみに、現在の時刻は14時32分。日付は5月3日だ。結構寝ていたようだ。
「まず作戦の結果だけどね。積み荷は無事届いたよ。リナイちゃんは今自宅で静かにしている。他のみんなも無事だよ」
「あの時何があった? リナイがどうとか・・・」
「それがね・・・あの時、リナイちゃんがいきなり倒れたの」
「倒れた?」
「うん。頭を抱えてね、すごく息が荒かった」
「・・・・・」
神が調子を崩すだと?
(あるのかそんなこと・・・いやあっていいのか?)
「その後、不意に気を失って・・・それっきり」
「そうだったのか・・・フリークスについては?」
「局長曰く・・・似ているけど・・・なんというか強化されてたみたい」
「強化?」
「高性能・・・何らかのグレードアップらしきものが施されてたみたい。詳しくは局長にも」
「まあ、フリークス自体分からないことが多いからなあ・・・にしても異常だが」
「局長も同じ事を言ってた・・・近頃のフリークスの様子がおかしいって」
「・・・先月の襲撃、か」
「うん。今までに無い事だって。そしてその件で、今緊急の会議が行われているの」
「緊急の会議?」
「今後の戦略方針。それらを再検討するって」
「・・・・・」
また、色々と厄介事が増えそうだな。
「そうだ、機動砲台については何かあったか?」
「ごめん・・・そこらへんは私にも聞かされてなくて」
「・・・そうか」
何かあったな。
「まあいい。とにかくみんなが無事でよかったよ・・・こいつも」
アレサは相変わらずベッドで寝ている。すごく優しい笑顔だった。可愛い。
守りたい、この笑顔。
「それはいいとして・・・なんで全裸なんだ?」
「それはもちろん。光男君の男としての本能を覚醒させて一緒ににゃんny」
「サドンインパクトォォォ!!!」
ストライク・パイルがあったら完璧だった。
「よくもまあそんな事やったもんだ。若いのによくやる」
「ええまあ」
14時42分、山城基地第一食堂。
俺はカウンター席で遅めの昼食をとっていた。
メニューはサンドイッチ。それとミルクコーヒーだ。
サンドイッチにはキャベツとハムが挟まっているシンプルな物だがすごくおいしい。お腹が空いていたせいだろうか。
「しかし昨日の夜中あんなことがあったとはな・・・道理で夜中騒がしかった訳だ」
そう、エプロンを着用した茶髪の鬼、ジョナス料理長は言う。
「騒がしかった?」
「ああ。Dプラントのほうだったか、作業服きた奴がいっぱいいたぞ・・・確か、下の方に向かっていたな」
「下の方、ですか・・・」
輸送列車か。
「結構大掛かりだったぞ。ここの上空にギガルの航空戦艦が停泊してな、基地の甲板部に大量のMBが配置されていたぞ」
「そうだったんですか?」
「ああ。明らかに過剰だった・・・相当なもの、お前は運んでいたようだな」
「そうみたいですね」
結局、積み荷の正体は分からずじまいか。
「そういや前から聞きたかったが・・・お前のその青い服、なんて言うんだ」
「これですか? 『はんてん』って言うんです」
ちなみに今の俺の服装はジャージに黄緑色のパーカー、そして金色で格子状の刺繍が入った青地のはんてんだ。
プレゼンツバイ、レオス・オブライエン。
「へえ、そう言うのか・・・そういやお前のそれ、どっかで」
「・・・お、朽木じゃね?」
そう言うのは首にタオルを巻いた、ジャージ姿の赤髪の鬼、
「ザーフ? なぜここに?」
「いや、ただの修行だけど?」
「修行だよ、修行」
そう言って、ザーフは俺の隣に座った。
「おっさん。こいつと同じサンドイッチくれ。腹が減った」
「おう」
そう言って料理長は奥の方に行った。今の時間帯、食堂の調理員が料理長ただ1人らしい。
「・・・ていうかお前、今日学校じゃあ?」
「いや、それがルース先生、今日の授業来れなくなったらしくてさあ、午前中の授業だけだったんだ」
「ああ、そういう事」
大方疲労だろうな。
「・・・でもなんでまた修行なんて?」
「いや・・・ただ、世界を旅したくてさ」
「世界?」
「ああ。色々な所を見てみたいんだよ。世界をさあ・・・」
「お、おう」
こいつ、意外と繊細なとこあるんだな・・・前の体育の時間、跳び箱を派手にぶっ壊した奴とは思えないぐらいに、
「まあ、その為に色々とやってんだ。体力作りは今からやっといた方がいいからな。それと、資金調達」
「・・・色々と考えているんだな」
「おーい、できたぞ」
料理長がサンドイッチをザーフに渡した。
それをザーフは一口で全て食べて、水を飲んだ。
この間、僅か二十秒。
「お前・・・ちゃんと味わっているのか?」
「ああ」
済ました顔で、ザーフは言った。
「ただ最近・・・なんかこう」
「どうした?」
「刺激・・・というか、何か新しいことをやってみたいんだよな」
新しいこと、か・・・
「そういやお前、確かザジル達と何かやっていたよな」
「ああ。WG作ってるけど」
「そうか・・・俺も混ぜてくんね」
「・・・は?」
「いやだから、お前達のWG作りを手伝うって言ってるんだ」
「え、ちょ、おま」
「じゃあ、そういう事で、よろしく頼むわー」
そう言って、ザーフは行ってしまった。
「・・・・・」
(分からん・・・)
なんなんだあいつは。
「・・・昔はもっとはしゃいでいたんだがなあ」
そう、料理長は言う。
「前はもっと単純な奴でな・・・最強のWGパイロットになるだとか航空艦の艦長になるとか、まあ、どれも失敗したが。それでも次から次へと・・・まあ、見ていて悪いもんじゃあなかったが。ただ」
「ただ?」
「五年前か? あいつがまだ浜大津の中等部にいた頃から大人しくなってなあ・・・なにがあったかは知らんが」
「そうですか・・・」
あいつもああ見えて、一枚岩じゃあないってことか。
「もっとも、前よりは大人しくなったってだけで、まだまだ単純な野郎だよ」
「同感です」
そう言って、俺は追加で注文しようとした時、端末が鳴った。アレサからメールだ。内容は、
『浅葱様が倒れました』
俺が浜大津総合学校の保健室に来たときには、もう茜が来ていた。
目の前のベットには、浅葱が寝ていた。
それを心配そうに、茜は見ていた。滅多に見せることの無い表情だ。
(そりゃそうだよな)
茜にとって、浅葱はただ一人の家族だ。
もちろん。生物学上の親は居るが、しかし家族としてみた場合、茜にとって家族は浅葱ただ1人だ。
「・・・浅葱」
茜がか細い声で言う。そして、その手をしっかりと握った。
「置いていかないで・・・」
茜にとって大切な存在、妹。それが浅葱だ。
俺はそっとそばを離れ、保健室を出て、待機していた交野に話を聞く。
「何があった?」
「・・・昨日の夜です」
交野は言う。
「『声』が聞こえたんです」
「『声』?」
声だと?
「どんな声だ?」
「なんて言ったらいいのか・・・分かりません」
「そうか・・・それは『耳』で聞いたのか? それとも」
それとも。
「『頭の中』に直接?」
「・・・後者です」
「・・・そうか」
こりゃあきな臭い話になって来た。
「その時『探り』を入れていたりしたか?」
「いえ。夜中に突然」
「時刻は?」
「確か・・・0時辺りだった気がします。昨日はなんとも無かったのでそのまま寝たんですけど・・・けど今朝になって浅葱の様子が変で、それで」
「倒れたと」
「心当たりが?」
「推測だけど・・・一種のショック症状かもな。お前はまだしも、浅葱は『感応』の力に慣れていない。そんな状態でそんなもの聞いたら」
「じゃあ、僕達に『声』が聞こえたのは『感応』の力があったからという事ですか?」
「恐らくはな」
リナイ神の気絶、MBの暴走。そして、アンノウン。
「ビンゴ、か・・・」
「ビンゴって?」
「交野。浅葱が動けるようになってからでいい。『声』について聞いてくれ」
「え、あ、はい。分かりました」
そう言って、俺は廊下を歩き出す。
「先輩、どこへ?」
「先に帰ってる。茜にはそう伝えてくれ」
そう言って、俺は廊下を歩く。
端末が鳴った。局長だ。
「そろそろ何か来そうな感じはしましたよ」
『さすがだな朽木研究員。目覚めたばかりでよく分かったな』
「局長なら暴走したMBの解析を最優先でやると思ったので」
『まったくその通りだ』
「それで、何か分かりましたか?」
『それがだな・・・』
局長は言った。
『MBに搭載されている管制制御システム。『A‐MOS』に何かが侵入した痕跡があった』
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