12 / 20
最終話 僕のすべてを捧げる
しおりを挟む
「リオぉ、疲れたよう。リオの膝枕で休みたいよう」
「今椅子に座られたばかりです、殿下」
ぐずるカダージュを、いつもの如く淡々と切る。
「リオ。実はあまり眠れていない。考えることが多かった」
「そうですか。お休みの時間は何時でしたか」
「二十二時」
「起床は何時ですか」
「六時だよ」
二人は見つめ合う。
「あのね、考えることが多かったんだよ」
「どのようなことなのですか」
「リオと行きたいところとか、リオに着せたい服とか、リオと食べたいものとか」
「そう、ですか」
「あっ。でもでも、一番悩んでいるのはね」
メリオラーザの耳元で囁くと、少しの間の後、メリオラーザは真っ赤になった。その言葉に、先日の第一皇子レヴェージュの生誕祭での出来事まで思い起こされてしまう。
*~*~*~*~*
「もしティシモ嬢が、世界が欲しい、と言ったら、カダージュは笑ってティシモ嬢に世界を贈るだろう」
レヴェージュは、迷うことなくそう言い切った。
「そうだね。リオ、世界が欲しい?」
「ひえっ?!いりませんわっ」
肩に腕を回され、間近で覗き込まれるメリオラーザは、とんでもないと首をブンブン横に振る。カダージュはその様子にクスクスと笑う。
「でもね、リオ。世界を手に入れると言うことは、この国さえ手中に収めると言うこと。あの愚か者たちを、生かすも殺すも自由」
カダージュは、メリオラーザを取り囲んでいた者たちを、冷たく一瞥する。
「リオの、自由に出来るんだよ」
金の瞳に険呑な光を宿すカダージュに、愚か者たちは青ざめ、震える。
「そのようなことは望みません。わたくしは、あの、わたくし、は」
ちらりとカダージュを見ると、
「カダ様と、穏やかに、生きて行ければ、と、思います」
ぽしょりと、カダージュだけに聞こえるように、そう言った。
カダージュの頭が、メリオラーザの肩に乗る。
「ああ、リオ。リオ、リオ」
愛しくて堪らない。そう言うように、カダージュはメリオラーザを何度も呼び、唇の側にくちづける。ふよふよとメリオラーザの頬に触れると、愛おしいと、微笑んだ。
「私のメリオラーザは聖母のようだ。メリオラーザに免じて今回は、今回だけは、本当に、仕方なく、嫌々、目を瞑ろう。だが、今後おかしなことをする者がいたら、ああ、言わなくてもわかるな?」
全員が、自然と頭を下げた。
それを見ると、もう用はないとばかりにメリオラーザを連れ、会場を後にした。
………
……
…
「早く結婚したい、リオ」
会場を出てすぐに、すり、と頬をすり寄せ、耳に吐息を注ぎ込まれるように囁かれた。
「すべて、僕のものにしたいんだよ、メリオラーザ」
*~*~*~*~*
「あっ。でもでも、一番悩んでいるのはね」
メリオラーザの耳元で囁く。
「リオとの家族計画だよ」
少しの間の後、真っ赤になるメリオラーザに、カダージュは頬というか、唇のすぐ脇にくちづける。
皇妃の生誕祭、カダージュの成人の儀と婚約発表、レヴェージュの生誕祭と、皇族イベントが目白押し。次のカダージュの誕生日、つまり一年後が結婚式に望ましかったが、皇族イベントに少し隙間のある、カダージュの成人の儀から半年後が結婚式と決まっていた。さすがに成人の儀と婚約発表と結婚式を同時に行うほど、情緒がないわけではない。
結婚式まで、あと少し。
「ねえ、リオ」
メリオラーザの肩に頭を乗せ、顔はメリオラーザを向いている。そのため、カダージュの吐息が首をくすぐることに、メリオラーザは震える。
「リオはどう思う?」
「どう、とは」
「子どもは何歳までに欲しいとか、何人欲しいとか、産める限り産み続けたいとか」
カダージュの手が、頬を、耳を撫でていく。メリオラーザはゾクゾクと背中を震わせる。
「いっそ子どもはいらない、僕だけでいい、とか」
指が、唇をなぞる。ふるり、メリオラーザの全身が震える。
「ねえ、リオ。メリオラーザ。僕はリオが望むようにしたいんだ」
額に、唇が触れる。
「リオの望みは僕の望み」
瞼に、鼻に、頬に、唇が落とされる。
「愛しているよ、メリオラーザ」
唇の側へ、くちづけ。
*~*~*~*~*
カダージュ・アス・ヒオニアは、結婚と同時に皇位継承権を返上し、大公位を授かると、家名をリシアンサスとする。
「リオ。この家名を、リオに捧げる」
リシアンサス。花の名前。その花言葉は
永遠の愛
*おしまい*
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
カダージュのギャップを楽しんでいただけたなら、嬉しいです。
この後いくつか、番外編をお届けいたします。
よろしかったらお付き合いください。
「今椅子に座られたばかりです、殿下」
ぐずるカダージュを、いつもの如く淡々と切る。
「リオ。実はあまり眠れていない。考えることが多かった」
「そうですか。お休みの時間は何時でしたか」
「二十二時」
「起床は何時ですか」
「六時だよ」
二人は見つめ合う。
「あのね、考えることが多かったんだよ」
「どのようなことなのですか」
「リオと行きたいところとか、リオに着せたい服とか、リオと食べたいものとか」
「そう、ですか」
「あっ。でもでも、一番悩んでいるのはね」
メリオラーザの耳元で囁くと、少しの間の後、メリオラーザは真っ赤になった。その言葉に、先日の第一皇子レヴェージュの生誕祭での出来事まで思い起こされてしまう。
*~*~*~*~*
「もしティシモ嬢が、世界が欲しい、と言ったら、カダージュは笑ってティシモ嬢に世界を贈るだろう」
レヴェージュは、迷うことなくそう言い切った。
「そうだね。リオ、世界が欲しい?」
「ひえっ?!いりませんわっ」
肩に腕を回され、間近で覗き込まれるメリオラーザは、とんでもないと首をブンブン横に振る。カダージュはその様子にクスクスと笑う。
「でもね、リオ。世界を手に入れると言うことは、この国さえ手中に収めると言うこと。あの愚か者たちを、生かすも殺すも自由」
カダージュは、メリオラーザを取り囲んでいた者たちを、冷たく一瞥する。
「リオの、自由に出来るんだよ」
金の瞳に険呑な光を宿すカダージュに、愚か者たちは青ざめ、震える。
「そのようなことは望みません。わたくしは、あの、わたくし、は」
ちらりとカダージュを見ると、
「カダ様と、穏やかに、生きて行ければ、と、思います」
ぽしょりと、カダージュだけに聞こえるように、そう言った。
カダージュの頭が、メリオラーザの肩に乗る。
「ああ、リオ。リオ、リオ」
愛しくて堪らない。そう言うように、カダージュはメリオラーザを何度も呼び、唇の側にくちづける。ふよふよとメリオラーザの頬に触れると、愛おしいと、微笑んだ。
「私のメリオラーザは聖母のようだ。メリオラーザに免じて今回は、今回だけは、本当に、仕方なく、嫌々、目を瞑ろう。だが、今後おかしなことをする者がいたら、ああ、言わなくてもわかるな?」
全員が、自然と頭を下げた。
それを見ると、もう用はないとばかりにメリオラーザを連れ、会場を後にした。
………
……
…
「早く結婚したい、リオ」
会場を出てすぐに、すり、と頬をすり寄せ、耳に吐息を注ぎ込まれるように囁かれた。
「すべて、僕のものにしたいんだよ、メリオラーザ」
*~*~*~*~*
「あっ。でもでも、一番悩んでいるのはね」
メリオラーザの耳元で囁く。
「リオとの家族計画だよ」
少しの間の後、真っ赤になるメリオラーザに、カダージュは頬というか、唇のすぐ脇にくちづける。
皇妃の生誕祭、カダージュの成人の儀と婚約発表、レヴェージュの生誕祭と、皇族イベントが目白押し。次のカダージュの誕生日、つまり一年後が結婚式に望ましかったが、皇族イベントに少し隙間のある、カダージュの成人の儀から半年後が結婚式と決まっていた。さすがに成人の儀と婚約発表と結婚式を同時に行うほど、情緒がないわけではない。
結婚式まで、あと少し。
「ねえ、リオ」
メリオラーザの肩に頭を乗せ、顔はメリオラーザを向いている。そのため、カダージュの吐息が首をくすぐることに、メリオラーザは震える。
「リオはどう思う?」
「どう、とは」
「子どもは何歳までに欲しいとか、何人欲しいとか、産める限り産み続けたいとか」
カダージュの手が、頬を、耳を撫でていく。メリオラーザはゾクゾクと背中を震わせる。
「いっそ子どもはいらない、僕だけでいい、とか」
指が、唇をなぞる。ふるり、メリオラーザの全身が震える。
「ねえ、リオ。メリオラーザ。僕はリオが望むようにしたいんだ」
額に、唇が触れる。
「リオの望みは僕の望み」
瞼に、鼻に、頬に、唇が落とされる。
「愛しているよ、メリオラーザ」
唇の側へ、くちづけ。
*~*~*~*~*
カダージュ・アス・ヒオニアは、結婚と同時に皇位継承権を返上し、大公位を授かると、家名をリシアンサスとする。
「リオ。この家名を、リオに捧げる」
リシアンサス。花の名前。その花言葉は
永遠の愛
*おしまい*
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
カダージュのギャップを楽しんでいただけたなら、嬉しいです。
この後いくつか、番外編をお届けいたします。
よろしかったらお付き合いください。
138
あなたにおすすめの小説
老け顔ですが?何かあります?
宵森みなと
恋愛
可愛くなりたくて、似合わないフリフリの服も着てみた。
でも、鏡に映った自分を見て、そっと諦めた。
――私はきっと、“普通”じゃいられない。
5歳で10歳に見られ、結婚話は破談続き。
周囲からの心ない言葉に傷つきながらも、少女サラサは“自分の見た目に合う年齢で学園に入学する”という前代未聞の決意をする。
努力と覚悟の末、飛び級で入学したサラサが出会ったのは、年上の優しいクラスメートたちと、ちょっと不器用で真っ直ぐな“初めての気持ち”。
年齢差も、噂も、偏見も――ぜんぶ乗り越えて、この恋はきっと、本物になる。
これは、“老け顔”と笑われた少女が、ほんとうの恋と自分自身を見つけるまでの物語。
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
聖女の座を追われた私は田舎で畑を耕すつもりが、辺境伯様に「君は畑担当ね」と強引に任命されました
さら
恋愛
王都で“聖女”として人々を癒やし続けてきたリーネ。だが「加護が弱まった」と政争の口実にされ、無慈悲に追放されてしまう。行き場を失った彼女が選んだのは、幼い頃からの夢――のんびり畑を耕す暮らしだった。
ところが辺境の村にたどり着いた途端、無骨で豪胆な領主・辺境伯に「君は畑担当だ」と強引に任命されてしまう。荒れ果てた土地、困窮する領民たち、そして王都から伸びる陰謀の影。追放されたはずの聖女は、鍬を握り、祈りを土に注ぐことで再び人々に希望を芽吹かせていく。
「畑担当の聖女さま」と呼ばれながら笑顔を取り戻していくリーネ。そして彼女を真っ直ぐに支える辺境伯との距離も、少しずつ近づいて……?
畑から始まるスローライフと、不器用な辺境伯との恋。追放された聖女が見つけた本当の居場所は、王都の玉座ではなく、土と緑と温かな人々に囲まれた辺境の畑だった――。
わたくし、悪女呼ばわりされているのですが……全力で反省しておりますの。
月白ヤトヒコ
恋愛
本日、なんの集まりかはわかりませんが、王城へ召集されておりますの。
まあ、わたくしこれでも現王太子の婚約者なので、その関連だと思うのですが……
「父上! 僕は、こんな傲慢で鼻持ちならない冷酷非道な悪女と結婚なんかしたくありません! この女は、こともあろうに権力を使って彼女を脅し、相思相愛な僕と彼女を引き離そうとしたんですよっ!? 王妃になるなら、側妃や愛妾くらいで煩く言うのは間違っているでしょうっ!?」
と、王太子が宣いました。
「どうやら、わたくし悪女にされているようですわね。でも、わたくしも反省しておりますわ」
「ハッ! やっぱりな! お前は僕のことを愛してるからな!」
「ああ、人語を解するからと人並の知性と理性を豚に求めたわたくしが悪かったのです。ごめんなさいね? もっと早く、わたくしが決断を下していれば……豚は豚同士で娶うことができたというのに」
設定はふわっと。
ジルの身の丈
ひづき
恋愛
ジルは貴族の屋敷で働く下女だ。
身の程、相応、身の丈といった言葉を常に考えている真面目なジル。
ある日同僚が旦那様と不倫して、奥様が突然死。
同僚が後妻に収まった途端、突然解雇され、ジルは途方に暮れた。
そこに現れたのは亡くなった奥様の弟君で───
※悩んだ末取り敢えず恋愛カテゴリに入れましたが、恋愛色は薄めです。
疑惑のタッセル
翠月 瑠々奈
恋愛
今、未婚の貴族の令嬢・令息の中で、王国の騎士たちにタッセルを渡すことが流行っていた。
目当ての相手に渡すタッセル。「房飾り」とも呼ばれ、糸や紐を束ねて作られた装飾品。様々な色やデザインで形作られている。
それは、騎士団炎の隊の隊長であるフリージアの剣にもついていた。
でもそれは──?
ある公爵令嬢の死に様
鈴木 桜
恋愛
彼女は生まれた時から死ぬことが決まっていた。
まもなく迎える18歳の誕生日、国を守るために神にささげられる生贄となる。
だが、彼女は言った。
「私は、死にたくないの。
──悪いけど、付き合ってもらうわよ」
かくして始まった、強引で無茶な逃亡劇。
生真面目な騎士と、死にたくない令嬢が、少しずつ心を通わせながら
自分たちの運命と世界の秘密に向き合っていく──。
【完結】溺愛される意味が分かりません!?
もわゆぬ
恋愛
正義感強め、口調も強め、見た目はクールな侯爵令嬢
ルルーシュア=メライーブス
王太子の婚約者でありながら、何故か何年も王太子には会えていない。
学園に通い、それが終われば王妃教育という淡々とした毎日。
趣味はといえば可愛らしい淑女を観察する事位だ。
有るきっかけと共に王太子が再び私の前に現れ、彼は私を「愛しいルルーシュア」と言う。
正直、意味が分からない。
さっぱり系令嬢と腹黒王太子は無事に結ばれる事が出来るのか?
☆カダール王国シリーズ 短編☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる