6 / 20
6.メリオラーザの受難
しおりを挟む
メリオラーザ・ティシモ。ティシモ伯爵家の長女として生まれ、十四歳で第四皇子カダージュ・アス・ヒオニアの婚約者となる。
カダージュ・アス・ヒオニア。ヒオニアリア帝国の第四皇子として生を受けるも、すべてにおいてやる気がない。そんな彼が、唯一興味を示したものが、三つ年上の婚約者であるメリオラーザ。
「彼女が妻になってくれたら嬉しいなあ」
三つ上の兄、第三皇子ラウェージュの婚約者候補を選ぶための交流会の中で、メリオラーザを見つけた。
その夜の晩餐の席で、無気力皇子がそんなことを言うものだから、家族全員がフォークとナイフを取り落とした。
「ねえ、ラウ兄様。ティシモ嬢、兄様も気に入った?でも、僕の方が気に入っていると思うんだあ」
誰もが口を開けたままカダージュを見ている。
「ねえ、ラウ兄様には、噴水の側にいた人とか、テーブルの側にいた人とか、ベンチの側にいた人とかが似合うと思うんだよねぇ」
誰のことだ。ほぼすべての人にあてはまる。
「僕、ティシモ嬢がいいなあ。ねえ、兄様は、他の人がいいよねぇ?」
「め、ずらしい、ことも、あるものだね。驚きすぎて思考が停止してしまったけれど、そう。カダージュは、ティシモ嬢が気に入ったの」
ラウェージュが嬉しそうに笑った。
「私は違う三人を候補に挙げているから。カダージュと被らなくて良かった」
なでなでとカダージュの頭を撫でるラウェージュ。みんなが微笑ましいものを見る目で見つめた。
*~*~*~*~*
ティシモ伯爵家は悩んでいた。
昨日行われた第三皇子ラウェージュの婚約者候補選抜の交流会。十二から十六歳の高位貴族が集められた。メリオラーザも対象年齢のため参加させてはいたが、それは義務に過ぎない。
皇妃の懐妊が発表されると、ベビーラッシュが起こる。皇族に嫁がせたい高位貴族の欲にまみれたものだが、めでたいことに変わりはない。しかし、ティシモ家は複雑だった。権力欲はあまりない。夫人がメリオラーザを懐妊して少しすると、皇妃の懐妊が告げられたのだ。
皇族は、皇子や皇女の年齢前後二歳を婚約者候補とするため、避けたい者は、時期をずらす。前二歳という部分がネックだったが、そこはどうすることも出来ない。皇子二人に皇女二人の計四人。そろそろ大丈夫かと、権力欲のない者たちは、候補から外すために子どもを授かり始めていた。
そんな矢先の皇妃懐妊。まだ性別は不明だが、同性であることを願っていた者たちもいる中、ティシモ家は期待が外れた結果となった。
皇族が十四になると、婚約者候補選抜の交流会が開かれる。メリオラーザは正装を纏うが、目立たないものを仕立てていた。メリオラーザ自身に、皇子に嫁ぎたいという望みがあればそれはそれでもまあいいのだが、本人も両親の性格を継いで、興味がなさそうだった。
「お返事は、一週間後に受け取りに参ります」
城の使者が持って来たものに、伯爵の頬が引き攣ったのは言うまでもない。
「開けたくない」
サロンで家族のお茶を楽しんでいた伯爵たち。午前中に使者からの手紙が来ないようなら選ばれなかったということ。だから油断していた。可愛い娘を魔窟に差し出さなくて済む。ほくほくとお茶を楽しんでいたのだ。
それなのに、何でお茶の時間になって届くのだ。話が違う。
テーブルの隅で、禍々しいオーラを放っている怪文書(伯爵家視点)。
「ジェス、開けて」
側にいた執事のジェスに伯爵が言うと、ジェスは満面の圧のある笑顔になった。
「出来るわけないでしょう」
皇家の封蝋のされた手紙。当主以外が開けるなど、以ての外。しばらくして、ようやく伯爵は諦めて開封するも、その内容に、より頭痛がした。
*つづく*
カダージュ・アス・ヒオニア。ヒオニアリア帝国の第四皇子として生を受けるも、すべてにおいてやる気がない。そんな彼が、唯一興味を示したものが、三つ年上の婚約者であるメリオラーザ。
「彼女が妻になってくれたら嬉しいなあ」
三つ上の兄、第三皇子ラウェージュの婚約者候補を選ぶための交流会の中で、メリオラーザを見つけた。
その夜の晩餐の席で、無気力皇子がそんなことを言うものだから、家族全員がフォークとナイフを取り落とした。
「ねえ、ラウ兄様。ティシモ嬢、兄様も気に入った?でも、僕の方が気に入っていると思うんだあ」
誰もが口を開けたままカダージュを見ている。
「ねえ、ラウ兄様には、噴水の側にいた人とか、テーブルの側にいた人とか、ベンチの側にいた人とかが似合うと思うんだよねぇ」
誰のことだ。ほぼすべての人にあてはまる。
「僕、ティシモ嬢がいいなあ。ねえ、兄様は、他の人がいいよねぇ?」
「め、ずらしい、ことも、あるものだね。驚きすぎて思考が停止してしまったけれど、そう。カダージュは、ティシモ嬢が気に入ったの」
ラウェージュが嬉しそうに笑った。
「私は違う三人を候補に挙げているから。カダージュと被らなくて良かった」
なでなでとカダージュの頭を撫でるラウェージュ。みんなが微笑ましいものを見る目で見つめた。
*~*~*~*~*
ティシモ伯爵家は悩んでいた。
昨日行われた第三皇子ラウェージュの婚約者候補選抜の交流会。十二から十六歳の高位貴族が集められた。メリオラーザも対象年齢のため参加させてはいたが、それは義務に過ぎない。
皇妃の懐妊が発表されると、ベビーラッシュが起こる。皇族に嫁がせたい高位貴族の欲にまみれたものだが、めでたいことに変わりはない。しかし、ティシモ家は複雑だった。権力欲はあまりない。夫人がメリオラーザを懐妊して少しすると、皇妃の懐妊が告げられたのだ。
皇族は、皇子や皇女の年齢前後二歳を婚約者候補とするため、避けたい者は、時期をずらす。前二歳という部分がネックだったが、そこはどうすることも出来ない。皇子二人に皇女二人の計四人。そろそろ大丈夫かと、権力欲のない者たちは、候補から外すために子どもを授かり始めていた。
そんな矢先の皇妃懐妊。まだ性別は不明だが、同性であることを願っていた者たちもいる中、ティシモ家は期待が外れた結果となった。
皇族が十四になると、婚約者候補選抜の交流会が開かれる。メリオラーザは正装を纏うが、目立たないものを仕立てていた。メリオラーザ自身に、皇子に嫁ぎたいという望みがあればそれはそれでもまあいいのだが、本人も両親の性格を継いで、興味がなさそうだった。
「お返事は、一週間後に受け取りに参ります」
城の使者が持って来たものに、伯爵の頬が引き攣ったのは言うまでもない。
「開けたくない」
サロンで家族のお茶を楽しんでいた伯爵たち。午前中に使者からの手紙が来ないようなら選ばれなかったということ。だから油断していた。可愛い娘を魔窟に差し出さなくて済む。ほくほくとお茶を楽しんでいたのだ。
それなのに、何でお茶の時間になって届くのだ。話が違う。
テーブルの隅で、禍々しいオーラを放っている怪文書(伯爵家視点)。
「ジェス、開けて」
側にいた執事のジェスに伯爵が言うと、ジェスは満面の圧のある笑顔になった。
「出来るわけないでしょう」
皇家の封蝋のされた手紙。当主以外が開けるなど、以ての外。しばらくして、ようやく伯爵は諦めて開封するも、その内容に、より頭痛がした。
*つづく*
110
あなたにおすすめの小説
老け顔ですが?何かあります?
宵森みなと
恋愛
可愛くなりたくて、似合わないフリフリの服も着てみた。
でも、鏡に映った自分を見て、そっと諦めた。
――私はきっと、“普通”じゃいられない。
5歳で10歳に見られ、結婚話は破談続き。
周囲からの心ない言葉に傷つきながらも、少女サラサは“自分の見た目に合う年齢で学園に入学する”という前代未聞の決意をする。
努力と覚悟の末、飛び級で入学したサラサが出会ったのは、年上の優しいクラスメートたちと、ちょっと不器用で真っ直ぐな“初めての気持ち”。
年齢差も、噂も、偏見も――ぜんぶ乗り越えて、この恋はきっと、本物になる。
これは、“老け顔”と笑われた少女が、ほんとうの恋と自分自身を見つけるまでの物語。
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
聖女の座を追われた私は田舎で畑を耕すつもりが、辺境伯様に「君は畑担当ね」と強引に任命されました
さら
恋愛
王都で“聖女”として人々を癒やし続けてきたリーネ。だが「加護が弱まった」と政争の口実にされ、無慈悲に追放されてしまう。行き場を失った彼女が選んだのは、幼い頃からの夢――のんびり畑を耕す暮らしだった。
ところが辺境の村にたどり着いた途端、無骨で豪胆な領主・辺境伯に「君は畑担当だ」と強引に任命されてしまう。荒れ果てた土地、困窮する領民たち、そして王都から伸びる陰謀の影。追放されたはずの聖女は、鍬を握り、祈りを土に注ぐことで再び人々に希望を芽吹かせていく。
「畑担当の聖女さま」と呼ばれながら笑顔を取り戻していくリーネ。そして彼女を真っ直ぐに支える辺境伯との距離も、少しずつ近づいて……?
畑から始まるスローライフと、不器用な辺境伯との恋。追放された聖女が見つけた本当の居場所は、王都の玉座ではなく、土と緑と温かな人々に囲まれた辺境の畑だった――。
わたくし、悪女呼ばわりされているのですが……全力で反省しておりますの。
月白ヤトヒコ
恋愛
本日、なんの集まりかはわかりませんが、王城へ召集されておりますの。
まあ、わたくしこれでも現王太子の婚約者なので、その関連だと思うのですが……
「父上! 僕は、こんな傲慢で鼻持ちならない冷酷非道な悪女と結婚なんかしたくありません! この女は、こともあろうに権力を使って彼女を脅し、相思相愛な僕と彼女を引き離そうとしたんですよっ!? 王妃になるなら、側妃や愛妾くらいで煩く言うのは間違っているでしょうっ!?」
と、王太子が宣いました。
「どうやら、わたくし悪女にされているようですわね。でも、わたくしも反省しておりますわ」
「ハッ! やっぱりな! お前は僕のことを愛してるからな!」
「ああ、人語を解するからと人並の知性と理性を豚に求めたわたくしが悪かったのです。ごめんなさいね? もっと早く、わたくしが決断を下していれば……豚は豚同士で娶うことができたというのに」
設定はふわっと。
ジルの身の丈
ひづき
恋愛
ジルは貴族の屋敷で働く下女だ。
身の程、相応、身の丈といった言葉を常に考えている真面目なジル。
ある日同僚が旦那様と不倫して、奥様が突然死。
同僚が後妻に収まった途端、突然解雇され、ジルは途方に暮れた。
そこに現れたのは亡くなった奥様の弟君で───
※悩んだ末取り敢えず恋愛カテゴリに入れましたが、恋愛色は薄めです。
疑惑のタッセル
翠月 瑠々奈
恋愛
今、未婚の貴族の令嬢・令息の中で、王国の騎士たちにタッセルを渡すことが流行っていた。
目当ての相手に渡すタッセル。「房飾り」とも呼ばれ、糸や紐を束ねて作られた装飾品。様々な色やデザインで形作られている。
それは、騎士団炎の隊の隊長であるフリージアの剣にもついていた。
でもそれは──?
ある公爵令嬢の死に様
鈴木 桜
恋愛
彼女は生まれた時から死ぬことが決まっていた。
まもなく迎える18歳の誕生日、国を守るために神にささげられる生贄となる。
だが、彼女は言った。
「私は、死にたくないの。
──悪いけど、付き合ってもらうわよ」
かくして始まった、強引で無茶な逃亡劇。
生真面目な騎士と、死にたくない令嬢が、少しずつ心を通わせながら
自分たちの運命と世界の秘密に向き合っていく──。
【完結】溺愛される意味が分かりません!?
もわゆぬ
恋愛
正義感強め、口調も強め、見た目はクールな侯爵令嬢
ルルーシュア=メライーブス
王太子の婚約者でありながら、何故か何年も王太子には会えていない。
学園に通い、それが終われば王妃教育という淡々とした毎日。
趣味はといえば可愛らしい淑女を観察する事位だ。
有るきっかけと共に王太子が再び私の前に現れ、彼は私を「愛しいルルーシュア」と言う。
正直、意味が分からない。
さっぱり系令嬢と腹黒王太子は無事に結ばれる事が出来るのか?
☆カダール王国シリーズ 短編☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる